【第33回】<補適法第21条の2解説>補助金の取消・減額に「理由」が示されていないなら、それは違法です
――補助金等適正化法 第21条の2が語る“行政処分”の本質と不服審査への道
✅ 補助金を打ち切られたのに、「なぜ?」が一切書いていない
採択されたのに交付申請を受け付けてもらえない、
補助金の額を減らされた、
返還を求める書類が突然届いた――
それなのに、理由の説明がない。
「これは決定です」「ご理解ください」
…だけで終わる補助金行政が、果たして法的に許されるのでしょうか?
✅ 法律はこう定めています。
――「理由を示さなければならない」と。
補助金等適正化法 第21条の2(理由の提示)は明記しています。
「交付行政庁が、補助金の交付決定の取消し、一時停止命令、是正措置命令などの不利益処分を行うときは、その理由を補助事業者に対して示さなければならない。」
これは単なる配慮ではありません。
**法律上の“義務”**です。
✅ 行政手続法の適用除外と、なぜこの条文が追加されたか
本条は、「行政手続法」の施行に伴い、補助金行政にも処分性があることを前提に導入されました。
本来、行政手続法においてはすべての処分に対して理由提示が義務付けられています。
しかし、「補助金交付に関する処分」は行政手続法の適用除外とされていたため、
代わりに個別法である補助金等適正化法に特則として本条が追加されたのです。
つまりこれは、こう言い換えることができます。
「補助金行政は処分性を有する制度である。だからこそ独自の手続規範が必要だ。」
本条はまさにその制度的裏付けです。
✅ 書面での提示が原則。「口頭説明で済む」は通用しない
補助金等適正化法第21条の2は、「理由提示」という用語を用いています。
これは、「書面による説明」を原則としつつも、処分の性質上まれに口頭対応もあり得ることを含意しますが、
補助金行政においては原則として、書面で理由を示さなければなりません。
なぜなら、補助金の交付決定や取消しは必ず文書でなされているからです。
したがって、処分の理由がメールや電話で曖昧に告げられたのみ、あるいは文書が届いても根拠が不明――
そのような対応は、法の趣旨に反し、明確に違法となる可能性があります。
✅ 理由提示には「3つの要件」がある
単に「○条に基づき取消」と記すだけでは、理由提示とは言えません。
裁判実務・判例も踏まえた最低限の要件は次の通りです:
1. どの法条を適用したか(法的根拠)
2. 何が問題とされたか(事実認定)
3. なぜ取消・減額が必要だったのか(論理的説明)
この3点が具体的かつ名宛人(事業者)に理解できる形で示されていなければならないのです。
✅ 本件訴訟でも「理由の欠如」は重大な問題点に
私たちが現在、中小機構を被告として争っている訴訟でも、
交付取消しや返還命令に対して、理由が不明確または全く示されていないという点が中心争点の一つです。
通知文にこう記されていたとします:
「補助事業の実施内容が適切でないと判断されたため、交付を取り消します」
これでは、理由提示とは言えません。
どのような書類に不備があったのか、
どの規定に抵触したのか、
なぜそれが取消しに至ったのか――
これらが全く説明されていない場合、
その処分は違法な行政行為であり、取り消されるべき対象になります。
✅ では、どのような場合に行政不服審査の対象となるのか?
次のような対応を受けた場合には、行政不服審査法に基づく異議申立ての対象となる可能性があります:
❌ 代理申請を疑われ交付審査を拒否された
👉証拠開示と再審査を求める請求が可能
❌ 審査が半年以上止まっている
👉標準処理期間を超えた「不作為」として申立て可能
❌ 減額通知があったが、理由が一言だけ
👉理由不備による不利益処分の違法性を主張可能
❌ 返還命令が届いたが根拠が不明
👉返還処分の取消しと理由の開示を求める審査請求が可能
✅ 「理由を示さない処分」は、取り消しの対象になります
補助金等適正化法第21条の2は、理由提示がなければその処分自体が無効になる可能性があることも示唆しています。
すなわち:
理由が不十分 → 取消事由
理由が全くない → 処分無効
この原則は、行政法の判例・学説でも繰り返し確認されています。
補助金行政も例外ではありません。
📢 最後に:制度は、声を上げた人によって変わります
補助金行政の現場では、
「一方的な打ち切り」や「理由のない審査拒否」が当たり前のように行われています。
でも、それは「制度としての正しさ」を欠いた行政対応です。
そして今、補助金等適正化法はこう告げています。
「不利益処分には、理由を示せ。説明なき処分は違法である」
これは、法に守られた中小企業の“権利”です。
🤝 ご連絡・ご相談歓迎します
理由のない処分に納得がいかない事業者の方
顧問先で似たケースを抱えている士業・支援者の方
裁判や審査請求の戦略を一緒に考えてみたい方
ぜひDM・コメント・メールでご連絡ください。
資料の共有も含めて、実践的な制度対応をご提案いたします。
「説明のない行政処分」には、「説明を求める法的手段」があります。


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