味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女 作:人間として終わってる人
ネルの性格もあってか計画はすごく順調だった。
もうメンタル的にはいつでも自爆してくれそうな感じすらある。
ただ問題は実践で魔法が撃てないこと。
流石に魔法が使えないとなると、自爆以外の使い道が無さすぎる。
ここをどうにかして解決しないとダメ。
そこで私は適当な計画を立てた。
ネルの魔法が撃てないという悩みを解決すれば、更にネルは私に心酔してくれるはずだ。
ここは丁寧にざっくり解決策を考えないと。
私はじっくり数分かけて計画を練りに練った。
まあ悩み自体はよくあることだし、解決策は幾らでも思いつくんだけどね。
その中でもより安全でより簡単なものを選んだ。
とある郊外の薄暗い森。
そんな中を私とネルは二人で歩いていた。
「あ、あの、本当にもう実戦しちゃうんですか……?」
ネルはまだ不安そうな顔で私の後ろを着いてくる。
色々言いたいことがありそうなネル。
無理言って着いてきてもらったからには、何か言い訳しないと。
「大丈夫。今回は練習みたいなものだから」
私は立ち止まりネルの方を見つめてそう言った。
さりげなく肩に手を当て、大丈夫な感じを念押しする。
ネルは一瞬だけ安心したような表情を見せるも、すぐに不安そうな顔に戻る。
「で、でも……」
ネルは不安そうに杖を両手でギュッと握り締めている。
あー、これは確かに実戦では撃てそうにないね。
実戦では杖を片手で使わないと話にならないし、両手だと尚更手の震えがモロに杖に伝わってしまう。
「大丈夫だから……ね? 着いてきて」
私はネルの左手を掴み、ゆっくりと引っ張った。
とにかく杖を片手で持たせることを意識させよう。
もうそろそろ魔獣が出てくるエリアだし、この形を慣れさせておかないとね。
この状態で数十分歩くと、魔獣の気配がチラホラするようになった。
まぁここら辺の魔獣はCランクくらいの冒険者でも倒せる低位のもの。
ネルの苦手克服にはもってこいの相手だ。
「ネル。そろそろ来るよ」
私は近づいてくる魔獣の気配を感じ、そうネルに伝える。
すると私の手を握るネルの握力が強くなる。
分かりやすくネルは緊張していた。
私はそんなネルの手を離した。
そして、魔獣の方へ数歩歩く。
ネルはというと、離れてしまった左手を惜しそうな目で見つめていた。
「来た」
森の影から小さな魔獣が出てくる。
魔獣の中でも最低位の魔獣。ちょっと頑張れば5秒ぐらいで倒せる。
でも今はネルの悩みを解決しないとね。
私は魔獣に向かって柔らかめの剣戟をかます。
意図的に遅く振った剣は、普通に魔獣に的中する。
やっば。避けられないの? それ。
私は少し困惑しつつも、魔獣からもう一度距離を取る。
「ネル、あれに魔法撃てる?」
ネルの方に視線を向け、そう頼んでみる。
ネルは過度の緊張状態で、返事もできずただ魔法の詠唱を口に出していた。
ボソボソとギリ聞こえないくらいの声量で魔法を撃とうとしていた。
まぁ、これじゃ発動しないよね。
私は小さく溜息を吐きながらも、ネルの失敗を見届けた。
ネルの杖からは壊れた機械のように煙だけが出ていた。
「ご、ごめんなさい……私、やっぱり……」
ネルはもう泣きそうな表情で私の方を見つめてくる。
その縋るような顔はすごく可愛いんだけど、私の目標は未だに果たされていない。
ここは荒治療をするしかないみたい。
「大丈夫。私に任せて」
私はそう言って魔獣に突撃する。
わざとゆっくりと突撃し、魔獣に私の動きを完璧に読まさせる。
魔獣は私をひらりと避け、私の背中に回った。
「───み、ミラさん!!」
その瞬間、ネルのほぼ断末魔みたいな叫び声が響いた。
それと同時に私は魔獣に吹き飛ばされる。
いや、吹き飛ばされるというか、ほぼ押されてるだけ。
このレベルの魔獣に吹き飛ばされるなんてありえないし。
でも、私はそれに応えてわざと吹き飛んだ。
ネルにこの魔獣はめっちゃ強いと勘違いさせる。
そうすれば極限の緊張を体験させられる。
その先は人間に備わる本能的な領域になる。
きっと自然に体が動いてしまうはずだ。
「う、うおおおおぉぉ!!」
私は苦しそうに立ち上がり再び魔獣に突撃する。
魔獣も私のことをすっかり舐めきっているようで、今度はその牙を私に向けようとしてくる。
い、いや待って。痛いのは無理。
私は牙だけひらりと躱し、それでもやられた感じを出すべく地面にダイブする。
きっとネルの目には魔獣に弄ばれている私の姿が映っているはず。
「ね、ネル……魔法を……」
私は満身創痍な感じでネルの方を見つめる。
ネルは未だに震えていて、杖をしっかり構えられていなかった。
ああ、まだダメだなぁ。
どうすれば撃てるようになるのかなぁ。
「ふふ、ネル? 私、死んじゃうよ?」
私は少し笑みを見せて、ネルにそう言った。
すると、ネルはゾッとしたような恐怖の表情を見せた。
今までよりも、遥かに大きな恐怖をネルは感じていた。
「い、嫌っ……いやああああああ!!」
ネルは涙を浮かばせながら大声で叫んだ。
その瞬間、杖からバカみたいに大きな魔力が集まる。
そして、その魔力は魔法となり魔獣に放たれる。
私は幸運にもネルのトリガーを押していた。
ネルの放った魔法は魔獣に飛んでいき、魔獣を簡単に消し飛ばしてしまった。
いや、それどころか直線上にある大木すら突き破っていた。
「……すっご」
魔法学園卒業ってこんなにすごいの?
それともネルが変なだけ?
私は目の前で放たれた魔法の威力に絶句してしまった。