迷宮都市オラリオ。
『大穴』を塞ぎダンジョンとすることで、英雄が誕生するための偉大な都市として栄華を極める世界の中心。
数多の冒険者の栄光と末路を刻み続けたその都市は、
実際に悪辣な手段でもってオラリオを滅ぼそうと画策する彼らによって、多くの冒険者が被害に遭い命を散らす結果となっていた。
この危機的状況が続けばオラリオが沈むこととなるのは誰が見ても明白だろう。
しかし、それを許さない勢力がオラリオに存在していた。
『
この二つの勢力は事実として闇派閥の台頭をある程度は抑制していたが、嘗ての二大ファミリアがオラリオに居たときからすれば、闇派閥の動きは目に見えて活発なものになっていると言わざるを得ない。
だから、オラリオの人々が安心して生活できる理由は別のファミリアにある。
それこそ【正義】を司る女神が主神のファミリア、──アストレア・ファミリアだ。
【群衆の主】が主神のガネーシャ・ファミリアと共に、オラリオの治安維持を受け持つ女性の冒険者のみで構成された【正義】のファミリア、その存在がオラリオの住人の心の支えとなっていた。
闇派閥がどれだけ暴れようと【正義】が必ず打ち倒し、平穏な日常を守ってくれる、とそう彼らは願っていたのだ。
だが、その平穏は突如として破れ去られる。明確な契機となったのはなんてことのない昼下がりの出来事。
ガネーシャ・ファミリアの眷属、アーディ・ヴァルマが迷子の子供と思わしき子供に声を掛けるとそれは起こった。
「……神様……お父さんとお母さんに会わせて下さい……」
「─────」
耳をつんざく轟音と巻き起こる爆炎によって日常は崩れ落ちた。子供に「生まれ変わったら死んだ両親に会わせてあげる」などという甘言を、魂の管理者である
「……アー……ディ…………?」
「う、嘘だ…………そんなこと…………ッ」
笑顔をよく浮かべていた快活な少女が、『火炎石』が生み出す爆発に呑み込まれた瞬間を目にした、アストレア・ファミリアとガネーシャ・ファミリアの面々は茫然自失とした表情で立ち尽くす。
大切な仲間が一瞬で消し飛んでしまったのだ。受け止めきれなくても仕方無いことだろう。
だが、蠢く悪意は嘆きの時間さえ与えてくれない。
「ヒャハハハハハハハハハハハ!!
『殺帝』ヴァレッタ・グレーデ。闇派閥のその女は狂笑を上げながら殺意と悪意を解放する。
「さあ、これが狼煙だ!
全て、全て、全て!────皆殺しだああああッッ!!」
「───ならば、その企みを挫かせて貰おう」
「ッッ!?」
その凛とした声は冒険者が吹き飛んだ爆心地から発せられた。
『火炎石』が生み出した粉塵から現れたのは、絹糸のような金髪を頭の後ろに纏め上げ、青色のバトルドレスを身に纏う騎士。
気絶した名も知らぬ少女と困惑するアーディ・ヴァルマを背にして、宝石のような瞳で遠方からこちらを見下ろすヴァレッタに鋭い視線を向ける。
それは、絵に描いたような理想の騎士だった。凛とした佇まいに玲瓏にして獅子のような溢れ出る覇気。
それはまさに、正義を為し、悪を誅する【正義】の体現者。その騎士が悪の前に立ち塞がる。
「覚悟しろ下郎。私の剣が貴様たちの思惑の全てを切り捨ててくれる!」
悪意振り撒くその戦場においても、その騎士の輝きが曇ることはない。アストレア・ファミリア唯一の騎士にして最大戦力。
Lv.6、『守護者』アルトリア・セイバー。
アストレア・ファミリアのシンボルである正義の剣を振るうに相応しい騎士だ。
「(はあ~~~~、国が滅ぶとかないわー。しかも、『暗黒期』とかマジでないわー。
転生先が『ダンまち』って決まってたから、転生特典で『アルトリア』にして下さいって確かに言ったよ?カッコ可愛いキャラで無双したかったしね?
……でも、普通さガワだけ寄越すじゃん?なんで生涯丸々なんだよ!頭おかしいんか!?
しかも、『ダンまち』のモンスターも原典に+αで来るとか無理ゲーどころか負けゲーだっての!
『アルトリア顔』って言わなくてもニュアンスでだいたい伝わるよね?お役所仕事ですか?あ?
……それにさー、確かアストレア・ファミリアってリュー残してジャガ丸に全滅させられたファミリアだったよなぁ…………。
──かーっ、やってられんばい!こうなったら正義の味方ごっこしながら闇派閥を殺し尽くしてやるしかねえよなぁ!?(豹変)
てめーら全員皆殺しだああああああああああああ!!)」