ドーモ、カガリビ=サン。フシンチュです
アビドス高等学校の校庭に突き刺さった螺旋剣から影が立ち上がる
他の誰でもない、素晴らしいチェスター…失礼、不死人である
ため息をつきながら不死人は螺旋剣の前に胡座をかく
この温かみが心を癒してくれる、とても暖かい…
…ふふふ
彼は自身の魔法を「神の怒り」「内なる大力」「平和歩み」に入れ替える
そして持っていた結晶の錫杖をタリスマンに変更
彼は記憶した後スタリと立ち上がる
ひひひ…
彼は、笑っていた
久しき戦いの熱気に、理不尽に殺される痛みに
ロードランの墓地で車輪と融合した骸骨になぎ倒されるような理不尽な感覚
引き金を引いただけで即死するとかテメーはグウィンドリンか!?
ガンと校庭を殴りつける、小さなクレーターが一つ生まれた
懐かしい感情である
ここキヴォトスに来て久しく感じた感情である
…まぁ、今風に言い換えるとするならば……
奴ら絶対ぶっ殺す☆
圧倒的な感情に流され彼は頭以外の全てを脱ぎ捨てる
そして頭に装備していた宵闇の冠を「太陽虫」へと変える
瞬間辺りが明るくなる、太陽虫の上に光の塊があるのだ
その光が私の行く道を照らしてくれている!おお!光よ!
彼は立ち上がるとアビドスの校門をダッシュで走り抜ける
夜のアビドスを全裸虫かぶりが駆ける
何も知らぬ一般人が見れば通報されてもおかしくない格好
そして竜狩りの槍をブンブン振りましているのである
…しかしその体は、まるで干からびてしまったかのような体つきであった
ダッシュで先程の現場に接近する
爆発痕、もとい煙が上がっているので場所は丸わかりだ
彼はまず遠くから撃っている奴にバレないように先程の暗殺者指輪セットを装備する
何処に奴が居るか分からないが、問題無い
何せ神の怒りを連発するダークレイスに比べれば回避しやすいのだ
ちっさい白いモヤが出たらいつの間にか死んでいるロードランと火花が見えて死ぬキヴォトス
ん?イージーじゃないかキヴォトス!
「ど、どうすれば…!」
「…リーダー、そろそろ誰が来るよ」
「……。」
先程の場所に到達する
彼は指輪を「暗い木目指輪」「黒コゲた橙の指輪」を装備する
「暗い木目指輪」は東の地で作られる特別な指輪である
金属であるのだが、そうとは思えないくらい精巧な木目の文様がある
これを装備している時、身につけているものが身軽であれば独特の体術をソウルの術により使うことが出来る
…のだが、これが悪い方向に扱われていて彼自身良い思い出は無い
仮面を付けた黄金の鎧達は今現在数は少なくなっている
しかし至る所で今宵の犠牲者を今か今かと待っているのだ
一方で「黒焦げた橙の指輪」は魔女の魔力が込められた指輪である
装備すると溶岩からのダメージを軽減する上、キックに炎が纏われる
元は生まれながら溶岩に苛まれる彼に姉達が贈った特別な指輪だ
しかし愚かな彼は直ぐにそれを落とした上、恐ろしい百足のデーモンが生まれたのである
説明はもうこの際どうでも良い
地面に散らばった灰を狂ったように集めている彼女たちを再確認
こちらに注意が向いてないことをいい事に彼は呪術の火を構える
その掌に力集中させ…そして、胸元に叩き込む
準備はこれで良い
そして彼は勢いよく彼女達の懐に飛び込む!
「な…!」
「化け物…!?」
「……!」
驚愕する3人、しかしそれだけで終わらせる気は無い
タリスマンをすぐさま構えスペルを詠唱する
腕を交差させ、祈り…そして勢いよく腕を振る!
「うぐァ!?」
「くぅっ!?」
「…!?」
彼を中心として衝撃波が一瞬生まれる
その凄まじい威力を彼女達は為す術なく受けてしまう
吹き飛ばされて彼女達は地面に転がった
今使ったスペルは名を「神の怒り」という
簡単にコイツの説明をしよう、"バカが脳を溶かした上で作った奇跡"である
詠唱時間?一秒もねぇよ
攻撃範囲の広さ?やべぇよ
威力?頭悪い
…彼が闇霊が出現する時に苦い顔をする理由の1つでもある
君がもしダークソウル3、2をしているならば1回リマスターを遊ぼう
そこで知るが良い、巨人仮面と平和歩み、神の怒りと大力の強さを
…はっ、今のは一体……
一瞬謎の思考が入りかけたが直ぐに正気に戻る
兎も角隙を晒した相手を逃がす彼では無い、即座にスペルを変更「緩やかな平和の歩み」を使用する
辺りに波紋がふわりと広がり、立ち上がろうとしていたサオリ達は触れてしまう
「う…?これは……」
「リーダー!早く逃げ…!?」
「…!?」
ミサキがサオリの腕を引っ張って逃げようとするものの何故か走ることが出来ない
そりゃそうであろう、何せあの「穏やかな平和の歩み」なのだ
「穏やかな平和の歩み」…恐らくこれを最初に生み出した者はダークレイスだろう
というかそれくらい性格がねじ曲がらないとこんなもの作らない
効果は範囲内にいるものに対して「ダッシュ」「ローリング」の使用禁止である
…さて、貴公らが同じ不死人…もしくはタニッシュドォならば理解していただけただろう
そうだ、いつも何気なく使用している「ローリング」「ダッシュ」が封じられるのである!
当たり前のように角に潜むタリスマン持ち巨人仮面
侵入時、辺り四面をタリスマンを持って囲う巨人仮面
まるでゴキブリのように動きながら接近する巨人仮面…!
どいつもこいつも私を苛立たせる…!
彼の怒りもそろそろ抑えが効かなくなってきた
遠方からのマズルフラッシュを確認した彼は首を動かして避ける
先程の狙撃が頭を狙っていたので、また狙ってくると彼は予想出来たのである
兎も角、これで調理が出来る
「く、そ…来るな化け物が!!」
サオリが目を見開きながらライフルの引き金を引く
しかし余りにブレブレなそれは彼に当たることは無い
もし彼女が冷静に狙いを定めたとしても右左に木目ローリングされて終わりである
おぉ、これがロードランのイクサである。ナムアミダブツ
彼は恐怖に叫ぶサオリを無視して懐に入り込む
そしてミサキや姫と呼ばれた人物が攻撃する前にスペルを発動する
グシャッと鈍い音と共に3人は吹き飛ばされる
「くぅ、…う」
「…」
3人は勢いよく頭良く打ち付け気絶した
初めて見るその状態に彼は不思議がりながら装備を漁る
ロードランのように白いモヤが出る訳では無いので少し困惑したのは内緒である
まず、サオリの装備を物色する
アサルトライフルを持ち上げ構えてみる…うむ、とてもやりやすい
これで引き金を引けば相手は倒れるわけである
少しボロいが、ロードランで購入した鍛治道具を使えば直ぐに直せるし強化も出来るだろう
サオリから予備のマガジンを奪い、サイドアームも奪う
…さて、ここまでしたら何か嫌がらせがしたいな……
…あ、そうだ(唐突)
彼は一つ名案を思いつき実行してみることにきた
何、そんな難しいことでは無い…ただ指輪を嵌めるだけである
懐から黒色の指輪を取り出し、彼女の指に嵌める
その指輪の名を「厄災の指輪」
ハッキリとした効果は名言しない
ただ言えるのはこの指輪には何一つ有用な効果は無く装備するべきでは無い
そして、これは人知れずひっそりと隠されているべきものであるのだ
…で、そこからのトドメも彼は用意している
もうひとつの指輪を厄災の指輪の次に嵌め込む
「寵愛と加護の指輪」
「運命的な美しさ」を謳われる女神フィナの指輪
装備者のHP、スタミナ、装備重量を全て増やす効果がある
…のだが無論ロードランにそれだけの効果があってなんの損がある訳が無い
この指輪は一度つけると外すことが出来ないのである
しかし不死人の力があれば無理に外すことが出来る、壊れてしまうが
え?どうして厄災指輪の後に寵愛指輪を付けたのかって?
まぁ、一種の仕返しだよ
彼はそう呟きながら立ち上がり、その場を後にしたのだった
やれやれ、少し騒ぎすぎたな
彼はそう反省しながら装備をチェスター、宵闇の冠に、変更する
久々にあのような感情に陥ってしまった…キヴォトスの人々は彼と違い有限の命なのだから気をつけなければ
そう思い、篝火に帰ろうとした時だった
「…ひっ」
前から、短い悲鳴が聞こえた
その声に彼は聞き覚えがある───────ホシノだ
よく見てみれば彼女の姿が見え、銃と盾を持っている
そんな彼女は、恐怖の目で彼を見ていた
ガタガタと体は震え、今にも得物を落としてしまいそうである
その原因に彼は今気づいた…この干からびた体である
不死人は人間性が無い、もしくは正気を失うと人ならざる姿になる
容姿は干からび、まるで乾燥死体が動いているかのようである
…まずい、見られてしまったか
彼は落ち着かせる為に彼女の傍によろうとする
たとえ化け物と罵倒されようとも…されたならば、ここを去れば良い
彼が、そう決意していると…お腹辺りに衝撃を感じた
思わず突き放そうと力を込めるがふと手を止める
よく見てみれば…ホシノの頭にある円が彼の視界を覆っている
「ごめんなさいごめんなさい…!うっううう…!!!!」
…どうも、別の問題が…起きてしまったようである
私は…彼女の触れてはならない記憶に触れてしまったようだ
しかしふれたからどうしようか……どう、彼女に接すれば良いのだろうか
こう言った時は基本相手は発狂するか殺しにくるし、こうした対応は初めてである
……仕方ない
彼はそうため息をつくと彼女の髪を撫で始めた
今までに一回も撫でたことの無い彼の撫で方はかなり不器用で、ホシノは顔を顰めていた
しかし、慰め方はこれで良かったようである
○
前も言ったが不思議な人だった
不思議というより頭のネジが全て抜けた人、共言えるかもしれない
バスの中では何かに興奮したのか気分が悪くなったのか、頭陀袋を被っていたりした
…私は、その頭陀袋に黒く乾いた血が付着していることを見逃してなどいない
いや、それだけじゃない
彼が大将を見た瞬間反射的に剣を引き抜き後ろに下がる
盾を構え攻撃に備えているその様は明らかに手馴れた動きである
キヴォトスに馴染みのない、殺しのやり方に手慣れている
そのレイピアにも血が付いていたから、多分彼は人を殺してる
もしくは私が想像できない程の人数を殺しているのだろう
で、そうなると彼は一体何処から来たのか
彼はロードランなる場所から旅人としてやってきたと言う
しかし旅人にしては人と殺り合うことに手馴れてるし、意味のわからない魔術を使う
インターネットで検索してみても「ロードラン」という場所は無かった
…彼が嘘をついているようには見えない
あのような魔術や呪術、奇跡を見てしまっては信じる他無い
今日も攫われたセリカが荷台の中で「発火」を使い自分で脱出したのである
流石に帰りは私たちの乗ってきたジープで帰ったのだが
……で、私もその一つに触れ使ったのである
「太陽の光の槍」
私がこのスペルを受け取り、読んだ瞬間意味の分からない単語が頭の中に飛び込んだ
手元にある、彼から受けとった巻物を読む
「太陽の光の槍」
'薪の王グウィンのソウルから生まれた奇跡'
'太陽の光の槍を投げる'
'火の時代のはじまりの戦いで'
'グウィン王が用いた雷がこれであり'
'その威力は、消えかけてなお圧倒的である'
…今見ても意味が分からない
しかし読んで分かるのは、これがグウィン王なる人物の武器であること
そしてこれが太陽の光そのものであり、そして消えかけているということ
どういうことだろうか???これは…
というより、王が使っていた物をなぜ私が使えたのだろうか?
これに関しては彼も驚いていた、彼も想定外なのか?
…何か別の理由で驚いていたような気がするが
しかし、どうして王の武器を彼が持っているというのか
……まさか、彼はロードランの王を────────
「い、いや……有り得ないか……あはは」
乾いた笑いが思わず漏れる
いくら彼が手馴れた腕を持っているとしても王、またドラゴンを殺すことは出来ないだろう
何せ竜は空にあり、人に勝ち目無しである
そして王の武器は消えかけてなお圧倒的でありそれを扱う王を倒せるわけも無い
……これは、忘れよう……
ホシノが、そう笑って角を曲がった時だった
「……ひっ」
そこには、「亡者」が居た
顔は干からび、生きた者とは言えないものであった
というよりそれが立って動いていること自体、恐怖であった
しかしホシノにとってそれが恐怖では無い
それが、「旅人」その者であること
それに気づいてしまったからだ
「あっ、ひっ……!」
呼吸が乱れる
動悸が抑えられない、体が震える
彼はホシノを見るとその乾いた目を見開いた
ホシノはその瞳の奥に、火の輪を見た
その火に見とれかけたホシノであったが、すぐに正気を取り戻し彼に抱きつく
驚いたような顔をして、直ぐにホシノを引き剥がそうとするがすんでの所でその手が止まる
「ごめんなさい、ごめんなさい……!」
ホシノの絞り出すような声がそれを止めたからだった
彼は優しく、しかし不器用に彼女の頭を撫でた
その少し痛い感覚にホシノは少し心の中で文句を言いながらその感覚に身を任せたのだった