【第34回】<補適法第22条解説>補助金を受け取った後に「もう辞めたい」と思ったら
――返還リスクを避ける事業譲渡・廃業・縮小の正しい手順
✅ こんな方いませんか?:
補助金交付を粘ってようやく受け取ったが、疲弊しきって事業をたたみたい/譲渡したい
補助事業そのものは完了したが、後から返還を求められないか不安
事業譲渡や縮小に際して、補助金に絡む法的・制度的注意点を知りたい
✅ 補助金をもらうまで2年。もう限界。でも返還したくはない…
近ごろ、こんな相談が急増しています。
「ようやく補助金が振り込まれたけど、もう疲れてしまった」
「審査や書類のやり直しに2年もかかって、事業そのものに集中できなかった」
「もうこの事業は誰かに譲りたい。でも補助金って返さなきゃいけないの…?」
本記事では、補助金等適正化法 第22条(財産の処分制限)を軸に、
補助金を受け取った後に事業をやめたり譲ったりする際、“返還しなくても済むための”注意点を解説します。
✅ 「補助金を受けた=辞められない」は誤解。でもルールはある
補助金を受けたからといって、「絶対に廃業や譲渡ができない」というわけではありません。
しかし、**誤った処分や譲渡をすれば返還命令(第21条)や取消(第17条)**のリスクがあります。
その中で特に注意すべきルールがこちら:
【補助金等適正化法 第22条】
補助金で取得・効用増加した財産を、主務大臣の承認なく、目的外で使用・譲渡・貸与・担保提供してはならない。
✅ まず押さえるべきキーワード:「処分制限財産」
補助金で購入した以下のような資産は、処分制限財産とみなされ、勝手に売却・譲渡はできません:
設備(機械・厨房・印刷機など)
店舗や事務所の内装、施設
ソフトウェアや商標・特許等の知財
長期間使う備品(取得価格5万円以上)
補助事業が完了したからといって、すぐに自由に処分して良いわけではない点が重要です。
✅ 返還しなくて済むための「安全な譲渡」の条件とは?
補助金を返さずに事業を譲る/やめる場合、以下のような対応が推奨されます:
● ① 譲渡前に「承認申請書」を提出する
→ 譲渡先が事業を継続する意思・能力があり、補助財産を適切に活用することが条件です。
● ② 譲渡先が補助事業を「承継」する意思がある
→ 形式だけの譲渡で、実質的に補助財産が遊休化するような場合はNG。
● ③ 設備等が耐用年数を過ぎているか「処分可能財産」として扱える
→ 一定年数を超えると、承認不要で処分できる「包括承認財産」に該当するケースも。
● ④ 廃業する場合は「理由書」+「処分計画書」を提出
→ 誠実な申出であれば、返還免除や一部免除が認められる場合もあります。
✅ よくあるNG例(返還リスクあり)
無断で設備を売却して事業をたたむ=第22条違反。目的外使用・無承認処分は返還命令の対象
事業を第三者に譲ったが報告していない=実質的には財産の移転とみなされ、取消しの対象に「譲渡代金の一部で補助金を返せばOK」と自己判断財産評価額ではなく“補助金額”が返還対象となる
✅ こんな場合は「返還不要」と判断される可能性も
補助事業は完了しており、目的は達成済み
補助財産が老朽化・陳腐化し、第三者が使わない前提で譲渡される
譲渡先が地域内の協力企業・パートナーであり、継続利用される
事前にきちんと「譲渡届・理由書・報告書」を提出している
▶ ポイントは、「補助金で生み出された成果が無駄にならない形で次に引き継がれる」ことです。
✅ まとめ:やめてもいい。でも黙って処分はNG
補助金をもらっても、事業をやめること自体は違法ではありません
ただし、補助金で得た資産は「公的資金の成果」とみなされ、処分には報告義務や承認が必要
正しい手順を踏めば、返還せずに適切に事業を閉じたり譲渡することが可能です
🤝 ご相談いただいています
「ようやく補助金が出たが、もう疲れて事業をやめたい」
「誰かに譲渡したいが、補助金を返さずに済む方法を知りたい」
「譲渡相手の選び方や報告書の書き方を教えてほしい」
こうしたご相談に日々対応しています。
他の士業と連携しながら、正しく次へ進むお手伝いをしています。
「補助金をもらったから、一生やり続けなければいけない」
…そんな制度ではありません。
大切なのは、「次にどう引き継ぐか」「どう終わらせるか」を誠実に設計することです。



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