ベル・クラネルの初めての冒険から3日後、まる一日眠っていた彼は目覚めた後、【
「…………」
そんな噂の的は、今オラリオの墓地の前で手を合わせていた。その墓は死体も持ち帰ることができなかったあの先輩冒険者のものだ。彼があのミノタウロスの唯一の犠牲者となってしまった。ベルは彼に対して、自分の前世の因縁を引き合わせてしまったことに申し訳なさを覚えていた。ベル本人が後悔していたからと言って何とかなる話でもないが短い期間であっても共に冒険した仲間を死なせてしまった。それには思うところも堪えるものもあった。
「…私はもう行こう。せめて私の道があなたの手向けとならんことを…」
自己満足であろう、欺瞞であろう。そう思っているしそれは事実なのは分かっているがそれでもベルはこの犠牲を踏み越えて、彼に王道の手向けを贈ろうと心の中で決意した。もう墓地に来ることはないだろう、墓地を後にするとそこには友人が待っていた。
「よう。もう挨拶は済んだか?」
「ああ、これ以上は私からもうかける言葉はない。待たせてしまってすまなかったな…クロッゾ」
彼の鍛冶師────クロッゾその人だ。
「複雑なもんだな、
「君の今世の家庭事情は複雑そうだな。まぁ良いか。私ももうアルゴノゥトという只人ではない。ベル・クラネルという
「ああ、その意見には賛成だ、これからもそれでよろしく頼む。ベル」
墓場から街へ戻る道中、ベルは自身の背負っている武器についてヴェルフに問いかけていた。
「しかし本当に良かったのか?この雷霆の剣を私に譲って」
「ああ、その剣はお前に握られてこそだ。お前以外の担い手はあり得ない。まぁちっとばかし借金を負ったがそれは些事だ。ヘファイストス様も分かってくれたよ、それにあの
「そう言ってくれるのはありがたいが…やはり高いだろうこれ。見たところ3000年前から朽ち果てている様子もないし…」
「そりゃあな、なんたって大精霊の奇跡そのものだ。聞いてみるか?」
ヴェルフはベルの耳にコッソリ耳打ちした。
「(ゴニョニョゴニョニョ)だ」
「いっ!?」
ベルは白目を向いた。卒倒しかけそうになった。
「なんだかとっても悪いことをした気がするよ…罪悪感とも言う…」
「気にすんな、元はヘファイストス様の私物でそれを椿が借り受けていたものさ。原価よりは相当安く譲ってもらっからな。まぁそれでも借金してるんだけどよ…」
「あ、うん。僕にもそれ返させるの手伝わせてほしいな。というかそうじゃなきゃ申し訳なさで僕が潰れそうかな…」
「ハハッなんだアルらしくねぇな。そこは茶化しておけよ」
「いや、まぁうん単純に茶化せない値段というか…というか僕も完全なアル本人とは違うというか…コホン…ンンッ、どちらにせよその
「そうか?まぁそう言ってくれるなら俺も嬉しいけどよ、稼ぐ当てが出来たみたいで。っと、ともかくだ」
ヴェルフは仕切り直すように言った。ここで再会できたのも本当に縁があってこその話。何よりもヴェルフはその再会を喜んでいた。
「ともかくだ、俺は【ヘファイストス・ファミリア】で鍛冶師をしてる。で、鍛冶師によっては専属契約を結んでそいつの武器は自分だけが打つってことを決めれる。…まぁ何だ、俺はよその専属契約を、ベル。お前と結んでほしいと思ってる」
「…ヴェルフ…」
「だがそう簡単に返事するじゃねぇ。俺としてはこのオラリオでもお前に武器を振るってほしいが専属契約ってのはそいつの今後の武器の事情…言うならば自分の半身をそいつに任せるってことだ。いくら昔の付き合いがあるからって早合点するんじゃねぇぞ。そうだな…今度機会を設けてくれ、俺の武器をお前に体験してもらう。神々が言ってたか…確か『プロモーション』だったか。そいつを受けてくれ」
「…フッ」
ベルは笑った。この鍛冶師は変なところで生真面目なのだなと。言われなくとももう心は決まっているようなものなのだが彼がそう言うのだ、彼の好意には甘えておこう。
「分かったよ、ヴェルフ。私の友が今ではどのような腕前なのか、それを見せてもらうとしよう」
「ああ、そうしとけ。絶対満足させてやるからよ」
そうして友は変わりなく笑うのだった。
「俺はそろそろホームに戻る。さっき言った試し打ちの機会はファミリアを通して連絡しておくから約束は守れよ」
「勿論だ、私が約束を違うはずはなかろう、ヴェルフよ…それでは暫しの別れと行こう」
ヴェルフとはバベル周辺で別れた。そして独り身になったベルはさてどうしようかと暇を持て余し始めた。ロキとの約束まではまだ相当刻限がある。暇を持て余してバベルを放浪するのもいいがそれはそれで味気無くて退屈だとバベルの周辺をぐるぐるしていた時、よく知っている顔を見た。
「なるほど…この時はこう対処すればいいんですね。それでもう一つ質問なんですけれども、もし仮に前衛の人が…」
「ああ、その場合は…」
そのように話しているエルフ二人の内片方は良く知っている顔、義妹である。一方の顔もベルはここ二週間の間でオラリオの集めた情報の中で該当する人物に思い当たった。まぁ邪魔をするわけにも行かないし空気になって消えよう────とベルが思って風景との一体化を計った瞬間にその肝心のレフィーヤが気づいたのだった。
「あ、兄さん」
声をかけられてしまったのならば無視するわけにも行かない。友人との間に入っていくのは実に心苦しくはあるが呼ばれたからにはいかなければならない。それが哀しきかな家族だ。
「おお、レフィーヤよ。こんな場でも巡り合うなどやはり同じ運命の元に生まれてきたとしか考えようがないな、妹よ…」
「いえ、完全に偶然ですけど。…フィルヴィスさん?」
「…レフィーヤ、私はもう行く。兄君との時間を邪魔をしても悪い」
ベルの隣をそのエルフは通っていく。そして軽く会釈するだけであっという間に消えてしまった。
「どうしちゃったんだろう。…ああ、そうだ兄さん、さっきの人が私と仲良くしてくれいる人で私に戦い方とかを教えてくれている…」
「フィルヴィス・シャリア、【ディオニュソス・ファミリア】所属のLv3、二つ名は確か…【
「はい、そうです…けど何で兄さんはそんなに詳しく知ってるんですか!?」
「いやぁ実は…レフィーヤが遠征に行っている二週間で仲良くなった男神様たちからこのオラリオのありとあらゆる美女美少女の情報を教えてもらって…美人って言うのは眼福だネ!」
「…フィルヴィスさん口説いた瞬間に縁を切りますからね…?」
凄い圧が出ているレフィーヤに怯えることになったベルであった。ベルは誓った、彼女だけは口がひん曲がっても口説くのはやめようと。
「それで、兄さんは何をしていたんですか?」
「ロキとの約束まで大分時間があるから時間を潰していたんだ。特にすることがあるわけでもないからバベルの周辺を回っていてだけだが…」
「暇なんですね」
「うっ、ストレートに言われると結構きついものがあるネ。しかしやるべきことはあまり今の私には多くないが…」
さてどうしたものかと肩を竦めるベルだが、そのレフィーヤとの会話の最中に二人に声をかけてくる人物がいた。
「む…美女の気配…」
「いきなり何を言ってるんですか…」
何度目かの呆れ顔のレフィーヤだが、本当にその場に美少女がやって来た。
「レフィーヤと…それにベル?」
「…アイズさん!」
「やはり私の勘は冴えているな。美女というには年齢が少々足りない気もするがそれでもこの端麗な容姿に無機質に思えるかもしれない線の細さは人形のような成功な顔立ちでそこから繰り出される圧倒的な強さとちょっと天然が入っている性格の剣姫は間違いなく美少女と呼べる存在で…」
「キモイです、兄さん。死んでください」
「ゴパッア!!!」
前世の想い人のその生まれ変わり的存在にベルは思わず早口で語ってしまったのでその気色悪い行動は普通に敬遠され、レフィーヤによって地面がひび割れるほど叩きつけられることでこれ以上名誉を損なわないことに成功した。成功した代償に死にかけの体がそこに転がったが。
「…?相変わらず仲が…良いね…?」
「割と本気で身内の汚点と思う時もあるんですが…アイズさんはどうしてバベルにいるんですか?」
「ゴブニュ様から武器を受け取ってきた。…そういえば武器と言えば」
アイズのその綺麗な瞳が地面に伏している死体に向けられる。ベルのその剣が気になっているようだった。
「ベル、貴方のその剣を少し見せてほしい」
「私の剣…雷霆の剣を、か?構わないがもしかしたら雷がアイズの体を貫くかもしれぬぞ…?」
「…大丈夫、私は強いから」
「いや、また兄さんの冗談ですよ。アイズさんも一々真に受けないでください」
「…レフィーヤ、なんか最近当たりが強くなった…?」
ベルは瓦礫の破片を払って、立ち上がり、雷霆の剣を抜き、アイズに手渡した。レフィーヤには何のためにやっているのかが分からなかったがベルには何となく曖昧ではあるがその真意が少しは分かった気がした。
「……………」
無言で何を考えているかはわからない、無表情…だがほんの少しだけ微笑んだのをベルは見逃さなかった。それを終えたらアイズはあっさりと雷霆の剣を返した。
「良い剣だね…それに、良いヒトも宿っている。たぶん二本と無い剣だから私みたいに折ったり、壊したりしないように気を付けて扱ってあげて」
「それには及ばないと私は思うけどね。この剣は
「……」
アイズは無表情ながらもどこかギクッとした顔でなぜか目を逸らした。何か思うところがあったかベルには分からないが。
「…さて、アイズ。貴方はもうホームに戻る予定かな?ならば私たちも戻ろうと思うのだが…」
「あ、そうですね。ホームで何するか考えるのもいいかもしれません」
「…あ、ううん。ちょっとだけ…寄るところがある」
アイズのその寄り道に付き合うことになった兄妹であった。
────
「揚げたていらんかねぇ!ジャガ丸くん、美味しいよ──ッ!!」
屋台から半ばやけっぱちのような美少女の声音が響く。その瞬間、ベルはその異形の女神に目を奪われた。
「えっと、チーズ味を一つください」
「はいチーズ味、毎度ありィッ!!」
アイズはそんなベルの様子も気にすることなく自分の好物を淀みなく買う。慣れたものだ。
「…新しい店員さんですか?…神様は…」
「あーうん、そうだよ。ボクはヘスティア。このジャガ丸くん屋台のバイトしてる女神さ。ちなみに団員現在募集中の新興ファミリアの主神でもあるよ。…そういうキミはおばちゃんから話は聞いているよ。ジャガ丸くん中毒者の凄腕冒険者…【剣姫】ことアイズ・ヴァレンシュタイン君だろう?…あの無乳の所の」
「…おばあさんが…?」
「そうさ、常連だからって話してくれたよ。ボクも君を見るのは初めてだがうん、君はいい子だね…それと後ろの二人はどうするんだい?できれば買っていってくれればうれしいんだけど」
「…レフィーヤ、私は確信していたぞ。巨乳でロリでツインテールで紐みたいな一人称がボクの女神のような女性…女神そのものだが…がいると…私の予想は当たっていたぞ…3000年ぶりの答え合わせだな…」
「…うっそお…え、兄さんの妄想じゃなかったんですか…?…んんっ?ていうかどこかで見た覚えが…?うーん?」
レフィーヤの記憶は曖昧だがオラリオに初めて来た日にロキとの取っ組み合いをしていたのがこのバイト女神だ。そんな感じの遠巻きの視線にヘスティアはムッとしながら
「そこの無礼な君たちー、
やれやれと首を振ったヘスティアだったが
「これは失礼しました、麗しき女神…貴方のその至上の美貌に目を奪われ、心が飛んでしまったこの失態をどうかお許しください。ですがそれほどまでに貴女の存在は気高くそして美しく…ああ、なんてことだ、屋台での店員がこれほどまで輝いてるでしょうか、いいえ絶対にない。私があなたの美しさと器量に目を奪われました。ですので私と…そこの妹のために貴女の用意した恵みを…それとよろしければこの後食事でも…」
「だから初対面の人を、女神を口説くなぁっ!!!」
「ゴホァッ!!!」
「…まったく、すいません。神ヘスティア、兄さんはこういう直ぐ調子に乗る人で…」
「え、えぇ~そうかなぁ~そうかもしれないねぇ~、君って見る目があるねぇ~そんなに言うならばボクの渾身のジャガ丸くんを揚げてあげようじゃないかぁ~」
しかし当のヘスティアは機嫌よくして目を閉じて照れている…というか嬉しがっている。レフィーヤは驚愕した、あの歯に浮くような兄の聞くのも恥ずかしい口説き文句でこれほどまで反応する女性がいたのは初めてだ。
「…この女神様…すごくチョロい…」
レフィーヤはこの純真無垢な女神がこの悪意やら陰謀やらが渦巻くオラリオでやっていけるのかがすごく不安になった。
「…ふぅ、うん。悪ふざけはともかく…それではヘスティア様、ジャガ丸くん…アイズ、一番お気に入りの味は何か教えてくれると助かるんだけれども?」
「ん、それなら小豆クリーム味が…おススメ」
「…本当に肉なのかが疑わしくなってきた…がまぁいい!そういうものだと割り切ろうじゃないか!では神ヘスティア!あずきクリーム味を二つお願いしよう!」
「応さ、承ったとも!愉快なキミ、是非名前を教えてくれ!」
ベルはたんこぶを作りながら、満面の笑みで笑いながら答えた。
「ベル・クラネル!このオラリオで『英雄』に至る者だ!」
────
そして夜、ロキ・ファミリアの黄昏の館にてベルはロキの私室にてステイタス更新を受けていた。
「…ほい、できたで。今から書き写すから待ってぇな…まぁ予想はしてたけれども予想の範疇を軽く飛び越えてきおったわ…これがベル、今のステイタスや」
ベル・クラネル Lv1
【ステイタス】
力 SSS 1250
耐久 S 969
敏捷 SSS 1305
器用 A 873
魔力 D 603
【スキル】
『
・早熟する
・決意の丈により効果上昇
・縁により効力上昇
『
・大精霊の加護を常に付与
・限界を超えた力を引き出す
・雷霆の剣、使用可能
「…ステイタスがSSS超え、初めて見たわこんなん…それにもう一個スキルが発現しとるとかうちは今どんだけ非常識を見せられてんのや…それに魔法も発現しとらんのに何で魔力上がっとるんや…」
「貴方が驚いてどうする、ロキ。冒険者は他ならぬ神により恩恵を与えられた存在だ。常識に括られない存在であることはあなたが一番承知のはずだ…こういうこともあるくらいで捉えていればいい」
「…それは確かに道理やけどな、さすがにここまで規格外なんは初めてや。…まぁええで、とりあえず話戻すわ。ステイタスも十分、成した偉業も『2週間の冒険者がミノタウロスを倒す』っちゅう滅茶苦茶なもん…ああ、もう現実受け入れるのも大変や…ベル、これで『ランクアップ』…出来るで」
「…おお、つまりLv2…第三級冒険者になれるというわけか!」
「ああ、まぁそういうこっちゃ。ウチのファミリアでLv2なんかは珍しい存在でもないが…やっぱりここまで早いと正直目立つやろうな。…ええか、ベル、本当にランクアップしても」
「何か含みのある言い方だな、ロキ」
「ああ、
「
ベルの言葉を受け、ロキは思い切りため息を吐き頬をパンパンと叩くと気合を入れ直した。
「…しゃあない。なら、ウチのファミリアがとんでもない記録をたたき出したってことを大々的に広めよう…そうするわ…んじゃ、行くで」
ロキは
「おめでとう、ベル。これで今から…Lv2や」
「…おお、これは感極まっている今のうちに綴らねばなるまい!英雄日誌!…『ベル・クラネルは史上最速の早さで英雄への階段を登り始めた…』…うむ、まさに我が偉業!」
「…テンションの差で風邪ひきそうやわ…お、発展アビリティも出てきおったわ…『剣士』か『狩人』…三つめもあるんかい…『幸運』…やと」
「…幸運…とはどのようなアビリティなのだ?」
「すまんサッパリや。なんせうちも山ほどアビリティを見てきたけどこんなんは初めてやからな。…字のごとく捉えるならものすごく運が良くなる!みたいな感じやろか」
「おおっそれは良い!この私に幸運も重なってしまえばもはや最強だ!」
「ったく直ぐ調子に乗る…まぁええか。レアアビリティには違いない。それを捨てるなんてウチの蒐集家としての一面も嘆くからな…よし、とりあえず発展アビリティは『幸運』で決定や…うん、あとはもう何も無いな。行くと良いで」
「ああ、実に有意義な時間だった!ではまた会おう、ロキよ!!」
ロキの私室から出ると、背後から声がかけられる。ベルは振り向かない。
「まずはランクアップおめでとう、と言っておくべきかな、ベル」
「…あなたか、『フィン』」
「うんそうさ、僕さ。盗み聞きするつもりなかったんだけれどもそれについては申し訳なく思うよ」
「しかし驚きだよ、あのアイズを超える速度…それもこの規格外の速度でランクアップ出来る団員がうちのファミリアから出るとは」
「冒険者に常識を当て嵌めるのは難しい、そういうことはフィン、貴方自身が良く分かっているだろう」
「そうだね、それも道理だ…ただ、一つ気になることがあってね」
「…それは?」
「簡単な話だ…君は『何だ』?」
ベルは振り返ることなく笑いながら言った。
「…何とはとんだ質問だ。私は喜劇が好きなただのヒューマン…だが言うならばあなたと同じ存在かもしれないな、『フィン』…それではそろそろ失礼するよ」
ベルはそのまま立ち去る。フィンはこの自分より年下のはずのヒューマンの少年が何も分からなくなってきた。
「…同じ?」
────
───だから『僕』は笑うよ
───そうじゃなきゃ女神さまも微笑んでくれないから
「…うーん」
ティオナは夢を見ていた。それは彼女が好きな一人の滑稽な男の喜劇の物語。世界最弱の道化の英雄譚。それにより彼女の笑顔は支えられた、そんな好きな物語。
「…ル…」
────ダメだ、笑えない人にそんな大事な役割は任せられない
────君は今、笑えているかい────■■■
そう、その知らないはずの遠い昔の物語であったはずだった。だが夢の中では彼女はその物語を良く見ていた。まるで主観のように、自分の視点のように。
────ああ、本当だ…笑えている
「…ア…ル…」
その小さな寝言は夜の宵闇に消えていった。
そしてここに夜に悪態を吐く少女
『私は君を見捨てない』
『私は英雄になる!』
脳裏に思い浮かぶは彼の冒険、欺瞞と虚言に満ちたはずの男の物語であったはずだった。
だが彼女は心のどこかではそれを欺瞞と思いながらも渇望している自分がいた。
「…だったら…英雄だったら…」
────リリを助けて!!