神々よ、ご照覧あれ 道化の再演を


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ファミリアどうでしょう


無言更新失敗作者


レフィーヤは後悔した

 

 

「あ、恩恵のない人を殴り飛ばしてしまったけど…生きてますか兄さん?」

 

「……」

 

「気絶してますけど生きてますね。しぶとさには定評がありますね」

 

反応はない。lv3冒険者の良いパンチがヒットしたのだから意識を手放して当たり前だが生きている方が不思議である。それと同時にレフィーヤは反省した。

 

「つい昔と同じ要領で兄さんのことを折檻しましたけど恩恵持ちの私がこうやったら兄さん死んじゃいますよね反省です。手加減して折檻しましょう」

 

と気分も新たにこのまま兄を放置するわけにもいかないのでレフィーヤは背負い、介抱する場を考えたが一つしか思い当たらなかった。…あまり気は進まないが本当に仕方なくである。

 

 

「ホーム…しかないかぁ…」

 

【ロキ・ファミリア】の拠点、黄昏の館である。レフィーヤにはそれ以外に彼を担ぎ込む場所を知らない。ホテルでもいいが生娘の、しかもエルフが連れ込んだとなるとそれなりに名の売れているレフィーヤがやるのは危険である。仕方ないのでレフィーヤはベルを背負いながらホームへ帰路を進めた。…言い訳どうしようと考えながら。

 

 

 

────

 

 

「ああ、お帰りなさいレフィーヤさ…え?ど、どういうことですか?」

 

門番が困惑しているのも分かる。わかるが今はさっさと通してほしいとレフィーヤは思った。結構重いし結構歩いてきたから疲れてきたのである。

 

「すいません、説明はあとにするのでまずは通してください。この人を介抱しなければなりませんので」

 

「は、はい、分かりました」

 

 

 

 

「あ、レフィーヤ!ずいぶん遅かったね!」

 

「ティオナさん、逸れてすいませんでした、それと説明も後にするのでまずはどこか空いているベッドはありませんか?」

 

「あーうん、その後ろの人のことだよね?ベッドかぁ、医務室のなら空いてると思うからそこに行こうよ」

 

「分かりました、謝罪はまた後でさせていただきます。それでは一旦失礼します」

 

ぺこりと頭を下げ凄い勢いでレフィーヤは行ってしまった。いつもの彼女とは比べ物にならないくらいエネルギッシュな姿にさしものティオナも押されていた。

 

 

「…レフィーヤ、なんか変わったのかなぁ…?」

 

アマゾネスの直感か、レフィーヤの性格の機微にもう気づき始めている…が、今はそれよりもあの背負われている少年のことが無性に気になった。あのレフィーヤが背負ってきたこともそうであるが…心の底からあの少年を見た瞬間、懐かしい思いに襲われたからだった。

 

 

 

 

────

 

 

 

夢を見た。あり得ない夢を見た。あり得たかもしれない夢を見た。見たかった景色を見た。

 

 

 

「…アル…」

 

「…アリア」

 

前世であれほど焦がれた姫君、アリアドネの姿だ。助けを求めてほしくてまるで喜劇のように道化のように踊り、演じ、そして戦った。…もはや気にしても仕方ないことだが街角でぶつかったあの瞬間から心を奪われていた。一目惚れと言ってもいい、彼女はアルゴノゥト(ベル)にとってまさに運命であったのだ。もし本当に彼女がいるならばどれほど再会を渇望するかなど道化の仮面を被らずとも漏れ出そうな本音だった。

 

叶うならばまたその姿を見たい、会いたい、そして愛を語りたい。当たり前だ、命を懸けたほど想い焦がれた女性だ、それがどうして軽視できようか。

 

あれから姿を見ることができなくなった、視力を失い、見たかったアリアの顔も見れなくなった。後悔はない、だが未練はあった。叶うならばまたその顔を見て、その笑顔を向けてほしかった。

 

 

 

「……」

 

ベルはようやく目を覚ました。レフィーヤにぶっ飛ばされたところで記憶が飛んでるのでどうやら意識を手放していたようだった。冒険者…もとい恩恵を貰った人物と貰っていない人類は隔絶したものがある。それも第二級冒険者となれば魔導師だろうとその腕力は侮れない…ということではないだろうがまぁいいかとベルは結論付けた。それにしてもここはどこだろう、ベルはようやく起き上がり周りを見渡そうとした…が、隣にいた人物と普通に目が合った。

 

「………」

 

「……………あ…り…ア…?」

 

ベルは息を呑んだ。その顔があまりにも似ていたからである、その姿があまりにも焦がれたものであるからである。しかしベルは一瞬で脳内での情報が整理された。レフィーヤの言からすれば彼女こそがアリアドネの生まれ変わり…だがその記憶はないはずだ。つまり彼女とこの彼女は別人、その外の記憶を持ち出すことの方が失礼だというものでそこは割り切るしかないのだ。たとえどれだけ瓜二つであってもである。

 

 

「…?違うよ…私は…アイズ…」

 

「……………ああ、失礼。麗しきお嬢さん、その目を奪われる美貌が私の知るお姿にあまりにも似ていたのでつい見惚れてしまいました。ですがこの私、女性にとんだ無礼を働いてしまったお詫びにどうか麗しきお嬢さん、私とこの後お茶でも…」

 

「…えっと…」

 

急に饒舌になったベルに目の前の少女────アイズは困惑していた、すごく悲しそうな顔をしたと思ったら一瞬で道化のようにふるまうのだから感情の整理が追いついてこない、しかしアイズが何かを言う前に鉄拳が舞った。

 

 

「起きて早々何でアイズさんを口説いてるんですかバカ兄さん!」

 

 

ドゴォとレフィーヤの鉄拳がベルの頭に飛び、ベルは再び昏倒した。

 

「よりによってその人を口説くとかあなたは見境がないんですかクズ兄さん、その女癖の悪さを直さないと私怒りますよ!」

 

「怒ってる、怒ってる通り越して殴ってるからそろそろ勘弁して兄さんまた輪廻の輪に入っちゃうレフィーヤさん…」

 

ベッドに撃沈したまま白旗を上げるベル、レフィーヤはぷりぷりと怒りながら説教をしている、アイズはそんな光景を物珍しそうに見ていた。

 

 

「…なんだか、珍しいね?」

 

「…何がですか?アイズさん」

 

「レフィーヤがそうやって誰かとじゃれあう…こと…?」

 

レフィーヤはそう言われた瞬間過去最高の落ち込みを見せた

 

「よりにもよっておね…アイズさんに身内の恥を見られたもう死ぬしかない…兄さんという汚点を消してその汚点の妹である私ももう死ぬしかない…」

 

「レフィーヤシヌ、私死ぬ、第二級冒険者に脅されると一般人の私死ぬから」

 

首を絞められてるベルは声にならない声で抗議の声を上げた、上げたかった。

 

 

「レフィーヤ、その人、本当に死んじゃうよ…?」

 

「もういっそ死ねばいいんですこんな兄さん」

 

「分かってはいたが妹からの殺意コワーイ!!」

 

 

そんなわちゃわちゃしてる医務室に何人かの来客があった。

 

「あれ?すっごい賑やかだね。レフィーヤ何してるの?」

 

「何してるっていうか…殺しかけてる?」

 

「あかん、レフィーヤがバーサク魔導師の異名になってしまう…レフィーヤにはバ火力の方がお似合いやで!」

 

 

二人のアマゾネスと一人の神、ベルは折檻の最中にちらりとその姿を見て、そしてとても悲しくなり、とても懐かしくなり、とても嬉しくなった。その顔の機微を目の前で見ていたレフィーヤは一瞬でその心中を察して掴んでいた首根っこを下した。いつまでも恥を晒してるわけにもいかないからである。

 

 

「ティオナさん、ティオネさん、それにロキ。どうしたんですか?」

 

 

「ティオナからレフィーヤが雄を連れ込んだからって聞いたからよ、こんな面白そうなこと見ない手はないと思ったけど…」

 

「だよねー、あのレフィーヤがだもんね。ロキなんかそれ聞いた時にはもう走り出してたよ」

 

「そうそう、ウチらのレフィーヤを穢したのは誰や!って」

 

「穢したって何ですか、そもそも私はロキのじゃないですよ」

 

ワイワイと言うレフィーヤの姿にベルは思わず優しく笑っていた。アイズはそれに気が付いたのか

 

 

「…笑っている?」

 

 

「…ええ、笑っていますとも。あの子が今でもあのように笑えていることが嬉しい。ですから私が笑わないとあの子が笑ってくれている意味など消えてしまいますから」

 

「…?」

 

アイズは要領を得ないベルの言葉に思わず首をかしげている。そんなアイズの表情をベルは横目ながら観察していた。

 

 

(…確かに容姿は姫にこの上ないほどそっくりだが…やはり別人だな。姫もあまり口数が多い人ではなく静かな人ではあったがここまで無機質…というより無感情ではなかった。…だが美しいな、アリア。君は…生まれ変わろうが、生まれ変わらなかろうが…)

 

アルゴノゥトの本音はここで終わりである。もうアルゴノゥトという只人は死に、アリアドネという王女もとっくに死んだ。前世の関係を今にまで引きずるのはナンセンスだとベルは割り切ることにした。…本音を言えばものすごく口惜しくはあるのだが。

 

 

「…んで、そこの白いのがアンタが運んできた雄?」

 

双子の豊かな方ティオネの目がベルを見た。前世のエルミナに殺されかけた苦い記憶は蘇ってきた、軽いトラウマである。

 

 

「なんだか兎みたいな子だねー?」

 

そして双子の貧しい方ティオナもベルを見た。…その笑顔に違和感を覚えたベルは心の中で思うことしかできないが。

 

(オルナ…君は心の底から笑えていたのかな?)

 

アリアと同じ、心の底から笑ってほしいと願った占い師、語り部のオルナ────今世では真逆に明るい女性だが果たして本当に心の底からの笑みか、今のベルにはわからない。

 

「むむー、ギリ中性的でなかなか悪くないけど…男やなぁ…」

 

そしてロキの不躾の視線を受けながら、とりあえずベルはレフィーヤを呼び部屋の隅っこに避難した。

 

 

(単刀直入に言います、いつもの噓八百で誤魔化してください兄さん)

(だが神威を放っているあの女性は見たところレフィーヤの主神だろう?私の知識が正しければ超越存在にはウソは通じないはずだが、それでいつものでまかせとは大分無茶を言うじゃないか?ていうか年齢私の方が低いんだが…)

(年齢詐称してください、年上と名乗れとまでは言いませんが同い年と名乗ってください。義兄ならば同い年もありえなくはないですから、ロキの方は私が何とかしますから、とにかくいつもの出まかせ誤魔化し噓八百で騙しとおしてください)

(まぁ確かに前世のことを話すわけにもいかないからそれは道理だが…)

 

散開したベルとレフィーヤはそれぞれに別れ、ベルは他のメンツをひきつけ、レフィーヤはその間にロキを本隊から隔離し、壁際でほぼ脅迫のように言った。

 

(…いいですか、ロキ。これからあの人が吐く噓八百を見逃してください)

「急になんやれ…フグィ…!?」

(小声でお願いします…!)

(分かった分かったから手を退かしぃ、窒息するわ…んで、噓八百見逃せってどういうことや)

(そのままの意味です今からあの人は虚言妄言大言壮語を吐きますからそれを見逃してください…海より深い理由があるので後で話しますから今はとにかく見逃してください…!)

(…分かった、レフィーヤがそこまで深刻に言うのも初めてや…せやけど後でちゃんと話、せぇよ?)

 

ロキとレフィーヤと会話の最中、ベルは仰々しくそして喜劇役者のように三人に向かって見せた。

 

 

「麗しき女性の皆様どうかこのような醜態を晒したことをお許しを頂きたい。そしてどうかこの恥の挽回の機会を頂きたい。だが私はまだ貴女方の真名を知らない…どうかこの無知蒙昧な道化に貴女方の真名を教えていただけますでしょうか」

 

「アハハ、君ってなんか役者みたいだね。えっとねあたしはティオナ・ヒリュテ、こっちは双子のティオネだよ」

 

(…本当の姉妹になって生まれられたか、それは…本当に幸運なことだな、オルナ、エルミナ…)

 

「それではそちらの金髪のまるで前世の想い人のように美しい女性、アイズ嬢、どうかこの私に貴女の名前をお教えください」

 

「…私?…私はアイズ・ヴァレンシュタイン…君は…レフィーヤの…お兄さん?」

 

「えっー!?レフィーヤってお兄さんいたの!?全然知らなかった!」

 

「いやその前にレフィーヤは森妖精(エルフ)でしょ?目の前のこいつはどう見ても只人(ヒューマン)にしか見えないけど…」

 

「そうですとも!私とレフィーヤの間に血のつながりは一切ありません!むしろ彼女の才能にはどれだけあっても及ばないでしょう!ですが彼女と私は心の繋がったきょうだい、最近再会した運命的な兄、レフィーヤの義兄『ベル・クラネル』と申します!畏れ多くも才能なく英雄を目指すためにオラリオに来た道化!それが私です!というわけで麗しきお嬢様方、どうかこの後私とご飯でも…」

 

 

「言った傍からナンパなんかしてどういうつもりですかこのバカ兄さん!!!」

 

「ゴパアッ!?」

 

ゴツンというゲンコツが落とされ、再びベルは地に伏したのだった。そんな風にじゃれる二人を見てほかの面々も珍しいものを見たという感じで見ていた。

 

「レフィーヤってあんな風に怒るんだねー、なんか意外かなー」

 

「そうね、もっと男相手だと遠慮するというかエルフの潔癖症が発動すると思ってたんだけど、なんかそんなものを感じさせないくらい親しいのは分かったわ」

 

「うん…そうだね、でもレフィーヤも…なんだか、楽しそう…」

 

医務室はしばらく騒ぎが収まることはなかった…それから、ベルはレフィーヤと共に主神ロキの部屋に案内された。

 

 

 

「…人払いは済ましてあるで、これで心置きなく説明って奴をできるはずや」

 

「ああ、感謝する神ロキ。いかんせんこんなこと他者に話すわけにもいかない。…だが貴方ならば別だ、レフィーヤの主神たる貴方ならば憂いなく話せるだろう」

 

「ずいぶんと買われてるなぁ、ウチは胡散臭い神ってことで通っとるのに」

 

「だが眷属(子供)たちの話ならば別…そうだろう?神ロキ」

 

「ハッよう言うわ、道化の仮面被っとる癖に随分頭が切れるようやな。まぁええわ(ウチ)だけに話したい内容…それは何や」

 

「それはですねロキ…」

 

「構わないよレフィーヤ、君は説明しなくて。…どうにもこれは僕が話さなくちゃいけないみたいだから」

 

ベルは道化の仮面を取り払い、主神に向き直る。そして舌戦を始めようとても言う雰囲気を出した。

 

「さて神ロキ、私がこれから話すことは全て真実であることを誓おう。尤も神であるあなたにそんな宣言は無意味であるとは思うが…突然不躾な質問をするようで恐縮だが、生物には必ず輪廻転生、というものはあるのだろうか、神ロキ」

 

「何や随分唐突な話やな。ウチは生死を扱う神やないから専門外やけど生物は一度死ぬとその魂を真っ白に浄化して転生の輪に乗って次の生物に生まれ変わるってのが転生の話や。それがどないしたん」

 

「…ふむ、やはり生まれ変わりはあり、か…そして唐突に話は変わりまくるが神ロキ、あなたは神が降臨する以前の時代…古代と呼ばれる頃から伝わる英雄譚をどれほどご存じか?」

 

「英雄譚…?うちは別段詳しいわけやないわ。まぁティオナがよう話してる【アルゴノゥト】とかフィンが熱心な話をしとる【フィアナ騎士団】の話とかはなんとなくやけど知っとるわ」

 

ベルはここまでの情報をまとめ、よしこれならばいけると確信し、ついに確信した。

 

「では、単刀直入に言わせてもらおう神ロキ…私には前世の記憶が蘇った」

 

…シーンと部屋が静まり返る。レフィーヤは不安そうな目で見ているが…ロキの表情も真剣そのものだ。

 

 

「…ウソ、ついてないわ。他ならぬ超越存在のウチが言うんやからお墨付きを与えとるようなもんや…しかし前世の記憶やって?ホンマだからこそ天界の奴ら仕事が適当やないか…それでそれをウチに言うて何なんや?」

 

「どうか驚かないで聞いてほしい。私は前世の記憶を持っている…そしてその前世の私の名は…【アルゴノゥト】。国に騙され、世界に騙され、人々に笑われながらなし崩し的にミノタウロス退治をし、姫君を救い出した喜劇の英雄…アルゴノゥトだ」

 

「…そして私がアル兄さんに最後まで付き添ったハーフエルフのフィーナ…それが私の前世です、ロキ」

 

「……………」

 

さすがのロキも言葉に詰まった。ただでさえ前世の記憶があるという衝撃告白に、さらにその前世が有名な喜劇の主人公アルゴノゥトと言われてはびっくり仰天である、それが嘘でないことがわかるからこその驚きと絶句だ。

 

 

「…ちょい、さすがに頭、整理させてほしいわ…」

 

「困惑する気持ちも分かる。混乱することも理解できる。だがどうか受け止めてほしい。私が3000年前に実在した人間、喜劇の道化…始まりの英雄【アルゴノゥト】であることを」

 

「…でも兄さんどうするんですか?これが神であるロキであるこそ真摯に打ち明けられますけどまさかほかの人に言うつもりじゃ…」

 

「言わないよ。僕はアルゴノゥトだからこそ言いたいことがあるし…それに僕が喜劇であることを望んだその物語はもう終わっているんだ、遠い未来の果てまで引きずろうとは思わない。アルゴノゥトは喜劇の物語である、これからもこれまでも…それでいいんだ」

 

「…兄さん。…兄さんが望むならそれでいいです…けど、私はあれだけ頑張ったアル兄さんが笑われ者になっているのはあんまり納得してないんですからね」

 

「…ハハ、レフィーヤ…君には本当に迷惑をかける…前世(まえ)今世(いま)も…ありがとう、フィーナ(レフィーヤ)

 

 

そして考え事に沈んでいたロキが復帰するとようやく直視をした。

 

 

「…話は分かった、それが嘘でないことも…んでそれウチに話してどないしたいんや」

 

「どうかレフィーヤを疑わないで上げてほしい」

 

ベルはそれっきり黙り切った。ロキも拍子抜けしたようだ

 

 

「…それだけかいな?」

 

「…それだけだ神ロキよ、私が望んでいるのはレフィーヤの幸せ。だからレフィーヤの本意は何も変わってないことは疑わないでほしい。…私が望むのはそれだけだ」

 

 

「…兄さん」

 

どれほど時間が経っても例え死が二人を別っても。その気持ちに偽りだけはないとそう言える、ベルは胸を張って堂々とそう言えるのだ。

 

 

「…ほんま美しい愛の形やな。ここまで綺麗な親愛ってのも見たことないわ…安心せえ、レフィーヤのことは疑ってないわ。今回レフィーヤが運び込んできたことで何か不都合になるんやったらウチがなんとかする、まああらへんとは思うけどな…神ロキの真名に誓って約束するわ」

 

 

「…ありがとうございます。貴方に心からの感謝を…神様」

 

ベルは心の底から感謝を告げ頭を下げた。レフィーヤも無事に話が終わって安心したようだった。

 

「しかしウチ()らが降臨する前の生き証人か…ホンマに貴重やな。なぁ自分、確か冒険者志望なんやろ?」

 

「…ンンッ、そう!何よりも私は今も英雄になる!なりたい!そのためには冒険者となりダンジョンで英雄となる!!…まだファミリアも見つかってない冒険者志望未満だけどネ!」

 

「…兄さん…相変わらずですね…」

 

少々憐みの目で見られるベルであったが、ロキは何かを考えこんでいるのかその目を見ながら言葉を続けた。

 

「まぁ、なら都合のいい話やな…自分…ベル・クラネル…ウチのファミリアに来るとええわ」

 

 

「…ええっ!?」

 

「ちょっロキ!?本気ですか!?」

 

「本気も本気、大本気(マジ)や。そもそもあんな話聞かせといて手放すとか見捨てるとか出来るわけないやろ、ハッキリ言うてほかの神じゃ自分を扱うのは無理や。…それにウチの予想が正しければ…」

 

「…ロキ?」

 

「何でもない…それで、聞かせてくれへんか?返事を」

 

 

「…えっ?本当に僕でいいんですか?」

 

「そうや、お前さんに言っとるんや、ベル・クラネル」

 

 

「…っ、ありがとうございます。これからよろしくお願いします神様!!」

 

道化の仮面は剥がれ、ベル・クラネルとしての心からの感謝をロキに告げるのだった。

 

 

「…本当にどうしたんですか、ロキ?」

 

「いや、まぁ他意はあるんやけどな。…レフィーヤ、自分も兄と離れたくないやろ?」

 

「…っ…」

 

レフィーヤは頬を染め、赤くなった。これはと思いながらロキは早速と言った。

 

 

「それにまぁ…こないなレアケース誰かに譲るのは口惜しいからってのもあるしのう…それじゃ早速【神の恩恵(ファルナ)】…刻んでみようか、上脱いでそこに横になってみ」

 

ベルにベッドの上に横になるようにと促した。レフィーヤは退出しようとしているが…

 

「レフィーヤ、出なくていいで。自分には見る権利があるはずや」

 

「…えっ、良いんですか?ステイタスを見て」

 

「ああ、ウチが許可する…それに多分レフィーヤのステイタスにも影響あることや」

 

「…???」

 

そして横たわったベルにロキは神血を垂らし、真っ新だった背中に神聖文字…ステイタスが浮かび上がってくる。ロキはそれを見た後、やはりなという予想通りであると背中を見下ろした。

 

 

「あの…ロキ?どうしたんですか…?」

 

「いんや…やっぱりまぁ、予想通りってそう思ってたんや。…喜びぃやベル…いや、アルゴノゥト」

 

 

背中に映った神聖文字を共通語に書き直し二人に見せたのだった。

 

 

「自分は歩み始めたんや…道化じゃない【英雄】の道を」

 

 

 

 

ベル・クラネル

 

lv1

 

 

 

 

 

再臨英雄(アルゴノゥト)

・早熟する

・決意の丈により効果上昇

・縁により効力上昇

 

 

 

 

 

アルゴノゥト(始まりの英雄)だからこそ発現した────レアスキルや」

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