「職務上の誤り」でガザ救急隊員15人を殺害 イスラエル軍が調査結果を発表
イスラエル軍は20日、パレスチナ・ガザ地区でパレスチナ赤新月社(PRCS)の救急隊員ら15人が殺害されたことについて、「職務上の誤り」が原因だったと発表した。
イスラエル国防軍(IDF)の調査では、「作戦上の誤解」や「命令違反」などの誤りが相次いだことが分かった。
関係した部隊の副指揮官は、「報告の際に不完全で不正確な報告をした」として解任されたという。別の指揮官も、「事件に対する全体的な責任」から「処分を受ける」という。
一方、PRCSの広報担当は、「真実はまったく異なるにもかかわらず、責任を現場の個人のミスに転嫁しようとして正当化しようとしている」と非難し、報告内容は「無効だ」とした。
救急車だと認識していなかったと
3月23日に発生したこの事案では、PRCSの救急車、国連の車、消防車が続く車列が、イスラエル軍に銃撃され、救急隊員14人と国連職員1人が命を奪われた。
IDFは声明で、部隊が当時、敵の脅威に直面していたと考え、発砲したとした。また、調査の結果、犠牲者のうち6人がイスラム組織ハマスのメンバーだと判明し、即決処刑はなかったとした。調査に当たった少将は、それら6人の名前はのちに公表されると記者団に述べた。
調査報告書によると、この事案は「敵対的で危険な戦闘地域」と呼ばれる場所で発生した。現場の指揮官は、車両が急接近したことで、即座に具体的な脅威を覚えたという。
「夜間の視界不良」も誤りの原因で、指揮官は車両を救急車だと認識していなかったとしている。
20日のIDFの記者会見では、当日撮影された空撮映像が流された。それによると、イスラエル軍は2回にわたり攻撃しており、攻撃と攻撃の合間の約1時間に、救急車1台を含む他の車両数台が、銃撃されることなく現場を通り過ぎていた。
IDF側は、このことから、兵士らは脅威を感じない限り、医療関係の車両に発砲することはないと証明されるとした。
ガザの国連職員のジョナサン・ウィットル氏は、IDFの調査を不十分だと主張。「説明責任の欠如は、国際法を弱体化させ、世界をより危険な場所にする」と述べた。
イスラエルは当初、車列がヘッドライトも警光灯もつけずに暗闇の中で「不審に」近づいてきたため、兵士らが発砲したと主張した。また、車列の移動は事前にIDF側と調整も合意もされていなかったとした。
しかしその後、殺害された救急隊員の携帯電話から動画が見つかり、車両はライトも警光灯もつけていたことが判明。車両は緊急車両だと明示され、救急隊員は反射材の付いた制服を着ていたことも分かった。
これを受けてIDFは、当初の説明を「間違い」だったとした。
殺害された15人の遺体は、砂に埋められた。国連など国際機関の車両がこの地域を安全に通行できず、現場の特定もできなかったため、遺体が確認されたのは事案発生から1週間後のことだった。
IDFは、この事案でPRCSの救急隊員1人を拘束していることも明らかにした。名前は発表しなかったが、赤十字国際委員会はこれまでに、アサド・アル・ナサスラ氏だとしている。
PRCSなどいくつかの国際機関は、この出来事についての独立調査を求めている。
IDFが指揮官や将校らを処分するのは、これまでもあった。昨年4月には、ガザ地区で人道支援活動を行っていた慈善団体「ワールド・セントラル・キッチン(WCK)」の職員7人がイスラエル軍によって殺害され、将校2人が解任、他の関係者らも処分された。