息を潜め、隠れなければならない
絶対に見つかってはならない…もし見つかればどうなるのか?
「がァアッ!!」
「顔!顔がぁぁあ!?」
今まさに黒い制服を着ている獣のような奴に噛まれている仲間のようになるだろう
己の持っている銃を銃としてではなく鈍器として使い、そしてわずかな隙に自身の牙を入り込ませる…文字通りだ
噛まれた奴の顔面は液晶が割れ、殆ど前も見えない状況になっているだろう
それは彼だけでない、なんなら彼の方がまだマシまである
俺は恐る恐る顔を出して………
「居たぞぉおぉぉぉぉ!!!居たぞぉぉぉぉぉおおお!!居たぞぉおぉぉぉぉおおおおおお!!!」
「グワーッ!!!」
「ちょま」
「アプっ」
瞬間、私と仲間の身体と顔面は呼吸しやすい穴が何個も増え煙を吹き上げて倒れた
倒れる瞬間偶然…いや、必然的に私と仲間達の感情は一致した
来るんじゃ無かった、こんな田舎
○
「アハハッハハハ!居たぞぉぉおおおおおお!!!」
「仲間の数と配置は?」「知らな──」
「グルッルルゥアァァア!!!」
「ァァァァァアアアッッッ!!!」
「"ここは地獄ですか?"」
『そうでしょう先生、少なくともこんな光景は現実ではありません』
ㅤ現実だが?
伝道者の三叉槍、その独特の舞によって強化されたアビドス生徒達
あの舞は狂気を振りまいて強化をする為…ご覧の惨事となっている
嬉々としてカイザー兵士を見つけ出し、奇声を上げながらガトリングガンを連射するノノミ
カイザー兵士の顔面を掴みあげ、尋問し望む答えを出した瞬間雷を纏った拳でぶん殴るホシノ
血に酔った獣のように暴れ回り、カイザー兵士に軽いPTSDを負わせているセリカとシロコ
で、何故か狂気に堕ちなかった先生と後方支援要員だった為同じく狂気に堕ちなかったアヤネ
そしてそもそも舞を踊る張本人は狂気に陥らない為、…現状正気なのはこの三人だけであった
「"教師として君にお説教をする必要があるね"」
ㅤ私は貴公の生徒では無いのだが
「"間違えた人間として、だね"」
ㅤ…………そうか
笑顔でこちらを向き、そんなことを言ってくる先生
しかし私は生徒、いやそもそも子供ですらないため説教はどうでもいい
と、言ったのだがどうやら人間として説教しなきゃならないらしい
彼には自身は不死人と言っていないのだから当たり前の会話なのだが…
どうも、なんとも言えない気持ちになってしまう
普通なら…少なくともロードランなら隠すほどでも無い秘密ではあるのだが、ここキヴォトスではそうはいかない
ここに亡者は存在しない、存在してはいけない
そもそも私の存在自体がエラーのようなものであり…薪として燃え尽きるべきであったのだ
どうして私がここに居るのか、立っているのか分からない
守り手として私は火を守っていたような気がするし、またロードランを夢の中で駆けていたのかもしれない
誰かが私が生きていることを望んだからなのか、それとも───
「"み、みんな落ち着いて!ちょっと深呼吸を───"」
「居たぞぉおぉぉぉぉ!!!」
「敵の、数と、配置はッッッ!?」「だ、だから知ら──」
「キシィィイァアァァアア!!!」「ウォァァァァァア!!!」
「"ダメかぁ"」
私のそうした考察はみんなの狂気によって妨げられる
アビドス生徒達の狂気が思ってたものより酷い
ソラールやロートレク、そしてその他の者に舞にて強化を施してもこういう物は何も無かった
だからこそ目の前で起きていることが恐ろしいのである、なんじゃあれ
まぁ時間経過で狂気は解けるのでそう気にすることでは無い
後遺症とかはともかく………神秘とか言うので狂気が残ったりしない限りは、多分大丈夫
『…ともかく、指示は不可能な状態なので……周りの警戒に専念しましょう』
「"そうしよう…アロナ、周りの情報を逐一送って"」
私が心の中でそう勝手に決めつけていると、こちらもこちらで方針は決まったようだ
狂気に呑まれている彼女達を制御、もとい指揮することは不可能なので周りの警戒に専念するようだ
増援やらなんやらの確認なのだろう、きっちり確認しないと痛い目にあうのはこちらだ
特に背後だ、突然後ろからバックスタブを決められたら困る
それでなくとも囲まれたら私は為す術も泣く死んでしまうだろう
不死人はただ正気を削って生き返るだけの存在なのだ、可哀想だろ
私は背後の確認をしながら、アサルトライフルのチャージングハンドルを引く
本当は呪術の火と月光の大剣でも持ってあのバカ騒ぎに加わりたいところだが、何故か嫌な予感がするのだ
広大な砂漠、ザコ敵……この先に【大物】が居ると思ってしまう
広い砂漠は大物と戦うには最適な立地でありザコ敵は私のエスト瓶を消費させる
まだ私は攻撃を受けていないから1本も消費していない
だからまだ大丈夫だ、まだやれる
「……ハッ!私は何を…?」
「あら?いつの間にか弾薬が…」
「…あり?何が起こったの?」「ん、銀行を襲う」
私がそう意気込んでいると、アビドスの生徒達がハッとした顔になって正気に戻った
一体自分は何をしていたのだと我に帰っているようである、怖いね
それと、同じ瞬間だった
一瞬の砂嵐だ、十数秒の…僅かな時間の砂嵐
『皆さ───……抜けて──接近中……』
「アヤネちゃん!砂嵐でよく聞こえないよ!」
『今すぐ───撤退……』
アヤネの無線が終わったと共に、砂嵐が晴れる
そこにあるのは、大量のオートマタと戦車
…私たちはいつの間にか大量の兵士に囲まれていたのだ
「…絶対絶命?」
シロコがそう呟いた
私は心の中で冗談ではないと思いつつ装備を変更する
こう言った状況ならまず、強靭は必要だ
強靭な肉体でもって怯まず敵を叩き潰す必要が…
私は一瞬、巨人装備にしようとして直前でハベル一式に変更した
巨人一式は宜しくない、あれは自動的に仮面を被ってしまう
そう思いながら狼の指輪と緑化の指輪を装備する
裏にタリスマンと呪術の火を仕込んでおこう
そして右手に大竜牙、左手にハベルの大盾を持って…大盾に祈る
数秒もすれば、私の体は岩に覆われて正しく【岩のようなハベル】になるだろう
……まぁ、何故か狼の指輪を付けると岩が生えてこないのだが
にしてもやはり重い、普通のローリングはできるだろうが…しかし結晶のように生えた岩が砕けないか心配だ
オートマタ達とアビドス生徒達の睨み合い
その睨み合いの最中、1人のオートマタが現れた
やけに貫禄のあって…他のオートマタよりも体が太い
それどころかコートのような物を着ており完璧に戦闘向けのやつでは無いことが丸わかりだ
…なんだ、あれがここのボス…という奴だろうか
「侵入者が居ると聞いたがまさかアビドスとはな…
ㅤ修理費用は全て借金に上乗せしてもいいが、ほぼ意味は無いだろう……む?」
彼がこちらを見る、しかし私にとってはどうでもいい
それよりもこの状況こそが問題なのだ
明らかに、明らかに奴に戦闘能力は無い
しかしああして余裕で居られる…つまるところ負けるビジョンが見えていないということ
恐らく私が全力で遮蔽物もない砂漠をガンダッシュで奴に突っ込めば多分めっちゃ撃たれる
…どうしたものか、銃弾程度それほどでもないのだが……
「貴様…アイツが言っていた古人だな?実際に見てみると…ふむ、中々頼りない顔だったな」
ㅤ………
「ヘイローが無いが…魔法のような物を使う男
ㅤ噂によれば炎から雷まで操ると聞く…依頼で捕まえられないもの納得…か」
「ど、どういうこと…?」
「あなた達は一体、何者ですか…?」
勝手に独り言を呟いている彼に対してアビドスの生徒たちが問いかける
お前ら一体何者なのかと、一体誰なのかと問いかける
それを聞いて、彼は一笑した…まるで何も知らないのかと言わんばかりに
無知であるものを見て笑うかのように…嘲った
「君たちは私について知らないのかね…?
ㅤよく知っているものだと思っていたが…案外そうでも無いらしい」
「バカにしてるの!?一体あんたは誰なのさ!」
叫ぶセリカに対して、彼は言う
「私はカイザーコーポレーションにて、理事をしているものだ…
ㅤ言い換えれば、君達の借金相手と言えるな」
「………えっ!?」
続けて彼は言う
その機械のツラでも、分かるような笑みを浮かべて
「では、古くから続くこの借金問題について話し合お───」
その瞬間、彼の真横を雷が通り過ぎた
「……なっ!?」
彼は直ぐさま後ろに退き、それをカバーするようにオートマタの兵士が銃を構えながら動く
カイザー理事は少し焦りながら太陽の火の槍を投げた存在…つまるところあなたに対して叫ぶ
「貴様!急に何をする!?」
誰が頼りない顔だと!?東の国の民顔だからってバカにしやがって!!!
あなたはキレていた、カイザーの唐突な顔貶しにキレていた
もとより東の国の民であったあなたは不死人であった為、かの国を追われて不死院に入れられたのだ
そこのまだまともだった不死にも…旅で会う不死にもほざかれた
優しい顔つきのせいで…あの地では頼りないだの汚い服装だの言われた
酷い時にはふざけるのも顔だけにしろと言われた、最初に殺した
顔をフルフェイスの甲冑やフードで隠したいが…ここで問題なるのが"魔法の威力である"
魔法の威力を高める装備があるのだが、それを【宵闇の冠】というのだが…
見た目がダサい。……言い換えると他の装備と似合わない
羽のようなものが両耳くらいのところから出ているのである
そもそもこの冠は【宵闇の姫君】という者に送られたものであり、男性であるあなたには似合わないのだ
しかし、威力が無ければ敵が倒しにくくなる
見た目を選ぶかそれとも威力か…あまりにも悩ましい問題である
…さて、御託はここまでにしよう
顔をバカにしたから殺す、理由はそんなんで大丈夫だ
殺しなんぞそんな低俗な理由で生まれるものだ、少なくともソウル集めよりは有意義である
私がそう意気込んで殺そうとした時だった
「その目…本当に殺る気なのか!?
ㅤしかし問題無い、既に手は打ってある…ハハハ!
ㅤ今から何をしようとも無駄なのだ!」
『み、皆さん……利子が…!』
アヤネからの通信
それはアビドス高等学校の利子とやらが爆増したというものらしい
…例えば、売ってくれる魔術のソウル料がアホ程上がった、というか……
「…旅人さん、撤退するよ」
ㅤだが
「このままじゃ思い通りになるだけ、手のひらの人形にはなりたくないでしょ」
ㅤ…そうだな
私はホシノの言う通りに武器を下ろした
錯覚かもしれないがカイザー理事の顔が安堵したものになった…ような気がした
「更に借金に保証金や先程の基地の修理費用のかさ増し…は勘弁してやる!
ㅤこのまま踵を返して帰ることだな!今すぐ帰れドアホ共!
ㅤじゃないとお前らの借金が六億から100億になる!」
「「「???」」」
あまりにも不自然な理事の態度に違和感を抱きながら、あなた達は撤退を余儀なくされた
あなた一人であればこんなことは起きず、全員引き潰し問題解決が出来たというのに
仲間がいるとは、何とも動きづらいものなのだろうか