トランプ氏とハーバード大の対立、難病ALSの研究に重大な影響
Janet Lorin、Jason Kao-
ハーバードへの助成金の一部をトランプ政権凍結、重要な研究止まる
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科学分野の人材を危機にさらし経済に極めて大きな損害-ウォルト氏
デービッド・ウォルト氏は1月、科学分野で目覚ましい功績を残したとして、米国家技術賞を授与された。体外受精における遺伝子スクリーニングや病気の診断精度の向上、作物の耐性強化を可能にする発明が評価された。
同氏はハーバード大学医学部でバイオニクス工学の教授を務める。最新の成果は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の早期発見に寄与する研究で、筋肉を制御する力が衰えるこの病気に対する新薬の開発が期待されている。
しかし先週15日の朝、ウォルト氏は残念な知らせを受けた。米厚生省が、同氏と政府との契約に関する業務停止を命じた。名門ハーバード大学に自らの要求を受け入れさせようとするトランプ政権による措置の一環だ。
政府契約は65万ドル(約9160万円)規模。代替となる資金を見つけない限り、自身のALS研究は終わるとウォルト氏は説明。「患者は本来避けられたはずの苦しみを受け、一部は命を落とすことになる」と電子メールで懸念を示した。
米国の私立大学に対し、連邦政府が助成金や契約を通じてどこまで条件を課すことができるのか。こうした点を争う政治的・法的な闘いは長期化が予想されている。ウォルト氏のプロジェクトを含め、多くの研究がその渦中にある。
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トランプ政権は各大学に対し、キャンパス内でユダヤ人学生を守るよう求めている。ハーバード大のアラン・ガーバー学長は、政府と協力する意思を示しているが、政府の要求は「協調的・建設的なやり方で反ユダヤ主義に対処するものではない」と話す。同大学は「自らの独立性や憲法上の権利を放棄することはない」としている。
連邦政府はこれに対し、ハーバード大に対する22億ドル余りの契約と助成金を凍結した。
ハーバード大の広報担当者、ステファニー・サイモン氏は「今後さらに多くの業務停止命令が出されると予想している」と述べた。
ALS研究者のウォルト氏は、トランプ政権による資金凍結の影響を受けていない他のプロジェクトに一部スタッフを一時的に移した。あくまでも暫定的措置であり、持続可能ではないとしている。
資金凍結は「科学分野の人材を危機にさらし、経済に極めて大きな損害をもたらす」と同氏は話した。
原題:Trump’s Feud With Harvard Imperils Critical Research Into ALS(抜粋)