偽アルトリアinアストレアファミリア


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作:ほんわか抹茶オレ
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8.偽アルトリアの過去


 ヘルメスは心から告げるように少しだけ固い口調で話し出した。

 

「君が居なければ世界は滅びを迎えていたかもしれない。神の不始末を下界で生きる君に押し付けてしまったことを全ての神を代表して謝罪する」

 

「最終的に了承したのは私です。詳細を初めから教えなかった点を除けば不満はありませんが、謝罪をしたいというのならば受け取っておきましょう」

 

「ああ、感謝するよ」

 

 一年前にオラリオへ今まで断交をし続けていた『オリンピア』からの使節団が到着した。

 その内の一人がオラリオの冒険者から暴漢被害に遭い、それから助けてみれば、やれ「美しい」だの「格好いい」だのという褒め殺しをされ気分はアゲアゲとなり、ポーカーフェイスをしながら調子に乗っていると、気付けば船の上で『オリンピア』へ輸送されていた。

 

 『オリンピア』を説明すると、炎の化け物が闊歩するイカレた国である。

 その国の良く分からん奴らが個人的な理由で敵対してきて、そいつらのまとめ役が復讐に燃える褐色のファンキージジイ神官長だったりと情報量がヤバイ。

 

「(さらに、追加で黒くて速い例のアレも出てきたりなどして、マジふざけんな案件でしたね。

 現れたと同時に空中へ斬り飛ばし機動力を無効化しつつ、魔力放出の加速で空中コンボの滅多刺しで完封しましたが、判断が一秒でも遅ければあそこに居た神共々周りの人が殺されていました……いや、もう本当にバカ)」

 

 こちとら、ベル君が出てくるの待ってオラリオで過ごしてるのに、余計なものを持ち込むんじゃない。まだ時間があるなら先送りにしてベル君に押し付けようよ。こちとら、主人公じゃなくてヒロインなんだからさ。

 ……いや、ヒロインでもなくなったけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの戦いは誰が見ても英雄譚として相応しいものだった。特に、エピメテウス相手との問答は格別だったよ。

 間違いなくあの戦いを伝記に記せば、君は世界中の人や神から『今代の英雄』と呼ばれることだろう」

 

 英雄の戦い。

 その一幕としてあれほど相応しいものはないだろう。神が地上へ降り神時代(しんじだい)に突入し、様々な強者が生まれ冒険をし、戦いを演じてきたがあの戦いは格別だった。

 だからこそ、この俺、神ヘルメスは君を世界に認められる英雄にしたい。

 

 君こそが神々の求めた『最後の英雄』に相応しいと。

 

「それこそ、(かつ)ての栄光を取り戻すこともできる。『騎士王』、アーthr「黙れ」……!」

 

「……ッ!!」

 

 その声には凄まじい気迫が乗っていた。神である自分が動揺してしまう程のものがその声にはあった。

 次の瞬間には彼女から剣を向けられることになるかもしれないのだから、俺の(かたわら)らに控えているアスフィが動けなくても仕方がない。

 それこそ、目の前に居るのが人ではなくドラゴンだと言われても、納得できるほど圧倒的な圧迫感。

 俺はおろかアスフィよりも10センチは小さい背丈から、発せられるようなものではない。まるで地面に這いつくばる蟻を人が見下ろしているかのようだ。

 

「私にその気はありません。私はアルトリア・セイバー。剣を手放すことができずにいる騎士崩れの冒険者です。

 そして、私は貴方のようなキングメーカー気取りの魔導師を知っている。その者に全ての責任を押し付けるつもりはないが、傍観者のまま全ての滅びを見過ごしたあの者と類する貴方を、信用するほど私は寛容にはなれない」

 

 そう言うと、彼女は仲間の方に歩いていく。どうやら話を聞いてくれるのはここまでらしい。

 ならばと、最後に声をかける。

 

 

 

「アルトリア君、『最後の英雄』は君かい?」

 

()()()

 

 

 

 急にそんなことを言い出した俺の言葉を、彼女はノータイムで切り返した。思わず目を見開くと彼女は振り返らずに声を発した。

 

「私は仲間を見捨て生き残った敗残兵です。英雄などと囃し立てられる資格などありはしない」

 

 

 

 

 

 

 

 そう言うと、今度こそ立ち止まること無く彼女は歩いて行った。まるで、そこにある感情を全て切り離してしまったかのように浮世離れしている。

 俺は帽子を深く被り、胸の内に溜まった思いを口に出した。

 

「あー、振られてしまったか……今のは少しばかり急いてしまったな。やれやれ、このヘルメスともあろうものが恋する少年のようなミスをするとは」

 

「ふぅー……、本当にいい加減にしてくださいヘルメス様。彼女が感情のままに剣を振るうとなると、私の小細工ごと私共々ヘルメス様も斬り捨てられます」

 

 アスフィの額から流れる汗と青ざめた顔を見なかったことにする。本来ならば腰が抜けて立てなくなってもおかしくなかった。俺からすれば彼女の奮闘は充分過ぎる。

 

「いやー、悪いなアスフィ。でも、そう言う意味じゃ彼女はこれ以上無いほどに信用できるだろ?相手は『オラリオ最優の騎士』なんだから」

 

「必要以上に彼女を利用しないでくださいね。アストレア様もそうですが彼女も無礼な者と私欲を優先する者には容赦がありません。彼女と戦うなど私はごめんですよ。

 彼女がこちらに剣を向けるときは、ほぼ間違いなく私達に誤魔化しきれない落ち度があるときなんですから。実力どころかやる気もどん底なんて敗北以外の道がありません」

 

 『最優の騎士』。

 騎士による伝説はいくらでも残っていることから、夢見がちな少年少女には憧れを抱くものも多い筈だ。だが、冒険者として生きる者からすればいけすかないと嫌悪感を抱く者も居る。

 その理由として、冒険者には冒険者としての誇りがあるからだ。冒険者でありながら騎士と呼ばれる者を、スかしていると罵倒する者達も実際に存在している。

 

 しかし、彼女を見てその言葉を言い続けることは難しい。何故ならば、その振る舞いを見て猿真似など言えるものは誰も居ないからだ。

 このオラリオに来てからはそのような理由で何度も絡まれたらしいが、その(ことごと)くを打ち破り、現在彼女はオラリオ最強の一角として君臨している。

 

「彼女こそ『最後の英雄』として()()()()、か。まあ、彼女に対して神々(俺達)がそう言っても、確かに侮辱としてしか受け取られないだろう。

 それこそ、俺達は彼女に対して勝手に『失望』したのだから」

 

 『ブリテン』。その地は神々にとって『オリンピア』と同じくらいか、それ以上に重要な地だった。

 

「──『ブリテン』に世界を救う『騎士王』が誕生し、『約束された勝利』がもたらされる──。それは、絵本にされて世界各地に広まるほどに有名な予言だ。

 どの神がそれを言ったのかは不明だが、実際にあの地で生まれた王族には『聖剣』とその『鞘』を扱うことが可能だった。だからこそ、神々は待ちわびたんだ。その『騎士王』の誕生を」

 

 そして、その王が生まれた。

 

「王族にしか抜けない『選定の剣』を抜き、新しい『ブリテン』の王と君臨した『アーサー王』は、どの時代の『ブリテン』の王よりも正しく強くカリスマがあった。

 聖都も今まで以上の発展を遂げて、『ブリテン』は最盛期を遂げたんだ」

 

 だからこそ、『最後の王』が女性で『ブリテン』が幕を閉じたと知れ渡ったときは、神々は驚愕したのだ。最高の王が生まれたにも拘わらず何故だと。

 

「『アーサー王』の情報を調べて出てきたその情報に、どの神々も侮蔑の感情を抱いた。何故ならば、今代にして最後の王である『アーサー王』は女の子だったからだ」

 

 女が『王』として君臨することなど、『ブリテン』の歴史では一度たりともありはしなかった。それが他でもない『ブリテン』の習わしだったからだ。

 

 

 

「神々は思ったんだ『「ブリテン」が滅びを迎えたのは騎士王を騙るその魔女のせいだ』、とな。」

 

 

 

 神々からのアルトリアの評価は最低値だった。

 

「『ブリテン』の玉座は栄光そのものだ。だからこそ、王族の中でも誰がなるか常に揉めに揉めていた。実際に自分が王となるために他の候補者達を暗殺することも、平然と行われていたらしい。

 だからこそ、『アーサー王』はそのような謀略を企て王冠を奪い取った偽物の王であり、実際の王の資格を有しはしない暗愚だったとして神々では侮蔑の対象となった」

 

 実際には王族の者が共倒れをしたことと、『選定の剣』を抜けたのが彼女だったからという純粋な理由だったのだが、その事実を明言できる者が誰一人として存在しなかった。

 

「モンスターやピクト人・サクソン人によって蹂躙された『ブリテン』は、世界から完全に消え去ってしまった。予言の『約束された勝利』はこのままでは消え去ってしまう。

 そう考えた神々はその唯一生き残った魔女を、『騎士王』を誕生させるための子供を産み落とす道具にしようとしたんだ」

 

「な……ッ!?」

 

 アスフィは同性ということもあり、その残酷さに身の毛がよだつ。人権を奪われ『騎士王』として()()()()子供ができるまで交配され続けるなど、女として地獄以外の何物でもない。

 

()()()()()()()()()()()()()()()などと言われていたな。俺としても非道の限りを尽くしたのならばそれも報いだと思っていた。

 たった一人の強欲が国を滅ぼしたのなら、せめて『騎士王』だけでも誕生させるべきだろうと」

 

「……しかし、彼女は強く真実は違った」

 

「ああ、『ブリテン』が滅んだのはアルトリア君のせいじゃない。先王ウーサー・ペンドラゴンの失態だ。

 ───まさか、オラリオを含む様々な国の冒険者を、国庫を切り崩してまで派遣し続け、幾度の勝利を収めることで、自分こそが『約束された勝利』をもたらす『騎士王』なのだと誇示するつもりだったとはな」

 

 『アーサー王』が国を治め出してから不安定となるのも当然だ。彼女が王になったときには既に国庫は尽きていたのだから。

 

「俺の調べたところによると、彼女が王として載冠してから一月経たずに、『ブリテン』は滅んでもおかしくなかった。

 よくあの状態で一年も持ち堪えたと俺は彼女を評したい。『ブリテン』が維持できたのは彼女の類いまれなる手腕とカリスマによるものだ。

 さらに、彼女を道具にしようと企む神意を全て潜り抜けてきた事実が、彼女が予言の『騎士王』であることを証明している。

 そもそも、男が『騎士王』だ。なんて予言のどこにも言われていないんだ。誰も彼もが皆、勘違いをしていたということさ」

 

 俺がおどけたように言うとアスフィは細い顎に手を添えて思案する。

 

「……ならば、何故『ブリテン』の王を女王と取り決めなかったのでしょうか?そこまでは預言者も見通せなかったということですか?」

 

 アスフィが訝しげな顔をする。そう思うのも当然ではあるが……。

 

「さて、それはどうだろうな?『ブリテン』はモンスターやピクト人・サクソン人が昔から攻め込んでくる危険地帯だ。『ブリテン』を治める王が玉座から離れていい期間は、かなり少ない期間なのは分かるな?」

 

「ええ、オラリオの外でありながらダンジョンと近しいほどに、『ブリテン』ではモンスターが湧き出ていたらしいですからね」

 

「『騎士王』となる子供の誕生が『ブリテン』の存在意義と言ってもいいことから、女王は当然子供を孕む必要がある。

 となれば、出産をするために戦場に出ることはもちろん、国を統治することも難しくなる訳だ。その間に戦で負け続けることや裏切りが起きて国が分裂したりなんかのリスクを考えれば、女王が『ブリテン』を治めることは極めて難しい」

 

「なるほど、確かに他の安定した国ですら女王君主制は難しいでしょうからね。常に戦乱の『ブリテン』ではさらに輪を掛けて不可能であると」

 

 『騎士王』が生まれる前に『ブリテン』が滅びる可能性が極めて高くなる。そうなっては元も子もない。

 そこまで考えてアスフィはハッとしたように顔を上げる。

 

「……ということは、最初から『騎士王』が生まれることは実質不可能だった?」

 

「ああ、矛盾だらけの無理難題さ。『騎士王』は女でなければならないが、国を治めるのが女王となれば『ブリテン』は確実に滅ぶ。だから、彼女は奇跡の存在なんだ」

 

 『騎士王』が誕生する土台の作成方法が無いのだから、正しく詰んでいると言ってもいいだろう。

 

「ブリテンが滅んだ理由は、アルトリア君が『湖の乙女』で儀式をするため、『ブリテン』を一時的に離れると同時に、ピクト人・サクソン人が攻めてきたことだ。

 王を失った『ブリテン』の円卓はすぐに綻びを見せて瓦解し、彼女が戻る一週間後を待たずして彼の地は滅びることとなった」

 

 『湖の乙女』は『ブリテン』の王として、必ずしなくてはならない儀式だった。その期間を付け込まれたのだ。彼女からすれば役目を果たして戻ってきたときには、『ブリテン』は滅んでいたのだからどうしようもなかっただろう。

 

「……国と民を滅ぼされて『騎士王』と呼ばれるなんて、随分と皮肉の利いた話ですね」

 

 アスフィはアルトリア君が決められた運命の果てに、『騎士王』の座に収まったと思っているようだが、俺の意見は違う。

 

「(まあ、それは今言うことじゃないか)」

 

 これから先は裏付けの取れていない、陰謀論に近い俺の推測。蛇足もいいところだ。

 

「だからこそ、アルトリア君は神々(俺達)の求める『最後の英雄』に成ろうとしない。誰よりも英雄の資質があるにも拘わらずな。

 まあ、『オリンピア』の事をあるがままに書き記さないように言うのは別の理由からだろう」

 

「英雄エピメテウス……彼と彼女は何もかもが違いましたからね。ぶつかり合うのは必然だったのでしょう」

 

 あの戦いの醍醐味はそこだった。古代の英雄と今代の英雄。

 その両者が剣を交わしながら互いの言葉をぶつけ合ったあの場面を、書き残して後世に伝えたいと願う俺の気持ちも少しは汲んで欲しいところだ。

 

「まあ、そこら辺は加筆して誤魔化すさ。俺としては彼女の名を『騎士王』として定着させる好機だと思ったんだけど、心労が溜まる方を選ぶのは英雄の(さが)かな」

 

 明らかな嘘は神ならば下界の子供を通して見破るだろうが、真実を削りつつ事実を書けば気付ける者などそうはいない。

 

「今回はアルトリア君のご機嫌取りを優先して、『神プロメテウスが与えた英雄エピメテウスが使用した神創武器、「神の腸を啄む鷲」がエピメテウスを三千年の間生かし続け、「オリンピア」から下界に溢れようとした「穢れた炎」を封印していた。

 そして、三千年の時を経てアルトリアと共に「穢れた炎」から世界を救った』という風に変えておこう」

 

「なるほど、彼女達の問答は失くなりますが問題はありませんね。嘘は書いてませんから」

 

「俺としては彼女の自信喪失をどうにかしたいがな。『約束された勝利』も『オリンピア』で為し得た。名実共に『騎士王』と呼ばれてもいいだろうに」

 

「国や民、そして部下や仲間を置き去りにして生き延びたというのは、戦うことを止めるには充分過ぎる理由かと思います。

 ……団長としてファミリアの団員を犠牲として許容するときのあの苦悩を、国単位で背負わされ続けるなど私には想像もできません。今尚、逃げることなく戦うことを選び続けるのは尊敬に値しますよ」

 

「アスフィは彼女と同じ元姫様だからなぁ。共感できる部分があったりするのか?」

 

「まさか。ヘルメス様に塔から連れ出されオラリオに来た私と、全てを失いオラリオへ来ることになった彼女とでは、辿ってきた道のりが全く違います。

 その上、彼女はマーリンによって幼少期から剣の鍛練をし、王となってからは男装をして過ごしていたと聞きますから、私と共通することなどそれぞれの国で王族だった、ということでしかありませんよ」

 

 籠の中の鳥と、戦いに明け暮れる獅子とでは比較対象にもならない。救われた自分と救われずもがき苦しみ続ける彼女とで、比較するなど烏滸がましいとでもアスフィは言いたげだ。

 そんな彼女を見て話を変えるように、俺は殊更(ことさら)明るい声を出した。

 

「いやー、それにしてもレオンも可哀想だよ。彼はアルトリア君をなんの打算も無く好きになったにも拘わらず、『騎士王』を産ませるための『魔女』として利用しようとした、一部の神々のせいでアルトリア君に警戒されてしまったのだから」

 

「……『Lv.7』の冒険者同士の子供ならば、最高の英雄である『騎士王』が産まれてもおかしくはない、ということですか。動物の交配実験のようであまりいい気はしませんね」

 

「ようで、じゃなくてそのまんまの意味だろうな。『黒き終末』が存在している以上は下界に真の平穏はない。そのためならば、必要な犠牲と神々は考えている。

 それこそ、彼女の姿をオラリオで見ていない外の神々は、アルトリア君の功績を『全ては騙し取った聖剣の力によるお陰だ!』なんて言っているようだぞ?」

 

「……人の心がありませんね」

 

「神だからな」

 

 とはいえ、俺も全ては否定できない。世界と一個人を秤に乗せることなどそもそも無意味だ。

 アスフィ達下界の子供から見れば外道でしかないかもしれないが、神々の視点ではそんなことは当たり前のことでしかない。

 まあ、彼女の在り方を見れば考えは変わるが。

 

「アルトリア君を救うことができる英雄はいない。何故ならば、彼女こそが英雄そのものだからだ。可能性が唯一あったレオン・ヴァーデンベルクも、水面下で動いていた神々の策謀によって手を引く以外の道がなかった。

 茨の道を血塗れになりながら進み続け、誰かに手を差し伸べるその姿はまさしく聖人そのものだ。

 無私無欲で救済し続ける彼女こそ『騎士王』の名に相応しくはあるが、あれは人が歩み続けていい道じゃない。壊れていないのが不思議なくらいだよ」

 

 俺の手練手管もアルトリア君には通じない。彼女が信用する神はアストレアだけだからな。俺の善意も打算によるものだと完璧に見破られているのだから、そもそも反論のしようもない。

 レオン以外で唯一彼女と並び立てるオッタルも神フレイヤに全てを捧げていて、彼女を救おうなどと思う筈がないのは自明の理。

 端的に言ってどうしようもない。

 

「……俺がエピメテウスの名誉回復のために彼女の要望通りの伝記を残したとして、彼女が俺に好感を抱くと思うか?」

 

「私にそれを尋ねている時点でご自身で理解できているでしょう?彼女は「穢れた炎」を浄化した報酬として、言外にヘルメス様へそのようにするよう要求しています。

 元を辿れば彼女を『オリンピア』に行くように口添えをし、()()()()()も折り込み済みだったヘルメス様への要求としては、相当に甘い対応です。

 …………いえ、それどころか言葉にしなければそれすら理解できない愚かな神であるならば、二度と関わるつもりは無い……ということかもしれませんね」

 

「『契約』などいちいちしなくともそれぐらい読み取れ……ということか。やれやれ、神を試そうとするなんて悪い子だ。

 幾ら頭を下げようと神の負債を代わりに精算させてしまったことを考えれば、釣り合いなど取れるわけも無いのは当然だけどな」

 

 騎士としてどこまでも清く強く正しく、王として冷徹に盤面を見下ろす聡明さも宿している。

 『騎士王』の名に全くもって見劣りしないその立ち振舞いを知れば、『魔女』などと揶揄する神は無能の(そし)りを受けるの必然だ。

 

「王の君命だ。どれ程の月日が経とうとも、俺達でエピメテウスとその仲間の名誉回復に尽力しよう。でなければ、アルトリア君にボコボコにされるぞ。俺が」

 

 神だからと言ってそこのところを容赦するようなタイプには見えない。割とマジで。

 とはいえ、これは一日、二日でどうこうできるものではないのだから、長い年月が必要となるのは目に見えている。ならば、直近で見れるものを見ることにしようか。

 俺の最有力の第一候補はアルトリア君だが、他に芽がないことはない。これから一体どのようなことを為すのか、何もかもが未知数なことを踏まえれば、彼女よりもその歩みが楽しみであると言える少年。

 笑みを広げながら俺は遠くを見て呟いた。

 

 

「さて、あなたの孫はどのような成長を遂げるのか。特等席から見させて貰うことにするよゼウス」

 

 

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