第7話 ファーストコンタクト

 アルと同じ宿に泊まっている冒険者の格好をした3人組みの少女たちが、粗暴そうな男たちに進路を塞がれた。

「オネェちゃんたち、俺等のパーティーに入んなよ!色々良い思いさせてやんぜ!」


 男たちの一人が、赤毛の剣士リリィに近づき、肩を掴むとローブを剥ぎ取った。するとそこに現れたビキニアーマー姿を見て下卑た笑みを浮かべた。彼はリリィのビキニアーマー姿を舐め回すようにじろじろと見つめ、さらに言葉を続ける。


「へー、揉み応えのありそうなエロいカラダしてんな!俺たちと組めば、もっと稼げるぜ!」


「ぐへへへ!わるいようにわしねえぜ!くけけけ」


「何よあんたたち。邪魔だからどきなさいよ!」


 リリィは眉をひそめ、腕を組んで言い返した。


「困ります!私たちはちゃんとした冒険者ですし、仲間は間に合っていますわ!」


「やめてください!嫌なの・・・です」


 エルフは冷静に男たちを睨むような視線を向けて告げ、魔法使いのサラはリリィの後ろに隠れるようにして小さく呟いた。


「貴方がたのような下品な方に私達が靡くわけがありませんことよ」


 エルフはゴミを見るように目を向けながら告げたが、どうやらオブラートに包んで話すことを知らないようだ。


 険しい表情の3人の少女。そして、それを取り囲む4人の男たち。

 周りの人々は誰一人として助け船を出そうとせず、見ているだけだった。

 ただ、特にきつい言いようのエルフの言質にハラハラするしかなかった。


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 3人が絡まれ始めた頃・・・アルは3人から少し遅れてギルドに向かって街を歩いていたが、言い合っている言葉を耳にした。ふと人混みの方に目を向けると、数人の男たちが3人の女冒険者に絡んでいるのが見えた。赤毛の剣士、エルフ、そして魔法使い――彼女たちは明らかに困っている様子だった。

 あの子たちどこかで見たなと一瞬考えたが、すぐに昨日宿の食堂で隣のテーブルで食事をしていたあの3人組だと分かった。アルは迷うことなく自然と足を動かしており、ため息をついた。


(こ手の連中か・・・可哀想に)


 絡んでいるのは装備を見る限り探索者崩れか冒険者だろう。

 だが、どう見ても彼女たちよりは強いと思われる。


「おいおい、そんなに怖い顔するなよ。俺たちは優しくしてやるって言ってんだぜ?」


 男が魔法使いの肩を掴んだ。

 その瞬間少女はびくっと体を震わせ、涙目になった。


「おい、何をしているんだ!やめとけよ。嫌がってるじゃないか」


 アルは自然に声をかけたが、当然男たちが敵意のある目を向けてきた。


「はぁ? なんだてめぇ」


「邪魔すんなよ、ガキが」


「僕はただ、面倒なことになる前にやめとけって言ってるだけだよ」


「チッ、なんだよ、邪魔すんなって・・・」


 男たちの一人が剣の柄に手をかける。


「僕ちゃんよぉ!女を見てイキりたいのはわかるがよぉ!人数見て喧嘩しろや!」


(仕方ないか・・・)


 アルは心の中で小さく息をついた。


「じゃあ・・・少しだけ大人しくしてもらおうか。安心しなよ、殺さないからさ」


 そう言うと、アルは4人の男たちのズボンの中に土を生成した。


「!?!?」


「う、おぉおお!?!?」


 突然の異変に、男たちは慌てふためく。

 男たちの一人が剣の柄に手をかけるのを見たアルは、冷静に【土生成】にて4人同時にズボンの中に土を生成した。土は空間を無理やり押し広げながら増殖し、ズボンのお尻と股間が急激に膨れ上がった。


 ズボンの中が急激に膨れ上がると、重みでずり落ち、中にはズボンの股が裂けたものもおり、そこから土がこぼれている。

 一人は慌ててズボンを引き上げようとし、別の一人は尻餅をついた。


「な、なんだこれぇええ!!?」


「う、うわああああ!!?」


「てめえ、何しやがった!」


(やりすぎたか?でも、他に方法がなかったんだ)

 アルは心の中で小さく呟いた。

 リーダー格の男はズボンが破れ、下着が丸出しになった。彼は必死にズボンを引き上げようとするが、土の重みでパンツもずり落ちてしまい、お尻が丸出しとなった。そして股間を手で必死に覆っていた。


「お、おぼえてろよ!!」


 また、1人は破れたズボンを必死にたくし上げ、3人の男たちはズボンの中に土が詰まったまま必死に逃げ去っていく様子に周囲の通行人たちはクスクスと笑いながら、その光景を見つめていた。


「あははは!あの男、ズボンが破れてるぞ!」

「土がこぼれてる!笑える!」


「お尻が膨らんでるぞ!xxx漏らしたんじゃないか!?」


「きたねぇもん見ちまったよ」


「あの少年、すごいな!」


「はっ!ザマァだな!」


 子供たちは指を指して笑い、大人たちはクスクスと笑いながらその光景を面白おかしく見物していた。中には笑いを必死にこらえているものもおり、四人の男たちは笑いものとなっていた。


「お、おぼえてろよ!!」


 男たちはありきたりな捨て台詞を吐きながら一目散に逃げていった。

 アルは肩をすくめると振り返る。


「大丈夫かい?」


 少女たちはぽかんとしており、特に赤毛の剣士は目を丸くしている。


「す、すごい!」


「まさか一人で4人を追い払うなんて・・・ギフト持ちかしら!?」


「助かったの・・・です・・・」


 魔法使いは泣きそうな顔で、エルフは何かを考え込んでいた。

 そしてビキニアーマー姿の赤毛が勢いよく頭を下げた。


「助けてくれてありがとう!!」


 他の二人も慌てて続く。


「ほんとにありがとうなの・・・です!」


「あなた、すごいですわね」


 アルは赤毛の娘が頭を下げたことにより、ビキニアーマーが作り出す胸の谷間が見えてしまい、気恥ずかしくなり顔が真っ赤になる。

 そして顔をそらすべく背を向け軽く手を振った。


「べ、別に、た、たいしたことしていないから。じゃあ、先を急ぐから僕はこれで」


「ねえ!ちょっと、名前は!」


 赤毛の剣士が慌てて声をかけるもなぜかアルは背を向けて走り出した。

 そしてそのまま振り返らずに走り去っていき、赤毛の剣士はその後ろ姿を見つめながら悔しそうに足を踏み鳴らした。


「ああん!行っちゃった!もう!なんでよ!」


 サラが小さく呟く。


「逃げたの・・・・です!」


 その様子を冷静に見ていたエルフが口を開く。


「顔を真っ赤にしていましたわね。案外リリィの胸の谷間が見えて恥ずかしくて逃げたのではないのかしら?サラ、そう思わなくて?」


 リリィはハッとし、自分の胸を見つめた。


「えっ!? まさか・・・!」


 サラもリリィの胸を見て、頬を赤らめた。


「アイリス、確かにリリィのそれは主張が強いの・・・です・・・うらやましいの・・・です」


 リリィと呼ばれたビキニアーマーの赤毛は慌てて腕で胸を隠し、顔を赤くした。先程肩をつかまれた時にローブを剥ぎ取られていたのだ。

 急に街中でビキニアーマー姿を晒していることに真っ赤になりながら慌ててローブを探す。


「ちょ、ちょっと! そんなこと言わないでよ!」


「うふふ。リリィがお辞儀してから慌てていましたわね」


 その間に地面に投げ捨てられたローブを着ていた。


「ちゃんとお礼を言わなきゃ!追いかけるわよ!」


 サラが頷くと慌てて追いかける。


「追いかけるのは良いけど、どこを探すの・・・です?」


 アイリスはため息をつくと二人の後を追い始め、走りながら話す。


「そうですわね。多分あの方は探索者ですわよね。今の時間にここを通っていたということは、依頼を探しにギルドに向かっていたのではなくて?それよりあの方ソロなのではないでしょうか?」


 アイリスと呼ばれたエルフの娘は微笑みながらそう言うと、リリィは目を輝かせた。


「そうよね! ギルドに行けばいるかも! !」


「まあ、ギルドに行けば何かわかるかも・・・です」


 そうして3人はギルドに向けて急いで向かった。


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 アルは路地裏に逃げ込み、壁にもたれ自分の頬をパタパタと叩いていた。


(クソ・・・まさか女の子の胸元を見て逃げるなんて・・・)


 ふと地面に転がっていた小石を蹴り飛ばす。


(てかあのエルフの子、めっちゃ美人だったな。水色の子も可愛かったな・・・いかんいかん!)

 すると遠くからビキニアーマを着た赤毛の剣士の元気な声が聞こえ、アルは慌ててその場を離れた。


(まずいぞ・・・見つかったらどうしよう・・・!)


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「あの人きのう宿の食堂にいたよね?急ぐわよ!」


 魔法使いの少女とエルフも、名前も告げず慌てて去っていった少年に驚くも、赤毛の剣士リリィが己に問うように呟いたその声に頷いた。


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 こうしてアルと3人の少女たちとのファーストコンタクトが終わったのだった。

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