第7161回「金田一少年の事件簿 露西亜人形殺人事件 感想、ストーリー、ネタバレ」 | 新稀少堂日記
2014-01-11 13:58:40

第7161回「金田一少年の事件簿 露西亜人形殺人事件 感想、ストーリー、ネタバレ」

テーマ:コミック



 第7161回は、「金田一少年の事件簿 露西亜人形殺人事件 感想、ストーリー、ネタバレ」です。本格推理になっています。殺されたのは5人の遺産相続候補、見立てられたのは5体の露西亜人形、舞台は湖水の中央に立つロシア風の洋館です。5つの塔が屹立しています・・・・。


「プロローグ 人気推理作家・山之内恒聖の数十億の遺産」

 人気作家の山之内には相続すべき近親者がいませんでした・・・・。山之内は5人の人物を指名し、暗号を解読したものに全遺産を遺贈すると遺言していました・・・・。そんなひとりが雑誌編集者の宝田でした。金田一に協力を頼みます。


 『 楽団は朝礼で前から順に首を刈られた  さあ次は数合わせ  2番の子の首を5番目の子の首の  右に並べてみてごらん  楽しいリズムの始まり始まり 』


「第1章 集められた5人の男女」

 5人の男女は、北海道の湖水の中に浮かぶ露西亜館に移動します。金田一は美雪とビデオ小僧の佐木と共に、宝田と同行します。しかし、地獄の傀儡師(高遠遼一)が付き添ったのが、候補者のひとり幽月来夢でした。これから5日間は全員、露西亜館に缶詰めにされます。その間に、暗号を解けという指示になっていました。外部との連絡は一切遮断されています。


 相続候補人は、5人全員殺されますので、先に露西亜館側の人物を紹介しておきます。

① 弁護士、有頭大介(27)・・・・ メガネをかけた真面目そうな青年です。亡き山之内の遺志を忠実に実行していきます。

② 執事、田代富士夫(62)・・・・ 遺産を全く残されていないことに不満を抱いているようです。

③ お手伝い、桐絵想子(そうこ、18)・・・・ 推理作家を目指しながら、メイドの仕事もこなしています。


 全員が揃ったところで、ヒントとなる第二の暗号が、故山之内本人によるビデオ・レターによって紹介されます。5つの露西亜人形が映し出されます。「第一バイオリンのコンスタンチン、第二バイオリンのターニャ、ビオラのオリガ、チェロのエミール、コントラバスのイワン」、次第に人形は小さくなっています。


 そして、ビデオ・レターは、5人全員が金銭的に窮迫していることを具体的に語っていきます。「頑張って、暗号を解いてくれたまえ、そうすれば今の苦境は脱することができるはずだ」、クリスティの「そして誰もいなくなった」(※)的な展開です。そして、露西亜人形に見立てた連続殺人の幕が切って落とされます・・・・。


「第2章 コントラバスのイワン:ミステリ評論家、神明忠治(50)」

 神明(じんめい)は、実際に展示されている5体の人形の寸法を測ることにします。しかし、その時、後頭部を殴打されたのです。首を切断された遺体が発見されたのはバスタブの中でした。湯が溢れていたために階下の金田一が気づいたのです。コントラバスの人形が、湯船の中に落ちていました・・・・。


 しかし、あと4体の人形は消え失せていました・・・・。


「第3章 チェロのエミール:雑誌編集者の宝田光二(35)」

 宝田が殺されたのは別途の中でした、ナイフで刺殺されました。遺体が発見されたのは暖炉の前でした。金田一たちが見守る中、宝田の首が転げ落ちます。金田一と高遠は屋敷内をくまなく調べ上げます。この館を建てた人物がマジシャンだったのです。数々の仕掛けが施されていたのです(この段階では、高遠はまだ偽装しています)。


 キーも複製不能の物であり1個しかありません。予備キーは鍵がないと空けられない仕組みです。執事が保管しています。予備キーは外からも見えるのですが、頑強な材質で作られており、ワイヤカッターでも切断できません。紐を通してぶら下げているのですが、外そうとしても、微妙に届きません。


 露西亜館は、元オーナーの奇術趣味が如実に現れています・・・・。鍵はリング状の輪でぶら下げられているのですが、下端部だけ突起があり、そこに全ての鍵がぶら下がるという仕掛けになっています。そして、第三の殺人が・・・・。


「第4章 ビオラのオリガ:挿絵画家の幽月来夢(32)」

 ここで高遠がスペア・キーを取り出すための鍵を預かると言い出します。「心配なら、ドアの外を密封すればいい」、そう豪語して眠ります。その夜、依頼者の幽月が部屋の中で絞殺されます。死ぬ前に幽月は犯人を目撃していました。「なぜ、あなたが?」


 寝過ごした金田一は、佐木に起こされます。幽月が起きてこないと言うのです。密封した部屋の中にいた高遠

を部屋から出し、予備キーで幽月の部屋を開けます。彼女も首を切断されていました。そして、露西亜人形も置かれていました。ビオラのオリガが・・・・。


 昨夜、一昨夜と不自然に眠かったことは一同の証言で明かされていました。犯人が、犯行をしやすくするために、睡眠薬を盛っていたと・・・・。しかし、推理は堂々巡りをします。しかし、ここで金田一と高遠が連合することにしました。


「第5章 第二バイオリンのターニャ:推理作家の梅園薫(28)」

 梅園は椅子に腰かけた状態で発見されました。首を切断された状態で・・・・。テーブルに置かれた首のシーツを剥がしたのは、高遠でした・・・・。相続候補者はひとりを残すのみとなりました。


「第6章 第一バイオリンのコンスタンチン:高校生の犬飼高志(17)」

 最後に残った犬飼を全員の前で殺したのは、高遠本人でした。全員の前で刺殺します・・・・。相続候補者は「そして誰もいなくなった」、以下、結末まで書きますので、ネタバレになります。


―――――――――――――――――――――――――――――――――










 そして、誰もいなくなった時に、「あたし、暗号分かったんです」と言ったのが、メイドの想子(③)でした。人形の身長と楽器の長さを表にしたのです。楽器の長さはいずれも20センチでした。楽器を本物の大きさと比較して身長を出し直したと話します。


コントラバスのイワン:身長200センチ

チェロのエミール:      180

ビオラのオリガ:       130

第二バイオリンのターニャ:120

第一バイオリンのコンスタンチン:   150

になります。これを低い順に並び替え、ローマ字でのイニシャルを拾っていくと「TOKEI(時計)」になると・・・・。さらに、『 2番の子の首を5番目の子の首の  右に並べてみてごらん  楽しいリズムの始まり始まり 』が指示するように「IO」は10と読めます。


 10時に時計台に上ると隠し扉が開きました。部屋に戻り、弁護士の有頭(ありとう、①)が取り出してきた封書を読み上げます。「この第二の遺書を突き止めた人間こそが、我が遺産をめぐる連続殺人の真犯人である」、想子は猛反発します。「その遺書は偽物よ」と喚きだしたのです。


 金田一は自らがすり替えたと打ち明け、本物の遺書を有頭に渡します。「・・・・ 有資格者が誰もいなくなった場合には、暗号の解読者を相続人とする」、ここで第4と第5の被害者が登場します。彼らは死んでいなかったのです。金田一の計略と高遠のマジックによって偽装していたのです。


 想子は、屋敷の元オーナーの娘でした。父親が書いたミステリのネタ帳をパクって山之内はミステリ界の大御所になりました。そのため、想子は山之内の遺産を手に入れるために殺害を繰り返したのです(結局3人を殺しています)。


 予備キーは誰でも入手可能でした。知恵の輪のようにわずかな発想の転換で、誰でも取り出すことが可能だったのです(文章だけの説明では難しいのですが、面白いトリックに仕上がっています)。金田一が着目したのは、佐木のビデオでした。意図的に違った人形を混ぜていたのです。そのトリックに想子は引っ掛かりました・・・・。


「エピローグ すべては山之内から」

 山之内は仁徳者だと評価が高かったのですが、5人を指名したことには根拠がありました。5人全員に執拗な恨みを抱いていたのです。それぞれが殺し合うことを期待しての暗号であり、遺言でした。金田一は、そのことに思い当たります。


 ところで、地獄の傀儡師こと高遠は、気球で逃亡しています。金田一との闘いはまだまだ続きます・・・・。


(蛇足) 人形を隠したのは、想子が遺言を取り出す際、吹き込んだ雨によって、人形の衣装が濡れたという設定になっています。


(追記1) 「金田一少年の事件簿」については、かなりの作品を取り上げています。興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"少年の事件簿"と御入力ください。


(追記2) 「そして誰もいなくなった」についても、既にブログに取り上げています。

「感想」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10321932521.html

「ストーリー」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10322022804.html

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コメント

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1  この作品って・・・

「死んだ人間の悪意」という意味で
「そして誰もいなくなった」よりは日米の最高傑作と言われる推理小説に似ていると思います。
そして、その一本はジッチャンの事件です。