味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女   作:人間として終わってる人

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11話 エイラの起死回生

 ミラさんはきっと悪い人だと思う。

 持ち場をすぐに離れたり、誰にでも優しい態度を取る。

 それでいて優しい態度を取る人は選別しているような。

 

 まるで何か確固たる目的があるかのように、効率的にミラさんは私との距離を縮めて行った。

 言うまでもなく私がそれに抗う術はなかった。

 

 まるで騙されてるみたいに、私はミラさんへの好感度を上げられていた。

 手を握られると心臓の鼓動が早くなるし、話しかけられるとドキッとしてしまう。

 全部、ミラさんの手のひらの上で転がされてるような気がしてならなかった。

 

 これでも、憧れの冒険者パーティーに入れたのは事実。

 私なんかが活躍できるなんて思ってない。

 でも、どこかで活躍できたら……それが私の夢だった。

 

 その夢に私は限りなく近い場所にいた。

 ミラさんが私を見つけてくれたから。

 

 でも、胸の奥で何かが引っかかる。

 ミラさんは何を考えて、私をパーティーに入れたんだろう。

 ミラさんは……。

 

 

「何を考えてるんでしょうか……」

 

 私はゆっくり離れていくミラさんの背を見守る。

 持ち場を離れて、何故か剣の勇者様の場所へ向かったミラさん。

 その意図は私には理解できなかった。

 

 サプライズとか言ってたけど、多分適当についた嘘だろう。

 ミラさんはそうやって仮面を被って私と接する。

 本当のあなたはどんな人?

 考えれば考えるほど、キュッと胸が締め付けられるような痛みに襲われる。

 

「危ない!!」

 

 ぼーっとミラさんの背中を見ていると、唐突にミラさんは大声を出した。

 私は反射的に立ち上がる。

 そして、ミラさんの方へ走ろうとした。

 

 その瞬間だった。

 ミラさんのすぐ後ろから近づいてきている魔獣に気づいた。

 私が声を出す前に、ミラさんは魔獣に襲われてしまった。

 

 そして数秒後、ミラさんはその場で倒れてしまった。

 頭が真っ白になる。

 いきなりの実戦で頭が動かない。

 

「ミラさん……?」

 

 フラフラとした足取りでミラさんの方へ近づく。

 まだ魔獣は残っている。

 ここで近づけば、命が危ない。

 それでも、私はそんなこと考えている余裕はなかった。

 

 ミラさんの倒れた場所まで行く。

 ミラさんは肩から血を流したまま、意識を失っていた。

 

「うそ……」

 

 心臓がドクンと重く跳ねた。

 初めて見る死の危機。

 それに頭がどうにかなりそうだった。

 

 ミラさんが死んじゃう?

 せっかく誘ってくれた……初めて私を見つけてくれたのに……。

 頭が真っ白になって、体から力が抜ける。

 

「い、いやっ……お願い……」

 

 その場で崩れるように膝をつき、私はミラさんの肩を揺さぶる。

 それでもミラさんからの反応はなかった。

 周りの騒音が消え、ミラさんの顔だけが目に焼き付く。

 

「い、嫌だ……せっかく……見つけられたのに……」

 

 どうしても声が震える。

 せっかく見つけた居場所なのに。

 手が震える。

 

 何故かその瞬間、あの時のことを思い出す。

 礼拝所でミラさんが私に言ったこと。

 

「な、治さないと……」

 

 震える手を掴み、杖を握り締めた。

 ミラさんを治さないと……。

 私はミラさんが見つけてくれた治癒士だから。

 

 ガタガタと震える両手で、祈りを捧げる。

 いつもみたいに女神様に……。

 杖から光が発せられ、ミラさんの傷口を包んでいく。

 

 しかし、一向にミラさんは起きなかった。

 傷口も全く塞がっていない。

 

 ただひたすらに私は無力だった。

 

「お願い……治って……お願い……っ!!」

 

 必死にヒールをかけるも、効果は目に見えないほど微小なもの。

 やっぱり、私をパーティーに誘ったのは間違いだったんだ。

 私なんか本当になにも出来ない。

 

 私はそのうち杖を握れなくなってしまった。

 女神様にどれだけ祈りを捧げても、目の前の大切な人が癒えることは無かった。

 

 ふと再びミラさんの言葉を思い出す。

 

「女神様なんかじゃなくて……」

 

 じっとミラさんを見つめる。

 絶望の中で何かが掴めそうな気がした。

 ミラさんの言っている言葉の意味がやっと分かった気がした。

 

 女神様じゃなくてミラさんを信じれば……。

 ミラさんは私を見つけてくれた神様。

 ミラさんだけでいいから、直すことができればそれで良かった。

 

「お願い……」

 

 ミラさんの少し冷たい手を取り、願いを込めた。

 想うのは女神様じゃなくて、ミラさんの安全。

 そう思った瞬間、ミラさんの傷口から光が溢れる。

 それと同時に生命力が吸われるかのような感覚に陥る。

 

 何故か、死ぬ気がした。

 それでも私は踏み止まることなく、ミラさんを癒した。

 数秒後、ミラさんの傷口は完全に塞がった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 安堵ともに疲れが全身に押し寄せる。

 今までに感じたことの無い疲れだった。

 体が疲れたと言うより……もっと奥深くの生命としての力が失われたような気がした。

 それでも初めてこんな傷を治せた。

 私は思わず嬉しくなってしまう。

 

「……あ……れ……?」

 

 私が勝手に達成感に浸っていると、違和感に気づいた。

 ミラさんが目を覚まさなかった。

 おかしかった。傷口は完全に塞いだはず。

 それに気絶してるのだとしても、治癒士の能力であれば覚醒させることができる。

 そもそも治癒の一環として、気絶からの復帰も含まれている。

 

 そのはずなのにミラさんは起きなかった。

 

 だとしたら考えられる可能性は一つだった。

 

「寝て……る……?」

 

 私は冷静になって、よく考える。

 思い返してみれば、ミラさんの傷ってそんなに深いものじゃなかった。

 焦りすぎて命に関わるものだと思ってたけど……。

 

 え?

 

 一瞬、頭がまた真っ白になる。

 冷静になりミラさんの口に耳を近づける。

 すーすーと気持ち良さそうな寝息が聞こえてきた。

 

「こ、この……バカ……っ!!」

 

 私は思いっきりミラさんの頬をビンタした。

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