ダンジョンに周回した不死がいるのは間違っているだろうか?


メニュー

お気に入り

しおり
作:Saturdaymidteemo
▼ページ最下部へ


12/20 

地下にて


「さて、どうしたものか」

ジャックは嘆息する。

 

目の前には死体、死体、死体。

そして隅に檻の中で怯えるように身を寄せている魔物達。

 

檻に近づくと魔物達は目に涙を溜めて短く悲鳴をあげる

「ひっ」

異端児―ゼノスと呼ばれる理性を持った魔物達。

 

ジャックはそれを静かに見据え、檻を吹き飛ばす。

「行くといい。なんなら仲間のところまで護衛してやろう」

静かに彼はそう告げた。

 

 

 

 

 

 

 

『竈火の館』に戻るとまず顔を合わせたのは

「おお、やっと戻ってきおった」

椿・コルブランドはそういうと手招きする。

 

対面のソファーに座るとジャックは開口一番

「何用だ」

と言った。

 

「何、一つ耳寄りな情報をとな」

そういう椿はニヤリと笑いながらそういう。

 

「霧が出たぞ」

「場所は?」

椿のその言葉に素早く反応し、場所を聞き出す。

 

 

「このオラリオの下水道だ」

 

 

 

 

 

ジャックがそこからすぐに支度をし、下水道へと向かうのにはそう時間はかからなかった。

 

下水道を入口からそれなりに進むと、見知った敵が自分を襲ってきた。

蜘蛛である。

 

小人族一人分ほどの全長はあるであろう巨大な蜘蛛がジャックを襲う。

軽くバスタードソードで一蹴し、周りを見渡す。

 

見るとところどころ異常な太さの糸から成る蜘蛛の巣が張られている。

バスタードソードを肩に担ぎ、いつでも振るえるように、そしていつでも対処できるように盾を持つ腕の力を抜きながら進む。

 

少し進むといくつもの小さい下水道が連なる大きな道へ出た。

そこへ足を踏み入れた瞬間、頭の中で警鐘が鳴り響いている。

 

ザリ―と、ブーツの音が鳴り響いた瞬間。

小さな下水道から無数の蜘蛛が姿を現した。

 

「ッチ!」

そう言いながら手に火を灯す。

 

「『混沌の大火球』」

投げつけるように放った火球は着弾と同時に全てを溶かす灼熱の溶液としてその場にとどまる。

 

「『封じられた太陽』」

そのまま放った大火球は容赦なく蜘蛛の群れを焼き払う。

「『火蛇』」

地面を叩き付けるように拳を叩き落すと、火柱が連なって地面を走る。

 

そんな中もまったく躊躇なく蜘蛛はジャックへと距離をつめる。

ジャックへ到達した蜘蛛が襲い掛かるのを大剣『バスタードソード』で薙ぎ払う。

 

斬れども斬れども湧いて出る蜘蛛の群れ。

それを冷静に対処し続けながらジャックは視界の隅、自らが辿ってきた道から人が複数、走ってきているのがみえた

 

「『ファイアボルト』!!!」

放たれた火の魔法は蜘蛛たちを焼き払う。

 

「ちぇああああああああ!」

少女は身体を滑らせるように刀を抜き放ち、蜘蛛を両断する。

 

「ッフ!」

小人族の少女はジャックから譲り受けたクロスボウで確実に蜘蛛の本体を射抜く。

 

「はああああ!」

赤毛が特徴的な長身の青年は自前の剣を振るい、蜘蛛を斬っていく。

 

「『薙ぎ払う炎』」

ジャックが放つ鞭のようにしなった炎が残りの蜘蛛達を焼き尽くす。

 

ジャックは敵が全滅したのを確認すると彼らに向きなおった。

「・・・何故来た」

そう短くベル達に聞くとそれぞれが真剣なまなざしでジャックを見据える。

 

「同じファミリアとして共闘しに来ました」

そうまっすぐ見つめるベルにジャックは嘆息する。

 

「お前達では荷が重いと以前言ったはずだが」

と、言うジャック。

 

「迷惑はかけません」

ベルは引き下がらない。

 

が、ジャックは彼らが引かないことは最初から分かっていた。

 

それぞれが絶対に引かない、と目で訴えかけている。

 

観念するように頭を振り、無言で先へ足を進める。

それを肯定ととったのか、ベル達はしっかり、その後ろをついていった。

 

 

 

 

ジャックはさらにそのまま先へ進むとさらに大きな道に出た。

汚水が滝のように流れている大広間に異常な光景を見つける。

 

人がいたのである。

数日前まで、人として営んでいたであろう痕跡が伺える。

しかし、その人々は所々が肉がえぐれ、死んでいてもおかしくない傷を負っている。

 

中には背中に蜘蛛が張り付いている者まで。

焦点が定まらない目でフラフラとしていたが、こちらに気付くと雄叫びをあげながら、傷だらけの身体でこちらにゆっくりと歩み寄る。

 

ジャックはそれを躊躇なく真っ二つに叩き斬った。

「な!?」

 

ベル達は顔を真っ青にする。

それを無視して襲い掛かる人々を躊躇なく屠り続ける。

 

その全てを片付けるのにそう時間はかからなかった。

 

「どうして―!?」

ベルがそう声を上げるとジャックはそちらの方へ顔だけを向ける。

 

「『亡者』。既にこいつらは死んでいる。魂を啜られ、その損なわれた魂を埋めるために動く屍。お前達もこうなりたくなければ躊躇しないことだ」

そう言うとさらに先へと足を進める。

 

ついていこうとベル達が歩を進めた瞬間、

上からべちゃり、と人が降ってきた。

 

所々がぐちゃぐちゃになりながらもそれは立ち上がり、こちらに手を伸ばし走ってくる。

「・・・うわああああああああ!」

ベルは悲鳴のような声でナイフを一閃し、首を刎ねる。

 

斬られたそれはそのままべしゃりと仰向けに倒れた。

吐きそうになるのを堪え、ベルは後ろを振り向く

 

「行きましょう」

と、静かに仲間たちに言った。

 

そしてジャックの後を追うと、ジャックが不自然な場所で立ち止まっている。

 

ジャックはベル達が追いついたのを確認した後、静かに舌打ちした。

「・・・こんな時にか」

 

全員が首を傾げていると

静かに、赤黒い人の姿を取った何かがジャック達の前に姿を現した。

 

全身に棘付の鎧に身を纏うそれは、ジャック達を視認するや、

飛びかかり、剣で斬りつけてきた。

 

ジャックは『バスタードソード』で受け止め、そのまま弾き飛ばす。

 

棘鎧の騎士は今度は懐に潜り込むようにローリングし、追撃を行おうとするジャックの脇をすり抜ける。

 

「!!ベル!」

 

棘鎧の騎士はそのままベルに斬りかかった。

「っく!」

ベルはナイフを使って攻撃を流して距離を取る。

 

「はあああ!」

命は腰だめから居合を放つ。が

 

「よせ!!」

とジャックが駆け出す。

 

棘の騎士は滑らせるように盾を刀身に合わせそのまま力を流すように弾き飛ばした

パリィを受け、そのまま尻餅をつく命に棘の騎士がゆっくりとトドメを刺すべく構える。

 

が、すぐに横にローリングし、後方からのジャックの攻撃を避ける。

「『封じられた太陽』!」

素早く追撃に放ったそれは吸い込まれるように棘の騎士に着弾し、爆発する。

Lv2~3程度が受ければ文字通り消し炭となるそれが直撃したことにより、命は助かったと思い胸を撫で下ろした。

 

「『猛毒の霧』」

が、ジャックがさらに爆発した箇所に名の通り毒々しい霧を巻き起こす。

すると爆炎の中から棘の騎士が先程の爆発を物ともせずに斬りかかってきた。

 

「それは悪手だぞ」

彼は左手で腰に差していた短剣を抜き放ち、見事にその凶刃を弾き飛ばす。

 

そしてドシャリ、と地面に叩き付けられた騎士をバスタードソードで2回袈裟懸けした後、深々と突き刺した。

 

ずるりと、剣を抜き騎士を蹴り飛ばす。

それがトドメになったのか、棘の騎士はそのまま赤い粒子となり、消え失せた。

 

消え失せた後、カラン。と騎士が持っていた棘の剣がその場に落ちた。

それを拾い上げ、霧のように霧散させたジャックは振り向き、命を見る。

 

「死体が消えるまで気を抜くな。あれは俺と『同じ』だ」

 

そう短く言って、先へと歩を進めた。

 

しばらくした後、ハッと我に返り再び彼の背中を追ったのだった。

 

 

 

先に進むと、大水路を塞ぐように、霧が立ちふさがっている。

ジャックは手前で立ち止まり、振り返らずに顔だけを後ろが見えるように向ける。

 

「ここから先は先程までのような雑魚とは違う。何があろうと自己責任だ」

それだけ言って、霧を潜ろうと手をかざす。

 

それに横並びするようにベル達は並ぶ。

「そんなの、ダンジョンだって同じですよ」

ベルはジャックを見ずにそう言った。

 

霧を潜ると、汚水の集積場のような場所に出た。

川のように汚水が広がり、奥の崖へ向けてとめどなく流れている。

 

そして崖から顔のようなものがちらりと見えた。

「随分可愛い強敵ですね?顔をちらりとのぞかせてるあたりキュートじゃないですか」

とリリが茶化すように言う。

 

「来るぞ」

その一言を聞いてか、小さな顔のようなものをのぞかせていたものが這い出てくる。

 

ゴライアスを遥かに凌ぐ体躯に、疑似餌のような小さな顔の下にパックリと避けているかのように縦に割れた口から覗く無数の牙。

 

そんな胴体と同じ長さを持った尾がさらにその大きさを際立たせている。

トカゲのようなそれは6本中、4本の脚で器用に立ち、4枚の大きな羽を羽ばたかせて咆哮をあげた。

 

ドシン、と前足を降ろすと衝撃の余波がこちらにも伝わり、ベル達は少しよろめいた。

そのまま勢いよく突進してくるそれにジャック達はそれぞれ思い思いの方向へ逃げる。

 

「これのどこがキュートだリリスケ!?」

たまらずヴェルフは隣で並走するリリに叫ぶ。

 

「こんなの誰も予想しませんよ!リリは悪くないですうー!」

リリも全力疾走しながら叫びかえす。

 

それぞれが突進をうまく躱すのを確認したジャックはそのまま大弓を構えその体躯に大矢を放ち続ける。

 

1本2本3本と刺さるそれを気にも留めずに、魔物は跳躍してジャックを踏みつぶさんと降りてくる。

 

ジャックは汚水に構わずローリングをして避ける。

別方向からリリのライトボウガンの矢が大矢によって抉れた傷口を開くように穿たれる。

 

それを煩わしいと感じたのか、魔物は尻尾をしならせてリリに向けて一閃する。

汚水に足を取られて上手く動けなかったリリを見てヴェルフが咄嗟に抱きかかえて跳躍する。

 

逆方向からベルが魔物の背中に飛び移りナイフを突き立てて走りながらその傷口を広げていく。

 

振りほどこうと身をよじる魔物の勢いを利用してそのまま距離を取る。

 

そこにジャックの大矢が再び魔物の肉を削ぐ。

 

魔物は再び跳躍したと思うと呻き声をあげながらパックリと避けた口から黄土色の吐瀉物を真下にぶちまけた。

 

全員が咄嗟に距離を取り避ける。見ると汚水がジュウジュウと焼けたような音を出しながら蒸発するように分解されている。

 

ジャックは未だ空を滞空している魔物に向けて鈴を取り出す。

「『太陽の光の槍』」

強烈な稲妻によって形成された赤い槍が宙の魔物を刺し貫く。

 

崩れ落ちるようにその巨体が地面に墜落する。

 

リリがボウガンを再び装填しては正確に傷口にめがけて射出する。

 

魔物がもがき苦しみながら尻尾をそのままリリに向けて叩き付ける。

 

吐瀉物によって遮られて誰も助けにいけない状況にヴェルフは舌打ちをし、背中の包装を剥ぎ、剣を抜き放つ。

「烈震!」

『クロッゾの魔剣』によって横殴りされた尾が大きく狙いを逸れてリリより遥かにずれた位置に着弾する。

 

ジャックがそれを寸分狂いなく大矢で尻尾を貫く。

 

矢が同じ個所に数本深々と刺さると、巨大な尾の重さに耐えきれずに尾が千切れ飛んだ。

 

咆哮をあげながら魔物がベル達と大きく距離を取る。

 

そして再びその巨体で突進を図る。

が、ドシャリと、走り出すと同時にバランスを崩す。

 

見ると命が居合刀で後ろ脚を両断している。

 

ベルとジャックは、図らずも同時に飛び出して真っ向から跳躍し、ジャックは大剣を、ベルは短剣を突き立てた。

 

頭部を深々と刺し貫かれた魔物はそのままその巨体を滑らせるようにドシャリと崩れ落ち、大量のソウルを撒き散らしながら霧となって消えた。

 

 

 

 

 

 

 

【ヘスティア・ファミリア】ホーム『竈火の館』にて

ジャックはソファーに腕を組み、ヘスティアが腰に手を当てて目の前に正座しているベル達を見つめながら嘆息した。

 

「ベル君。君達はどうしていっつも目を離したら無茶をするのかな?今回はたまたま上手くいったけど、ジャック君は基本『霧』の先のモンスターは君には『荷が重い』って随分前に遠回しに諭してくれていたのも無視して?僕がどんな思いで帰りを待っているか知ってるかい?」

『す、すみません』

と、絶対零度の表情をしているヘスティアに一同が謝る。

 

「まぁ、待て」

ジャックはヘスティアを制止する。

「今回の件、多少なりとも俺にも責任がある。あまり責めないでやってくれ」

そういうジャックにヘスティアはようやく怒りを鎮めたのか、大きく溜息をついた後

 

「なんにせよ。無事で帰ってきたから良しとするよ。ベル君、おかえり」

と、優しく抱きしめた。

 

「ちょっと!?自然な流れとはいえベル様に抱き付くのはずる・・・はしたないですよ!」

とリリが目くじらを立てて叫ぶ。

 

そうして元のファミリアらしい喧騒に戻った中、ジャックは不意に視線を感じる。

見ると春姫がこちらを見ている。

 

「どうした?」

静かに問うと春姫は目を落として

「私も、ベル様や、ジャック様と一緒に冒険するようになれるでしょうか。お役に、立てるように、なれるでしょうか」

ゆっくりと不安を吐露する彼女をジャックは手を伸ばし、寄せ、隣に座らせる。

 

「口から出まかせをいうのは好かない。だからお前がこの先ベルと肩を並べれるかは分からん。だがな」

言葉を切り、ゆっくりと春姫を見る。

「少なくとも、お前達が俺に『人』として接してくれている。それだけで俺にとっては十分、救われている」

ジャックはベル達に再び視線を写しながら春姫の頭を優しく撫でる。

 

春姫はその視線が神が眷属を見るような、子を見る目のように思い、そのまま撫でられる心地よさに、身を預けた。




CBT終わりました。と思ったらsaryn primeが来たでござる。シャーシでねぇ。
12/20 



メニュー

お気に入り

しおり

▲ページ最上部へ
Xで読了報告
この作品に感想を書く
この作品を評価する