「デジタル給与」はありがたみない? 解禁2年で利用率は3%未満
スマートフォンの決済アプリなどで給与を受け取る「デジタル給与」の利用が進まない。キャッシュレス化の切り札として、2年前に解禁されたが、2万人を対象に実施した民間機関の調査で、利用率は3%未満にとどまることが分かった。決済アプリのポイント還元といったメリットもあるが、利用拡大には決め手を欠くようだ。 デジタル給与は、企業がスマホ決済大手PayPay(ペイペイ)など「資金移動業者」のアプリに給与を送金し、従業員はアプリを通じて買い物ができる仕組み。 政府は2023年4月、キャッシュレス決済サービスの拡大や、金融とITを融合させたフィンテックを促す狙いで給与のデジタル払いを解禁した。企業が導入する場合は労使協定を結び、従業員から個別に同意を得る必要がある。 ◇利用進まないワケ 調査はMMD研究所が2月27日~3月3日の5日間、18~69歳の男女2万人を対象に実施。デジタル給与の認知度は61・9%だが、利用率はわずか2・8%だった。 楽天やPayPayなどのポイント経済圏と連携していれば「使ってみたい」としたのは、4215人(21.1%)だった。 現在利用していない1万9450人のうち、利用意向があると答えたのも、3184人(16.3%)にとどまる。 デジタル給与の魅力としては「銀行ATM(現金自動受払機)に行かなくて済む」「ポイントがもらえる」「お金の管理がしやすくなる」などをあげる人が多かった。 企業側の導入が進まないことも背景にある。帝国データバンクが昨年10月、1479社を対象に実施した調査によると、「導入予定はない」と答えた企業が88・8%で、「前向き」としたのはたった3・9%。導入による業務負担の増加や安全上のリスクが懸念材料となっている。 ◇若者向けの福利厚生で導入も 一方、振込手数料の削減や従業員の満足度向上を狙いに導入する企業も出てきた。牛丼チェーン大手の吉野家では4月から、約2万人のアルバイトを対象に、希望者には給与をPayPayで支払うことを決めた。給料日前に一部の給与を受け取ることも可能だ。 広報担当者は「アルバイトは若年層が多い。決済アプリになじみがある若者向けの福利厚生として導入した。利便性を高めることで人材の定着につなげたい」と話す。【隈元悠太】