「ニュースや芸能ニュースを扱わない」という方針を掲げ、朝の情報番組の中で異色の存在感を放っているTBSの「ラヴィット!」。お笑い芸人やタレントによる“大喜利”や“ゲーム”といったバラエティー色の強いコーナーで人気を集める同番組で、麒麟の川島明と共にMCを務めるのがTBSアナウンサーの田村真子だ。
※日経トレンディ2024年4月号より。写真の全カットを含め、詳しくは本誌に掲載しています
朝の情報番組といえば、NHKや関東キー局が力を注ぐ、激戦区の一つ。その中で、「ニュースや芸能ニュースを扱わない」という方針を掲げて存在感を示すのは、TBSにて毎週月曜日から金曜日の朝8時に放送される「ラヴィット!」だ。
2021年3月末にスタートした「ラヴィット!」は当初、低視聴率に苦しんだが、他番組が横並びで時事ネタを扱う中、お笑い芸人やタレントによる“大喜利”や“ゲーム”といったバラエティー色の強いコーナーを繰り広げる独自のスタイルが好評を得て、視聴率が上昇していった。
この異色な朝の帯番組にて、お笑いコンビの麒麟の川島明と共にMCを務めているのはTBSアナウンサーの田村真子だ。「ラヴィット!」での田村は、ゲームに挑戦するなど盛り上げ役も担いながら、番組の進行を務めている。番組が始まった当時の田村は、まだ若手と呼ばれる入社3年目。局にとって重要な朝の帯番組のMCに抜てきされた上に、他に例を見ない番組ということで、スタート当初は戸惑いの連続だったと振り返る。
――「ラヴィット」は、この春で4年目を迎えます。21年3月の番組スタートはどんな気持ちで臨もうと考えていましたか?
始まった当初はどんな番組になるのか、なかなか想像がつかなかったというか(笑)。もちろん、「ニュースは取り扱わない」というコンセプトは最初からあったんですけど。放送時間のメインターゲットが主婦の方になるので、初めの頃はもうちょっと生活お役立ち情報やグッズを紹介したりする中に芸人さんたちも入っていただいて、楽しくやっていこうっていう感じだったんです。でも、どんどんバラエティー色が濃くなっていって。当時の自分が、今の番組を見たらびっくりするだろうなっていうぐらいには変わっていますよね。もし、スタート時から今みたいになっていると分かっていたら、もっと緊張していたと思います。私に務まるかなって(笑)。
コロナ禍の時期は、川島さんと芸人さんの取りとりが“大喜利”のようだと話題を集めましたけど、今はゲームがメインになっています。今も1年後にどういうことをやっているかは、正直想像がつかないです。常に変化し続けている番組だなって思いますね。
毎日、アドリブのような現場
――基本的な質問になりますが、田村さんはゲームに参加するなど出演者として番組も盛り上げながらも、進行を守っていく立場ですよね。
そうですね、基本は進行役です。もちろん川島さんに進行を助けてもらうときもありますし、川島さんがいらっしゃるので心強いです。でも、やっぱり川島さんをはじめ、芸人のみなさんには自由にやってもらいたいし、進行や番組の尺はあまり気にせず、私に進行を任せてもらえるようでいたいと思っています。
――番組内での芸人のみなさんは、本当に時間配分などを気にせず楽しんでいるように見えます。例えば、オープニングトークコーナーは21年3月末の放送開始当初は15分程度でしたが、出演者の会話が盛り上がるとその流れを止めずにどんどん長尺化して、昨今では1時間を超えることも珍しくないですよね。現場ではどのように、進行管理をしているのでしょうか。
もちろん台本の時点で、「今日は、その後のコーナーVTRが何本あるから、30分ぐらいで終わります」だとか、「今日は1時間でいきます」など目安はあります。そして、その目安を超えても、VTR中のクイズをカットしたりするなどの調整をして、5分は押してもなんとかなるっていう計算でやっているんです。でも、やっぱりほぼほぼそれ以上押すんですよね(笑)。そういう場合には、スタッフさんが放送中にVTRの中で少しでも短くできる部分を削るなどの作業をしています。
私はインカムやカンペで伝えられる指示に合わせて、「そろそろこのゲームを終わらせて、次に進む」といった進行をしています。刻々と状況が変わる中で、最後は自分が次に行くきっかけをつくらなければいけないので、本当にハラハラしますね。例えば、尺がギリギリだとしても、すごく盛り上がっているところで流れを切るのはどうなんだろうって思ったりもしますし、難しいです。
ある意味、アドリブですよね。「テレビの仕事は事前の準備が大事」だと新人のときから言われていますし、今でもそうだと思っています。でも「ラヴィット!」は準備ももちろん大事なんですけども、いかにその場で対応するかが重要かもしれません。なので、2時間の番組ではあるんですけど、なんて高カロリーな番組なんだろうって。終了後はドッと疲れます(笑)。今はファミリーのみなさんとのチームワークができて、気持ち的には安心できますけど、カロリーの消費は本当に尋常じゃないです。楽しいんですけど、楽しければ楽しいほど、盛り上がれば盛り上がるほど、余計大変になっていくので(笑)。
アナウンサーの役割を果たす
そう語る田村だが、番組を見ていると、ゲームのコーナーなどを自らも楽しみながら、常に落ち着いて進行も務めているように見える。「パニックになるほど焦ったこともあるんですけど、よく『顔に出ない』って言われます」と笑うが、根底には「アナウンサーとしての役割を果たさなければいけない」という強い思いがある。
――画面越しでの田村さんは非常に落ち着いて見えます。パニックにならないために心掛けていることはあるんでしょうか。
やっぱり見られているという意識があるので、パニックになれないというか。耳元のイヤモニでスタッフさんが叫んでいるときとかもあるんですけど、画面に映っている私は落ち着いていないといけない。「ラヴィット!」はニュースを扱わない番組ですけど、放送中に事件や事故、災害などが起こった場合には、その時間にスタジオにいるアナウンサーは基本的に私しかいないので、自分で対応しなければいけないですし。例え、ゲームをわちゃわちゃとやっていても、緊急の場面では声を張り上げて対応するのが私の役割。その緊張感が常にあるかもしれないですね。
――田村さんは、24年4月で入社7年目となります。アナウンサーとしてスキルアップのために取り組んでいることはありますか。
「ラヴィット!」をやっていて実感するのは、演者さんとの関係性が大事だということなんです。そういった部分では、どの番組でも以前より積極的にコミュニケーションを取りたいと思うようになりました。それまでは、いちアナウンサーがタレントさんにコミュニケーションを取りに行くって、むしろ失礼じゃないかと思う部分もあったんですけど、関係を深めた方がお仕事はやりやすくなるし、お互いにプラスなんじゃないかなって。
川島さんともCM中などによく雑談をしているんです。「こういう仕事で誰と会った」だとか、「このドラマが面白い」だとか。ラヴィットメンバー全体でもよく話をしていますね。よく見ている方に「学校のクラスみたい」と言ってもらえるんですけど、ほんとにそういう感じです。
――田村さんのようなスキルを身に付けたいと考える後輩もいるのではないかと思います。そのような相談をされたとしたら、どうアドバイスをしますか?
アドバイスするとしたら、「ラヴィット!」は“楽しさ”を売りにしている番組なので、まずは「自分が楽しむことがすごく大事だ」と。ただただ進行に徹しているアナウンサーが川島さんの横にいるのでは、どうしても見え方が変わってくると思うので、なるべく自分も楽しんだ方がいいと思っています。もちろん、私も最初は楽しむ余裕なんてなかったですし、今でも焦ってしまうこともあります。私たちアナウンサーがやるべき第1のことは進行や危機管理なので、まずはそこに徹して、余裕が出てきたときに楽しめればいいよと、たぶん伝えると思います。
テレビのコンテンツ力は強い
昨今のテレビ業界では、“見逃し配信”の影響力が増している。「ラヴィット!」は、21年11月からTVerなどでの見逃し配信を開始。朝の帯番組としては他に先駆けての早い対応だったが、これが奏功。生放送を見ることのできない社会人や学生層にファンを広げる結果となった。1月23日の放送回は、再生回数58万回超えというバラエティー番組としては異例の数字をたたき出している。テレビ局に勤めるアナウンサーとして、田村は“テレビの力”をどのように見ているのだろうか。
――「ラヴィット!」は、ネット上でたびたびバズっています。テレビのコンテンツ力についてどう感じていますか?
テレビって徐々に影響力がなくなっているといわれがちだと思うんです。でも、「ラヴィット!」をやっていると、1月の放送回もそうですけど、他の曜日でもバズることがあります。さらにはテレビ番組から派生して、グッズを出したり、「ラヴィット!カフェ」といったイベントや、「ラヴィット!ロック2023」というフェスもやらせてもらったりしています。拡散力という意味では、やはりSNSの力が大きいですし、実際に「ラヴィット!」もSNSをきっかけに知っていただく人もいるとは思います。でも、“コンテンツ力”という面では、自画自賛みたいになるんですけど、まだまだテレビの力は大きいと実感しています。
「ラヴィット!」が多くの方に関心を持っていただけるのは、生放送だということも大きいと思います。現場の熱量を生放送で発信し、いろんな方がその楽しさや面白さに共感してくださって、拡散していると感じるんです。
(写真/中川容邦)
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