さて、そうはいってもアンフィスバエナは、俺にとって相性が悪い。完全な格上だから結界の斬撃は使えないだろうし、赤い霧のせいで結界の効果も下がる。身体強化は使えるかもしれないが、一度見た限りあの鱗に俺の爪が通じるとは思えない。
だから、しばらくは力、耐久を上げていこう。耐久は効率が悪いが…ないよりはマシだし、今考案中の技のためには耐久がある程度必要だ。
まぁ、暫くは魔石収集タイムだな。
〜しばらくお待ちください〜
アレから少し経った。取り敢えず俺を狙う冒険者を避けながらモンスターを狩って自己研鑽をしている。
その際にセイレーンの超音波が役に立った。超音波は、音によって相手を妨害できるのはもちろんだが、一番使えるのは反響定位だ。
習得に少し苦労したが、何とか使えるようになった。これによって超音波を感じれるモンスターを除いて気付かれずに相手の位置を知ることができるようになった。
……因みにハーピイーとセイレーンは、俺のトラウマになった。
別に強くはないんだがあの匂いがあまりにも臭すぎて、本っ…当に嫌なのだ。
だからハーピイーとセイレーンは、発見次第遠距離から結界の斬撃で瞬殺している。
……俺、フィアとレイに会って殺そうとしちゃわないかな?やったら俺すごく嫌なんだけど。
………さて、これ以上話を逸らすのはやめよう。今、俺の目の前には大量の結晶が生えて森のようになっている。
…うん、俺も訳わかんない。こんな場所は最低でも俺の知識には無い。目の前には結晶が枝分かれして木のように生え、更にそれがいろんな角度で生えているから障害物になって視界も悪い。
俺の知識で高いのは『シャングリラ・フロンティア』で出てきた水晶巣崖が一番近いだろうか?
それくらい水晶だらけなのだ。
「さて、どうするか」
間違いなくこれはイレギュラーだ。それがダンジョンが作った新しい地形なのか、それとも強化者によるものなのかは分からない。反響定位で様子を見ようにも、水晶が振動するせいでまともに索敵もできない。
分かっているのはクリスタルアーチンと何な水晶の蠍っぽいのが居たくらいだ。
この蠍も俺の知識には無い。しかも、この蠍やクリスタルアーチンには、魔石が無いのだ。
そう、モンスターには、本来魔石があるはず。ジャガーノートのように例外は居るがアレは全身が魔石と言ってもいい体であるが故の例外だ。けどこいつらの体には、そんな性質はないのだ
…本当にきな臭い。おそらくここに居るのは、水晶系のモンスターが大量に生息している。……正直水晶系は、面倒臭い。陰キャ戦法のライト・クォーツ。鈍重な奇襲亀のクリスタルタートル。体中に針が生えている格闘戦お断りなクリスタルアーチン。
正直今の俺なら勝つのは簡単だが相手にするならめんどくさい。
まだ、自滅する燕と群れるだけのマーマンの方がいい。恐ろしいのはこれらが大量にいるであろうこの場所だ。
…行くか。確かにイレギュラーの強いモンスターがいるかもしれないが、だとすれば捕食した際にまた、能力を得られるかもしれないし何より強くなるには実践を積むのも大事だ。
他にも新技を考案しているし、他のモンスター擬きも多いならその練習台にもできる。
「よし、行くか」
初めてイレギュラーに俺は行く。
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水晶地帯から少し進んだがやはりここは異常だ。
明らかにモンスターの数がこの階層にしては多い。ダンジョンにおいてモンスターは、イレギュラー以外では階層ごとに数が決まっている。
それなのにここでは少し進むたびに水晶のモンスターが襲ってくる。
遠くからビームを打ってくる空飛ぶ水晶。擬態して奇襲してくる亀、あちこちから転がりながら突進してくるハリネズミなど見たことのあるものから、素早く動き回ってハサミと針で関節攻撃差は蠍。連携して襲ってくる狼。硬く前線に出てくる熊。攻撃すれば水晶の礫で反撃しあちこちを這い回るトカゲなど数も種類も豊富だ。
強さとしては、レベル2がほとんどでレベル3は稀に出てくる程度。
しかし、殆どレベル3でも見た目がほとんど変わらないのが厄介で、これでは油断したところに創造以上の強さでやられるだろう。
そうして俺は、水晶地帯を少しずつ進んでいった。…そしてそこにそれは居た。
先程までとは、打って変わってそこの水晶は真っ平だ。周囲は水晶の森なのがここの真っ平らさをより際立たせる。そしてそんな平な水晶の平原ともいうべき底の中央には、まるでここが中心だと叫ぶかのように聳え立つ水晶の塔があった。
そしてその水晶の塔の天辺に…それは居た。
まるで塔そのものが玉座と言わんばかりに、塔に乗るそれは巨大な水晶。しかし、その見た目はあまりにも異様。恐らく元はライト・クォーツであろう紫の体の水晶はその中心に目のような模様を浮かべており、ところどころに水晶の棘が生えている。
その上には、まるで王冠のように水晶が形作られている。
その中央の塔の周囲には、多数の水晶のモンスターがまるで軍のように並んでおり、よく見れば中央の塔の近くには中央の塔よりも小さいが六本の塔が存在している。塔からは、水晶のモンスターが生まれており、周囲の水晶地帯に次々と向かっていく。
そしてその六本の塔の入り口には、六色の巨大な水晶のモンスターがいた。赤のドラゴン、青の蠍、黄色の蛇、緑の鹿、白の騎士、灰色の蜘蛛。と言ったモンスターはまるで後ろの塔と王を守らんと周囲を伺っている。
その様子に思わずタタラを踏んでいたが、
ギャロ
そんな擬音が出しそうな目の動きをして、俺を見た。
「‼︎」
そして水晶の王は、目を光らせたと思った瞬間…。
俺はすぐさまそこから飛び退いた。