味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女   作:人間として終わってる人

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12話 ミリナの思い出

 あの日から私はミラを嫌いになった。

 ミラに裏切られたあの日から、ミラとの関係は完全に絶たれてしまった。

 今でも少し思ってしまう。

 あの出来事がなければ、今もミラと一緒に冒険できてたのだろうか。

 

 独りで戦っているといつもそんなくだらないことを考えてしまう。

 やっぱり一人で戦うのは辛かった。

 だからと言って他のメンバーを集めるのも気が引けた。

 

 ミラの言う通り、私はミラを忘れられてないのかもしれない。

 いや、私が忘れられないと言うよりアイツが忘れなくしたんだ。

 そう考えると怒りが湧いてくる。

 

「クソ……ッ!!」

 

 私は大振りに剣を振り回し、迫る魔獣を切り裂く。

 汚い返り血が飛んできて、ストレスが溜まる。

 戦う度に私の精神的な疲労はでかくなっていた。

 

「クソクソクソ!!」

 

 迫り来る魔獣を何度も何度も倒していく。

 冷静がどんどん失われて、周りが見えなくなってくる。

 こんな低級の魔獣なのに私は何故か焦っていた。

 

 普段ならこんなことにはならない。

 でも、久しぶりに会ってしまったから。

 ミラの顔が脳裏に焼き付いて離れない。

 本当に会わなきゃ良かった。

 過去に戻れるなら絶対にミラなんかと会わない選択を取る。

 アイツは人の人生を狂わせる天才だから。

 

 そんなことを考えながら剣を振り回す。

 大振りになってしまうせいか、隙がいつもより大きかった。

 しかし、そんなこと気にしてられないくらい今日は調子が悪かった。

 

「危ない!!」

 

 すると、すぐ後ろから声が聞こえてくる。

 何度も何度も聞いてきた声だった。

 嫌いでたまらない声だった。

 

「はあっ!?」

 

 振り向こうとした瞬間、ミラがこちらへ飛び込んでくる。

 私は体勢を崩し、そのまま地面に叩きつけられる。

 

「ミラ!? なんで!?」

 

 疑問が頭を埋めつく。

 いくらイカれた女といえど、戦闘中にこんな意味不明な行動をするわけが無い。

 私はミラの真意が全く分からなかった。

 

 しかし、数秒後、私の頭上を一匹の魔獣が通過する。

 それと同時に私の視界にミラの鮮血が舞う。

 スローモーションみたいにミラが崩れ落ちていく姿が見えた。

 

 私を庇ってくれたんだ。

 そう気づくと心臓が止まるような感覚に陥った。

 頭が真っ白になって、過去の記憶がフラッシュバックする。

 

 あの日もそうだった。

 裏切られた思ってたのに、ミラは結局私を庇った。

 脳裏に焼き付くのは、ミラの腹を貫いた大きな魔獣の爪痕。

 一面の血溜まりに倒れたミラの過去がフラッシュバックする。

 

 頭が痛い。あの時の記憶を思い出したせいで吐き気がする。

 

「お”え”っ”っ”……」

 

 口を抑える暇もなく、私は吐瀉物を吐き出してしまう。

 地面に落ちる吐瀉物を見て、ごっそり体力が失われる。

 最悪の記憶が今目の前で再び再現された。

 

 その事実に吐き気が止まらない。

 それでも魔獣は私達目がけて襲ってくる。

 私は満身創痍で剣を取り、それを振り回した。

 

 あの時みたいに必死に必死に剣を振り回した。

 いつの間にか魔獣は全員殺しきっていて、残ったのはミラとミラのパーティーメンバーだけだった。

 

「……最悪」

 

 まだ吐き気がして気分が悪い。

 私はまだあの時の記憶を忘れられていない。

 まだ鮮明にどこもかしこも思い出せる。

 

 今でも目を閉じれば、血溜まりに倒れるミラの姿が見えた。

 頭がおかしくなりそうだった。あんなの忘れられるわけない。

 嫌いなはずなのに情緒が乱高下して、心が掻き回される。

 

「クソ……」

 

 倒れるミラに悪態を吐き、剣を鞘にしまう。

 どうせ、あの程度の魔獣の攻撃でミラは死なない。

 大方狸寝入りでもしているのだろう。

 

 ミラの倒れている場所まで行くと、パーティーメンバーが私と同じ呆れたような目をミラに向けていた。

 

「どうせ寝てるんでしょ?」

 

「はい……ぐっすりです」

 

 ミラの仲間の治癒士に話しかけると、どうやら治癒士も気づいていたようだった。

 

「あなたも大変ね。こんなヤツが仲間で」

 

 私は治癒士に同情する。

 人生を狂わせる天才であるミラの犠牲者。

 きっとこの子もそうなんだろう。

 

「でも、ミラさんがいなければ、そう思うことすらできませんから」

 

 治癒士はそう言ってミラの顔を愛おしそうに見つめる。

 その表情に虫酸が走る。

 こうやって誰も彼も手につけて……本当に節操なし。

 

「とにかくコイツを運びましょう」

 

 私は呆れながらもミラの体を持ち上げた。

 勇者のくせに異様にミラは軽かった。

 昔より軽い気がする。

 コイツ、ご飯はちゃんと食べてるんでしょうね……。

 少し心配になりながらもミラを運んだ。

 

 もちろん、足だけ持ってあとは地面に引きずって。

 

「あ、あの……流石に可哀想じゃないですか?」

 

 すると、後ろを着いてくる治癒士がそんな甘っちょろいことを言い出す。

 ザーッと地面を擦るミラの頭部の音が聞こえてくる。

 これくらいでいいのよ。コイツの扱いなんて。

 

「あなた名前は?」

 

「え、わ、私ですか? 私はエイラですけど……」

 

「エイラ。忠告しとくわ。コイツの扱いなんて、これくらいでいいのよ」

 

「え、えええ……そうなんですか……?」

 

 私はエイラと名乗った治癒士の言葉を無視して、ミラを引きずった。

 少し困惑の表情を見せるも、エイラは大人しく私に着いてきた。

 はぁ……本当に騙しやすそうな性格してる。

 私も昔はそう思われてたのかな。

 

 私は大きく溜息を吐き、安全な場所までミラを運んだ。

 汚れた後頭部を適当に拭き取り、適当なベッドに乗せた。

 寝たフリのくせにベッドを占領するなんて、ありえないんだけどね。

 まぁこの感じを見るに、睡眠薬でも飲み込んだんでしょうけど。

 そんな猿芝居をするミラにどうしようもなく嫌気が差した。

 

「どうしてこうなったんだろうね……」

 

 私はすーすーと寝息を立てるミラにそう尋ねる。

 無意識にミラの顔に手を伸ばしてしまう。

 頬に触れ、ミラの冷たい体温が伝わってくる。

 昔より少し冷たいミラの体温。それでも懐かしかった。

 

 命の勇者 ミラ。

 たった一人で最強の魔獣である厄災を撃破し、人類の生存域を大きく広げた女。

 そんな最強の勇者の一角だったミラ。

 いつから変わったんだろう。

 私の憧れは、いつから虚構に変わったのだろうか。

 

 私は再び大きな溜息を吐き、ミラから手を離した。

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