「旅の人!」
爆発から間に合ったようだ、何とかなった
セリカになんの傷もないことを確認しながらハベルの大盾をずらす
…ふむ、中々の数の敵が居る
しかも全員銃を持っている…厄介な事だ
剣を持って突撃、というのは自殺以外に他ならない…援護と行くか
その前にどういう状況なのか確認するために時間が欲しい
「少し時間を稼ぐか」
私は「酸の噴射」と「毒の霧」を発動する
まず最初に「酸の噴射」で相手の武器を溶かし、警戒させ「毒の霧」で遠ざける作戦である
オートマタ達の銃、ましてやその体に「酸の噴射」が当たる───
金属に酸が当たればどうなる?そりゃ溶けるだろう
オートマタを構成しているのは勿論機械パーツ、というか機械だ
つまるところ────
「う、うわぁぁっっ!?体が!?溶ける!?」
「俺の腕が!?銃が!?」
「あ、足が…歩け───」
大惨事である
ただ牽制のつもりがボロボロになってしまっていた
可哀想に、一体誰がこんなことをしたんだろうか
ㅤ…取り敢えず現状を話してくれないか
「"旅人君、後でお説教ね"」
ㅤ何故だ!?
「ん、自分が何をしたのか振り返って見ればいい」
……特に問題は無いな、ヨシ!
〇
つまるところ、あの白いモップみたいな奴から砂漠で何かが起きているということで探査に来たと
で、見てみればカイザーという奴らが基地を作っていたと
「大体そういうこと」
……そういう事か
アビドス側からすればかってに自分の土地に基地が作られていたという状況だ
ホシノによれば前までこのような物は無かったそうだし……
詰まるところはあれは俗に言う【違法】という奴だ
どうも今までの厄介事にもカイザーが関わっていたらしく、ここで本当に疑念が固まっている様子だ
…にしても新しい建物が"建つ"、とは…
実際にそういうものを見るとなんとも不思議な感覚だ
ロードランにそういう要素は無い。既にもう全てが建設され終わっている
新しいものなぞ建つ訳が無い…そもそもその人員すら正気を失っている
だからこそ…このようなものは不思議なものである
それはそれとしてつまり襲撃、ということだろうか?
「言い方が悪いねー旅人さん、探査だよ探査」
「ん、風紀委員長の言葉を信じて来た結果」
……襲撃では無いらしい
一応彼女達にとっては不本意、というより想定外なのだろう
まぁこんなところに基地があるとは想定外だろう…
その時、タァンと音がして砂が舞い散った
銃弾の着弾…つまるところ攻撃である
「"皆気を引き締めて!まだ来るよ!"」
「よーし皆、踏ん張りどころだよー」
『補給物資の投下を早めます!有効に利用して下さい!』
「行きますよ〜♪」
「全員焼き焦がしてやるわ!」
各々が自分の武器を構える
さて、私も彼女達を援護することにしよう
指輪を"静かに眠る竜印の指輪"と"霧の指輪"に交換する
そして武器はアリウス製のアサルトライフルだ…まぁつまるところ狙撃援護である
尚敵側からすれば半透明の音を出さない奴が割と高いダメージをアサルトライフルの速度でチクチクしてくるという状況である
…少なくともそのような存在は……半透明では無く騎士の姿で槍のような矢を飛ばしてくるやつは居たがそこまで終わってはいなかった
まぁそんなクソみたいな敵は居ないだろう、間違い無く
私はそう思いながら、ストックを肩に当てるのであった
〇
数が多い
後ろから援護していてずっと思っていたことだ
引き金を何回を引いているが、カイザーの兵士達は全く減ることなく攻撃をしてくる
…なんなら少しずつ増えている気もするのである、おかしいな
しかしどの兵士も、訓練された"だけ"の兵士だ…何も気にする必要も無い
そもそも私はアビドスの生徒達が攻撃しているところに援護をしている、たまにこちらに弾が来るものの気にする程では無い
前線ではアビドスの生徒達が戦っている
…戦っているのだが、そろそろジリ貧なところだろう
セリカは発火や火の玉の残数はもう無さそうであり、ノノミも回復系はそうだろう
ホシノとシロコは…それなりにまだまだ戦えそうだ
盾で吹き飛ばしたり、CQCに対してパリィを…シロコそれどこで覚えた?*1
少なくとも今はまだ戦えるが…もう少し長引くとなればまた話が違うだろう
私はそう判断してとある槍を取り出した
【伝道者の三叉槍】
白竜シースの手足と呼ばれた者たちの武器
ワープや魔術を扱う彼らの得物だ
頭に六つの目がある青い装備をした彼らは白竜シースが狂えど仕え、人々からは「人さらい」と呼ばれるようになった
普通の槍として仕え、その突き攻撃は突いてから回転させるという独特のものだ
しかし、それよりも特筆するべきことが存在する
ㅤ皆、こっちに来い!
私はそう叫び、槍を構える
声に気づいたアビドスの生徒達は隙を見てこちらに集まってくる
「どうしたの、旅人」
ㅤ今から皆に…あー、加護を付ける!
「旅人の世界の加護…凄そう」
「早くしないとアイツら詰めて来ちゃうよ〜、早めにお願いね、旅人〜」
ㅤ心配しなくても直ぐに終わる
そう、直ぐに終わる
私は全員が範囲内にいることを確認してから、三叉槍を掲げる
その瞬間、青いオーラが泡のように私を包み込んだ
セリカやシロコがワクワクした顔で三叉槍の先端を見ているのが分かる
私はニッ、と笑い……
ㅤ(なんかめっちゃ足をわたわたしながら槍を上下にして踊り始める)
「「「「………」」」」
私はリズム良く槍を上下しながら、…そして最終的にステップを刻みながら1回転する
踊りの最中にアビドス生徒どころか敵であるはずのカイザー兵士に変な目で見られた気がするが…気の所為だろう
「ねぇ、旅人───」
呆れた顔のシロコが何かを言おうとした瞬間だった
舞を丁度踊り終えた私から、青いオーラが放たれる
それを見た瞬間全員が身構えるが…無論それにダメージは無かった
「えっあっ…?今のは…?」
「…………」
最初に、異変を感じたのはシロコだった
青いオーラを受けて体を確認するが…何も問題が無い
自分は大丈夫だと思い、他のクラスメイトは大丈夫か確認しようとした時だった
「…ハァッ…ハァッ…!」
「セ、セリカ…?」
それは、獣のようだった
目に正気は無く…瞳孔は極限まで見開かれている
そして口はギリギリと歯軋りをしており、ダラりとヨダレが垂れいていく
猫背で、毛を逆立たせて…まるで、獲物に飢えた獣のようで………
「──がァッッ!!!」
「セ、セリカ!?」
セリカは獣の如くカイザーPMCに突っ込んだ
猫のように軽やかに…しかし確実に獲物を取る動きだった
どう見ても、まともでは無い
「み、皆!大丈夫────」
「うふ、うふふふふ…あーんなに的が沢山……うふっふふふ…」
次の異常はノノミ
その瞳は目の前に現れた大量の"的"に対して恍惚となっており、少しの艶らしいさを感じさせる
「うふ、ふふふ…撃つしかありませんね?無いですよね?アハハハッ!!!」
大きく笑った彼女はその手に持つミニガンのトリガーを全力で引いた
結果、そこから放たれるのは大量の弾丸…正しく鉄の嵐である、カイザー兵士は蜂の巣になった
「ホ、ホシノ先輩…!」
「あー、…ハハッ、まーた大人か…まーたカイザーか…」
一途の希望を胸にホシノを見るが、その目もまたセリカやノノミと同じく正気では無い
ブツブツと、何かを彼女は呟いていた
「せん、ぱい?」
「どーしてこんな事ばかりするかな…もう殺すしかなくなっちゃった…よ!」
彼女はそう言うと天に向かって太陽の光の槍を投げる
投げられたそれはやがて暗雲となり…帯電する
瞬間、カイザー兵士達に大量の雷の槍が降り注いだ
「うーん…爽快だね!」
「え…あ……」
ホシノは雷の槍に吹き飛ばされたカイザー兵士たちを見ながらそういい、そのまま戦場へ駆け出した
シロコはそれを見ることしか出来ず…また止めることも出来ない
やがて、それは彼女にも来る
「……うっ、あぅう…」
理性が押さえつけていた獣性
目の前にアビドスの場所に勝手に基地を立てたクソ共がいるという現状
無論それは…彼女に底知れぬ怒りと…飢えをもたらす
「……うヴヴゥ…」
ただ、効きが遅いだけだった
狂気に陥るまで他の人より猶予があった"だけ"だった
誰であろうとも、少なくともまともな生命であればその狂気に墜ちるのも仕方なし
「……」
全く狂気に陥っていない旅人は、そう思いながら手に持っている三叉槍を眺めた
"白竜シースに仕える人さらいの魔術師たち"
"六目の伝道者の三又槍"
"穂先を回転するように敵を突き"
"また独特の舞いを舞うことで"
"周囲の味方を狂気によって鼓舞する"