社畜TS美少女は攻略対象のようです   作:レルネル・ネーレル

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王都基地、病室にて

 私はいつものように窓の外から兵士たちの鍛錬の様子を見て暇をつぶしていたのだが、何故か今日はすぐに鍛錬が切り上げられてしまい、見るものがなくなってしまった。

 

 やることがなくなってしまった私は、暇になってしまい、いつものようにベッドに仰向けに寝転がりゴロゴロと転がっていた。メメルちゃんは不愛想だから話しかけても返事してくれないんだよね。だからこうしてゴロゴロ転がって暇を潰しているわけだ。

 

 とまあ、そんな感じで暇を潰していた私であったが、その日は珍しく訪問者がやってきた。訪問者は体格はオッドベルとほとんど同じで、かなり強面の怖いおじさん。名前はオッヂ、というらしい。

 メメルちゃんによるとオッヂはこの基地の中隊長兼少佐を務めていて、窓の外から観ているあの鍛錬は、オッヂ少佐が教官なのだと。そして、そのオッヂ少佐は私に用があってこの医務室を訪れたとの事。

 

 ほうほう、オッヂ少佐とは顔見知りじゃないけど一体何の用なのだろうか?

 私とオッヂ少佐にはほとんど接点なんてないはずだけど……。

 強いて言うならこの基地でお世話になっている、という事ぐらいか?

 受け入れた患者の病状を見るためにやってきたとかだろうか。

 でも、それなら”用がある”なんて言い方はしないはず。

 じゃあ、何の用なんだろう?

 

 なんて不思議に思っていると、オッヂ少佐はつかつかと室内に入ってきて、私のベッドのそばまで歩いてくると、ベッドの隣にある椅子に座った。

 

「いやー、なんとも可愛らしいお嬢さんだ。ここまで微笑ましい子供は見たことがない」

 

「そりゃ、ありがと?」

 

 なんとも返事に困るお世辞だな。

 

「さぁ、ベッドに腰掛けなさい」

 

 そうして、オッヂ少佐に促され、私はベッドに腰掛ける。

 腰掛けた私を見て、オッヂ少佐は喋りだした。

 

「さて、本題から話すことにしよう」

 

 そして、語られた事には、

 最近オッヂ少佐が教える兵士の一人の動きが劇的に改善したらしい。今までその兵士の成績は凡庸なものであったため、いきなり動きが改善されることに違和感を覚えたとの事。

 そこで不思議に思ったオッヂ少佐はその兵士に何があったのか問い詰めて、聞き出した情報によると、なんでも白髪の美少女に物陰に連れ込まれ、剣術のアドバイスをささやかれたとの事らしい。

 そして、その白髪の美少女が気になったオッヂ少佐は直接ここにやってきた、というワケだ。

 

 いや、草。

 全部バレテーラ。

 看護師たちにバレないよう動いていたつもりだったけど、まさか教官の方からバレるとは。

 

 その話を傍から聞いていたメメルちゃんの顔が曇る曇る。この後のことを想像するのが怖いですね、ハイ。

 

 という訳でメメルちゃんのことは置いておいて、一通り話し終わったオッヂ少佐はコホン、と間をおいて再び口を開いた。

 

「お嬢さん、一つ質問していいかね?」

 

「うん、いいよ」

 

「……お嬢さん、どこで剣術を習ったんだ?剣術を知らんとあの兵士にあそこまで的確なアドバイスは出来ない筈だが」

 

 まあ、やっぱりそうだよな。

 オッヂ少佐がここに来たのは、私がなぜ兵士に的確なアドバイスができたのか知るため。ならやはりそのような問いが来るのは自然な事だ。

 

 でもまぁ、どう返せばいいんだろうか。

 ”どこで”剣術を習った、なんてアバウト過ぎる。

 師匠に習った、とも言えるし、戦場で習った、とも言える。

 質問がアバウト過ぎていい答えが思い浮かばない。

 

 そうして、答えに困る私に、察したのかオッヂ少佐は言い換えた。

 

「おっと、質問が悪かったようだ。言い換えよう、お嬢さんは何者なんだ(・・・・・・・・・・)?」

 

 なるほど、こちらもアバウトな質問ではあるが先ほどよりかはまだマシ。

 こちらの方がまだ返答がし易い。 

 なにせ、こちらには自分が何者なのか言い表すのには、ぴったりの単語があるではないか。

 

「えっとねー、うん、何者かって言うと実は、私は”剣星の魔女”って言うんだ」

 

「は?」

 

 いやー、我ながら完璧な返答。

 二つ名というのはこういうときのためにあるのだ。

 分かりやすく自分を説明するとき、これほど便利なものはない。

 

 とまあ、そんな感じで得意になっていた私ではあったが、対するオッヂ少佐の顔は固まってしまっている。

 

 ん、どうしたのだろうか、と思いオッヂ少佐の肩を叩こうと思い手を伸ばしたが、その前にオッヂ少佐は恐る恐ると首を回す。

 そして、メメルちゃんの方を向いて声を捻り出した。

 

「メ、メメメ、メメル軍医、彼女の言っている事は本当かな?」

 

 メメルちゃんは、はぁ、という顔をして言う。

 

「本当です、そこの”可愛らしいお嬢さん”とやらが言っている通り、彼女は剣星の魔女その人です。本当に名家ではなかったでしょう?」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!剣星の魔女は確か大戦末期に失踪した救国の英雄ではないか!?彼女は失踪したのだろう?英雄がこんな場所にいるわけないではないか!!?」

 

 オッヂ少佐は声を震わせ叫んだ。

 

「はぁ、いろいろ訳があるんです。機密情報になりますので、あまり情報は明かせませんが、そこの少女が剣星の魔女、であるという事は確かです」

 

 何のことだことだろうか、だから言ったのに、と呟くメメルちゃん。

 そして、一方のオッヂ少佐はプルプルと震えている。 どこか私に怯えているようにも見える。

 いや、何があった。

 私が剣星の魔女だからと言って、なぜそこまで怯える必要があるのだろうか。

 私は少佐で、オッヂも少佐なんだから、別に同格だとは思うんだけど……。

 

 あ、そういえば私二階級特進して大佐になってるんだった。

 

「た、大変失礼なことを申し上げてしまい、申し訳ありませんでしたああああああ!!!」

 

 全力で土下座をするオッヂ少佐。

 

 そんな様子を見て私は内心反省する。

 ……ここで剣星の魔女、って言ったのは不味かったかな。

 ちょっと反省するべき案件な気がする。

 今まで自分の”剣星の魔女”という肩書を重く見たことがなかったけど、どうやらオッドベルが言っていた通り、私の想像以上にこの肩書は重そうだ。

 あらかじめ自分が剣星の魔女であることを言っておくか、あるいはその肩書を露にしないか、そのどちらかを心がけるべきだと思う。

 じゃないと、今のようにオッヂ少佐や相手が不憫にも土下座する羽目になる。

 

 あー、こりゃ、やっちゃったな……。

 

 心の中で、すまん、オッヂ少佐!と謝りつつ、私はもう少し自重することを決意したのであった。




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