「
轟音と共に閃光が、目の前の巨躯を爆炎を纏った斬撃が怪物を一閃する。
次に閃光が弾ける様に視界を白く多い、遠巻きで見ているリリ達に熱波が襲う。
それを手で覆い防ぎ、解いたころには、下半身のみが残り、上半身があった場所には焼け爛れ、真っ二つにされ、消し飛んだ様子が伺える。
ベルは静かに構えを解くと同時に冒険者が雄たけびをあげる。
ダンジョンを震えさせる。大きな歓声だ。
が、その喧騒が途端に止む。
ダンジョンが、悲鳴を上げるように『揺れた』
バシャリ、と水音がする。
見やると目深に被った帽子、に口元を覆うような布、軽装でありながら大事な部分を効率的に守る鎧を着た、誰かがよろよろとベルのいる方に歩む。
そして、数歩歩いた後、バシャリと、事切れたように倒れ伏した。
「誰か介抱を!」
誰が叫んだだろう。その声に従い、リリが、ヴェルフが、ベルのいる場所に駆け寄ろうと足を踏み出そうとした時だった。
「近づいちゃだめだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
大きく、ダンジョンに悲鳴に近いベルの声が木霊した。
何を言っているのか理解できない顔を一同するのを一瞥もせず、地面を触れる。
すると黄色い魔法文字のようなものが明滅する。
それと同時に、その文字から、金色の霊体が姿を現した。
両手を高らかに上げ、太陽を表現するポーズ、『太陽賛美』をしながら現れた騎士は
バケツヘルムに太陽を象った鎧を着たそれは、彼のみが知り得る人物であった。
喋れないのか、ベルに一礼し、周りを見やり、倒れ伏した謎の鎧男を見てなにかを察したように戦闘の構えを取った。
緊張が高まる中、倒れ伏した男に異変が起きた。
周りの水面から、いくつものどす黒い、血のようなものが沸き出て、アーチのようなものを作りながら、男に向かって流れ込む。
まるで、ダンジョンの生き血を啜るように、男にズルズルと流れ込むそれが、最後の一滴が、その身体に沈んだ。
すると、その鎧男は起き上がった。
身体に『罅』のようなものがはいり、その中から真っ赤な、灼熱を思わせる『残り火』が見える。
ゆっくりと、緩慢な動きでベルを見やると、それは背中に背負った大剣を正眼に据え、腰の鎌のような形状をした短剣を引き抜き、大剣を持つ二の腕に乗せた。
まるで、開戦礼のようなそれを解いた瞬間。
爆発音と、爆炎と共にそれはベルに突進した。
咄嗟に避けたベルをまるで避ける方向を予測していたように地面を蹴り、一回転し、いまにも溶けそうな赤熱の大剣を振り下ろす。
それに割って入るように、黄金の騎士が滑り込み、盾で受け、後ろに大きく吹き飛ぶ。
体制を整えたベルはすぐさま自分の獲物『白幻』を振るう。
それを火を纏う男は短剣を使い、難なく弾き、返す手で首を刈り取りに行く。
間一髪で避けると同時に、ベルは横に飛んだ。
そしてベルがいた後方から、槍を象った雷が鎧を貫いた。
黄金の騎士はすかさず二撃目を放つ。が、滑るようにそれを避ける。
その滑った後から火柱が立つ。
そしてまた獣のように飛び上がり、ベルへ肉薄する。
赤熱の軌跡がベルを襲うたびに、ギリギリで避けるベルの鎧が、身体がじりじりと焦がされる。
取り巻きは何が起きているのか理解できていなかった。
ある者はダンジョンが死体を使って魔物を作ったのかと悍ましい考えを振り払うように首を横に振り
ある者は大剣を軽々と振り回し、かつ、その剣技の技巧に驚愕してもいた。
「リリスケ、あれは、『似てないか』」
不意にヴェルフがリリに声をかけた。
リリも同じことを思っていたらしく静かに頷いた。
「ジャック様ほどじゃないですが、あれは、間違いなくジャック様と同じ」
決して、リリはその先を言わなかった。
自分の家族を決して、『化物』と言いたくなかった。
二人が見守る最中も、戦闘が激化する。
大剣を引きずるように横薙ぎに薙ぎ払いながら短剣を地面に突き刺し、それを中心として自分の身体ごと大剣を振りぬく。
まるで蛇のように床を這う斬撃にベルは紙一重で避ける。
最後に飛びあがり、地面を叩きつけると同時に小爆発が起きる。
ベルは、その中に『飛び込んだ』
爆炎に皮膚を、鎧を焼かれながら、ベルは短剣を一閃する。
それは綺麗に雷の槍に撃ち抜かれた場所を切り裂いた。
そしてさらにそこから剣の先端が飛び出した。
見やると、黄金の騎士が背面から深々とロングソードを突き刺していた。
騎士が男を蹴り飛ばすと同時に
「ファイアボルト」
小さく唱えたそれを短剣に込め、スキル『英雄願望』によるチャージを行う。
先ほどの威力は自分の精神力を考えても出そうにないが、渾身の一撃を準備する。
それを察したのか黄金の騎士は、太陽を象ったタリスマンを握りしめ拳を振り上げた。
その瞬間太陽の光のようなものがタリスマンから溢れ、ベルは自身の身体能力が飛躍的に向上するのを感じた。
ベルはすぐさまそれを無駄にすまいと、燻り続ける男へ肉薄する。
男も地面を蹴り、捨て身の一撃を繰り出す。
赤熱の一閃と白熱の一閃が交差した時、先ほどと同等の熱波がその場を包んだ。
視界が明けるとそこにはベルと、
身体が徐々に炭化を通り越して灰となりつつあるそれが残心の姿勢でそこにいた。
ベルが玉の汗を吹き出しながら地面に膝つき、振り向く。
敵の身体は灰のように崩れ落ち、その灰も白い霧となり、霧散する。
そして、白い霧が一筋ベルに向かいその指に纏わりついて霧散した。
見やると、指輪が中指に嵌められていた。まるで最初からそこにあったように。
パチパチパチ
と、手を叩く音がしたので見やると黄金の騎士がその四肢が薄れながらも賛美を送っていた。
ベルは立ち上がり、いつぞやか、ジャックに教わった『太陽賛美』のポーズを取ったあと、
静かに、静かに拳を握りしめて、ガッツポーズを取った。
そして答えるようにポーズを取った黄金色の騎士はそのままゆっくり霧散した。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』
奇跡のような光景を二度見た冒険者たちは雪崩のようにベルに押し寄せた、
それに押しつぶされそうになる直前、視線の先に投げキッスをして手を振る人魚が視界の隅に移った。