「ぶはぁ!」
「聞いてくれよ、ミアハ!ベル君が…ベル君が…!浮気をしていたんだぁ!」
つい先ほどベルと見知らぬ女の子が手をつないでいた光景を目にしたヘスティアは、
「うぅぅう~!くそぅ、そもそも何なんだあの子は!?ベル君はボクのものなんだぞぉ!」
「これこれ、ヘスティア。ベルは誰のものでもないぞ」
「分かっているさそのくらい!ただ言ってみただけさ!イクス君もそういうのからベル君を守るのが君の役目だろぉ!」
「…?だから、あやつをベルの近くに置いているのか?」
「そんなわけないだろ!あの子もボクの大事な眷属なんだよ!」
現実逃避のため酒に逃げたヘスティアはとてつもなく面倒だった。これが神ミアハでなければ務まらなかったかもしれない…
「うわぁぁんっ!ベルくーん!お願いだからボクの前からいなくならないでおくれーーっ!」
「あ゛い゛し゛て゛る゛よ゛!ベル゛く゛ーん゛」
…本っ当にこんな面倒なヘスティアの相手をしてくれた神ミアハに感謝しかない。今後ともヘスティアファミリアと、どうかよろしくお願いします。
まぁ、神ミアハにウザがらみするぐらいには酒を飲んだヘスティアが次の日、無事だという保証はなく…
「ぬあぁぁああっ…!」
「大丈夫ですか神様?」
二日酔いでダウンしていた
「極東では二日酔いにはシジミの味噌汁だそうだ。飲むといい」
珍しく朝、起きていたイクスが朝食の準備をする。ヘスティアのことも考え今日は極東風の朝食だ。ただしオラリオでは用意できなかったり高かったりで本物とは言えないが普段より豪華な朝食であった
「あの、神様。こんな時になんですけど…次のバイトのって、いつですか?」
「休み?なんでだい?」
「じつは最近、ダンジョンでたくさん稼げるようになって。神様に恩返ししたいなって。…だからその、行きませんか?ちょっと豪華な食事でも食べに」
「デート…今日行こう…」
そう言いながらイクスの方をちらりと見る。さすがに仲間はずれにするのはどうなのかと思ったようだが、イクスは頷き親指を立てている。後顧の憂いもなくなった
「今日行きたい!」
「でも…」
「今日行くんだ!」
「体調は…?」
「もう治った!ベル君。6時に南西のメインストリート、アモールの広場に集合だ!」
二日酔いも何のその。不機嫌から一転してご機嫌になった
「神様、どこに行ったんだろう…?」
「さてな、女の準備は手間がかかるものだ。あまり気にしなくてよい」
「えっと、イクスは…?」
「馬に蹴られたくないからな。私は行けないぞ」
オラリオの神聖浴場。神のみが許可された浴場で、過去、
「ベ~ル君とデェトっ♪ベ~ル君とデェトっ♪ふふっ」
我らが
「あら、ヘスティアじゃない」
「やぁ、デメテル。久しぶり」
「あなたが
「んー、実はこの後、約束があってね。少し気合を入れようかと」
「まさか、お相手は殿方なの?」
「だったら何だって言うのさ」
「あらあらまぁまぁ。ヘスティアが!?ねぇ~みんなぁ~!」
デメテルの呼びかけにほかの女神達が集ってくる。これでも三大処女神に数えられるヘスティア。そのヘスティアに男ができたというのであれば野次馬しないものはいなかった
「ヘスティアに男っ!?」
「ロリ巨乳のヘスティアがっ!?」
「相手は誰なの!?」
「「「さぁ、吐け!!」」」
「相手はボクのファミリアの子だよ。ヒューマンだ」
「「「お~!!」」」
「貴女のファミリアの子って言うとあの灰髪の?」
「もう一人の方だよ。って言うかデメテル、イクス君のこと知ってるのかい?」
「あの子はよくウチで買い物してくれているから」
そんな風に話を脱線してみたりして追求から逃れようとするが、いまの
「あー、も~うるさいなぁっ!ボク、もう行かないとっ!」
「ねぇねぇヘスティア、その子のどこが好きなの?」
たまらずといった様子で浴場から逃げるように立ち上がったヘスティアにデメテルは最後の追及をする。それにヘスティアは「全部だよ」っと乙女のような笑みで返すのであった
6時のアモールの広場にて
「ベル君!」
「あ……」
片や神聖浴場で身を清め、髪を下ろし新しい服を身にまとったヘスティアと、服と髪を整え、待ち合わせ時間の少し前に待っていたベル
それは初々しいカップルのようであった
「ごめんねベル君、待たせちゃったかい?」
「い、いえ!全然!僕も今来たばっかりですからっ」
…周りに多数の女神がいなければだが
「おお!あれが噂の!?」
「ヘスティアの男っ!」
ヘスティアは押しのけられベルに殺到していく女神たち
「ごめんなさいね、ヘスティア。私たち、気になってついてきちゃったの」
「はなしてくだ……」
女神たちに押しつぶされ逃げようともがき一人の女神の胸元へと飛び込んでしまう
「あらやだ、かわいい~!」
その様は羨ましいやら、巻き込まれないほうが良いやらそれは当人によって違うだろう
「まったく、心配になってみてみればこのありさまか…【
「っ!行くよベル君!」
何処からともなく表れた不可視の壁が現れ、
その後も娯楽に飢えた
その翌日の探索でのこと、彼らはモンスターに囲まれていた
「ベル様!足元!」
「っち。【
リリルカが一本のナイフを振り払う。それと同時に発生した火炎がモンスターを薙ぎ払う
即座に仕留めきれなかったモンスターを倒しひと時の休息を作る
「リリ、さっきのって、もしかして『魔剣』?本当にありがとう。何だかすごく嬉しかったよ」
「っ!?べ、別にベル様を助けようとしたわけじゃないんですからねっ!」
「ベル様がいなくなったらリリの収入が減るからこうしたまでです!か、勘違いしないでください!」
…これが神々の言うツンデレってやつなのか
「あの…明日一日、お休みをいただいてもよろしいでしょうか?」
「いいけど何か用事でもあるの?」
「ファミリアの集会があってどうしても出席しないといけなくて…契約違反なのはわかっています。ペナルティはお受けしますら…」
「え?いいよそんなこと!」
「事情のあるならば問題ない。さぼりであれば許さんがな」
「体調が悪いとか休みたいときはいつでも言っていいからね」
「……」
「ベル様、どうかされましたか?」
探索を終了しオラリオの街を歩いているとベルは視線をわずかに上げ会話から外れる
それに気付いたリリが何かあったのかを確認する
「あ、いや。バベルって何でこんなに高いんだろ~って、ちょっと思っただけなんだ」
「ベル様もご存じの通り、バベルは空いたスペースを貸し出していますが、それは20階までです。その上は、神様たちが住まわれているんですよ」
「え、そうなの?」
「
「うーん、そういう神様たちの話を聞くたびに思うけど、『天界』ってそんな暇なところなのかな?神様たちが下界へ降りたいと思っちゃうくらい?」
「どうだろうな。降りてきたほとんどの神が娯楽を求めて来たみたいだしな…」
「お仕事が嫌になって逃げだしてきたのかもしれませんよ?」
「それって…」
「はい。亡くなった人の、死後の進路ですね。まぁ最終的にはほとんどのものが転生させてもらえるようなのですが…」
「でも、リリは死ぬことに憧れていたことがありましたよ?」
「…え」
「1度、神様たちのもとに還れば、今度生まれるリリは、いまのリリよりちょっとはマシになっているのかなぁ、なんて」
「死後の世界か…私も憧れていた時期があったな」
「イクス様でも考えることがあったのですか?」
「私をどのように考えてるかは知らんが、あったよ。まぁ考えるだけ無駄だったがな」
「それってどういう…」
「暗い話になっってしまったな」っと話を打ち切り、別の話題に転換する。やれ、どこの店が安いのか、あそこの店はぼったくりだと、先ほどまでの二人の様子から一転した様子に先ほどのことは夢だったんじゃないかと狐につままれたように感じた
その後、弁当を返さなければと二人で別れて、そこである本を借りることになる
「えええええええ!?」
ベルのステイタス更新のため外で待機していると大声が聞こえてくる
なにがあったのかと急いで飛び込むと、どうやらベルに魔法が発現したようだった
「【ファイアボルト】。まさか『魔法』まで発現しちゃうなんて…」
「か、神様…魔法、魔法ですよ…!僕、魔法を使えるようになりましたぁっ!」
「これはボクの推測だけど、この文面からすると、君の魔法は詠唱がいらないのかも」
「無詠唱だと?さすがに初めて聞くな…」
「ま、とにかく明日、ダンジョンで試し撃ちでもしてくるといいさ。慌てなくても君の魔法は逃げたりなんかしないぜ?」
魔法の発現がよほど嬉しかったのかその日の夜に二人が寝静まったことを確認してダンジョンへとベルは向かう
「見てたんなら止めてくれても良いんじゃないかい?」
「こちらの発言だぞ」
だが、二人は出ていったのを確認すると起き上がった
「まったく…後で回収することを考えてほしいものだ」
「そう考えてるのに止めなかったのはなぜだい?」
「…私がアイツでも同じことをしたかもしれないからな。それと──貴様に聞きたいことがあった」
それが本題だと、そのためにベルをわざわざ見逃す真似をしたのだとその目が告げる
「ベルの急成長についてだ」
「やっぱり、分かるかぁ」
「さすがに毎日見ていればな…」
隠すことは無理だと悟りイクスに【
「それがアイツの急成長の理由か」
「ほかの、特に神には話さないでくれよ?」
「分かっている。そうなると問題になるとしたら器ではなく中身か」
「?…どういうことだい?」
「知識や技術、恩恵にはあらわれない部分だな。今の内なら問題ないだろうが、どこかでつまずくだろうな」
「君はベル君にそれを教えてくれるかい?」
「善処はしよう。──だが、私は教えるが下手くそらしい」
「自信満々に言わないでくれるかい!?」
教えを請われたが内容があまりにもだった為、ぶち切れられた過去を持っていることを聞かされたヘスティアはベルの成長に対して一抹の不安が走るのであった
「ああ、そうだ。イクス君、これ」
黒色の籠手を手渡す
「これは?」
「ベル君にはナイフを上げただろ?だからイクス君には盾を用意したんだ」
「盾?お前の目は節穴か?」
「そんなはっきり言わないでくれるかな!?これは盾なんだよ!…君は自分の体に頓着しないから、少しでも身を守ってほしいんだ」
ヘスティアは知っている。スキルもあるが耐久の値が以上に高いことを。怪我をしたときに誤魔化していることを。神に嘘は通じない。だからヘスティアはそのことが心配になり盾を用意したのだ
それを聞き感謝を述べながらベットに戻る
流石に無茶を減らすかとその一歩としてさっさと寝ることにしたのだ
「うぐぅぅ~ぅ~…ま、また逃げちゃった…ボクのバカバカぁぁ~っ」
「今度はベルの方か。ほれマジックポーションだ」
「なんだいベル君。悪い夢でも見たのかい?昨日読んでた、この本のせいじゃないのかい?」
今朝から唸るベルに起こされ、イクスは魔法の使い過ぎではと疑い、ヘスティアは心当たりと言わんばかりに本を取り出し読んでみる
「うわ!」
「へ?」
「これは…
「そう。読むだけで、資質に応じた魔法が発現する本…これ、いったいどこで手に入れたんだい?」
「酒場で、借りたんです。だれかのわすれものだから、 読んでみればって…」
「誰かの忘れ物ぉ!いいかい、ベル君。
「なっ…!とにかくっ、謝って弁償しま…」
「無理だ!
「しかもこれは、使用可能時を見ていないからしっかりと判別できないが一級品では?」
その言葉から自分には想像できないほどの金額だと思いいたり顔を青くする
即座に豊穣の女主人へと駆け出した
「すいませんすいませんすいませんすいませんすいませんっ!」
「それは大変なことをしてしまいましたね、ベルさん…」
「ちょ、シルさん、何さも他人事みたいに言ってるんですか!?」
「やっぱりダメですか?」
「すっごくかわいいけどダメです!」
「忘れな」
「ミアさん?で、でも…」
「読んじまったもんは仕方ないだろ。こんなシロモノ、置いていくやつが悪いんだ」
「…そうだな。そもそも
「イクス!?し、しかしですね…」
証拠隠滅の段取りを始めたミアとイクス。それに口を挟もうとした瞬間、二人から睨まれる
ベルは慌ててダンジョンに行くと逃げ出した
「弁償が必要になったらウチで働いてくれてもいいんですよ?」
「断る」
「アタシとしてもそっちの方が助かるんだがねぇ」
分が悪いと感じたのかベルを追うように逃げ出すイクス
ヘスティアファミリアの眷属たちは豊穣の女主人に弱かったのであった