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作:回忌
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人間性を捧げよ


トリニティの支援砲撃を受けて、戦闘は順調に進んでいた

戦車が破壊された歩兵なぞ雑兵に過ぎずアビドス生徒と古い騎士2人による攻撃によって壊滅させられていた

 

他の場所でも風紀委員長やその切込隊長、風紀委員達によってカイザーの兵士達は撃退されていた

 

「何故…っ!何故勝てない…!」

 

だからこそ、理事長は拳を液晶に叩きつけた

兵士達は精鋭で戦車や戦闘ヘリには最新鋭のモデルを使用している

凄まじい制圧力、攻撃力を持った優れたものであるというのに!

 

「どこで狂った…?途中までは完璧だったのに…!」

 

カイザー理事は鉄が軋むような音を出した

それは握り締めすぎた拳から響く、ある種の敗北のような音だった

 

彼は考える

 

どこで間違えた?とこで計算が狂った?

途中までは完璧で、アビドスは空中分解する筈だった

 

なのに、なのになのになのになのになのに………奴らは立っている

 

 

 

笑顔で、立っているのだ

 

 

「理事長!」

 

その時、司令室の扉が勢い良く開いてオートマタが現れた

彼はかなり焦った様子で理事長を呼んだ

 

「黙れ!ゴリアテを出せ…!私が出る!」

 

しかし彼にオートマタの報告を聞く気は無かった

長年待った計画が今にも達成される所を邪魔されているのだ

いちいち個人の報告などに耳を貸す気は無かった

 

「理事長!それよりも…!」

 

しかし、オートマタはそれでも声を上げる

緊急の事であると、不味いことであると…叫ぶ

 

「貴様今すぐスクラップになりたいのか!?さっさとゴリアテを出せ!」

「理事長…!………分かり、ました…!」

 

イラついたカイザー理事はオートマタに対してそう脅しをかけた

オートマタは懇願するような目を向けたが、説得が出来ないと判断したのか彼の言う通りに動くことにする

 

オートマタが小走りで司令室から出たのを確認した後に、彼は液晶を見た

 

 

 

 

 

 

 

『うへへ……皆、ただいま』

 

 

 

 

 

 

 

そこには、仲間との再会を喜ぶ小鳥遊ホシノの姿があった

 

 

 

 

 

 

 

「……ハッピーエンドで終われると、思うなよ…!」

 

 

カイザー理事はそう吐き捨て、兵器のガレージに歩いて行った

 

 

『その先のバンカーです!』

「"敵影の姿無し、早くホシノを助けるよ!"」

 

先生達が砂漠を駆ける

彼は大切な生徒の為に、生徒達は大切な先輩の為に

私達アビドスは、1人が欠けていてはアビドスじゃない

 

共にこの学校で生きると決めた仲間達なのだ

その1人が仲間を救う為に皆を窮地に落としたとしても…救う

私たちは仲間なのだから

 

「突入!」

「このっ…!」

 

入口の扉を蹴り開け、中に入り込む

バンカーの内部には誰も…見張りの兵士すら居ない

恐らく予想外の反撃に相当人員を割いているのだろう

見張りの兵士を動員せざるを得ない程、焦っている…消耗していた

 

しかし万が一に備えておこう

 

「"2人とも、外の監視をお願い"」

 

ソラールとジークマイヤーの霊体は軽く頷いて外に出た

私と違って銃弾一発で死なない人達だ、任せても大丈夫だと先生は判断したのだ

シッテムの箱を確認し、ホシノの場所を確認する

 

「"1番奥にいるみたいだよ"」

「あの馬鹿先輩、キッチリと締め上げてやるわ…!」

「ん、同じく」

「優しく行きましょ〜♪」

 

バンカー内部には敵兵は居ない

邪魔をされる心配もせずに……ホシノを救い出すことが出来る

先生はそう思いながらバンカーの最奥に移動する

他の部屋にはなんの反応もない、シッテムの箱によればここに確実に居る

 

「また邪魔を…!」

 

シロコが最奥の扉にタックルをする

恐らく、かなり分厚いのだろうが…簡単にへこみがついていく

ヘイローの加護によってシロコは全く怪我をしていないようだ

 

彼女が何度も、何度も体当たりをする事にへこみがどんどん大きくなっていき────

 

 

 

 

 

 

「ふんっ!!」

「オワァーっ!!!」

「あ」

 

シロコがぶち抜いた扉の大欠片が、最奥部屋の中心に拘束されていたホシノにぶち当たった

 

 

「アイテテテ…出会い頭に物ぶつけてくるなんて…おじさん何かしたかなぁ…」

「何かした!?自分が何したか分かってるの!?」

 

ホシノが拘束から解かれた手で頭を撫でながら言う

無論それを聞いたセリカは怒号を上げた

 

「おー…面向かって言われるとなかなか来ちゃうなー…」

「え、あ…ごめんなさい」

 

怒られたホシノはあははと乾いた笑いを漏らしながら呟く

セリカは言いすぎたと思って彼女に謝った

その横からシロコがすっと現れてホシノの手を引いた

 

「お?」

「ん、こんな辛気臭い場所で再会を喜ぶ気は無い」

 

シロコはそう言って出口まで彼女を引きずっていく

 

「うへ!?ちょ、ちょっと待ってよ~、おじさん心の準備が…」

「"ホシノ、君が撒いた種だからね"」

 

先生はそう言ってホシノを助けない

シロコがあんなに"怒っている"のは、君がやった事だからと手を貸さなかった

 

 

 

そしてそのまま、ホシノはバンカーの外まで引きずり出される

 

「…先輩、何か言うことあるんじゃないの」

「うへー、あれをおじさんに言ってほしいの?」

「そうよ!あれがないと締まらないじゃない!」

 

シロコがむすっとした顔でホシノに言う

今まさにシロコ、いやアビドスの生徒達が望んでいるあの言葉

それを今ホシノに言ってもらいたいのだ

 

しかし、彼女は小恥ずかしいのか飄々とした態度でそれを伸ばそうとする

 

「ホシノ先輩、言わないといつまでもこうですよ?」

『ホシノ先輩、お願いします!』

 

アビドスの生徒達はそう言ってあれをお願いする

あれを言わなければ私たちはまた纏まれないと、団結出来ないと言わんばかりに

 

 

 

 

 

 

「"ホシノ、あれはこういう時に絶対言わないといけない言葉だよ"」

 

 

 

 

 

 

 

「………先生がそこまで言うなら、仕方ないなぁ」

 

ついに、彼女は折れた

この時ばかりはいつもの飄々とした態度がなくなって───

 

「恥ずかしいから言いたくなかったけど…うんうん、そうだよね

ㅤ…これは、私が撒いた種だもんね」

 

彼女は少し深呼吸をして、皆を見た

セリカが少し恥ずかしいのか目を逸らしていて、シロコがいつものクールな顔でこちらを見ている

ノノミは笑顔で、アヤネはホログラムの姿でそこに居る

何故か霊体のソラールとジークマイヤーが、少し離れたところでこちらを見ている

 

 

ホシノは上を見て──────1人居ない事を残念に思いながら、彼を止めなければならないと思いながら………言った

 

 

 

 

 

「…ただいま」

 

「「「「おかえり!」」」」

 

 

 

 

「さて、帰ろう───」

『待ってください!カイザーの部隊がそちらに向かっています!』

 

ホシノがやり残したことを終わらそうと、帰ろうとした時アヤネがそういった

またカイザーかとセリカやシロコがため息をつく

 

「早く迎撃して終わらそう」

「そうよ!いっつもいっつも邪魔して…!」

「"残業ってことかな…"」

 

先生はシッテムの箱を操作しながら呟く

何度も邪魔をしてくるカイザーだが、流石にこれで最後だろう

 

そう思いながら、カイザーの部隊に対して移動して行く

来るのが分かっているのならこちらから潰してやろう

 

シッテムの箱から送られてくる情報を見ながら先生たちは移動して行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その画面上にある、【UNKNOWN】というマークに気付かずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに、これ…?」

 

砂漠、辺り一面砂漠

アビドスだから当たり前…という話だが、しかし目の前の状況はそれを逸脱していた

転がるオートマタと傭兵達、ちぎれた機械の腕と足、壊れた銃や戦車……

 

言えば死屍累々、死んではいないように見える

しかしそれは死んでいないだけである

 

それを見たアビドスの生徒達は思わず困惑の声を漏らしてしまった

 

ここで一体何が起こったのか

一体何が先にこれをしたのか───

 

ホシノは皆に助けられたという嬉しさが、どんどんと冷めていくのを感じる

そんな事で"ぬか喜び"している暇は無いと本能が告げている

無意識に彼女はショットガンのグリップを握り直していた

 

『反応では皆さんの前に、カイザー理事が居る筈なのですが…』

 

アヤネがタブレットを弄りながら言っている、その時だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………居たよ」

『え?本当ですか?』

「……うん」

 

ホシノ、いやアビドスの全員はそれを見た

それを見て…アヤネの言葉に応えられたのはホシノだけであった

 

なぜなら、それはあまりにも無慈悲なものであったからだ

 

カイザー理事が横たわっている

元々着ていたコートはボロボロで、少し焼け焦げている

その顔に光は無く、生気というものを感じられない

 

後ろにある巨大な兵器…ゴリアテの悲惨な姿を見る限り、恐らくホシノ救出を阻止しようと自分から戦いの場に来ようとしたのだろう

自身の完璧な計画を邪魔する奴らを、その手で始末しようとしたのだろう

 

…しかし、それは叶わなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてなにより…1番特徴的であるのはその体に突き刺さった螺旋の剣

 

 

アビドスの全員はそれに見覚えがあった

当たり前だろう、学校に登校する時最近は毎日のように見るものなのだから

「全員殺す」と公言し…そして姿を消した不死人が校庭に置いた篝火

 

正しくそれに突き刺さっていた螺旋の剣だ

 

それだけならば…彼がカイザー理事を薪にして篝火を作っていると思えた

 

 

それだけならば…良かった筈だった

 

 

 

「……誰か、居る?」

「あれは…もしかして…」

 

篝火の前に誰かが片膝を立てて座っていた

長い旅の末にようやく暖かい火を見つけたかのように…少し頭を俯けて座っていたのである

 

しかし、その姿は異形である

 

着ていた鎧は焼け爛れもはや人の物と遜色ない物になっている

鎧を着た騎士、というより亡者と言った方が正しいのだろう

 

 

 

「旅人、さん?」

 

 

 

ホシノがゆっくりと彼に近づこうとした時であった

 

 

「…っ!」

 

 

篝火に近づいてきた彼女に反応したのか、すっと彼は立ち上がる

そして……カイザー理事に突き刺さっていた螺旋の剣を引き抜いたのである

 

瞬間的にホシノはショットガンを構える

他の者達も遅れて自分達の得物を構え始めた

 

ただ、ソラールとジークマイヤーの霊体だけは直ぐさま盾を構えてその異形の存在に突っ込む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その"化身"は現れた闖入者達に螺旋剣を振るったのであった

旅人の旅路!〜キヴォトス編〜

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