日本のゲーム会社と中国のゲーム会社の違いを資金集めの面から解説してみる。


(筆者は経済系の仕事をしていますが、特定の企業や国に肩入れする記事ではありません。画像はイメージです)



出典:放置少女


出典:放置少女(C4games)


中国の会社は小さな会社でも、意外に資金力があってびっくりすることがある。それはなぜか。わかりやすく説明してみよう。


日本のゲーム会社で働いていたAさんが独立して自分の会社を作ることにした。

Aさんの自己資金だけでは足りないので、銀行から金を借りることにした。
しかし大手銀行は出来たばかりの会社に金など貸さない。

ようやく金を貸してくれる小さな銀行を見つけると
「Aさんが連帯保証人になるなら貸してもいいですよ」と言う。
仕方なくAさんは連帯保証人の契約書にハンコを押す。

この会社が倒産したら、Aさんは身ぐるみ剥がされて全財産を失う。
自己破産するか、死ぬまで借金を背負うか、夜逃げするしかない。
これでは怖くて会社など気軽に作れない。


中国のゲーム会社で働いていたBさんが独立して自分の会社を作った。
Bさんの自己資金だけでは足りないので、ベンチャーキャピタル(投資会社)の出資を呼び込むことにした。

投資会社からの資金は銀行の融資とは違って「投資」なので、会社が倒産しても返済する必要は無い。
この会社が潰れてもBさんは最初に出したお金を失うだけで、それ以外のお金は取られない。
だからまたすぐに新しい会社を作れる。

投資会社は出資した金を失うが、それは織り込み済み。100社のうち99社は潰れても、残りの1社が(テンセントやアリババやネットイースのように)大企業に成長すれば、何万倍にもなって返ってくる。

これは資本主義の原則通りだ。


大航海時代に株式会社が誕生した時、船会社のオーナーは自分が危険な航海に出る代わりに、金を出して船員を雇った。
船が沈めば船員は命を失うが、株主は命まで取られないので、また会社を作ることができる。

出資した金以上のリスクを負わなくて済むことを有限責任という。

それに対して、会社の借金を出資者が背負う義務のある会社は無限責任
こんな会社は誰も作らないので、世界のほぼ全ての会社は有限責任の会社。

日本の株式会社も有限責任。
英語のCo., Ltd.(Company Limited)も同じ。中国の有限公司も同じ。


そう、日本の会社も表向きはほぼ全てが有限責任会社のはずだが、なぜかこの原則が日本では通用しない。

会社が借金を抱えて倒産したら創業者が自宅を失うなんて、他の国では聞いたことがない。これでは無限責任と同じではないか。
小さな会社だけでなく例えばデパートの「そごう」のような大きな会社までもがオーナーが個人で債務保証をしていた。これは異常だと思う。

実質的に無限責任を背負わされる日本でベンチャー企業が少ないのは当たり前。
それ以外の理由としては、日本に小さなベンチャー企業にも出資する投資会社が少ないというのもある。
(日本でギャンブル的な投資も平気でするベンチャーキャピタルとしてはソフトバンクが有名だが、そのような投資会社は数としてはあまり多くない)


世界のベンチャー企業数はアメリカと中国の2か国が突出して多く、中国では毎日数万社の新たな企業が誕生している。
それだけ多ければ潰れる企業も多いが、潰れてもまたすぐに新たな企業が誕生するのは、中国もアメリカも資本主義の国だからだ。

市場経済を導入して40年近くになる中国。しかしまだ古い考え方を変えられない日本人がいるようなので、私がここで事実を言おう。


「中国は資本主義の国」


新しく作られるゲーム会社が中国でとても多いのは、

・資本主義が徹底している
・失敗しても再チャレンジできる
・一攫千金を夢見て小さな会社に出資する投資会社や投資家がものすごく多い

こういった理由があるから。


日本でも夜逃げしなくて済むようになれば、ゲーム業界も活気づいていいと思うのに……。




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