ダンジョンに周回した不死がいるのは間違っているだろうか?


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作:Saturdaymidteemo
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彼の日常という名の非日常2


I'm rich! I'm rich! hahhaHAHA
I dont need to go home anymore!
home...home?where is home...?


58階層

ジャックは一人植物のモンスターと対峙している。

 

「疾っ」

襲ってくるツタを、本体を、まるで瞬間移動したかのような速さでバラバラに切り刻む。

 

落ちた魔石を収納しつつ、彼は獲物を鞘に納める。

 

彼は今、普段の鎧甲冑ではなく、白を基調としたフードとローブに、足甲という軽装備で攻略をしていた。獲物も、見なれない太刀を使っている。

 

普段とは全く異なる戦闘スタイルであっても歴戦の彼には何の問題もなく、それらを使いこなせていた。

 

「そろそろ帰るか」

そう独り言ち、彼は随分前に倒した『ヴァルガング・ドラゴン』が真上に開けた穴を伝い、50階層の『篝火』がある場所へ戻った。

 

 

 

 

 

 

 

『竈火の館』に戻ると、

「ひゃ!な、なんじゃ、お主か。びっくりさせるな」

 

見ると、椿・コルブランドがソファーでくつろいでいた。

あまりにもそれが自然なことのように椿は驚いた後再びソファーに寝転がる。

 

「なんだ?」

首を傾げながらジャックが聞くと

 

「『それ』の感想が逐一聞きたくて待ち伏せていたに決まっておるだろう」

と、ジャックの手に握られている太刀を指さす。

 

そう、数日前の一悶着からジャックは椿の『テスター』となっていた。

感想を今か今かと、そして自分の作品に対する絶対の自信を持ちながら聞いてくる彼女に肩を竦める。

 

「耐久に難ありだ」

そう言いながら太刀を椿に放り投げ、篝火でアイテム整理を始める。

 

そんな馬鹿なと。太刀を受け取った椿は飛び上がるように立ち上がった。

 

「ちょっとまて、刀身は傷一つついておらんぞ」

何一つ刃こぼれもない刀身を確認した後、椿は眉を顰めながらそう言う。

 

「当たり前だ。初撃の感覚で2撃目は砕け散ると判断して『こいつ』を使っていたからな」

 

そう言い、左手人差し指をちらつかせる。

その指には指甲がはめられていた。

 

「『封壊の指甲』、こちらの世界でいう不壊属性に近いものを武器に付与するものだ。辛うじて刀身は傷一つないが、中子に違和感を感じた。修理が必要なのは間違いないはずだが?」

 

椿は言われてすぐさまその場で道具を広げ、目釘を抜いて確認してみると、今にも中子は砕け散りそうなほど、ヒビが入っていた。

 

「・・・お主はこんな状態になるような相手とやり合っていたのか。少なくとも中層の階層主程度なら食材のように切り裂ける代物なのだが。」

 

そして、彼女は目に見えない部分の違和感から症状を正確に測る彼にまた一つ関心を抱いた。

 

「普段狩っている階層で使い物にならなければ話にならんだろう」

 

という彼に彼女は顔を歪める。

 

「耳が痛いのう。あい分かった。じゃが、これ以上耐久を強化するには鉱石のほうを変えねばならんぞ」

 

「こいつを使え」

そう言って放り投げた袋を受け取り、中身を見ると光る鉱石が詰まっていた。

 

「これは?」

「『光る楔石』。そう呼ばれている物だ。使いこなしてみろ」

そうぶっきらぼうに告げる彼に椿はムッとした表情で

 

「まるでわしには扱えんような言い方をしよる。待っとれよ。」

 

そう言い、太刀を持って部屋を出るのを横目に、外出のための準備をするのだった。

 

「ジャック~いるかい~?今日は晩御飯はいるのかい?」

ヘスティアが部屋の外から声をかけてくる。

 

「ヘスティア」

「なんだい?」

部屋を出て、ヘスティアを彼は短く反応した。

ジャックに声をかけられるのが珍しかったのかヘスティアはきょとんとした顔で振り返った。

 

「出かけてくる。それと、小遣いだ。ジャガ丸くんの代金にでもするといい。あと今日の晩は外食にいこう。『豊穣の女主人』でいいだろう。」

そういいながら50000ヴァリスほど入った大袋を目の前にドスンと置き踵を返した。

 

「へ?ちょ?え?あ、ちょっと!?」

急で反応できないヘスティアを無視し、ジャックは『竈火の館』を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャックは今【ミアハ・ファミリア】の店にいる。

「失礼する。素材提供にきた」

 

と、店番のナァーザに挨拶をする。

「ミアハ様を呼んでくるわ」

 

ジャックの顔を見るなり店の奥に行く。

しばらくすると主神を連れて帰ってきた。

 

「やあ、いつもすまないな」

「なに、困った時はお互い様だ」

 

「困るも何も、【ヘスティア・ファミリア】は君が所属してからという者のギルドへの納税も滞りなく行えてるそうじゃないか。零細ファミリア仲間とはもう呼べないな」

 

「それもお互い様だろう。こちらの提供素材で随分と薬の種類が増え、『うち』がよく利用しているというのが宣伝になって最近は忙しいそうじゃないか」

 

「ああ、二人ほど家族が増えるくらいにはね。君には頭が上がらないよ」

とミアハは笑みを浮かべながらジャックと談笑していると、店の入り口の戸が騒がしくなる。

 

「だから!あんたの『予知夢』とやらに付き合う気はないわよ!」

「ダメ!ダメよ!さっきも言ったけど」

 

バン、と勢いよく戸を開いて入ってきた姿にジャックは片方、見覚えがあった。

 

元【アポロン・ファミリア】所属、ダフネ

 

ジャックは思い出しながら静観している

 

「あんたの予知夢によると私のトラウマがどうとかいうけど、そんなの見ての通りなに・・・も・・・」

 

店をぐるりと見渡そうとして、途中にジャックが彼女の瞳に移り込んだ瞬間、まるで悪魔にでも会ったように顔をサッと青ざめてその場にへたり込む。

 

「あ・・・あ・・・」

殺されかけたときの光景がフラッシュバックし、彼女を襲う。

 

ガタガタと震える彼女にジャックは歩み寄ると彼女の頭をポンポンと撫でた。

震えが止まり彼女は呆けたように硬直する。

 

「今は敵ではないだろう。邪険にするなとは言わんが、そう怯えることはない」

そうして震えが止まるまでしていると

 

「あまりうちの子を誑かさないでくれるかな?」

 

とミアハが困ったように頬を書きながらそう言った。

 

「口説いているわけではないのだがな」

 

肩を竦め、撫でるのをやめると名残惜しそうな目でダフネが小さく声を上げた。

 

「さて、本題だ。今日の提供物を置いていく」

 

そう言うと霧が集まったかと思うと大量の薬草や素材が口から見える大袋がドスンと落ちた。

 

「ああ、ありがとう。こちらからも成果金を」

と、ヴァリスの入った大袋を受け取り、今度は霧のようにそれを霧散させる。

 

「そういえば、そこの。ダフネ。だったか。改めて、【ヘスティア・ファミリア】ジャックだ。冒険者レベルは4、といっても元々この世界の出身ではない上にステータスの表示は元の世界のもので表示されているので、レベル4というのはあまりあてにならんがな。このファミリアに所属したのなら、度々顔を合わせることもあるだろう。よろしく頼む。そっちは?」

 

と目線を未だに顔を真っ赤にしているダフネから後ろでおどおどしている女性に向ける。

 

「カサンドラです。よろしくお願いします・・・」

そう言って内気なのか俯いてしまった。

 

実際のところは聞いていた話とはイメージが違うので胸中で偏見を抱いていた自分を罵っていたのだが。

 

「さて、そろそろ邪魔をしては悪い。帰る」

「ああ、また頼むよ」

 

ミアハの呼びかけに手だけで応じながら、彼は店を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、ジャックはファミリアと共に【豊穣の女主人】で食事をしている。

本来は借金を帳消しにしたとはいえ、資産があるわけではないので無駄遣いはできなかったのだが、ジャックが

 

「奢ろう。たまには家族らしいことをさせてくれ」

 

というので今に至る。が。

 

「いやー!流石『深淵歩き』様やで!よっ太っ腹!」

「・・・様子を見るに、本来はロキが言ってるみたいな『タダ飯会』ではないみたいだね。ハハハ・・・すまないね。」

 

ロキがジャックの頭に汲んだ腕を乗せておぶっているのを見ながら、乾いた笑いで謝罪しながらもフィン・ディムナはちゃっかり食事をしている。

 

「ップハー!いや、生き返るわね。ほんと。他人の金、それもこの全自動胃炎患者生産機の金だと清々しささえ覚えるわ」

「主神様よ。全力で共感できるぞそれは。いやはや、全くもって労いの心が無いと思っていたがなかなかどうして・・・くっくっく」

 

アルコールで頬を上気しながらちゃっかり、ヴェルフ・クロッゾの隣を陣取りひたすら酒と食い物を食べるヘファイストスにうんうんと首を振りながら同意し、意地の悪い笑いをあげながら椿は同じように酒を呷る。

 

「あ、タケミカヅチ様!これ!味噌汁では!?」

 

「おお、懐かしいな」

 

「はい、偶然市場の行商が売っていたのを買ったんですけど、使うなら今日しかないなと思いまして」

 

タケミカヅチ達は何故か料理を手伝う命と談笑しているのが見える。

 

「あ・・・あの!私たちは勘定を別にしましょうか?」

 

ダフネがおずおずとジャックの顔を伺うように聞くが

 

「いや、いい。飲め、食え。予定外かつ想定外だが、今日の分くらいなら構わん。気遣い感謝する」

 

とジャックが言った。

 

「あ、あり「よっしゃお前ら言質取ったぞー!!!飲め―!食えー!!!」『うおおおおおおおおおおおおお』

 

と、顔をあからめて礼をいうダフネの声は酔った主神が飛び跳ねながら命令した後の【ロキ・ファミリア】の歓声に掻き消された。

 

そう、本来は『家族のみ』で、行われるはずだった食事会

 

が、お人好しのベル・クラネルが道中会った人に事情を説明してしまい、いつしかこのような大所帯になっていた。

 

【ロキ・ファミリア】

【ミアハ・ファミリア】

【タケミカヅチ・ファミリア】

【ヘファイストス・ファミリア】

そして【ヘスティア・ファミリア】

 

今、ここに話題沸騰中のファミリアが勢揃いとなっている。

 

それもベル・クラネルという男の人間性が成せる業なのだろう。とジャックは胸中で独り言ちた。

 

ベルもまた、この顔ぶれはジャックの敵には容赦なく、ひたすらに苛烈であれど、後腐れなく、異常ともいえるくらいに敵味方の判別と切り替えがしっかりしている彼ならではの人徳なんだろうな。などと思っていた。

 

「ジャックさん」

「ん?」

ベルはジャックに声をかけると、どこか疲れたような声で喉を鳴らして返した。

 

「僕、ジャックさんと出会えて心の底から良かったと思ってます」

「改まって言われると恥ずかしいな。まぁそれは私もだ」

ジャックは目を細め、滅多にしない微笑を浮かべる。

 

「僕、ジャックさんや、アイズさんに必ず追いつきます。たとえどれだけ時間がかかっても、僕は貴方たちみたいな英雄になりたい」

 

そう、目を輝かせるベルに驚いたような顔を浮かべたあと、思案し急に立ち上がる。

 

「お前達」

 

滅多に呼びかけるなどといったことをしない彼が急に立ちあがったのに驚いたのか。シンと静かになる。

 

「笑い話だ。そこのベルが俺やアイズに追いつきたい!だそうだ」

「な―!ちょっとジャック!冷や水をかけるなよ!」

 

と怒るヘスティアをジャックは見据える。

ベルは顔を真っ青にする。

 

「なに、これを笑わずにいられるか。戦争遊戯とやらでは主将を討ち、歓楽街の一件ではそこの私達の新しい家族を助けた。そんなこいつが俺達に『追いつきたい』だと?勘違いしてはいけない」

 

そこで一旦区切り、ベルを見据える。

 

「お前は既に俺達に追いついているさ。実力的にはまだまだかもしれん。が、お前は既に後に誰かに英雄と呼ばれるに値する男になりつつある。あとはついて来るだけだ」

 

そう、彼ははっきりとベルに告げる。

 

目を見開くベル。

 

歴戦の、大英雄が手を差し伸べている。

 

「ボサッとしていると、置いていくがな。ついて来るといい。ついて来たいのならば、だが」

 

「・・・はい!」

ベルがその手を取るのは早かった。

 

その反応にジャックは満足気に頷くと

 

「まずは飲み比べと行こうか。ミア。蜂蜜酒はあるか?」

「あるよ!!!何本行く?」

「あるだけもってこい」

「ちょ!?ジャックさん!?」

 

急に冗談のようなことを本気でいう彼にベルは手を取ったのを少しだけ後悔した。

 

「お、飲み比べをうちらの前でやるんか!おい、お前らからも一人でろ!」

 

ロキがそう促すとフィンが一歩前に出る。

 

「そういえば、『前の喧嘩』で負けて以来、勝ちを拾えたことが無かったね」

 

そう言って自信ありげに言うとジャックとベル、は半ば強制的だが、とフィンは同じ席に着く。

 

「よっしゃ一番誰が先に潰れる!?」

「いやぁ兎で間違いねぇだろ!!」

「もしかすればジャックが潰れるかもしれんのう」

「申し訳ないけど団長に1000ヴァリスだ!」

 

と喧騒は増していく。

 

ジャックはその状況を楽しみながら酒の到着を心待ちにしていた。

 

「願わくば、こういった毎日をいつまでも過ごしたいものだ」

 

誰にも聞こえないように彼は小声でそう呟いた。




完(嘘)
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