さて、ヒフミを助けたのはいいもののどうしたものか
彼女はペロロとかいう「様」…ペロロ様というものを買いに来ただけだそう
ただ買いに来ただけというのに…
「じゃ、ブラックマーケットの案内お願いね〜」
「え、えっえええ!?」
可哀想なことに、彼女はブラックマーケットの案内係になっていた
まぁ彼女がブラックマーケットに関してかなり知っているのが原因だろう
先導してくれる存在は殆どいなかったので、私とて多分そうしていた
ま、私が言うかホシノが言うかであったのである
ヒフミを先頭に、私達は進んで行った
「…ねぇ、何にもないんだけど」
「そ、そろそろ疲れて来ました〜」
…そうか?
数時間歩いた頃だろうか、みんながそう言い始めた
私は立ち止まり始めた彼女たちを見てそう言った
「…アンタ、どこからそんなに体力があるのよ…」
「魔法?それも魔法かな?」
…いや、違うな
そういえば疲れ、なんてものもあったものだ
ロードランで冒険をしていた時などそんなものを感じたことは無い
あまりに出来事が重なってしまい興奮していたのもあるかもしれない
ただ、それだと二週目以降が説明出来ないのだが…
まぁ、不死人だからだろう…死にに死にきれない亡者
最終的にソウルを探し求める亡者になるしかない動く死体なのだから…
「あ!たい焼き屋さんだ!」
「本当ですね〜、皆さん寄って行きましょ〜」
と、そんなことをしていると彼女達が声を上げる
「たい焼き」なるものを売っている店があるそうだ
もしかしてラーメン同じ類の美味い料理だろうか
この際甘い辛いは置いておいて、食べてみることにしよう
と、その時彼はケータイを持っていることを思い出し検索してみることにした
たい焼き、と検索してみると魚の形をした食べ物がヒットする
説明を見てみればどうも中に「あんこ」なる甘いものが入っているらしい
…ふむ、こちらは甘味としての食べ物だろうか
そういった食べ物を食べれるほど裕福だった記憶は無い
そもそもロードランにも、故郷にもそんなものがなかったような…
「旅人さん!あんこ味ですよ!」
ありがとう
携帯を弄っていると、前からノノミの声が聞こえた
見てみると彼女が彼に対してたい焼きを差し出しているとこである
少し湯気の昇っているそれを受け取り、携帯を仕舞う
暖かいたい焼き
「あんこ」という甘いものが詰まった食べ物
今まだ暖かいが、時間が経てば冷めてしまうだろう
火の温かさも何もかも、短いものである
HPが回復する
…兎も角、美味しそうだ
彼はそう思いながら1口頬張ってみる
…!とても美味しい、甘い。
ラーメンとは違う甘味であるこれは頭が冴え渡りそうな感覚がする
美味しい…買い置きしておきたいがこれは暖かいからこそ美味しいのだろう
冷めたところで同じ美味しさは得られまい…
お金をノノミに払おうと思ったのだが、アビドスの皆と楽しく話しているのを見て止めておいた
あの雰囲気に水をさされるのは彼女らは気分が良くないだろう、彼女の好意に感謝する事にした
全員がたい焼きを食べ終わる頃には既に会話は闇企業についての暗い話題になっていた
いつの間にか、話題が変わるかのようにそんな会話になっていたので驚いたものである
「…現実は、思った以上に汚れているんだね。私達はアビドスばかりに気を取られすぎて外のことを余りにも知らな過ぎたかも……」
『お取り込み中失礼します!そちらに武装した集団が接近中です!』
どうやら敵勢力が来たようである
彼はアヤネの声からそう判断して腰からリカールの刺剣を抜く
「だ、ダメですよ旅人さん!マーケットガードと争っちゃ…!」
その時、ヒフミが慌てて彼を止めた
ウキウキで突撃しようとしたところを後ろから掴まれたので喉から変な声が漏れ出る
そのままキヴォトス人の握力により引きづられた彼はそのまま角で悶えた
今までにない痛みである、切られた殴られた吹き飛ばされた経験はあるもののこんな経験は無い…
「……あ!あれは…!」
「あの銀行員は…!?」
…お"ぉ"……
何かを見つけたようであるが彼にとってはそれどころでは無い
胃から何かが込み上げてくるような妙な感覚がする
先程のたい焼きが出てきそうな…いやいやそれはノノミに失礼だ!
心の中で彼はそう叫び、何とか吐き気を抑える
ふぅふぅ…ふー…
「じゃあ何?私達はブラックマーケットにお金を流していたってこと?」
「"…ロンダリング、って奴だね"」
「「「「………」」」」
何かいいものは無いかと懐を漁り、エリザベスの秘薬を取り出す
菌類の類らしいのだが、苦味のある緑花草よりはまだ美味しそうである
それを口に含み、飲み込む…瞬間、体が熱っぽくなった気がした
体調が良くなった彼は彼女達に近づく
どうも、シロコが神妙な…いや、全員が神妙な顔をしている
何かあったのだろうか?
「…うん、もう方法はあれしかないよ」
「あー…うん、結局こーなるのか〜」
「えぇっ!?…でも本当にあれしか無い…」
…貴公ら、一体何の話を……
「ん、銀行を襲う」
──────────…ah
不死人、突然の襲撃提案に対して言葉を失う
〇
その後、彼は改めて起きたことを聞いた
何でも先程の敵集団は「ブラックマーケット」とという治安組織らしい
もとより無法地帯なここに治安組織とかいうの意味はあるのか…?
で、それに護衛されていたのが今日アビドスに借金を回収しに来た車だそうだ
…んまぁ、回収しに来たあとなんでここ来るねんって話らしい
そこから色々考察してブラックマーケットに金を流していた、という考察になったそうだ
そこから銀行を襲うという案になったのはよく分からんが…
どちみちにしろ相手が「はいどうぞ」と記録を渡してくれる訳もなく…
まぁ、言うなれば銀行強盗のフリして証拠を掴もうという話だそうだ
成程、"しゅうきんきろく"なるものを取るために銀行を襲うと
「ん、旅人物分りが良くて良い」
『…今回だけですよ、シロコ先輩』
「分かってる…はい皆の目出し帽」
慣れた手つきで皆に目出し帽を渡すシロコ
この世界の住民は割とロードランと変わらないのかもしれない
シロコのソレを見ながら彼は思った
「…ごめん、旅人とヒフミの分は用意してなかった」
「い、いやぁ…私は大丈夫かなぁって…あはは…」
問題ない
そう言いながら彼は装備を変える
今まで身分を気にせずにネズミから神殺しまでしてきた彼であるが顔を隠すという案は無かった
どいつもこいつも正気を失っているし、ロードランに来た時点で捕まることは無い
…さて、どうしたものか……
彼はそう思いながら、顔の隠せる装備を選ぶ
強盗をするのだから…盗賊系が良いだろう
そう思い、彼は亡者盗賊シリーズを身につけた
城下不死街、下層にて背中を執拗に狙ってきた盗賊たちの身につけていた装備
顔を隠す必要があるやましい者達がつけていたものだが、正気を失った今ではこういった使い道しかないだろう
「わっ!一瞬で着替えた!?」
「本当に不思議ですね旅人さんは〜、魔法に奇跡、何でもござれですね〜」
彼の早着替えを見て彼女達がやはり驚く
キヴォトス人にこんな早着替えが得意な人物は居ないだろう!彼はそこだけ心の中で誇った
そこで、シロコがヒフミに顔を向けて言った
「ごめん…本当にごめん」
「い、いえ大丈夫ですよ…」
「………あ」
シロコはどうしても参加させたいそうだ
あの目はヒフミを置いていくことに納得した瞳では無い
辺りを何回も見回していた彼女だが、やがてそれは旅人に集中する
彼女は数回獣の耳を動かした後…彼に言った
「旅人、皆の分の鎧とか…無い?」