ダンジョンに周回した不死がいるのは間違っているだろうか?


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作:Saturdaymidteemo
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オラリオに不死がいるのは間違っているだろうか。


ジャックは一人、篝火の前に座り、佇んでいる。

そして静かに考えを巡らせる。

 

霧の出現頻度が増えている。と。

オラリオの歴史をギルドに軽く聞いても今まで出会った霧とモンスターは記録にない。

 

間違いなく自分の世界のもの。

だが違和感を感じていた。

(今まで侵入してきた奴の何れも、冷静に対処はしているが術に対する知識が無い)

 

そう、最初の侵入は『ソウルの大剣』の避け方が甘すぎた。

まるで近接用の術を見慣れてないかのように。

 

2度目の先日の地下水路での侵入は

『封じられた太陽』があっけなく直撃したこと。

 

一見どちらも自分の技量故のものと思えるがどちらも長年の経験が違和感を訴え、引っ掛かりを感じていた。

「どちらも、『俺の知っている世界』出身ではない可能性がある」

 

小さく、彼はそう呟いた。

構成している常識や歴史の根幹は同じで、別の世界の出身。

つまり、ズレにズレた世界の出身。

 

「根幹は同じだが、術などに差異がある。とみるしかないか」

そう自分で結論付けると彼は立ち上がる。

 

「まぁ、いつぞやのやつが言っていたか。やることはかわらん。間違いはない。」

と独り言ちた。

 

 

 

 

 

彼が自室から外に出ると、春姫と命に出くわした。

軽く挨拶をかわし、通り過ぎようとすると

 

「あ、あの!」

春姫に呼び止められる。

 

「ん?」

振り向くジャックに春姫はもじもじとしながら

 

「今から、どちらに?」

と聞かれる。

 

「買い物だが・・・」

「是非、ご一緒させていただけませんか」

「私もよろしいでしょうか。同じファミリアだというのに、お互いのことをよく知らないまま、というのはなんとも」

と言う二人。

 

「じゃあ、俺達もいいか?」

振り向くとヴェルフとベル、リリがいる。

 

「ああ、構わんぞ」

とジャックは快諾した。

 

 

 

 

 

 

まず彼が訪れたのは【ヘファイストス・ファミリア】である。

ヘファイストスが自ら出迎える異様な光景について来ている一同はあんぐりと口を開ける。

 

「今日は随分な大所帯ね。何用かしら」

とヘファイストスがそういうと

 

「いや、こいつらは連れなだけだ。要件は消耗品の補充だ」

と言うと設計図と共に大量の素材の入った大袋と、丈夫な丸太、大量にどさり。とどこからともなく取り出す。そして大矢を一本取り出してヘファイストスの手前に置く。

 

「こいつと同じものを頼む。数はそれで作れるだけ。頼んだ。」

大量にヴァリスの入った袋をヘファイストスの目の前に置いて。

 

ヘファイストスは設計図を見た後、何か諦めたような眼差しで

「・・・まぁ分かったわ」

と、胃薬を一錠、口にひょいと放り込みながら踵を返した。

 

「おーい。ジャックよ」

帰ろうとしていたジャックに声がかかり、その方向を見ると椿・コルブランドがいた。

 

「なんだ」

と、聞くと椿は嬉々として物を突き出す。

 

刀である。

刀身を抜くと開口一番

「ほお、少しはマシになったな」

と呟いた。

 

「正直、今までで一番の出来を『少しはマシ』か・・・マジで自分の矜持をへし折りに来るな。手前は」

とげんなりする椿にジャックは肩を竦める。

 

「まぁ、使って改善点があればまた指摘する。それでいいんだろう?」

「ああ、頼む」

そう言いあうとお互い踵を返す。

 

ベル達はそんなジャックにあんぐりと口を開けたまま動いていない。

とんでもない量の持ち込み製作依頼と、第一級鍛冶師をこき下ろすような評価。

 

驚かないほうが無理がある。

 

 

 

 

 

 

「ジャガ丸くん、小豆クリーム味をあるだけ。」

「はいよ。今14個だから1120ヴァリスだよ」

「2つずつ小袋に入れてくれ」

ヴァリスを支払った後、

ヴェルフ、リリ、命、ベル、春姫に二つずつ入った小袋渡す。

 

「あれ、いつも来てるんですか?」

「ああ」

そう言うとジャガ丸くんを大口でかぶりつきながら噴水の近くのベンチに座る。

 

その周りのベンチに各々が座った後それぞれジャガ丸くんを食べる。

「おいしゅうございます」

春姫は尻尾をピコピコと動かしながら嬉しそうに食べている。

 

「それはよかった―!?」

そう満足そうに言った瞬間彼は身構えた。

 

目の前に真っ黒い瘴気を放った剣姫がレイピアを構えて突進してきていた。

「『テンペスト』!!!」

風の魔法と共に突き出されるレイピアを『ハベルの大盾』を咄嗟に取り出して防ぐ。

 

「なにをする」

そう言う彼に恨みの籠った眼差しで彼女は短く

 

「ジャガ丸くん」

と言った。

 

「どうせまた鉢合わせになると踏んで貴様の分も買ってあるだけだ」

そう言ってジャガ丸くんが入った小袋を渡してやる。

 

「ならいい」

何か恥ずかしかったのか耳まで真っ赤にしてぷいっとそっぽを向き、ジャガ丸くんを頬張る彼女。

 

そこでジャックはベルが凍り付いているのに気づく

「ベル?」

 

そう聞くとベルはジャックの隣に移動しガシッと肩を持ち耳元で

「ア、アア、ア、アア、アイズさんとどんな関係で!?」

と迫ってきた。

 

「いや、見ての通りいつもジャガ丸くんをたかられるだけだが」

「いつも!?いつも会ってるんですか!?!?!?」

目を剥くベルにジャックは頷きながら

「最近は私が買い占めんように私が買いに来る時間を見計らってきてはいるな」

心底面倒そうにそう言った

 

「う・・・うらやましいいいいいい」

と、ギリギリとするベルをなんとなく無視しながらジャックは

 

いつのまにか後ろに張り付いている神を剥がして

自分の膝の上に座らせる。

「で、なんだ」

 

その女神は悪戯っぽい笑みを浮かべながら向かい合うように座りなおし首元に手を回してくる

「ええやん、減るもんやないし」

 

ロキはそういうが傍から見ればジャックがただの犯罪者にしか見えないような体制である。

「そういえば、ジャック様。妙に神様達と仲がいいですね」

と、ニヤニヤとリリが茶化す。

 

「俺からしたら手がかかる子供のようなものだが」

「むかー!子供扱いすんなや!これでもお前らよりは年上や!」

とジャックをぺしぺしと殴りつけるロキにジャックは深いため息をついた。

 

「お前達、そういえば次ダンジョンは何時潜る」

「明日です。ヘルハウンドの毛皮を5つほど取りに行くクエストがありますので」

と、リリがジャックに答える。

 

「ならば、ミアハのところに準備のためのポーションを買いに行くついでにこの袋を渡しておいてくれ」

と、リリに大袋を手渡すと立ち上がり、ベル達歩き出す。

 

「どこにいくんです?」

「野暮用だ。すぐ戻る。【ミアハ・ファミリア】のホームで落ち合おう」

手をひらひらとしながらジャックは彼らと別れた。

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩き、路地裏の奥で脚を止める。

「出て来い」

 

出てきたのは面識のある猪人と女性だった。

見たところ、女神である。

 

 

「お前達か。何用だ」

「すまなかった。我らの女神が、お前と会いたいと言ったのだ」

そう言うと隣の女性に一礼し、オッタルは後ろに下がる。

 

が、その女神は動かず、ただただ、こちらを凝視し、固まっている。

そういえば、以前オッタルから彼の主神が魂の色を見れる。と言っていたことを思い出す。

 

「その反応を見ると、俺のソウルがあまりにも歪み、醜かったか?期待に添えずすまなかったな」

と、肩を竦めるが、反応が無い。

 

沈黙。

長い沈黙の後

女神が前に出る。

 

普通の冒険者や、人であるならば一目見ただけで『魅了』されるだろう。

ジャックは静かに、彼女の反応を待つ。

 

「―結婚を前提にお付き合いしていただけませんか」

「は?」

 

オッタル曰く、その時のジャックの顔は普段から想像もつかないほどの間抜けた顔をしていたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

ジャックは大きく溜息をついた。

珍しく自室のソファーに寝転がりながら大きく溜息をついている。

「なんやお前『神の宴』じゃ兎以外全く興味なさそうにしとったやんけ!あとジャックはお前なんかに興味ないわボケ」

ロキは目の前の女神―フレイヤと取っ組み合いをしながら青筋を立てて吼える。

 

「あら?興味ないとは一言も言ってないわ。それに、彼は私に靡くわ。必ずね」

「あ?」

「あら?」

 

今ここにファミリア最大の派閥二つによる戦争遊戯が起ころうとしていた。

 

そんな中、転がり込むように、ドアが開く。

飛び込んできたのは、ボロボロの冒険者。

 

ジャックはその姿に見覚えがあった

モルド、かつてベルを襲った冒険者だ。

 

「あ、あんた・・・!」

縋りつくようにソファーに座るジャックの足を掴み彼は顔を上げる。

 

「ダンジョンに霧だ!皆やられちまった・・・とんでもねぇ化け物がいる!あんたみたいなやつだ・・・た・・・頼む」

 

ジャックは弾けるように。篝火から最高の武具を選りすぐりはじめた。

 

「なぁ、うちらの「いや、一人でいい」・・・なんでや?」

ロキの誘いを即答で断る彼は真剣な表情でこういった。

 

「嫌な予感がする」

 

と。

 

 

 

 

 

 

「こ、ここだ」

モルドが案内したのは『リヴィアの街』の外れ、断崖絶壁を縦に割るかのような亀裂が走ったそこに、霧が覆われている。

 

「逃げてこれたのか?」

「あ、ああ。この霧は何故か出入りが出来る。『ギルド』から聞いていた特徴とは何かが違った。中にいるのも聞いていたのよりもとんでもなくやばいやつだ。ただ・・・」

一度モルドは言葉を切る。

 

「見た目は人間なんだ。でもありゃあ人間が出せる膂力じゃねぇ・・・」

 

その言葉にジャックは心当たりがあるのか頷く。

「モルド、だったか。主神と、ベルに伝えておけ。」

ジャックはどこか決意の籠った瞳でモルドを見据える。

 

「遅くなる。と。必ず帰る。と。」

 

 

 

 

 

 

 

霧を潜り、進む。進む。進む。

侵入者を阻むような枝のようなものを切り払い、

ただひたすら長い細道を進む。

 

そして開けた場所に出た。

 

そこは湖だった。

とても、とても浅い湖。

それがわかるほどに透き通った水。

 

そして、少し離れた場所に

騎士が佇んでいる。

 

何の変哲もない騎士甲冑に

中央の黒い円から燃え滾るような模様が迸っている盾を持つ。

 

そして右手には光と影、黒と白、明暗がはっきりとわかれた剣を携えている。

 

「デーモンを殺すもの」

 

不意に騎士はそう言った。

 

「拡散する世界を繋ぐ要人」

 

ぽつり、ぽつりと言葉を紡ぐ。

 

「やがて世界は、霧の中に溶け去るだろう」

 

そしてその場を支配するような殺気が迸る。

 

「ソウルを求めよ」

 

そして騎士は突進をする

盾を前方に構えながら真っすぐと。

そして、一歩、一歩と踏みしめる度に、水面から火柱が吹き荒れる。

 

ジャックは火柱を掻い潜りながら、前方から突進してくる騎士の大上段からの一撃を受け止める。

と同時に後方へ飛びのく。

水面が騎士を中心に、円形に勢いよく弾ける。

 

純粋な力の奔流が彼を中心に行使される。

 

それをジャックはよく知っていた。

 

「『神の怒り』、『炎の嵐』。さて、次は何が来る」

 

ジャックは牽制としてアヴェリンを放つ。

ゆっくりと見間違えるような緩慢な動きで素早く横に移動しそれを回避する騎士はそのままお返しと言わんばかりに白い弓を構え、矢を放つ。

 

悪寒。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

ジャックはそれを全力で避けた。

全力で避けなければいけない速度でもないそれを避ける。

白い矢が、彼の横を過ぎる。

 

ジャックは間違いなくかすりでもしていたらその瞬間に『終わる』ことを直感した。

 

そして騎士は嘴を持つ竿状武器を取り出すとおもむろにジャックに叩き付ける。

彼はガードをせずに、それをローリングで転がるように後方に逃げる。

武器による一撃が地面をえぐる瞬間、炎が迸った。

 

それと同時に、騎士の首から下がっているタリスマンが煌めく。

再び炎の嵐がジャックを襲う。

冷静に、一手一手を避けながらジャックは反撃の隙を伺う。

 

次に騎士はグレートソードのようなものを取り出す。

薄い透き通った青色の刀身が特徴的なそれを見て彼は身構えた。

月光の大剣-その力を開放することで魔力の刃を飛ばし攻撃できる強力なアーティファクトによく似ている。

 

騎士はそのまま水平に薙ぐように剣を振るう。

それを盾で受け止めようとして盾が刀身に触れた瞬間、彼はローリングした。

 

彼は大剣が盾をすり抜けるのを見たのだ。

「・・・厄介な!」

 

毒づきながら距離を取る。

「『火蛇』」

十分な距離を取った瞬間、距離を詰めようとする騎士に向かって火柱を走らせる。

 

騎士は直撃するが、構わずこちらに向かってくる。

「『封じられた太陽』!」

続いて彼が持つ呪術最高威力の火球を続けざまに放つ。

 

直撃した騎士は流石に耐えきれなかったのか、後ろに吹き飛ぶ。

見ると、騎士の盾が燃え尽きてグズグズになっている。

それを捨て、胸に下げたタリスマンを引きちぎると左手に握りしめる。

 

再び青色の大剣から一般的な造りの大剣に瞬時に切り替え握りしめると、タリスマンをそれに翳す。

「させん」

が、スペル付与による武器強化を阻止すべく、ジャックが距離を詰めたのを見て、それを中断し、騎士は大剣を振るう。

ジャックは素早く、ダガーで勢いを殺してそのままあらぬ方向へ力を流す。

 

そしてジャックは右手にもダガーを持ち、そのまま体勢を崩した騎士の首元と脇の鎧の継ぎ目に確実に突き刺した。

 

ダガーを引き抜き距離を取る。

騎士は刺された個所から血は出ていない。

 

騎士は不意に咆哮を上げると、全方位攻撃の奇跡、『神の怒り』に似た衝撃波を大規模で行った。

 

ジャックは『ハベルの盾』を取り出し、地面に突き刺し、食いしばる。

 

騎士はそして白黒の大剣から無骨な大剣を取り出した。

何の装飾もないそれを左手で構えると共に、騎士から白い光が靄のように漏れ出す。

 

ダガーによる傷跡から緩やかに漏れ出すソウルを気にする様子もなく、騎士はこちらに突っ込む。

 

水平に薙ぎ払う騎士の一撃を『ハベルの盾』で受け止める。

その瞬間ジャックはそのまま吹き飛ばされた。

 

「!っちい!」

吹き飛ばされながらも三連射式のボウガン『アヴェリン』を取り出し騎士に狙いをつけて放つ。

 

騎士はまるで気にもせず直撃しつつも、突進してくる。

ジャックは着地すると同時に地面に拳を叩き付ける。

「『咆哮』」

嵐のような黒い火柱が地面から吹き荒れる。

 

騎士はその一つに飲まれ、その身を焼かれつつもこちらに直進しようとする。

が、

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 

不意に騎士が呻き声をあげながら炎に悶え苦しむ。

ジャックは長杖を取り出し、目の前の騎士に歩み寄りながらほぼゼロ距離でそれを向ける。

「『ソウルの奔流』」

杖先から放たれる槍のような閃光が四発、立て続けに騎士の身体を貫いた。

 

「そう、誰も、望んでなんかはいないのだ」

 

騎士は最後にそう呟くとソウルの霧となり、霧散した。

 

そして、その場に白黒の大剣が墓標の様に突き刺さっていた。

 

ジャックは静かにその大剣を引き抜く。

 

大剣はまるで意思を持つかのように一瞬刀身が煌めいた。

 

 

 

 

 

 

 

「ジャック!」

帰って真っ先に飛びついてきたのは、主神だった。

 

「おかえり!」

満面の笑みで彼女は出迎える。

 

その頭を人撫でし、彼は静かに

「ただいま」

 

と、短く返す。

 

ヘスティアは満足そうに頷くと、所々焼かれている鎧を撫でる。

「無事、帰ってきてくれて。ありがとう」

 

澄んだ瞳で彼女はジャックを見据えて、そう言った。

 

「ジャックさん」

見るとベル達がそこにいた。

 

「今日も、無事クエストが終わりました」

ベルは屈託のない笑顔をこちらに向けている。

 

「そうか」

短く頷くと彼らを通り過ぎて、『竈火の館』の入口へ歩き出す。

そしてピタリと、思い出したようにベル達のほうへ振り向いた。

 

「ここに俺がいるのは間違っていると思うか?」

 

と、彼は問うた。

珍しく自分から問いを投げる彼にぽかんとした表情を一同は向けた後、

カラカラと全員笑い出した。

 

「ジャックさん。何言ってるんですか。貴方の『ホーム』はここでしょう」

と自信満々にベルは言った。

 

その言葉に目を細めながら彼は

「そうか」

と短く頷くと今度こそ入り口をくぐる。

 

「ああ、今日は外食にするぞ。『豊穣の女主人』で」

と、振り向かず、彼は外食の準備をするべく、自室の篝火へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

その足取りは、今までで見たことのないくらい軽かったという。

 




走り嵐、詠キャン怒り、窮モリ、白矢、ウッ頭ガッ・・・
さておいて
おそらくこれで一旦完結かもしれない。
10巻、11巻とネタになりそうなものが溜まっていったらまた書くかもしれない。

多分次書くとしてもチラ裏で短めなものを書きたいな。
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