何とか逃げきれた
追ってくるオートマタ達がいるものの、毒霧を撒いていたら来なくなった
あぁ見えて機械に効くのか…今度酸の噴射でも試してみるか…
「ぜぇ、ぜぇ…この鎧重いッ!脱ぐわ!」
『周辺に敵性反応はありません…脱いでも大丈夫です!』
セリカとアヤネを皮切りに全員が鎧を脱いでいく
彼もまた例外ではなく、瞬時にいつもの姿に変わった
武器はオンスタ十字槍と草紋の盾である、結晶杖と呪術の炎もあるゾ
「ふー重かったぁ…あ、返すね旅人さーん」
「ん、また着てみたい」
ありがとう
彼女たちから鎧を返してもらう
頭に付けられた数字をキッチリと拭き取りながら懐に仕舞う
また着てみたいという願いは…まぁ、何時でも叶えられるよシロコ
鎧を着るだけなら何でもOKだ、…強盗されたら困るケド
…まぁ、それはおいておこう…それよりもだ
その、目的のものは?
「…あ!そうだった!シロコ先輩ちゃんともっている!?」
「持ってる…けど…」
「なら大丈夫…いやなにこれッ!?」
シロコの持っているバッグの中身を見て、セリカが思わず叫んだ
見てみればそこには大量の板とそれより大きい何かが書かれた紙
…おや、この大量の板の纏まりはお金のようだ…が、大将から受け取ったバイト代よりも遥かに多いような…
…一つ、100.000クレジット?
…もしかしなくても、大金か?
「うん〜、10年は遊べるくらいあるね〜」
「ホントに10億稼げちゃいました〜★」
いやました〜★ちゃうが
もしかしなくてもやらかしたのでは?彼はそう思った
ここはキヴォトス、ロードランとは違う…罪というのに問われるらしい
不思議なことである、既にロードランが亡者だらけで国として終わっていたからだろうか
バルデルという国は大量の不死を産んで滅んだそうだし…
…いや、まぁ恐らく身柄がバレてない筈だし大丈夫だろう…
彼は心の中でそう思いながらエスト瓶を持ち1回だけ飲んだ
…で、どうするのだこれは
最初に言ったのは彼であった
ロードランで強盗殺人神殺し等などetcをしてきた彼にとっては殆どどうでもよかった
なんならこれで借金を返してもいいのでは…
そう思っていた彼の心をそう言わせなかったのは、ホシノの目である
「…うん、旅人さんは分かってるみたいだね」
「…え?どういうこと?」
彼女の目は、彼にそれを言わせることを良しとしていない目であった
幾人の強者と戦ってきた彼にとってその目は…今までの彼女とは違う…"ロードランで見覚えのある"目だ
「このお金は使えないよ、借金返済にね」
「な、なんでよ!?」
「ん、ホシノ先輩なら言うと思った」
もしここがキヴォトスでないなら、彼は己の流儀通りのことを言っていたかもしれない
ただ…ただ、彼女達は私がロードランで見たことの無い幼子だ
銃というものを持ったとて、価値観が酷いと言え…彼女達は子供である
ただまぁ、あんな目を見てしまっては…言わない方が得である
「これは私たちが汗水垂らして稼いだお金よ!?どうして…!」
「そうだね、でもね…だからといって使っていいわけじゃない
ㅤこのまま行くと…私たち、ブラックマーケットの人達みたいに気軽に人を襲って金を奪うようになるよ」
例えれば、ソウルバグ
矢を大量に買い"色々"すると大量のソウルを手に入れられる業
序盤から使えるそれは…最初は1回だけ、試すだけと言って何回もしている
まぁ、やるところまでやればもうやる意味も無いのだが…
いや、それこそが彼女達の先を行った結果なのかもしれない
今このまま彼女達がその銀行強盗で得た金を使えば、彼と同じ場所に来ることになる
恐らく…いや、確実に「奪われた金をかえしてもらう」とちう名目で銀行強盗をすることになるだろう
特にシロコ…と言いたいところだが今の所セリカだろうか
……セリカ、やめておけ
「えっ!?旅人さんも。…?さっきも言ったでしょ!?これは私たちが稼いだ─────」
────私のようになるな
彼の一言に、セリカは目を見開いた
それは彼が旅路で"どういうことをした"か明白に示しており、また彼も全く綺麗な大人ではないことを示していた
君達はそのままでいい、好きに生きて好きに死ぬ
…少なくとも私と違って君たちには未来がある
不死となり、亡者にしかなる道がない大人が言っても意味が無いか
彼は心の奥底でそう思いながらセリカに対して1つのスクロールを渡した
「…これは?」
───野心に飲まれて滅んだ魔女達の呪術
「…ッ!?」
"混沌の嵐"
イザリスの魔女とその娘達を飲み込んだ混沌の炎の業
「最初の火」を作ろうとした魔女の野心は…あの混沌の萎えト…苗床を生み出したのである
愚かな野心だ、最初の火を作ろうなどと…触れて、"燃やされて"わかったがあれは複製や、作れるものでは無いのだ
あんな…あんなものを……
「…戒めって、こと?」
どう捉えても貴公次第だ、……それを使いこなせるか、それとも新しく呪術を"作るか"…呪術王ザラマンやカルミナ達のように
「…まーた、新しい名前……」
セリカはうんざりしたように言った
どうやら今は呪術王だとか魔女達だとか…それに惹かれる心は無いようだ
まぁ自分たちが汗水垂らして稼いだお金を捨てることになるのだから仕方ないだろう…
「これは私が責任持って処分します〜★」
ノノミがそう言った後、書類をホシノに渡してバッグをどこかにぶん投げた
…すっごい適当だ、そんなのでいいのか…ロードランと違い捨てたものがいつの間にか消えているわけでもあるまいて
『…!皆さん注意してください!何者かがそちらに向かっています!』
「ん、上等」
「上等、じゃないわよシロコ先輩!?あぁもう旅人さん鎧貸して!」
わかった
こういう時にソウルの業というのは便利なものである
何せあらゆるものをソウルとし、しまう事ができるのだから
その逆、出すことも簡単に出来るのだから
みんなが使用していた鎧を取りだし手渡す
番号はないが…問題ないな?
「あったりまえよ!誰であろうとぶちのめしてやるわ!憂さ晴らしよ!」
「ん、ぶちのめしてやる」
「後輩たちが物騒だよー…その必要は、無いかもしれないけど」
私は、双眼鏡を使いホシノが言っていた意味を知る
あれは確かアビドスに侵攻してきた便利屋のアル社長じゃないか?
…なんでまぁ、あんな見て分かる程度にピッカピカに目を光らせているのだろうか
「は、はぁ…よ、ようやく追いついたわよ!」
「……ん」
アルはぜぇぜぇと息を吐きながら息を整える
そして唾をひとつ飲み込んで聞いてきた
「あ、あなた達ってさっき銀行強盗してた人よね!?」
「ん、その通り」
「間違ってはないわね、うん」
「やっぱり!?その、私あなた達の襲撃を見て、何と言うか感激したの!あの素晴らしい手際に!その容赦の無さに!」
…そうか
なんか、勢いがすごい
横目に見ているが…アウトロー、というよりただの純粋…?
…もしアウトローに憧れた純粋な善なる人が悪っぽいことをしてあるだけ…
「わ、私も頑張るから!法律や規則に縛られない、本当の意味での自由な魂!
ㅤ…そんなアウトローになりたいから!」
わぁ綺麗、眩しすぎて前が見えねぇ
目の前で太陽かと見間違うほどの光が発せられる
闇に生きる我々亡者には恐らく金輪際出せない光だろう、グウィンかな?
「……ふっふっふ」
「…?」
その時、ホシノが含み笑いをし始めた
あの目は…うん、悪巧みだとか、そういう"どうでもいいことに関して本気"な目をしている
…のってやるか、ホシノのやらかすことに
「我々はアビドス騎士団!悪を成敗する騎士団なり!」
「…!キャァァー!カッコイイぃ!!!!
ㅤ素晴らしいわ!凄いアウトローって感じ!」
うせやろ?そういう方向かぁ……いやアウトローって騎士団なの?
彼は思わず心の中でずっこけた、いやセリカもずっこけた
アビドス騎士団って…殆どモロバレしていないか?
…彼女の後ろから来ている"彼女達"は知っているようだが
「はい!ありがとうございます!
ㅤ私達は普段はアビドスに住むものとして普通に暮らしているのですが…
ㅤ悪が現れた時颯爽と現れ騎士に変身して戦う騎士団なのです!
ㅤそして私は───太陽の戦士ソラールだお♧」
ソラールさん泣いているよ
…いや、彼も同じ信仰先をこう信仰されるのなら歓迎だろうか
そもそも彼の性格的に多分この状況も楽しむかもしれない
にしても、彼は今どうしているのだろうか
共に薪の王グウィンを倒したとはいえ…おそらく死んだか
さて、私も名乗ることとしよう
「私はカタリナのジークマイヤー!
ㅤ本来はアビドス騎士団のものでは無いのだが…彼女達の助けに答えて参上したのだ!ワッハッハ!」
「おぉ…!とても陽気な人なのね!アウトローって感じもあって最高!」
…この姿で毒の呪術を使ったことは許してくれ、ジークマイヤー
そもそも君はあの湖にて今も尚娘に殺されていると思うが…
いや、火の時代は潰えたことだしそもそももう居ないか
そう思いながら、ツヴァイヘンダーを軽々と振り上げる
「我々アビドス騎士団に…太陽あれ!…ワーハッハッハ!」
「き、決めゼリフ!?かっこいいわ!ソラールさんといいキャラ付けが完璧!見習わなきゃ…!」
「ねぇ、あの茶番いつまで続くの」
「…分からない」
おや、猫好きと猫が会話してら
ま、気にする程でもないがな、ワーハッハッハ!
この後、颯爽と我々アビドス騎士団は退場した
夕日を背にして立ち去る我々の姿は脳裏に焼き付いただろう…
いや、アビドス騎士団ってなんやねん