ダンジョンに周回した不死がいるのは間違っているだろうか?


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作:Saturdaymidteemo
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彼に悪意は在らず。


ヘファイストスはため息をつく。胃を抑えながら。

今日、目下彼女の胃に多大なるダメージを与え続けている男が来るという知らせを受けて、前日は今度はどんな手段で自分を苦しめるのかと恐怖し寝れなかった。

上手いこと目の下のクマを軽い化粧で隠し、ヘファイストスはその時を待っていた。

トントン、とノックをされる。

「・・・開いてるわよ」

と扉を開けて元凶が入ってくる。

「頼みがある」

「・・・武器の買取?素材の買取?前者はお断りだし後者もそろそろ倉庫が飽和してきてるから勘弁してほしいのだけど」

と、顔を歪ませながら一応聞く体制を取る。

「いや、製作を頼みたい。素材と金は持ってきた」

彼女は目を見開かせながら驚く

「珍しいわね、地面からヴァルガング・ドラゴンに砲撃でもされるのかしら。いいわ。言ってみなさい」

と嫌味たっぷりに言いながら手を返しそれで?と言わんばかりに肩を竦める。

するとジャックは部屋の半分を埋め尽くすほどのアダマンタイトのインゴットをどこからともなく取り出すとこう告げる。

「これで作れる限りのボウガン用のボルトを作ってほしい。大きさはこれくらいで。期日は1週間ほど。手抜きはないだろうが質は撃つまでに壊れない程度で頼む。」

と、ヘファイストスが座っている机にボルトの仕様を書いた紙を置かれた瞬間。

鍛冶師として、ファミリアの主神として、自然に異常な量の素材からかかる時間と自身のファミリアの人員を何人動員すれば間に合うかを計算『してしまう』

「・・・きゅうぅう」

計算し終わった彼女は胃のダメージが限界を超えたのか、普段のクールな姿からは似つかない奇声をあげて目を回して机に倒れ伏した。

ぐにゃりと視界が歪み、意識が落ちる中。

回復魔法を唱えられて我が身が全快するのを感じ、

「では、頼んだぞ。」

と出ていくジャックがはっきりと見えながら

ゴブニュあたりに泣きつこう。と涙を一筋流し、

今後こいつの依頼は絶対に安請負をしてはいけないと心に刻み意識を落とした。



「なぁ。改めて、自己紹介したいんだが」

 

と、赤髪の青年、ヴェルフ・クロッゾはジャックにそういう。

 

「そう言えば、しっかりと挨拶は交わしていなかったな。ジャックだ。気が付いたら、このオラリオに迷い込んでいた。よろしく頼む」

 

「ヴェルフ・クロッゾだ。『クロッゾ』って言えば魔剣鋳造でそれなりに有名なんだがな・・・」

 

と肩を竦める。

 

「鍛冶師なのか?」

 

「ああ、『戦える鍛冶師』だ。俺は武器は使い手と共に成長するべきだと思ってる。だから前線に出て一緒に成長できそうな武器を作るには、俺も戦えないとダメだろ?」

 

「なるほど」

 

短いやり取りをしながらジャックは『篝火』でアイテムを整理している。

 

旧【ヘスティア・ファミリア】ホームの『篝火』を引き払い、新たに作成した『篝火』に不備が無いか、確かめるように丁寧に作業している。

 

すると、ヴェルフは顔を覗き込み、驚愕に顔を染める。

 

篝火から木箱を出した。とかそう言うことに驚いているのではない。

 

彼が木箱から出し入れし、どこからともなく取り出しては収納している武器を見て驚いているのだ。

 

「あ、あんた!この武器は・・・こいつらはどこで手に入れたんだ!?」

 

そのどれもが、一等級武器―などという枠組みに当てはめること自体が失礼なほどの一品だった。

 

「ああ、私がこの身に呪いを受けて以降、徐々に増え、私を支えてきてくれたものだ。日を重ねるうちにそうだな・・・専属の鍛冶屋のような者に調整や強化をしてもらってこいつらは今に至る。武器は使い手と共に成長するべき・・・だったか。言うなれば俺はその生き証人だろうよ。この『太陽の直剣』などは、最初はその辺のなまくらと変わらなかったものだ。『ロングソード』と比べてみれば違いが分かるだろう。ほら」

 

そう言いながら二本の剣を取り出し、ヴェルフに手渡す。

 

ヴェルフは食い入るようにその武器を見つめる。

 

どちらも一等級以上の強化を施されているのが手にとって分かるが、『太陽の直剣』は確かに渡された『ロングソード』とは別格だ。彼の証言が正しければこの武器はまさに『使い手と共に成長した』武器なのだろう。

 

「すげぇ・・・」

 

目をキラキラ輝かせて見るヴェルフにジャックは目を細めながら

 

「そういえば、基本的にベルの鍛冶師、ということでいいのだろうか」

 

「ああ、その認識で間違いない。ああ、あとこれありがとう。いいものが見れた」

 

剣を返しつつ返事をするヴェルフにジャックは向きなおり、座ったまま会釈をする。

 

「ベルを頼む。お前なら、ベルに相応しい武器を打てるだろう。」

その姿は親の姿のようにも見えた。

 

「ああ、ああ。任せてくれ!大船に乗ったつもりでな!」

と、まんざらでもない様子で彼は胸を叩き、承った。

 

少し後、ジャックが自分で打ったと言った刀を見せられてとんでもない声をあげたのは別の話になる。

 

 

 

 

 

ヤマト・命は食い入るようにとあるものを見つめている。

 

挨拶をと思って『深淵歩き(アビスウォーカー)』ジャックの部屋を訪れた。

 

ジャックはいたのだが、ふと目に入ったものが彼女の当初の目的を吹き飛ばした。

 

壁に立てかけられてある刀である。

 

遠目で見ても、感じる。

 

あれは素晴らしいものだと。

 

「気になるか?」

とジャックが、その立てかけられていた野太刀を手に取り命へ放り投げた。

 

鯉口を切り、刀身を見ると思わず頬が上気し、ため息が出る。

 

「これは・・・誰が鍛えたのですか?」

と誰もが思うであろう質問を口にした。

 

 

「それに関しては私だが?」

 

 

「へ?」

時間が止まった。

 

「ヴェルフにも同じ反応をされたよ」

と、肩を竦める彼が少し前のことを思い出す。

 

ヴェルフは同じ反応の後、軽い師事を彼に求めた。

 

自分は素人で、師事できるほど、いい腕はしていない。とやんわりと断ったのだが。

 

 

「お前のような素人がいるか」

と一喝されてしまった。

 

 

「あの・・・折り入って頼みがあるのですが」

と思い返していると命がこちらに向きなおり、真剣な面持ちをする。

 

「私はヤマト・命と申します。『深淵歩き(アビスウォーカー)』ジャック殿に、刀を一本、打ってもらいたい」

 

「・・・それじゃダメなのか」

 

と、命の手に収まっている野太刀を指さすと

 

「素人目で見てもこのようなモノには滅多に会えません。私のようなものが使うべきではない」

と言った。

 

「あー・・・すまんがそれは習作だぞ。久しぶりに試しに一本打ったものだ。使う予定もないから持って行ってくれて構わんぞ?」

 

 

「・・・へ?」

再び時間が止まった。

 

 

「ジャックさん!」

しばらくするとベルが大慌てで入ってくる。

 

「どうした?ベル」

3度目の来客にジャックは再び顔を向ける。

 

「ジャックさんの昔話を聞かせてください!」

と目を輝かせながら詰め寄られる。

 

「・・・あまり聞いてて気持ちのいい話ではないのだが」

「それでも構いません!アイズさんから聞きました。元の世界では英雄に相応しい活躍をしていたって!別世界の人だとは知ってましたけど、詳しくは聞いていなかったので!」

 

屈託のない笑顔を向けられてジャックは少し引き気味に

「・・・気分を害しても知らんぞ」

 

と己のことをポツポツと話すのだった。

 

 

 

ジャックは自身のことを話せば話すほど顔を輝かせるベルにすっかり気力を持っていかれていた。

 

少々げんなりした様子で扉をノックする。

 

「開いてるよー」

と、返事をもらい入る。

 

「おや?ジャックどうしたんだい?」

ヘスティアがきょとんとした顔をこちらに向ける。

 

「ステータスの更新を頼みたい」

短く要件を伝えるとヘスティアは親指を立てて

 

「ああ、そういえばLv3になって以来してないね。いいよ!そこに横になっておくれ」

と、ベッドを指さされる。

 

横になったジャックに手早くステータスの更新を済ませるとヘスティアの顔が凍り付く。

 

ジャック Lv4

Slv838

生命力:99

持久力:99

体力:99

記憶力:99

筋力:99

技量:99

適応力:99

理力:99

信仰:99

 

楔打つ者(ウェッジドライバー)

篝火作成スキル

篝火の最大作成数は冒険者レベルに依存する

篝火最大作成数6

深淵歩き(アビスウォーカー)

ソウルを消費するスペルのコスト無料化

 

保有スキルは変わっていないが、冒険者レベルが上がっている。

そして、「Slv」なるものが開示された。

 

「ジャック君、このSlvっていうのに心当たりはないかい?」

 

「ソウルレベル。俺の世界では強さの根幹になっているものだな」

 

短く答えた彼の言葉に汗が一筋、たらりと垂れる。

 

「ジャック君、気になることがあるんだけど、君の世界でいうと、君のステータスというのはどの程度のものなんだい?そろそろ、親しい者にはこちらも説明しないといらない敵を作ってしまいそうだから、そこんところは詳しく教えておくれ」

 

と、告げるヘスティアにジャックは上着を着なおし、顔を向けて答える。

 

 

「カウントストップだが?」

「は?」

本日何度目かの時間が止まった。

 

 

「もうこれ以上成長のしようがない。と言えばいいか。なにせ、全ての数値が上限値なのだから、育ちようがあるまい。こちらのステータスは本来どのようになっている?」

 

と硬直するヘスティアに気付かず、ジャックは問いかけた。

 

以後ヘスティアは他の神からジャックのことを聞かれる度に胃をキリキリと痛ませるのだった。

 

 

 

 

ジャックは現在。ダンジョンにいる。

 

珍しく一人ではない。

 

「そら。後ろが留守だぞ」

と、声をかけると声をかけられた少女が振り向かずに『ライトボウガン』の引き金を引く。

 

両足に据え付けられたボルトがつめられたポーチからウッドボルトを取り、素早く装填する。

 

「なかなか苦戦しているじゃないか」

「そう思うなら手を貸してください!!!」

烈火のごとく怒りながら少女、リリルカ・アーデは戦い続ける。

 

いつも背負っている特徴的なバッグはジャックの背中にあった。

 

リリが倒したモンスターの魔石をひょいひょいと拾いながら彼女の戦いを手を貸しもせずに傍観している。

 

「はっはっは。それだとお前のためにならんだろう。お、新手だぞ」

彼女に襲い掛かるオークに指をさしながら教えるだけ教えてやる。

 

リリはオークの攻撃を跳ぶように避け、頭を正確に『ライトボウガン』で撃ち抜く。

 

「とかいっときながら既に攻撃態勢に入ってから教えるのは鬼ですか!?悪魔ですか!?何回それで重傷を負って死にかけたと思ってるんですか!?」

 

「その都度跡形もなく治してやっているだろう」

これで本当に傷一つない状態に戻されるから性質が悪すぎる。とリリは舌打ちしつつ、次のボルトを装填する。

 

彼女は現在、11階層にてモンスターの大群を相手にさせられている。

 

本来レベル1の彼女が耐えられるはずがないのだが、それには秘密があった。

 

彼女の指にはめられている4つの指輪である。

 

鉄の加護の指輪+2

すべての退魔の指輪+1

貪欲な銀の蛇指輪+2

命の加護の指輪

 

上から

防御を上げ

全ての属性耐性を上げ

得られる力を底上げし、

死んだときに死を肩代わりし壊れる

 

ものである。

 

この行いはジャックにとって軽い実験的な意味合いもある。

 

鉄の加護の指輪などの防御力がこの世界にとってどの程度のものなのかを試し

本来得られるソウルを増大させる貪欲な銀の指輪を冒険者がつけるとどうなるか。などだ。

 

結果は前回は遥かにステータス差のあるミノタウロスに殴り飛ばされても本来即死のところを瀕死で生き残る程度には防御力が目覚ましく向上し、

 

銀の指輪は『経験値』が増大するのかステータスの伸びがとんでもなく向上した。

 

それを良しとし、こうして『無謀な鍛錬(パワーレベリング)』をしているのだ。

 

おそらく地上に帰るころにはとんでもなく成長しているだろう。

 

と、ジャックはリリのステータスの更新を我が身のように楽しみにしながら

悲鳴を上げながらシルバーバックの体当たりで吹き飛ばされる少女に向けて最高峰の回復魔法の詠唱をするのだった。

 

 

「ジャックーーー!!!!!!」

ホームに帰り、ヘスティアにリリのステータスの更新をさせ、結果を参考に聞くために部屋外で待っていると、ヘスティアの怒鳴り声が室内から聞こえる。

 

「終わったか。入っても?」

 

「着替えは終わってますよ」

明らかに動揺しているリリの声が室内から聞こえたので室内に入ると

ジャックの顔面にヘスティアの拳が綺麗に入った。

 

「・・・何をする」

いつもの仏頂面でジャックは聞くと

 

「どうしたもこうしたもなにしたもないわ!何をしたらこんな異常なステータスの伸びになってるのさ!」

 

バン!と机に叩き付けられたリリルカ・アーデのステータスを本人と二人で覗き込むと

 

リリルカ・アーデ Lv2

 

力:G 204

耐久:C 680

器用:D 523

敏捷:D 567

魔力:H 182

 

縁下力持(アーテル・アシスト)

一定以上の装備過重時における補正。

能力補正は重量に比例する。

 

「なんでレベルアップしてるのさ!?それどころかなんで既に一部は普通の冒険者なら次のレベルアップが可能な域にまでまとまってるんだよ!?なにをどうしたらこんなえげつない伸び方をするのさ!?さあキリキリ吐け!」

 

ガクガクと襟を掴みジャックを揺らしながらヘスティアがすごい剣幕で詰め寄る。

 

ジャックは揺らされながらもパワーレベリングのことを話すと

 

「お前なんで新しい家族を下手したら死ぬような無茶を勝手にさせてるんだよおおおお!?」

 

と頭をガシガシかきながらヘスティアは頭を抱えふと急に止まったと思うと

「ガハッ」

今までジャックに与えられた心労が限界にきたのか吐血して倒れた。

 

のをジャックは鈴を鳴らし、回復魔法を行使した後、

「これで、多少はあいつの背中に立てるだろう。『ライトボウガン』は餞別だ。取っておけ。ボルトはしばらく補充がいらん程度にはお前の部屋に放り込んでおいた。補充がいるならいつでも言うといい」

とリリに言い残し部屋を出た。

 

半ば放心していたリリはしばらくそのままだったが、復帰し、ジャックが出て行ったドアを向き頭を下げる。

 

「ありがとうございました」

その言葉が彼に届いていなくとも、彼女は感謝の言葉を述べたのだった。

 

補充を頼むたびにとあるファミリアが悲鳴をあげ、それにかかわった鍛冶師の各々の実力が飛躍的に上昇することを彼女は知らない。




ヘファイストス様好きですよ。うん。
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