トランプ米政権が教育への締め付けを強化している。米教育省は21日、学生ローン(奨学金)の返済を滞納する卒業生らへの取り立てを再開する方針を発表した。一方、米東部マサチューセッツ州の名門ハーバード大は同日、トランプ政権が補助金の一部を凍結したことに反発し、措置の取り消しを求めて政権を提訴。政権側と名門大の間で対立が深まる事態に発展している。
米ニュースサイトのアクシオスによると、米教育省は5月5日から、有償奨学金などの債権回収のため、給与差し押さえによる強制徴収を開始する。
530万人の債務不履行者
教育省によると、4270万人が1兆6000億ドル(約220兆円)以上の奨学金を借り、返済している債務者は全体の38%にとどまる。債務不履行に陥っている債務者は約530万人に上るという。
「米国の税金が無責任な学生ローン政策の担保になることを強いられるようなことはもはやない」
マクマホン教育長官は21日に発表した声明でこう強調し、奨学金の返済免除措置を導入したバイデン前政権に批判の矛先を向けた。
教育を受ける側だけではなく、教育する側に対する締め付けも強めている。
DEI重視姿勢の見直し要求
国内の大学に対し、「多様性・公平性・包括性(DEI)」を重視した入学選考基準や教育プログラムの見直しを要求。パレスチナ自治区ガザを攻撃するイスラエルに抗議する学生デモを問題視し、学生の取り締まり強化なども求めた。従わない大学に対し、教育・研究資金支援の削減も進めている。
これに反発するハーバード大は21日、トランプ政権が約23億ドルの補助金などを一方的に凍結したのは違法だとして、同州の連邦地裁に差し止めを求め提訴した。
同大は訴状で、トランプ政権が「ハーバード大の意思決定に対する政府の支配力を強める手段として、補助金の凍結を利用している」と主張。政権の対応は言論の自由などを定めた米憲法に違反しており、凍結に向けた手続きでも法令違反があったとしている。
ガーバー学長は声明で「政府の行き過ぎた介入は深刻かつ長期的な影響を及ぼすだろう」と批判。補助金の凍結により、がんや感染症の研究に悪影響が出る恐れがあるとした上で、「技術革新における世界のリーダーとしての米国の地位を損なう」と警告した。(岡田美月、ニューヨーク 本間英士)