偽アルトリアinアストレアファミリア


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作:ほんわか抹茶オレ
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5.裁判は粛々と行われる


「えー、それでは裁判を始めるわね。今から言うことに虚偽または欺瞞は許されません。そして、被告人の人権を守るために被告人は黙秘権の行使が認められています。

 では、今から厳正な裁判を取り仕切るため裁判官達は誓いを立てて貰います。裁判官は良心に基づき【正義】に準じた判決を下せますね?」

 

「「「「はい、我らの【正義】の名の下に!」」」」

 

「な、なんですか!?そのフレーズは!?今まで一度たりとも聞いたことがありませんが!?」

 

 現在、アストレア・ファミリアのホームでは椅子にくくりつけられたリュー・リオンが、机やらなんやらを周囲に並べられて尋問……というか裁判にかけられていた。

 

「待ちなさい!いろいろおかしい!なぜ問答無用で裁判が始まっているのです!普通は話を詳しく聞いてからするものでしょう!?

 そして最大の疑問点は……なぜアストレア様までこのようなことに加わっているのですか!?」

 

 潔癖なエルフがここまで取り乱すのは、なかなか見ることができないのではないだろうか?それだけファミリアの仲間に心を開いているという事実にほっこりする。

 ……当人は気が気ではないだろうが。

 

「だって、あのリューに春が来たって話のようだし私としても気になるところよ?可愛い眷属の旦那様になるかもしれないわけだしね?」

 

「だ、だだだ旦那ッッ!?!?!?ち、違いますアストレア様!彼とはそう言った関係性ではありません!」

 

「ほほう?では、どう言った関係性なのか根掘り葉掘り聞かせて頂きましょうか?」

 

「つーか、あの少年歳はリューと比べて幾つ下なんだ?14、15ぐらいなら絵的にちょっとまずくね?」

 

「ま、待て輝夜、ライラッ!私は今違うと述べたでしょう!冤罪だ!」

 

「大丈夫よリオン!冒険者なんだし双方が納得していれば良いと私は思うわ!」

 

「アリーゼ!?」

 

 信頼している人間からとんでもないフォローをされて動揺が隠せていない。そりゃそうだ。

 輝夜はアリーゼに顔を向けて彼女に問い掛けた。

 

「……明らかに女性慣れしていない少年を二十代の女が手篭めにするのは、団長的にはセーフということでよろしいのですか?

 ここは一人の仲間としてではなく、【正義】の眷属として判断するべきかと思いますけども」

 

「輝夜ッ!いい加減にしなさい!私はそんな不埒なことなど決して───」

 

「ごめんなさいリオン。私には分からないわ」

 

「アリーゼ!?」

 

 驚愕による驚愕。過去一番の混乱がリュー・リオンを襲う。常として朗らかな笑顔を浮かべるアリーゼ・ローヴェルが、沈痛な面持ちで顔に影を差しているのだからその衝撃は計り知れない。

 

「それより、なぜこの場にアストレア・ファミリアの全員が集まっているのですか!町の巡回の途中でしょう!?

 オラリオの治安維持のために活動する私達がこのようなお遊びをしていていい筈がない!」

 

 それはそう。町の警備が急に薄くなれば混乱するのは当たり前だ。少なくない波紋を生み出すことになるのは間違いない。

 リューが言ったようにこのようなお遊びで職務を放り出すなど、余りにも馬鹿馬鹿しい。

 

 

「いえ、心配ありません。しっかりと手は打っています」

 

「副団長!?」

 

 

 ──ので、その辺りの不安要素は完璧に対処している。

 

「ガネーシャ・ファミリアに行きアストレア・ファミリアの巡回要員を補充して貰いました。混乱は最小限です」

 

「い、いや、同じくオラリオの治安維持を任されているファミリアですが、必要以上に借りを作るのは良くないのでは?

 このようなお遊びでファミリアにとって不利益になるようなことは避けるべきかと……」

 

 一見、言い逃れのための言い訳にも見えるがリューの言っていることは間違っていない。それどころか正論も正論である。

 何よりあの厳格なシャクティがこのような突拍子もない話で、自分のファミリアを動かすわけがなかった。本来ならば断られるのがオチだが……。

 

「七年前のアーディを救った借りをシャクティに取り立てたところ、すんなりと了承してくれました」

 

「人の心は無いのですか!?」

 

 最初は無茶な頼みに眉を潜めていたシャクティだったが、恩着せがましく妹を救ってやった事実を口に出してあと、今のガネーシャ・ファミリアがどれだけアーディのアイドル性で、オラリオの住人からの支持を受けることになっているか等々(などなど)、一つ一つ丁寧に言うと、目を覆ったあとに深いため息を吐いて納得して貰った。

 この高スペックな身体を十全に使って今までアホほど人助けで貸しを作ってるため、大概のオラリオの冒険者はこれでどうにかなる。……まさに外道!

 

「(というか、割りとマジで焦ってるんだよなぁ。なんでベル君から惚れられてんのさ。物語の根幹だよそこ)」

 

 憧憬一途(リアリス・フレーゼ)

 この【スキル】によってベル君は、立ち塞がる様々な困難や逆境を乗り越えることになる。フレイヤの魅了無効化の側面もあるにはあるが、やはり成長チートがこのスキルのヤベーところだろう。

 

「(半年どころか冒険者になって5ヶ月足らずでLv.4は頭おかしい。なんで特典有りの私よりも成長スピード早いの?おかしくない?)」

 

 まあ、色々とこっちにも事情があるのだが、それを抜きにしても成長スピードがおかしすぎる。そりゃあ、やっかみも受けるってもんよ。

 

「(そこはアイズでしょ?アイズからベルに想いを寄せられてる唯一の存在っていうアドバンテージ奪うとか、アイズの存在意義を奪う気なの?あとに残るのは不穏な出生だけだよ?)」

 

 下手すると修羅が生まれ落ちるのではなかろうか?ダンメモのデート・ア・ライブの闇落ちアイズみたいな……。

 

「(というか、ここに『TSオリ主アルトリア顔騎士王』とかいう、完璧で究極な最強ヒロイン居るんだからこっちに惚れろやッ!!

 せっかく人が【~ベルくん英雄への道~RTA】組んでたのに全ておじゃんだよ!!適度にモチベーション上げるための餌付けのシチュエーションとか、曇らせ展開を考えてたのにぃ……)」

 

 信じてた女友達に裏切られる心境ってこんな感じなのだろうか。女の子って怖い。

 

「(はいはい、居るよねー。私、男に興味ありませんみたいな顔して男作るやつ。リューは『くっ殺』ムーブといい本当にそう言うところだよなー。かーっ!卑しかエルフばいっ!)」

 

「彼とはバベルの噴水広場で会い、見ず知らずの私の落とし物を届けてくれた優しい心根のヒューマンです」

 

「ほー、それが馴れ初めってことか。なかなか、ベタなシチュエーションだが噴水広場っていうのはわるくねえな」

 

「ああ、リューがその少年を逢い引きへ誘うときに、あの噴水広場で待ち合わせってなれば条件としては最高なんじゃないか?」

 

「ネーゼ!貴方もか!?なぜ私に下心があるのが当然かのように話すのです!私は今までそのような言動をしたことがないでしょう!?」

 

 狼人(ウェアウルフ)のネーゼが頷きながら賛同している。やっぱり、わざわざ言う必要はないけど全員がリューをからかってるな。

 ……私は割りとガチでやってるんだけど……。

 

「もしかしてなんですけど、忘れ物を届けてくれた彼がリューに手で渡すときに、意図せず手と手が触れて……とか……」

 

「いやいや、相手はあのリューだよ?不慮の事故でもぶっ飛ばされるでしょ。私達みたいな同性の同じファミリアの仲間でも団長以外は今でもダメだしね。

 潔癖なエルフの(さが)なんだろうけど、面食いよりも遥かに人選ぶからねー。リューの色恋は他の人よりも色々とハードルが高いよ」

 

 アスタは少し照れ臭そうに先の展開を話し、ノインは頬杖を突きつつ笑いながら訂正する。なんかもう、好き勝手言いまくりだった。

 やれやれ、と私は俯瞰して状況を理解できてますアピールをしていると、はたとして気付く。リュー・リオンの視線が忙しなく動いていることに。

 

 

 

「どうかしたのですかリュー。かなり動揺しているようですが」

 

「い……いえ、お気になさらず……」

 

 

 

 ───その時、アストレア・ファミリアに電流が走る。

 

 それは、あり得ない想定だった。

 彼女のことを知っていれば馬鹿馬鹿しいと一笑に付してしまうような、そんな荒唐無稽な話だった。

 しかし、この七年間で更にリュー・リオンという仲間のことを知った彼女達は、その反応がリューが何かを誤魔化すときの反応だと看破していた。

 【正義】の眷属として誰よりも真っ直ぐ在ろうと在り続けた彼女に嘘はつけない。そもそも不器用がエルフの皮を被ったような存在なのだ。すぐにバレる。

 だからこそ、今の話を繋げてしまえば答えなど分かりきっていた。

 

「え?嘘……触ったの……?」

 

「しかも、投げ飛ばさなかった……?あのリューが……?」

 

 一拍の間が空く。

 そして、爆発したかのように黄色い声が飛んだ。

 

 

「「「「きゃあ~~~~ッッ!!!!春よ!リューに春が訪れたわー!!」」」」

 

「!?」

 

 

 キャーキャーと、今までに無い程の騒ぎに中心のリューは目を白黒していた。今の光景は彼女の予想の範囲外だったのだろう。そんな彼女を尻目に周囲はますます盛り上がっていく。

 

「『婚約してもいない男女が口付けをするなど不潔だ!』なんて、残念極まることを平然と言ってるリューに春が来たわよ!号砲!号砲ーっ!!」

 

「生涯喪女確定ルートから分岐に入れたのねリュー!同族のエルフからも『え……?こいつの価値観私達から見てもヤバくね?』って、思われる現状からようやく脱却できるわね!」

 

「な……っ」

 

 今だ嘗て無い程に盛り上がるアストレア・ファミリア。歓声がホームをこれ程揺らしたのはいつ振りだろう。

 それにしても、リューに対しての評価が酷すぎるが、同族から言われていることからも分かる通り、彼女がかなりアレなのは確定である。

 

 

 

 

 ───ここで面白い情報を載せておく。

 アストレア・ファミリアの眷属達はこの七年の間も歩みを止めず、オラリオの平穏のために身を粉にして尽くし続け、そのひたむきな献身は彼女達を更なる高みへと押し上げることとなった。

 

 

 アストレア・ファミリアは団長のアリーゼ・ローヴェル、リュー・リオン、ゴジョウノ・輝夜の三名が、『Lv.5』の位階に到達したのだ。

 

 

 これはオラリオ二大派閥として君臨する、ロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアの眷属と比べてしまえば、Lv.5 の人数が少ないと言わざるを得ないが、彼女達の役目はダンジョンの攻略よりも都市の治安維持に重きを置かれており、偉業を為しにくい事実を鑑みれば充分以上の功績だと言えることだろう。

 そして、無事に第一級冒険者の仲間入りを果たした彼女達は、名実共にオラリオを守る砦として町を取り締まっている。

 その事実は彼女達の誇りとなって更なるモチベーションに繋がっていた。

 

 しかし、強くなった彼女達に近付く男達は比例するように減り続け、逆に近付いてくる男はロクでもない奴らばかりが増えてしまったのだった。

 

 だからなのか、神アストレアは男性の冒険者を眷属としたことはこれまで一度もない。

 

 それは、美しい彼女達に近付くため眷属になろうとする冒険者が余りにも多かったからだ。そのような者に【正義】の眷属たる資格が無いのは道理であった。

 その上、他のファミリアに所属する冒険者同士での結婚は、暗黙の了解としてご法度とされていることを考えれば、アストレア・ファミリアの眷属達が男性と結婚をするなど、夢のまた夢であることも察することができるだろう。

 

 結論。彼女達は恋愛事に関して異常なほど飢えている。

 

 もちろん、神アストレアは眷属達の恋愛に一々口を出すような、『恋愛アンチ』のアルテミス(なにがし)とは違った寛容な女神様だ。相手が他のファミリアの眷属だったとしても最大限の歩みよりはしてくれる。

 それこそ、ロキ・ファミリアの団長をしているフィンに対して、「アタシを嫁にしろ!」と笑顔で言っている小人(パルゥム)の眷属を前にして、「あらあら、まあまあ」と笑顔で済ませている時点でお察しだ。

 

 要するに……、

 

 

 

『アストレア様好きだし【正義】の眷属としての在り方にも不満は一切無い上に、恋愛するには面倒な(しがらみ)が多すぎて自分がその当人としてやるには二の足を踏むが、他人がその渦中にあるのは死ぬ程面白い』

 ……というのが、彼女達の本音なのだった。

 

 大した仲間意識である。

 

 

 

 まあ、とかなんとか言いつつ、何人かは既に結婚してるのだが。

 

 彼女達はウキウキな感情を抑えきれず、全員が全員噂好きの乙女のようにリューへ問い質していた。

 

「それで?それで?どうなったの!?続きは!?続きは!?手が触れて大丈夫だった唯一の男の子なんだから、何かあるわよね!?」

 

「ちょ」

 

「デートの約束まではいかなくても何かしらのアピールはしたのよね!いや、したでしょ?そうじゃなかったら、あそこまでの好きになるはずないものっ!

 それで、何をどうしてどうやって、あの少年の心を奪っちゃったの!?」

 

「待っ」

 

「名前は聞いた?どこのファミリアなの?早く行きましょうすぐに行きましょう!行動しなくちゃ男の子のハートは掴めないわよ!」

 

「ですから……っ!」

 

「ほら、もっと頂戴もっと頂戴!黙ってないで情報を寄越しなさい、ハリー!ハリー!ハリー!!」

 

「……───ッ!」

 

 ブチり、と何かが切れる音がしたあと、ホームの外からでも聞こえるのではないかと思う程の、貞淑なエルフの大きな怒鳴り声が響き渡った。

 

 

 

 

 

「この私がヒューマン相手に恋などするものかああああああああッッ!!!!」

 

 

 

 




※この小説でクールなリューさんはほぼ出てきません。基本的に弄られキャラです
詳しいベル君とのあれこれはまた次回

ストックが尽きたので次回は未定
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