偽アルトリアinアストレアファミリア


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作:ほんわか抹茶オレ
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プロローグ
1.斯くして、騎士王は迷宮都市に降り立った


順番を変えることにしました


 ~五年前~

 

「はあ……、お先真っ暗ですね」

 

 ガラガラと揺れる馬車に揺られながら、身体を隠すようにローブを纏ったその人影は絶望したように声を吐き出した。

 

「襲い掛かってくるピクト人やサクソン人に加えて、『竜の谷』とかいう場所からアホみたいにやってくるドラゴンの数々。

 環境のヤバさならウラノスが祈祷を捧げる前のオラリオ同然の地。もう色々と頭オカシイ」

 

 ボロボロのローブから見える瞳は暗く濁っていた。

 

「そんな状況にも拘わらず、ヒトヅマニアばかりの変態騎士共に騎士道優先の脳筋ばかり居る円卓ブラザーズ。

 そして、お早うからお休みまで続くマッシュマッシュマッシュマッシュマッシュマッシュマッシュの変わらないご飯。

 他のご飯?フフッ、そんなもの食えたもんじゃありませんよ。肥えた現代人が食べようものなら吐き出して終わりですフフフフッ」

 

 ぶつぶつ繰り返すその怨嗟と諦観が詰まった声音は、聞いたものを震え上がらせるものだったが、馬車を運転している御者には声の小ささに加えて、馬が鳴らす足音と馬車の進む音が掻き消してくれるようだ。

 もし、聞かれでもすれば怪しさから馬車を下ろされていたかもしれない。それほどまでに今の少女は不気味悪さを内包していた。

 

「ベティ、生きてるかなぁ…………うーん、無理?無理な気がする。だってドラゴン1匹とミノタウロス3体とゴブリン5体……流石に厳しいかー。

 あれで勝ってたら円卓でも有数の実力者として名を馳せていただろうし。でも、めちゃんこ良い奴だったから生き延びてて欲しい。

 こんなダメ王に短い間だけど尽くしてくれて、殿(しんがり)までかって出てくれるとかマジ天使しゅき」

 

 まあ、死んじゃったんだけどさ。

 あそこから助かるなら残って二人で倒したっての。

 

「ウーサー、あのブリテン維持してたとか超名君じゃん。オ……私なんてすぐにキャパシティー超えたから。マーリンの奴から『この程度も出来ないの?』みたいな目を向けられたけど、無理だよあれ。

 対処出来なかったからブリテンが滅んだというなら、もうしょうがないって。

 というか、無理だから逃げようって言ったのに誰も言うこと聞かねぇしさ。王様の命令無視とかお前ら本当に騎士なんか?あいつら死ねよ。死んだわ」

 

 平時ならば見目麗しいだろう少女は頭を抱えながら、ぶつぶつと言葉を重ねる。

 

「『王はお逃げ下さい。あなたに流れる王の血が絶えなければブリテンは滅びません』──いや、滅んでるやないかい。綺麗サッパリ跡形もなく滅んでるやないかいっ!

 国が無いなって国王気取るとか裸の王様もいいとこだからね?それとも、政争の道具にでもなれっていうのかな?

 油ギッシュなオッサンに抱かれるくらいなら自害を流石に選ぶから。そこまで落ちぶれたら騎士達に申し訳なく思うし」

 

 転生してから不本意にもアルトリア・ペンドラゴンとして生きねばならなくなり、流されるままに選定の剣を引き抜き、『騎士王』として生きねばならなくなったのがこの転生者である。

 『ダンまち』の世界には存在しないブリテンを急遽用意したため、とんでもない悪環境となってしまい、一度それらしい冒険を終えたあとに滅亡ENDを辿ってしまった。

 ブリテンから尻尾巻いて逃げ出したが追ってきたモンスターと蛮族(モンスターと協同していた訳ではなく、身体を齧られながらもブリテン憎しで殺しにやって来た)に、護衛の人間を全て殺され今は一人っきりだ。

 こうして、馬車を引く御者に巡り会えたのも幸運によるもの。これは転生特典の【幸運】によるものだろう。

 

「これで、ただの王女として育てられていたら詰んでたなー。マーリンに騎士として剣を教えて貰ったことだけは感謝しとくか。いや、本当にそこだけね。

 前世が男だったから女の子として生きていくの大変だけど、もう慣れたわ。だってもっと大変なことが押し寄せてくるんだもん。悩みとか抱いてる時間が無駄だよね」

 

 お約束の性転換の悩みとかしてる暇なかった。できたの3秒くらいよ。戦場じゃあ男も女も大して変わらんってことだね。

 

「もはや、【幸運】とはなんぞや?ベリーハードからの既にほぼほぼバットエンドなんだけど。

 ……まあ、原作のベル君も果たして【幸運】の【アビリティ】が本当に作用してるのか分からないくらいにボロボロだけどさ」

 

 本来ならば国は蹂躙され、国民は一人残らず殺されたならば義憤に燃えるのは国王として当然かもしれないが、この転生者にそんな情熱は存在しない。何故なら、滅びて当然の状況だったのだ。

 

「なんなら、怒りを通り越して清々しさまである。『でしょうね!』っていう展開がとうとうやって来たからさ。逆によく1年持たせたよ我ながら。

 なんなら、マーリンの想定していた未来を教えて欲しいくらいだ。本当にハッピーエンドなんて有ったんか?」

 

 あそこからどうこうできるなら、なんで何も言わないんだよ。王の望むままにじゃねーよ。張り倒すぞ。

 

「……今がいつ頃なのかは知らないけど、入るならロキ・ファミリアかなー。

 フレイヤ・ファミリアはいつも殺し合いさせられるらしいし、コレクションの一つにされるのはゴメンだね。そもそも、尻が軽い女はノーサンキュー」

 

 転生特典で3つ選べるなんて言われたから【アルトリア】、【幸運】、【超直感】にしたけど、フレイヤ対策で【精神異常無効】とかにしておけばよかったかも。

 

「【超直感】は『Fate』じゃなくて『家庭教師ヒットマンREBORN!』なんだけど、……問題無いならいっか!」

 

 そして、この【超直感】だが発展アビリティという才能のようなものだと認識されたようだ。発展アビリティの一つとして認識されたことでステータスの記述の仕方も少し変わっていた。

 

「直感 : A は流石に引いたわ。アビリティとかってだいたいGとかHとかでよくてDとかだったから、マジで未来予知レベルだったりするのでは?ガチでサーヴァントと同じ性能かも」

 

 『ダンまち』も『Fate』も大好きな作品だったため、かなりマニアックなことまで記憶していたのが、この世界の基準を身をもって理解すると転生特典というものがどれだけチートなのか分かるというものだ。

 

「ロキって言えばトリックスターで有名だし、下手に接触するのはまずかったりする?転生特典とかすぐにバレそう。

 しかも、アイズっていう地雷もいることだし……懇意にするぐらいの関係性が出来ればって感じがベストかなぁ?」

 

 原作知識があればソーマ・ファミリアといった地雷のファミリアは避けられる。聞いたことがないのはスルー一択。どうせそういったところは直ぐに潰れるだろうし。

 

「ここはやっぱりヘスティア・ファミリアかー。

 ヘスティア様は迷える子供の過去を無闇矢鱈に聞き出すような神様じゃないオラリオ有数の善神だし、ベルくんが居ないなら眷属を欲しがってるだろうから敷居も最底辺。こんな訳有りの地雷でも話も聞かずに眷属にしてくれるかも。

 それに、ベル・クラネルっていう主人公がやって来るのは100%なんだから、将来性は最高峰を考えれば優良物件なんだよ」

 

 2億ヴァリスという莫大な借金も、ベル・クラネルという英雄の歩みを考えれば大したことではない。そう言い切れるのも原作知識があるからだが。

 

「それに、神には嘘が通じないから本音を隠して事実を言わないようにするのが全体的に厄介だ。だからこそ、ヘスティア様が一番騙すの楽なんだよなー」

 

 さも当然の如く、神を謀るなどという不敬なこと極まりない事実を忘却しこれからのことに思考を向けていると、馬車がスピードを落としていく。ぶつぶつ独り言を言っている内に夢のオラリオへ着いたようだ。

 馬を引く御者がこちらに声を掛けてきた。

 

「いやー、驚いたよ。金払いが良いからオラリオへ連れてきてやったが、今のオラリオは安全神話が崩れちまった神時代最悪の状況。よくもまあ、近付こうと思うもんだ」

 

「……へ?」

 

「俺には分からんがそれが冒険者ってことなのかね。まあ、アンタの成功を陰ながら祈ってるよ」

 

 そう言って私を降ろしたあと、御者は来た道を翻して去っていった。どうやら、余り長居はしたくないらしい。

 確かに澱んでいるかのような気配を中に入る迄もなく既に感じ取れた。アニメで見たあの華々しさは今のオラリオには無いようだ。

 そして、流石の私もさっきの御者の話と今のオラリオの状況を見れば、どういうことなのか察することもできるというもの。

 つまり、今は……

 

 

 

「───よりにもよって、オラリオの『暗黒期』じゃないですか!?」

 

 

 

 果たして、【幸運】とは一体?

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