これは最高裁判所が判断すべきことなのか。民意によって選ばれた国会が決めるべきことであり、司法による立法権の侵害なのではないか。こう危惧せざるを得ない。
性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更するには、生殖不能にする手術などを条件とする「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(特例法)の条項を違憲と判断した先日の最高裁決定は、司法はあくまで国会が制定した法律を尊重すべきだという憲法原則から大きく逸脱していたというべきだろう。裁判所には、国会の法律が憲法に適合しているか審査する「違憲審査権」はあるが、憲法13条には「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とあるのみである。
その曖昧な文言を用いて、特例法の条項を無効とした15人の最高裁判事の判断は、司法権の適切な領域を超え、立法権を乗っ取ろうとしているように見える。
私はここで、戸籍上の性別変更を認める条件として、生殖を不可能にする手術を義務付けることの、政策として良し悪しを問題としているのではない。これに関しては大いに政策的な議論がなされるべきだ。