「日本一過密」空港、第2滑走路運用開始 混雑緩和に地元期待、効果に疑問の声も
滑走路1本当たりの発着回数が「日本一過密」と言われる福岡空港(福岡市博多区)で3月から、2本目の滑走路の運用が始まった。航空機の混雑緩和や離着陸の遅れ解消に地元の期待は高まるが、1時間当たりの発着増は当面2回ほどにとどまる。旺盛な訪日客需要に応えられるのか疑問視する声も出ている。(共同通信=相沢一朗) 「ホテル、物流、製造業といった地域事業への波及に期待している」。空港を運営する福岡国際空港(FIAC)の田川真司社長は3月の記者会見で力強く語った。 福岡空港は市中心部のJR博多駅から約3キロと利便性が高く、旅客数は羽田、成田、関西の各空港に次ぐ国内4位を誇る。一方、滑走路は1本しかなく、九州とアジアを結ぶ拠点空港として慢性的な遅延が積年の懸案になっていた。 増設したB滑走路は全長2500メートル。国が2015年度に事業に着手し、高さ94.2メートルの新管制塔などを含め総額約1643億円かけて整備した。既存のA滑走路の西側に位置し、通常は国際線の離陸用として利用される。
滑走路でトラブルが起きると、引き返したり、近くの北九州空港に着陸したりせざるを得なかったが、もう一方を利用できるようになった。 FIACは、滑走路増設に合わせて増改築した国際線ターミナルビルも3月に開業させ、2027年にはホテルや飲食店が入る複合施設の建設も計画する。田川社長は「九州全域を周遊してもらえる、お役に立てる空港になっていく」と意気込む。 ただ道は険しい。市街地に近く用地が限られていたことから、現滑走路との間隔は210メートルと狭く、2本同時に離着陸できない。安定して発着できる航空機数を示す「滑走路処理容量」は1時間当たり約38機から約40機に増える程度だ。 「2便とはいえ、枠の拡大は大きい。旅行客だけでなく、国際会議や展示会の開催増にも期待できる」。九州運輸局の担当者は経済波及効果が大きいとの見方を示すが、航空機の交通整理を行う管制官はより高度な技能を求められるようになり、パイロット(操縦士)が隣の滑走路へ誤進入するといった重大事故の誘発リスクも拭えない。
スカイマークの本橋学社長は、福岡―羽田間をはじめ「ドル箱」路線を抱える福岡空港は収益を左右する重要空港だと指摘。「(新滑走路ができても)少ない増枠の中で、航空各社の争奪戦になっている」として、さらなる環境整備を求めた。