【第36回】<補適法24条解説>事務局担当職員が「売上がないなら補助金は出せない」と言ったら違法?
――補助金等適正化法 第24条が禁じる“職員の不当干渉”とは
✅ 実地検査で「補助金支給できない」と言われた…
最近、私が同席した実地検査でこのような状況がありました。
「補助金の実地検査に来た職員が、“売上がないので補助金は支給できません”」言ってきた
――実はこのような行政職員の発言、**法律上問題のある「不当干渉」**に該当する可能性があります。
✅ 補助金等適正化法 第24条とは?
「補助金等の交付に関する事務その他予算の執行に関する事務に従事する国または都道府県の職員は、当該事務を不当に遅延させ、または補助金交付の目的を達成するために必要な限度を超えて補助事業者に不当に干渉してはならない。」
簡単に言えば、補助金事務に関与する行政職員には:
✅ 補助金交付を故意に遅らせること
✅ 補助金の目的を超えた要求や圧力をかけること
が法律で明確に禁止されています。
✅ なぜこんな規定があるのか?
背景には、過去の行政現場における不当な“統制的干渉”の歴史があります。
補助金を人質にして自治体に人事や組織改編を要求
支給時期を遅らせて財政的に圧迫
正当な手続を経ずに支給の「現場判断」を押しつける
こうした行為は、補助金の「公正かつ効率的な使用」という本来の目的を歪めてしまう――
そこで補助金等適正化法は、“補助金を出す側”の行動にも明確なルールを課したのです。
✅ 「売上がないなら補助金は出せない」発言の問題点
では、冒頭の検査員の発言「売上がないから補助金は支給できない」は、何が問題なのでしょうか?
以下の観点から見てみましょう。
① 補助金の交付条件は法律・交付規程に明記されている
→職員の主観的判断では決められない
② 売上の有無は申請条件に含まれていないケースが多い
→補助事業の開始・実績などが中心
③ 実地検査員は裁量判断者ではない
→形式的な報告・確認のために派遣される役割
④ 発言によって交付を事実上拒否した場合
→法第24条の「不当干渉」に該当する可能性大
つまり、「その売上では無理だよ」といった発言が補助事業者に圧力を与え、撤退や諦めを促すような効果をもたらすなら、
それは違法な“行政の逸脱”なのです。
これは交付申請や実績報告でも電話口の担当者がよく使う手法で同じく逸脱行為と言えます。
✅ 不当干渉があった場合の対応法
✅ 1. 発言を記録する(録音・メモ)
→ 電話や検査時の発言・態度は「後からでも評価される証拠」になります。
発言者の名前・部署・日時・趣旨を記録に残しましょう。
✅ 2. その場で抗議せず、冷静に確認する
→ 感情的に対立すると記録が曖昧になります。
「あなたの発言は補助金適正化法第24条違反の可能性があるので、確認のうえ、後日正式な書面で回答をお願いします」と対応。
✅ 3. 法律に基づく抗議文・照会文を送る
→ 弁護士・支援者の協力で、補助金適正化法第24条違反の可能性がある旨を明記した文書を送付。
「なぜその発言が行われたのか」「法的根拠は何か」を問いただします。
✅ 4. SNSやnote等で“実態”を共有する
→ 同じような体験をした他の事業者にも、気づきや行動のきっかけになります。
本記事もその一環です。
✅ そもそも、補助金は“お願いするお金”ではない
補助金は、法律と予算に基づき、「要件を満たした者に支給されるべきもの」です。
その審査や実地検査の過程で、行政職員が私的判断を持ち込むことは、
制度の信頼性を根底から揺るがす行為です。
そして、補助金等適正化法第24条はそのことを明確にこう定めています:
「不当に遅延させ、または補助金等の目的を超えて干渉してはならない」
これは、事業者を守るための法律でもあるのです。
✅ まとめ:事業者も“守られるべき主体”です
補助金制度には多くの手続や書類が求められます。
でもその一方で、「補助金を出す側の職員」も、
法律に従い、公正・中立な姿勢で行動しなければならないというルールが存在します。
今後、実地検査や審査の過程で不当な発言や態度に遭遇したら、
ぜひ第24条の存在を思い出してください。
📢 ご相談・共有歓迎します
実地検査で納得できない言動を受けた
支給拒否を「口頭で」通告された
補助金を途中で諦めさせられた
こうした経験がある方は、ぜひDMやメールでご連絡ください。
照会文書のひな型、抗議書の草案、note掲載支援など、
実務と法的根拠の両面からサポートいたします。
補助金制度を“正しく使う”ことは、
補助金を“不当に使わせない”ことと、同じくらい重要です。


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