森の肉の怪物


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作:ななば
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神会


 

 

 

夜。

僕とハルティア様は迷宮都市オラリオに存在する酒場────『豊穣の女主人』に訪れていた。

11階層で出会った、エルフの男──ケインに誘われたからだ。

 

その扉を開き、店内へと入った。

内装は綺麗で、料理の美味しそうな匂いがした。

酒場という事もあり、沢山の冒険者達が笑い合いながら酒をあおっている。

「うわ〜!!すっごい良い匂い、外食だなんて久しぶりだね♪」

「そうですね、ケインは何処だろう……」

 

店内のテーブルを見渡して、ケインと思われる人物を探す。

 

「あ、居た」

案外、直ぐに見つかった。

やはり酒場に居る人の多くは、人間(ヒューム)や獣人などの種族。

その中でエルフというのはやはり目立つものだ。

180C(セルチ)の高い身長に、エルフ特有の長い耳。

 

「────お!来たきた!!こっちだ、シア───!!」

 

 

僕をパーティーに誘った初めての冒険者。

────ケイン・ケルパルトが、こちらを手招きしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そういえば、気味悪く思わなかったの?……」

「……ん、むぐっ…何がだ?気味悪いって……?」

ケインと同じテーブルに着いた僕は、ずっと気になっていた事を聞いた。

インファント・ドラゴンを倒した時から、ずっと頭の中で感じていた事を。

 

「……僕のスキルの事、腕とか骨とか急に生やし始めて……驚いただろうし、気持ち悪かったでしょ……?」

ケインは口の中に入れていたサラダを飲み込み、ゆっくりと口を開く。

 

「………正直言って、驚いたし、気持ち悪いとも、少し…思った……」

 

「………ッ」

 

当たり前だ。

わかっていた、そう────分かっていた事だ。

オラリオに来たところで、人の見る目が変わるわけ無い。ただ、シアというエルフの事を知らないだけだ。

王森のエルフ達の所業はともかく、その目は他の人々と同じだ。

 

「………だけど、そんな思いは直ぐに消し飛んだ」

「……え?」

「あのインファント・ドラゴンに恐れる事無く立ち向かって、自分が傷付く事も構わずに冒険をした────そんな同胞を、誰がそんな事思えるって話だ」

「…そ、そうなのか」

 

違った。

オラリオに来たところで変わるわけ無いと思っていた。でも違った、少なくともケインは、僕の事を否定しない。

 

「……ありがとう、ケイン」

「礼を言われる事じゃ無い、シアのスキルは、凄いスキルさ」

ハルティア様とオラリオに来てからも、この不安はずっと心の片隅にあった。

"また傷付くだけなんじゃないか、否定され、居場所すら無くなるんじゃないか"という不安、だけど今日────今日この日は、そんな不安はすこし、薄れた様な気がした。

 

「シ〜ア君♪」

つんつんと、ハルティア様に肩をつつかれる。

さっきまでの話を聞いていたのだろうか、にんまりとした笑顔で話しかけてくる。

 

 

 

「オラリオは……良いところでしょ♪」

「!!………はいッ!!」

 

 

 

嗚呼、本当に────良いところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫く酒と料理を堪能した後、解散となった。

いつものようにホームに帰り、僕は寝室のベッドに横たわり、その作業が終わるのを待っていた。

 

「さぁさぁ、お楽しみのステイタス更新だよー♪前は凄い勢いで伸びたからね、今回もきっと大きく伸びて────………?」

 

「?……どうしました、ハルティア様」

なにか、様子がおかしい。

僕のステイタスを見た瞬間ハルティア様が人形の様に固まって、何かを呟き始めた。

 

ぇ、嫌マジ?流石に早過ぎだって……でも言わない訳にはいかないし………

 

こんなに呟かれると、流石に気になってしまう。

 

「……どうしたんですか?なにかステイタスに異常が?」

 

「……………できる」

「出来るって、何が?」

 

「────────()()()()()()()()()

 

 

 

 

……………へ?

 

流石にこんな事、予想外だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあレイガ君の二つ名は────【究極剣聖(アルティメット・ケンセイ)】で────」

「ああああああ!!?嫌ぁァァァ!?私のレイガがぁぁ!?」

「アルティメットwwwwケンwwwセイwww」

「何で剣聖だけ読みそのままなんだよwwww」

「良いぞー!!────ヘルメス────!!」

 

 

その日女神ハルティアは【神会(デナトゥス)】に初めて出席していた、そして彼女は言葉を失っていた。

────オラリオの神々、その畜生ぶりに。

 

その行為を知らない訳ではなかった。

数多もの神々がいるこのオラリオには、天界で面倒を見てくれた神達もいて、こういう悪ノリがあるのも、"洗礼"として変な名前を付ける事だって教えてもらった……だが………

 

(まさか…ここまでとは……!!)

 

なんたる悪行、なんたる外道。 まさかこんなに酷い物だとは思わなかった。

話によれば、新興のファミリアほど、弱小派閥ほど洗礼として"痛い二つ名"を付けられるのだという。

そう、()()()()()()()()で、()()()()が付けられやすい。

つまり、シア君の二つ名は────

 

 

(────ッッ!!守る、絶対にシア君の二つ名を無難な物にして見せる!!)

 

 

そんな風に考えていれば、遂にその時が来た。

 

 

「………よし、ほな次いこか、次が最後や、名前はシア!所属はハルティア・ファミリア、レベル1から2のランクアップや!所用期間は…………な、なんやとォ!?

 

神会の司会を務めるのは、このオラリオ()()の二大派閥、ロキファミリアの主神ロキ。

そんなロキが、その目を見開き大声を上げたのだ、神会にいる神々はそれだけで異常事態が来たと察した。

 

「な、なんだよ!?」

「早く所用期間を教えてくれよォ」

「早くしろ!間に合わなくなっても知らんぞ!!」

「二年か!?それとも【剣姫】みたいに一年かぁ!!」

 

 

 

 

 

「────一カ月、一カ月と三週間や!!」

 

 

 

 

「「「は、はああああアアアアァァ!!!?」」」

 

 

神々の顔が驚愕に染まる。

こんな事は今までなかったのだ、僅か一カ月ちょっとでのランクアップなど。

【剣姫】の一年ですら異常なのだ、それが一カ月、たった一カ月だ。

神の言葉で言うのならインフレ、という物だろう。

いつも飄々とした様子のヘルメスですら、その異常さに面食らっていた。

当然、神会は動乱に包まれる。

 

 

 

 

「どーゆう事なんだァァ!?」

「まさか────()()をしたんじゃないか!?」

「でも、彼の主神はあのハルティアちゃんよ?そんな事をするとはとても……」

「しかし!こんな成長速度は異常すぎ────」

 

 

「ち、違う!?不正なんかしていない、シア君は精一杯努力して────」

主神であるハルティアが必死に声を張り上げるが、この流れを止められない。

 

(……マズい、ど、どうすれば良いんだ……)

もはやハルティアに出来る事は無い、どうすれば良いか分からずあたふたするしか無い、────その瞬間。

 

 

 

「────騒々しいわね」

 

 

それは正しく鶴の一声だった。ロキと同じ二大派閥の主神。

美神、フレイヤが一言、そう口にする。

透き通るようなその声は神々の頭を穿ち、一気に大人しくさせた。

まるで、()()()()()()、させられた様に。

 

「神は下界で『神の力(アルカナム)』を使えない……貴方達も知っている筈よ」

 

「そ、それは確かになぁ……」

 

先ほどまでの動乱が、嘘の様に引いていき、いつもの様子を取り戻す。

それに合わせて司会のロキが再びシアについての話を続ける。 

 

「せやせや!!それに今はこの子の話や────ほら、決めようやん、この子の二つ名をなぁ」

 

 

「「!!」」

 

 

本来の趣旨を思い出したのか、再び活気を取り戻す神々。

その顔には"痛い二つ名を付けて遊んでやろう"という悪意がこれでもかと溢れていた。

 

 

 

「はいはい!!────【半分灰色(ハーフ・グレー)】」

「いやいや!────この可愛さなんだから、【可愛妖精(キューティ・ピクシー)】でしょ!」

「【多分王血(メイビー・キングブラッド)】!!」

「し、主神の私が思うに────シル」

「新参は黙ってなぁ!────【超剣士妖精(スーパー・ソードマスターエルフ)】!!」

「いやいや……」

 

 

 

 

 

「聞けえええぇぇぇ────!!」

 

 

「おわああああッッ!?」

 

あまりにも話を聞かない神々(ばかもの)共に、遂に我慢の限界が来たハルティア。

今日一番、いや、オラリオに来て一番の大声を張り上げた。

全ての神にとって後輩にあたるハルティア。

そんなハルティアがその美しく、大人しい様相からは考えられないほどの大声を張り上げたのだ。その衝撃たるや凄まじく、今まであれこれ好き勝手な二つ名を上げていた神々の腰を抜かし、黙らせた。

そして高らかに宣言する!!────

 

 

 

 

「シア君の二つ名は────【銀の剣撃(シルバー・スパーダ)】!!それ以外認めない!!絶対ぜったい認めないからなッ!!」

いつものギャップと、その剣幕に、誰も何も反対意見を言えない。

結局その一声を、神々は飲んだのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────所用期間一ヵ月と三週間。

世界最短(ワールドレコード)の称号を欲しいままにしたエルフの上級冒険者が、今日誕生した────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




◼︎シア君
遂にレベル2になったエルフ、これからどう活躍するか、乞うご期待!!


これにて森の肉の怪物、冒険編は完結です。
これから少し間話を挟んで、邂逅、迷宮、討伐編に入ります。
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