ゲオの歴史は、1986年に創業者の遠藤結城さんが愛知県豊田市にオープンした「ビデオロードショー美里店」まで遡る。80年代といえば、一般家庭にもビデオデッキが普及し始めた頃。ベータマックスとVHSが覇権を争っていた時代だ。
もちろんインターネットなど存在しないので(前身のARPAnetが大学や研究機関をつなぎ始めていた)、動画配信のサブスクなんてない。電話は固定式で、一家に一台が基本。ビデオゲームでは任天堂の「ファミリーコンピュータ」(83年発売)が一大ブームを巻き起こし、PCでは「MS-DOS」が走り始めた頃だ(81年にVer.1.0出荷開始)。
そんな時代だったから、映画は基本的に公開中に劇場で見るか、「〇〇ロードショー」といったテレビ番組で放送される時に録画するしか見る手段がなかった。ビデオテープやレーザーディスク(LD)、VHD(LDの競合規格)の映画ソフトも販売はされていたものの、高価過ぎてほぼマニア向けの商品だった。
「当時のビデオソフトは、映画1本で1万5000円とか、2万円近くするものでした。それを安価に、自宅で楽しめるようにしたのがレンタルビデオです」と坂井さん。店舗へ行けば、大量の映画ソフトの中から好きなものを選び、1泊2日や2泊3日で劇場より安い千円程度(後に数百円)で借りられた。いかに画期的なサービスだったか分かるだろう。
「時代が流れ、今また“需要はあるのに高額なもの”、つまりPS5があります」と坂井さん。多くの人が遊んでみたいと思っても高価でなかなか手が出せない。そんなゲーム機にレンタル需要を見い出した。
SNSの反応が示すように、7泊8日で980円という料金はかなり戦略的な価格設定だった。本体はなるべく安く貸し出し、ユーザーの来店機会を増やすことで、ゲームソフトなど関連商品の売上増につなげる。ゲーム機レンタル単体の収益よりゲーム関連売り場全体の活性化を狙った。
もちろんこれは、CDレンタルやゲーム販売だけでなく、中古ハード/ソフトの買取や修理までを手がけるゲオだからできた料金設定ともいえる。実際、坂井さんは「PS5レンタル時にソフトの同時購入などもあるので、確実に売上増につながったとみています」と手応えについて語っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
続きを読むには、コメントの利用規約に同意し「アイティメディアID」および「ITmedia NEWS アンカーデスクマガジン」の登録が必要です
Special
PR