味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女   作:人間として終わってる人

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1話 めちゃくちゃチョロそうな女

 人が生まれながらにして持っている感情。

 死にたくないという欲望。

 私はそれが人より遥かに強かった。

 

 とにかくもう死にたくない。

 死んで天国に行けるなら喜んで死ぬけど、多分そうじゃないと思う。

 きっと暗闇の中で永遠に閉じ込められてしまう。

 それだけは本当に嫌だった。

 

 百歩譲って死ぬとしても、50歳までは生きたい。

 もうやること無くなって、生きたいという欲が薄れるくらいには生きたかった。

 その為だったら、何でもする覚悟があった。

 

 

 まぁ生き残るのって結構簡単だと思う。

 世界が滅亡したとしても、結構生き残れると思うんだよね。

 でも、私の場合は違った。

 

 私は勇者に選ばれてしまった。

 まぁ勇者って言っても、今の時代は勇者なんてそこら中にいるんだけど。

 まぁとにかく、その中の一人に不幸なことに選ばれてしまった。

 

 私には魔王を倒す義務があった。

 敵前逃亡なんしてしたら即処刑。

 

 いやそもそも姿をくらませばいいじゃんって思うよね。

 でも、それすらできない。

 勇者は強力な権能の代償として、女神様から強い縛りを受けることになる。

 

 だから魔王討伐の義務を放棄したとみなされれば、勇者の権能は没収。

 そして、多分私の命をついでに奪われる。

 それくらい女神様は勇者に対して辛辣なのだ。

 

 つまり、私は魔王討伐をしながら生き残らなきゃダメ。

 女神様の代理である国王からの任務は受けないといけないし、目の前で死にそうな奴がいたら勇者として助けなきゃいけない。

 

 まぁ、簡単に死ねるよね。

 この境遇を生き残るのはかなり難しい。

 厄災と呼ばれる最強の魔獣なんかにエンカウントしたらほぼ殺される。

 そもそも、その王たる魔王になんて遭遇したら本当に終わりだ。

 でも生き残るためには、そんな危機的な状況を乗り越えないといけない。

 

 

 そこで私は考えた。

 

 仲間を集めて、その仲間を私に心酔させる。

 心酔しきった仲間は、私を死んでも庇ってくれるはずだ。

 あわよくば、危機的状況になったら自爆でもして特攻してくれると思うんだよね。

 

 私に必要なのは自爆特攻してくれるパーティーメンバー。

 命に代えてでも、私を守ってくれる子が欲しかった。

 

 幸い、私って顔もいいしコミュ力もあるし、これなら生き残れると思うんだよね。

 

 

 

 *

 

 

 

 パーティーメンバーの選定は大切だ。

 前回は心酔まではさせたけど、結局見破られてご破算になってしまった。

 今回こそは完璧に心酔させないと。

 

 そのためには必要条件がある。

 

 まず、気弱な子であること。

 気が弱い子は押しに弱い。

 多分、すぐ私のために自爆してくれる。

 そして何より、心酔してくれやすい。

 

 ただ、気弱な子はそもそもの基礎能力が低いことが多い。

 そりゃそうだよね。

 めっちゃ強いのに、性格が気弱って意味分かんないもん。

 

 理想はもちろん、強くて気弱な子。

 でも、妥協点はある。

 強くなくても潜在能力が高い子。

 こういう子は私が成長させてあげて、優秀な爆弾に育てることができる。

 

 私が探すべきはそういう子だ。

 

 

「そういう子、どこかに落ちてないかなぁ……」

 

 ギルドのパーティー募集の掲示板を見つめる。

 やはり優秀な冒険者は軒並み、他の勇者に取られている。

 まぁ私のお目当てはそういう冒険者じゃないけどね。

 

 キョロキョロ掲示板を見つめてみる。

 

「お?」

 

 掲示板の隅っこにボロ切れのようになった紙を見つける。

 魔法使いで冒険者ランクは最低のF。

 しかし、履歴の欄には『王立魔法学園卒』の文字があった。

 

 王立魔法学園を卒業しておきながら、この残念な戦績。

 こういう子を狙うべきだよね。

 私はその紙切れを手に取った。

 

「い、ぃ、今……私の募集……と、取りっ……ぁ……」

 

 その瞬間、背後から声が聞こえてくる。

 やけに覇気がなくオドオドとした声音。

 私が今一番好きな声だった。

 

 期待を込めて振り返ると、そこには目元まで前髪を伸ばした女の子がいた。

 いかにも自信なさげで、身長と同じくらいの杖を両手で抱き締めていた。

 

「ん? これって……」

 

 私は掲示板から取った紙切れをその子に見せる。

 すると、その子は恥ずかしそうに目を伏せた。

 

「あっ……そ、それ……もう募集してませんから……」

 

 あ、ああ、この紙に書かれている子って、この子なんだ。

 私は話しかけられた理由をようやく理解した。

 つまり、この子の名前はネルちゃんね。

 王立魔法学園卒業のFランク冒険者。

 つまり、私のパーティーに必要な存在。

 

 私はしめしめと思いながらも、表情を整える。

 どうやら、この子は募集を止めようとしてるらしい。

 まずはそこから止めさせないと。

 

「えー、なんで募集やめちゃうの?」

 

「えっ……そ、それは……」

 

 私がそう尋ねると、予想通りネルは言葉を詰まらせる。

 まぁそうだよね。性格的に初対面の相手に簡単に自己開示できないよね。

 ふふ、でも大丈夫。私、コミュ力高いから。

 

「魔法学園に通ってたんでしょ? すごいよね。その杖もすごく立派だし」

 

 私は自然にネルと距離を詰め、肩に手を回す。

 肩に手を触れる瞬間、ビクッとネルが跳ねる。

 しかし、お構い無しにボディタッチをしまくる。

 

「そ、そのっ、とにかく募集はしてませんから……」

 

 ネルはふるふると震えながら声を振り絞る。

 い、意外に厄介だな……。

 

「一回でいいからさ、私とクエスト受けてみない? Fランクのクエストでもいいからさ」

 

 私はとにかく攻めることを止めなかった。

 こういう性格はいくら厄介でも、攻め続ければ何とかなる。

 私はネルの両手をぐっと握り締め、そう懇願した。

 

「で、でも……私……なにもできない……です……」

 

 すると、ネルは私からふっと目を逸らした。

 目を逸らされてしまったものの、横から見えるネルの瞳は微かに揺れていた。

 ふふ、もうここまで来れば勝ったようなものだ。

 動揺してる時点で付け入る隙は幾らでもある。

 

「そんなことないよ。もし、何もできなくても絶対見捨てないから」

 

 私はわざとゆっくり落ち着いた声音でそう言った。

 そして、グッと手に力を込める。

 私の体温が伝わるくらいにギュッと握り締めた。

 

 すると、ネルは再び私に視線を向け直してくれる。

 

「な、何もできなくても……?」

 

「うん。ネルは私の傍にいるだけでいいから」

 

 うん、最低自爆魔法だけ覚えてくれればいいから。

 

「そ、それなら……」

 

 ネルは未だにオドオドとしながらも、そうハッキリ口に出した。

 その瞬間、私は思わず興奮してしまう。

 やっぱり気弱な女の子は最高だ。

 

 てか、よく見るとネルちゃん凄く可愛いしね。

 前髪のせいで片方だけ隠れ目になってるのめちゃくちゃ可愛い。

 気弱そうな黒髪なのもめちゃくちゃ良い。

 私に心酔して自爆特攻してくれそうな顔すぎる。

 私のタイプどストライクの顔すぎる。

 

「じゃあ、さっそくご飯でも食べに行こうか」

 

 私はネルの手を強引に引き、ギルドの外へ連れ出した。

 もう外にまで来たら勝ちだ。

 拒絶する気配も全くない。

 

 私は作戦の成功を確信した。

 まずは一つ目の爆弾をゲットだ。

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