「"皆、準備は良い?"」
「バッチリよ!ホシノ先輩を取り返してやるわ!」
「お菓子も色々用意してきました〜♪」
「ん、いつでも行けるよ」
アビドス高等学校、対策委員会室
そこでアビドスの生徒四人が意気込みを固めていた
彼女達の目的はアビドスから去ろうとしたホシノを連れ返すこと
危うくアビドスを助けようとして自分で滅ぼそうとしてしまった…アホな先輩を連れ戻すのである
先生は全員が準備バッチリであることを確認して……白いサインろう石を取り出した
ソラールから受け取った、彼らと協力する為の小物
これさえあれば彼らの書いたサインが見える…らしいのだが
「"…この教室には書いてないみたいだね"」
「そりゃそうでしょ…不法侵入じゃん」
「多分、ホシノ先輩が囚われている手前に書いてあるのではないでしょうか?
ㅤ…ソラールさんの言うことが正しければ、サインは見つかりやすいでしょう」
アヤネの言葉に先生はそうだね、と返した
ソラールの付けたサインは何故か黄金に輝くらしいのだ
彼曰く太陽の戦士の特権であるらしいのだが…黄金に光る必要性はあるのか?
「先生によればゲヘナに協力も仰げたようですし…準備は万端ですね!」
アヤネはタブレットに友軍としてゲヘナが表示されているのを見て、ふぅと息を吐いた
柴関ラーメン屋前レベルの大隊が味方についているのだ、しかも最強と呼ばれるあの風紀委員長も居る
大きな安心感があった、最高だ
「どうやってゲヘナを説得出来たの?土下座して足でも舐めたとか?」
…そこでシロコが先生に質問した
イオリといいアコといい、協力してくれと言おうものなら凄まじい条件を突きつけそうな奴が多いゲヘナ風紀委員会
聞く限りでは何も条件をつけられていないらしいのだが、それがシロコにとって疑問だった
「"…………大人としてのプライドをあそこに棄てたまでだよ"」
先生は長い沈黙の末、そう話した
その沈黙を覚悟か何かと勘違いした4人はおお、と声を上げた
「生徒の為にプライドを捨てる…!」
「流石先生…!」
「".........あはは"」
先生は乾いた笑いを漏らした
まさか、シロコが言った通り頭を地面につけてその上で足を舐めるという事をしているとは…冗談でも言えなかった
○
『ホシノ先輩が囚われている地点はそこから5km先です!
ㅤ道中には敵の反応もあるので気を付けてください!』
「ん、分かった」
「全員ぶっ倒せばいい話よ!1人残らずぶっ飛ばしてやるわ!」
円環が見える空の下、アビドス砂漠
ゲヘナからの協力を得られた先生とその生徒達は今砂漠を進んでいた
無論目的はホシノの奪還
後、ついでと言えばついでなのだがもしカイザーに旅人が囚われていればその確保もしなければならない
…捕まるくらいならば、彼は恐らく自死を選ぶのだろうが
本人の性格を考えて"ついで"としているのだ、殆ど希望的観測でしかない
そう思っていると、遠くから発砲音が聞こえてきた
「"皆、賓客が来たみたいだよ"」
「どちらかと言えばこちらが賓客では…?」
「どっちでもいい、ぶっ飛ばす」
各々が武器を構えて引き金を引く
小鳥遊ホシノを奪い返しに来るということを見越していたのか、敵兵の練度が高いようだ
しかしアビドス高等学校の生徒たちを超えるほどでは無い、と先生は判断する
─────この間を利用して、彼はソラール達を召喚しようと決めた
白いサインろう石を持って辺りを見渡す
彼があの後説明していたが、普通の召喚サインならば白色、敵対者を召喚するならば赤色、そして太陽の戦士のサインが金色だそうだ
他にもサインの色、霊体の色など色々あるらしいが…気にする事でも無いだろう
少し探してみればそのサインとやらは見つかった
思いのほか黄金に輝いていたのだ、まさかここまで輝いているとは…
先生はそう思いながらまずソラールのサインに手をかざした
サインが少し光り輝き数秒して…ぬっとソラールが現れた
その体は黄金の霊体であり、太陽の光を受けて更に光っていた
少し眩しい、調整出来ないのかそれ
召喚された彼はグッと背筋と腕を伸ばし、Yの字の形になる
いつしかも見せた【太陽賛美】というポーズである
由来は聞いていないが、恐らく名前に賛美とあることから太陽を讃えるものなのだろう
『ちゃんと呼べましたね…』
「"喋らないんだね"」
どうやら霊体の状態では会話が出来ないようだ
こちらの声は聞こえる様子なので、心配は要らないだろう
先生はそう判断してジークマイヤーのサインも確認する
こちらは白いサインだ、これが普通のサインなのだろう
それにも手をかざしてみればジークマイヤーの霊体がぬらりと現れる
だらりと手を垂らした状態からすっと背筋を伸ばして特大剣──ツヴァイヘンダーを肩に当てた
「"さて、顔ぶれは揃ったことだし…"」
先生はすっとタブレットを取り出した
シッテムの箱と呼ばれるオーパーツ、OSから何まで正体不明の遺物
使い方は割と適当だ、パスワードすらその時何故か頭に浮かんだ文字を入力したに過ぎない
しかし、正体不明の遺物であろうと…生徒たちを守れるのであれば、私は喜んで使うだろう
○
「数が多いわね…!」
「相手も本気なのでしょうね〜」
鉄の嵐と表現出来るほど激しい戦闘
爆発や弾丸が先程から激しく行き交っている
下手に体を出せば蜂の巣にされてしまいそうだ
「"カイザーも精鋭を出してきてるみたいだね"」
「ただ厄介なだけ、倒せないわけじゃない」
シロコの言う通り決して相手は最強の敵では無い
精鋭であろうと…先生の的確な指示と自分たちの力があればそれを乗り越えられる
「剣!?なんでそんな古臭い…ぐわぁぁあ!?」
「なんだあれ!?手から雷…うわぁぁぁあ!?」
最も、その精鋭と鉄の嵐の中であろうとも果敢に突っ込み剣を振るう存在がいる
ソラールとジークマイヤーである、喋らないからかかなり無慈悲に見える
「"ソラール、右から3人…ジークマイヤー、後ろから来るよ"」
彼らは霊体である為全く声を出さない
しかしこちらの声は聞こえているので敵の場所や指示を出すことが出来る
教えてあげなくても、最初から知っていたかのように動くので先生は本当の戦闘を知っている彼らに少し冷や汗をかいた
そうして、進んでいる時であった
「"待った、全員退避"」
「…どうしたの?」
前進している途中、先生はそう言って皆を止めさせた
シロコが先生の行動に疑問を持ち質問する
その答えは先生が言う前に、目の前に降り注いで来たのである
先程まで戦車隊や歩兵が居た場所に対して執拗なまでの爆発が起こる
特徴的な風を切る音と共に戦車や歩兵が吹き飛ばされていく
それは完全に迫撃砲による攻撃であった
『て、敵に対して大打撃を確認…!しかし一体誰が……』
『わ、私です!』
突然の援護砲撃に困惑しているととあるホログラムが現れる
それはたい焼きの紙袋を被った…そう、例のアビドス騎士団の者である
「あ!ファウストさんじゃありませんか〜」
『そ、そうです!アビドス騎士団のファウストです!
ㅤ今回は少し迫撃砲の演習に来たのですが……"何故か"砲撃範囲内にカイザーの兵士達が居たみたいです!』
「"…うん、ありがとうヒフ………ファウスト"」
…迫撃砲の演習ですか
先生は当たり前のように彼女から出た言葉に少し言葉を詰まらせながらも感謝を伝えた
キヴォトスに来て数週間経つが、未だにこういった事には慣れないものだ
やはり住んでいた場所と文化が違うからか……
…これで、協力者はトリニティとゲヘナ
少なくとも…確実に負けるという未来はもはやない事だろう
先生はそう思いながら、前進を再開した