的中した「名経営者の預言」

土光の経営哲学の根本には「60点主義で即決せよ。決めるべきときに決めぬのは失敗」という言葉がある。

最初から完璧を求めず、とりあえず着手する姿勢を重視した。この60点主義は「完璧を目指して何も始められないより、まずは行動し、後から修正していく方が結果を生む」という実践的な知恵だ。土光は「100点を取ろうとして0点になるよりは、60点でも取った方がいい」と説いた。

この哲学は私生活にも一貫して反映されていた。日常生活においても「今、本当に必要なものは何か」を常に問い、必要最低限の生活環境で満足し、余計なものを求めなかった。暖房のない家に住み、質素な食事で満足したのも、「まずは最低限のもので始め、本当に必要なら加えていく」という姿勢の表れだった。

しかし、多くの場合、彼にとって「必要最低限」以上のものは不要だった。結果、無駄を省いた質素な暮らしが続いた。

彼の質素な暮らしは単なる倹約ではなく、本質的なものだけを追求する姿勢の表れだった。

土光は晩年、日本の将来をこう危惧していた。

「みんなの生活は豊かになったが、このままでは二十一世紀の日本はどうなるか。物質的に豊かになったけれど、心がなくては困るでしょう。豊かであることと贅沢とは根本的に違うことなんだ。贅沢するから文化が上がるのではない」(同前)

1988年、バブル経済の真っただ中に土光は91歳で亡くなった。「心がなくては困るでしょう」と彼が懸念したとおり、日本経済は狂乱の時代へと突き進んでいった。

他人の目を気にせず、本質を見つめ、実行する。「無私」の心で社会に貢献し続けた「メザシの土光」の生き方は、令和の今こそ学ぶことが多いのではないだろうか。

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