【第32回】<補適法第21条解説>:補助金返還命令は“行政処分”である──強制徴収の規定が示す制度の本質と不服申立ての可能性
✅ 返還命令に従わないと「財産差押え」まで?
補助金等適正化法第21条が示す衝撃の構造
補助金交付決定を取り消された事業者に対して、
返還命令が出され、そのまま放置すると最終的にどうなるかご存じですか?
実は、補助金等適正化法第21条第1項には、こう書かれています:
「返還命令に係る補助金等、加算金または延滞金の未納については、国税滞納処分の例により徴収することができる。」
つまり、**“滞納税と同様に財産差押えが可能”**という意味です。
✅ 「強制徴収できる=行政処分である」ことの明確な証拠
この条文が意味するところは、非常に大きな制度的含意を持っています。
強制徴収できる債権は、行政法上の金銭債権であり、民間契約とは異なる
返還命令が国税滞納処分と同等に執行可能であるということは、そこに「行政処分」としての性質が内包されている
これは、単なる「お願い」や「指導」ではなく、
**法的拘束力を伴う命令(行政行為)**として構成されているものです。
✅ 補助金取消し・返還命令は「運用」ではない
制度として“処分性”を内包している
中小企業基盤整備機構が行う補助金の交付・取消し・返還命令は、
中小企業基盤整備機構法15条および16条に基づいて実施されています。
その条文には「補助金等適正化法が準用されている」と明記されています。
つまり、補助金の取り扱いは明確に法律に基づく行政行為として構成されており、
「処分性がない」とする主張は制度構造上、極めて不自然であると言えます。
✅ 処分性が認められることの“意味”
──行政不服審査という選択肢が開かれる
補助金取消しが「処分」であると認められれば、
これまで諦めざるを得なかった多くの処分に対して、
行政不服審査という制度的対抗手段が使えるようになります。
(以前の投稿を再掲)
たとえば次のようなケースでも:
行政不服審査での対抗可能性
❌ 代理申請疑いによる審査拒否 正当な申請者であることを証明し、審査再開を請求。事務局の判断証拠の開示も求められる。
❌ 審査の著しい遅れ 標準処理期間(補助金等適正化法6条2項)超過を理由に、不作為の違法として申立て可能。
❌ 減額処分 減額理由が不明確・不合理であれば、手続違反・裁量逸脱として争える。
❌ 不交付処分 基準不明のまま形式的に打ち切られたケースで、基準の明示と再審査を請求可能。
❌ 返還命令 信頼保護原則や目的達成済み等を根拠に、取消しを求める異議申立てが可能。
▶ これらの制度的手段は、すべて「処分性があること」を前提としています。
✅ なぜ今、この問題を取り上げるのか?
現在、私たちは補助金交付取消の違法性を巡って、中小機構と訴訟を行っています。
争点の一つが「取消しが処分に該当するかどうか(=処分性)」です。
現時点では、裁判はまだ実体審理に入っていませんが、
この処分性が認められるかどうかは、全国の事業者にとっても極めて重要な前提問題です。
補助金の取消しや返還命令が「行政処分」であれば、
それに対しては正式な異議申し立てや審査請求が可能となり、
事業者側が一方的に泣き寝入りする状況は変わっていきます。
📢 情報提供・支援連携のお願い
理不尽な取消しや審査中止でお困りの事業者の方
同様の被害事例を知る士業・支援者の方
補助金制度に対して制度的な疑問を感じている行政実務経験者の方
ぜひDM・コメント・メール等でご連絡ください。
また、弁護士・行政書士の先生方へ:
補助金取消と「処分性」の問題は、法的にも制度的にも非常に根の深い論点です。
照会文書や裁判資料を共有しながら、行政不服審査の制度的運用と現場支援の可能性を共に探りたいと考えています。
補助金は“ありがたいお金”ではなく、
公正なルールに基づく行政行為であるべきです。


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