ガシャガシャと鎧の音を立てながら"化身"が走り出す
そのまま化身はぐわりとホシノに対して直剣を振り下ろした
「…くっ…!」
直ぐさま彼女は盾でそれを防ぐがその剣に纏わる炎がが彼女にダメージを与える
ガードし続けるのは得策では無い、彼女はそう判断しながらショットガンによる反撃を試みる
直剣を振り終わって間もないこの隙に叩き込む等造作もないことだ
すぐさま銃口を向けて発砲、彼の脇腹からドス黒い血のような物が出る
"化身"は撃たれたことなど気にせずに銃口側に向けて直剣で切り払う
ホシノはバックステップしてそれを回避した
そこに"化身"は少し溜めてからの叩きつけを行う
振りの大きいそれは見極めるのには容易い子とであるが…ホシノは同時に一切の慈悲が無いことをその攻撃で悟る
「ありゃ…多分こりゃ和解は無理な奴だねー」
「そんな…!で、でも声をかけ続ければ……」
「いやー、多分無理じゃないかな」
「どうしてそう言い切れるのよ!?アイツなら、旅人ならきっと…!」
セリカはそう叫んで続きを言うことを止めた
叩きつけにより突き刺さった直剣を引き抜きこちらにゆっくりと歩く様子は、どう見ても話し合いが通じる相手では無い
そもそもこの数回の攻撃の間に彼は直剣を振る直前の唸り声のような声しか出していない
「…それに、多分あれは"旅人"じゃない」
「旅人、じゃない?」
その上、ホシノは感じていた
目の前の"化身"から感じ取れる、様々な意志
その
それが無数に─────それこそ無限にかの肉体の中にある
その中の"旅人"の意識がどれかなんて…分かったものでは無い
「あれは何かの集合体、恐らく…旅人もその1部だったんだろうね」
「……どういうこと、なの……」
ホシノの言うことを理解出来ずセリカは呟いた
恐らくどう簡単に言おうと理解は出来ないだろう
目の前の存在は普通の常識を超えた存在、元は神を殺した者たちの集合体のような物なのだ
ホシノが盾を構え直す
その間に援護に入るようにジークマイヤーとソラールが"化身"に対して切りかかる
直剣による実直なスタイル、その螺旋剣一本で"化身"はソラールとジークマイヤーの攻撃を防いでいく
偶に躱し損ねて当たることもあるが彼は全く怯まずに攻撃を重ねる
二人も無論無事では無い、時折ミスをして攻撃を受けてしまう
「"…ゲヘナ大隊はカイザーの方で手一杯だ、私達でやるよ"」
「「「「『はい!』」」」」
先生はシッテムの箱を見ながら言った
ゲヘナは今カイザー兵士の後処理や追撃をしているだろう
ヒナはそれを指揮している筈だし、トリニティはもう十分援護してもらった
それに、旅人を止めるならこの場に居るもの達が適任だ
あれが旅人なのかそうでは無いのか分からないが…そうでなかったとしても、私はアレを止める
丁度、隙を見て攻撃する古い戦士二人が直剣による薙ぎ払いで吹き飛ばされた
「"ホシノとシロコは近距離で攻撃、セリカとノノミはフレンドリーファイアしないように援護して"」
「りょーかーい…目を覚まさせてあげるよ」「ん、やるよ」
「はーい♪」「行くわよ!」
『私もドローンで支援します!』
吹き飛ばされた2人を援護するようにアビドス生徒が戦闘に入り込む
"化身"は入り込んできた小柄な影に対して直剣を右から左へと振るう
「無駄だよ」
「……」
それを見切ってホシノはショットガンを叩き込む
"化身"は少し血を散らしながらも彼女に対して攻撃を続ける
「ん、がら空き」
「…!」
その背中に対してまず蹴りを入れ、空中に飛び上がってから背中に弾丸を叩き込む
後ろからの攻撃に"化身"はぐわりと直剣を振った
「"離れて!"」
「行きま〜す♪」「くらえっ!!」
そこにノノミとセリカの集中攻撃
ガトリングガンとアサルトライフルの的確な射撃が突き刺さる
「………!」
あまりの数の銃弾を受けて"化身"は膝を崩した
無論そのチャンスを逃すアビドスの者達では無い
「"今!"」
「もう1回ー!」
シロコが蹴りを入れながらの銃撃、ホシノのショットガン
更に少し離れたところからのガトリングガンとアサルトライフルによる正確射撃
古い戦士二人による近距離攻撃によって"化身"の周りに黒い血が広がっていく
"化身"は立ち上がり、するりとバックステップした
そして、その直剣をぐわりと振ると────ガキィン!という音と共に直剣の刃が伸びる
それはまるで、一本の槍のようであった
「変わった…!?」
「槍!?」
溜め、そこからの瞬間的なかち上げ
「ぐうっ!?」
それに当たってしまったシロコは勢い良く上に吹き飛ばされる
ホシノはすぐさま飛び上がり彼女を抱えて少し離れた所に着地する
「少し、油断した…」
「急な変化だもん、仕方ないね」
ホシノは盾を背中に戻しながらそう言った
盾を構えていても攻撃は通ってしまう、ならば昔のようなスタイルの方が身に合うだろう
視線を"化身"に戻してみれば連続突きなどの新しい行動で他の面々を苦戦させているのが見える
『………!』
ソラールはタリスマンに持ち替えて少し離れたところから太陽の光の槍を放つ
それを見た"化身"はローリングで回避してソラールに対して槍で突く
彼は前にそれを避けるが"化身"はそれを逃すことはしない
手を顔の前で交差させる
"化身"に向かってローリングしたソラールは突然の衝撃波に吹き飛ばされる
無論後ろから斬りかかろうとしたジークマイヤーも含めてである
「あれは…!?」
「体から発する衝撃波、かなぁ…しかも手痛いダメージ付きの」
「ん、インチキ」
少し離れた場所からそれを見た二人はそう言いながらも近接戦闘をしようと飛びかかる
ホシノは空中でまたしても"化身"が手を交差させる姿を見た
「おっおおおぉぉおお!?」
「ぐぶらっ!?」
すぐさま彼女は盾を展開してダメージを軽減するがシロコはモロにくらう
空中で吹き飛ばされたシロコは地面にぶつかり少し転がってから止まった
ホシノは体制を立て直して着地する
「に、二度打ちするのねソレ……打ち得じゃん…………おおおっ!?」
半ば乾いた笑いが出ている彼女に対して少し溜めてからの回転攻撃を放つ
長い槍に回転攻撃というソレにホシノは悪態をつきながら回避する
「面倒な手合い……旅人の戦法みたいだね、君───1度スイッチが入ったら殺るまで止まらないのも…ね!」
槍による一点集中の攻撃
それを回避してショットガンを叩き込む
もう一度来たら蹴り上げてやろうかと思ったその時……
"化身"は片膝立ちになり、祈るような体勢になった
「あれは…………」
「!あれは回復です!私の太陽の癒しの恵みと同じポーズです!」
「………!!させるか…!」
しかし妨害するには少し遠い、届かない
苦し紛れのショットガンを連射するが全く"化身"は怯まない
妨害も虚しく、光がぱぁっと広がる
「…回復した程度で!」
そうセリカが叫んだ時であった
ガキィンと音を鳴らして螺旋剣が変化する
「………杖?」
炎が晴れた先にある得物は、杖
それを見た瞬間ホシノは初めて出会った時の、結晶のような槍を思い出した
「魔法使いモード、てことかぁ」
そう言ったと同時に化身がバックステップをする
少し距離が開けたことを言い事に彼は杖を振るった
すると、彼の頭上に7つの結晶の塊が展開される
「ファンネル、って奴かなぁ…面倒だね」
「"遠距離モードなら援護がしやすいと思う、2人は引き続き援護をして!"」
「「了解!」」
化身は杖を頭上に上げ、少し振るう
すると最も近かったホシノに対して旅人が放ったものより少し大きい結晶槍が飛んでくる
「おっとぉ」
ホシノは飄々とした態度でそれを避ける
彼女に続いてソラールとジークマイヤーも続く
どんどんと距離を詰めてくる3人に対して"化身"は勢いをつけて杖を向けた
すると2段重ねの青いソウルの玉が拡散状に放たれる
地味に避けづらいそれに3人共当たってしまうが、それほどの傷では無い
気にせずに"化身"に対して距離を詰める
「ここがそれの反応距離ね、覚えたよ旅人君」
そしてショットガンが届く距離に入った瞬間、展開されていた結晶塊が飛来する
それ程の速度も鬼のような追尾性も無いそれをホシノは軽々と回避する
ソラールとジークマイヤーも剣の範囲内に入った────瞬間
一瞬の杖の構え
そしてそれを"大剣"の様に振り払う
「…んなっ!?」
その杖にはホシノの身の丈を、いや化身の身の丈すら超える青白い刃があった
彼女が避けることが出来たのは奇跡にも等しい、僅かに見えた青い光が無ければくらっていた
それをモロに受けたソラールとジークマイヤーは綺麗に空に巻き上がっている
地面に叩きつけられた二人はすぐさま後方にローリングしてオレンジ色に光る瓶の液体を飲んだ
恐らく旅人と同じ物だろう、彼と同じように傷が癒えて行く
2人が大丈夫な事に安堵して視線を"化身"に戻す
そこには、明らかに「大技です」と言わんばかりに杖に青い光が収束していく光景
そして結晶の塊が再展開されている"化身"
「"ホシノ!みんな避けて!"」
「っ…!!」
先生がそれを言った瞬間的、その杖に収束していたエネルギーが"奔流"として放たれた