法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『十二国記』のTVアニメ版「風の万里 黎明の空」を見返す

 スタジオぴえろ制作、2002年にNHKBSで放映されたTVアニメ版を、ひょんなことから久しぶりに視聴。地上波放映以来だから20年ぶりか。

 NHKらしく、おそらくマスターの時点でハイビジョンなので、作画そのものはイマイチな作品だが映像に無理やりなHD化が感じられず自然に見られた。
 作画が安定して良いのは小林理作監回だが、窪詔之作監回での半獣キャラクター楽俊のネズミらしい作画は絵柄をあわせることよりも地力の巧さが出ていて良い。いっそのこと動物系作監として全話に手を入れても良かったのでは。


 当時はアニメオリジナルキャラクターの浅野について、いかにも會川脚本らしい異世界転生を皮肉るキャラクターでありつつ、唐突に挿入されたと感じて末路だけ印象的だったが、あらためて見るとけっこう話運びに活用できている。この章の小悪党に接近してアクション的な見せ場をつくったり、小悪党なりの信念を語られるきっかけにしたりと、アニメらしく会話のかけあいで内心をひきだしていた。
 そしてこの浅野が接近した小悪党の昇紘だが、原作小説ではただの邪悪な領主らしいが、アニメでは特異な真意が明かされる。ファンタジー世界らしい人工的な設定の世界に対して、あえて試し行為のように悪事を働いていたのだと。当時はメタフィクション的な設定に向きあい、皮肉なドラマを背負ったキャラクターだと受けとったが、実は現実でもイーロン・マスク氏が似たようなことを考えているかもしれないという説を見かけたのだ。

 もちろんあくまで説をとなえた人物も本気で考えてはいないだろうが……ただ世界シミュレーション仮説を信じているなら、それだけでも現実世界への態度が恣意的に冷酷になることに説明がつくとは思えた。