就職氷河期世代 “年齢重ねても賃金上がらず 年金に不安”

全国に1700万人以上いるとされる「就職氷河期世代」。学校を卒業して社会に出ておよそ20年から30年がたち、年齢は50代前半から30代後半になりました。物価は高騰する一方で、年齢を重ねても賃金が上がらず、将来の年金に不安を抱える人が少なくありません。国も支援を強化していますが、当事者はどのようにこうした課題に向き合っているのでしょうか。

“全国で1700万人以上” 就職氷河期世代

厚生労働省によりますと、就職氷河期世代の人たちは、大学や高校を卒業したものの、希望する正社員になれず、パートやアルバイトなどの非正規雇用で働いたり仕事に就くことができなかったりした人が少なくありませんでした。

学歴で異なりますが、現在の年齢はおおむね50代前半から30代後半で、全国で1700万人以上いるとされています。

昨年度までの国の集中的な支援もあり、正社員として就職する人も増え、内閣府によりますと、2019年から2023年にかけて正規雇用の労働者は会社役員を含めて21万人増加したとしています。

国が集中的に就労支援 課題も

国は、バブル経済崩壊後の雇用環境が特に厳しかった1993年から2004年ごろに就職活動を行った人たちを「就職氷河期世代」として、昨年度までの5年間、集中的に就労支援をしてきました。

厚生労働省によりますと、92ある専門窓口を含めた全国のハローワークで支援をし、2023年度はこの世代のおよそ12万6000人が就職したということです。

しかし、課題もあり、2023年度に就職して職場への定着支援を希望した6800人のうちのおよそ3割が、半年以内に離職していたということです。

今年度からは、支援する人の対象年齢を、就職氷河期世代を含む59歳から35歳の人に広げます。

そして、課題となっている早期の離職を防ぐため、窓口では、相談者の得意分野を確認し、希望する仕事の内容や必要なスキルについて理解してもらうなど、職場への定着を意識した支援に力を入れています。

厚生労働省は「就職氷河期世代の支援の実績は上がっているので、一定の効果はあったとみられる。今後は中高年層に対象が広がったので、より改善を進めて、必要な支援を引き続き行っていきたい」とコメントしています。

ハローワークで就職氷河期世代中心の就職相談 訪れた人は

専門窓口が置かれている埼玉県川越市のハローワーク川越でも、今月、就職氷河期世代の人たちを中心に就職に向けた相談が行われていました。

このうち52歳の男性は「老後に向けて、これから体が動かなくなった場合、入院などでお金がどんどん減っていくわけなので、いまの貯蓄で持つのか少し正直な不安があります」と話していました。

53歳の男性は「大学を卒業したときの就活も厳しく、大企業に就職できていれば賃上げもあって乗り遅れることのない人生になったのではないかなと思います。今は物価が上がり続けていて、給料が上がるのはいいことですが、見合っていないので、不安はあります」と話していました。

ハローワーク川越では、昨年度、専門窓口で116人を支援し、3割以上の人が就職したということです。

森宏太郎 統括職業指導官は「今回、支援対象の年齢が59歳までに広がったことで、親の介護との両立や、その方自身の老後の生活設計の相談も増えてくると思います。それぞれの人の課題に応じた支援を行っていきたい」と話していました。

課題の1つ “賃金の伸び”は

課題の1つが、賃金の伸びです。

就職氷河期世代を含む中高年の人たちは、賃金の伸びが10代や20代などの若手と比べて小さくなっているというデータもあります。

厚生労働省は「賃金構造基本統計調査」で、毎年、10人以上の常用労働者を雇用する全国の民間の事業所を対象に6月分の賃金について調べています。

このうち一般労働者の所定内給与の平均額について、去年の確定値とコロナ禍前の2019年とを比較しました。

すると、
▽19歳以下が11.0%
▽20歳から24歳が10.0%
▽25歳から29歳が9.7%
▽30歳から34歳が8.8%
▽35歳から39歳が7.9%
▽40歳から44歳が7.0%
▽45歳から49歳が6.9%
▽50歳から54歳が2.9%
▽55歳から59歳が7.8%
▽60歳から64歳が12.9%
▽65歳から69歳が11.3%
でした。

49歳男性 “生活がギリギリの賃金では厳しい”

こうした状況に不安を訴える人もいます。

茨城県に住む49歳の男性も、就職氷河期世代のひとりです。

男性は、パソコンのプログラマーを目指して専門学校で学び、1996年に卒業しました。

当時の厳しい雇用状況では希望する会社に入れず、配線工事を行う作業員の仕事に就きました。

正社員で入社した男性の初任給は手取りで12万円ほどで、18年間働きましたが、基本給は大幅には上がらず、手取りが20万円を超えることはなかったといいます。

男性は「働き始めてからしばらくは週6日働いても残業代も出ませんでした。当時は不況で、ほかの会社に転職しようとしてもどこの会社も採用してもらないと思って、我慢しながら仕事を続けてきました。いま振り返ってみると、最初の就職活動でつまずいた精神的なトラウマもあったのかもしれません」と話しています。

そして、上司とのトラブルや働き過ぎで体調を崩したことをきっかけに、同業他社に転職。

2社目の手取りも月20万円ほどで、昇給はほとんどなかったということです。

2年半前、体調を壊したのをきっかけに、2社目も退職し、知り合いの仕事を手伝いながら、転職活動をすることにしました。

しかし、去年、一緒に暮らしている父親が病気で倒れたため、いまは母親と一緒に介護をしながら、就職説明会に出かけて仕事を探しています。

これまでの経験が生かせる仕事を希望していますが、前の会社よりも給料がよく、さらに自宅に近い職場となると、条件に合うところが見つからないといいます。

男性は「老後のためにもお金を残したいですし、生活がギリギリできるだけの賃金では厳しいので、ある程度、貯蓄ができるくらいの給料は頂きたいです。若い人が高い初任給をもらえているのはいいとは思いますが、自分たちの世代もこれまでの不況の中で会社を助けてきた人もいますので、そういった人たちにも少しでも高い賃金を払ってほしいです」と話しています。

48歳男性 非正規雇用で働く期間長く “将来の年金に不安”

非正規雇用で働く期間が長かったため、将来の年金に不安を感じている就職氷河期世代の人もいます。

都内で暮らす48歳の男性は、1999年に専門学校を卒業して自動車販売店に就職しましたが、突然、腰痛になり、入社から4か月後に退職しました。

その後、再び就職しようと、20社ほど試験を受けましたが、いずれも不採用でした。

男性はおよそ5年間、コンビニでアルバイトとして働きましたが、月給は手取りで平均12万円ほどでした。

生活が苦しかったため、数年間、国民年金の保険料を納めることができませんでした。

そして、27歳から郵便局で期間雇用の配達員として働き始めました。

手取りは月24万円ほどに増えて、厚生年金にも加入できましたが、ボーナスはわずかで、退職金がなかったといいます。

現在、男性は賃貸のアパートで母親と2人で暮らしています。

父親が4年前に亡くなり、将来のことを考えて老後に備えようと、去年から転職活動を始め、今月、介護施設の正社員になりました。

新しい仕事も配達員の時と月給はほぼ変わらず、退職金も出ないといいますが、契約更新なしに65歳の定年まで安定して働くことができ、頑張れば昇給やボーナスも期待できます。

しかし、65歳になった際に受給できる年金の見込み額を試算する厚生労働省の「公的年金シミュレーター」で調べると、受け取ることができる年金はおよそ月11万5000円です。

2023年度末時点で20年以上厚生年金を納めて年金を受給している男性の平均額はおよそ16万6000円なので、それと比べると5万円ほど下回る計算で、男性は将来に不安を感じています。

男性は「アルバイトをしながら探そうと思っていましたが、『経験がないから』などと言われて仕事が全く見つからず、いままで来てしまいました。はじめから正社員で入ったところで続けられていれば、もっと貯金もできただろうし、当時は普通に生活をするのでいっぱいいっぱいでした。これから年金だけでは絶対に生活ができないだろうと思うので、年を取ったら思うように動けないでしょうし、その分を考えて貯蓄していきたい」と話していました。

【Q&A】直面する課題 専門家は

就職氷河期世代が直面する課題について詳しい、労働政策研究・研修機構の堀有喜衣 統括研究員に話を聞きました。

Q. 就職氷河期世代への支援が必要になっている背景は

A. 「就職氷河期世代は働き始めてから景気の悪い時期が長く続いた。1回正社員になっても、非正規の社員や無業、失業の状態に戻ってしまう、『ヨーヨー型』と呼べるような激しくキャリアが揺れ動く方が多い。挽回のチャンスが来たのが30代半ばぐらいだったということで、なかなかうまくいくチャンスがないまま、ずっと年を重ねてしまったということもあると思う」

Q. 就職氷河期世代の人たちの賃金の伸びについてどう見ているか

A.「長く続いたデフレ経済で、初任給も低い水準で、その後もなかなか上がらない状況が続いた。また、就職氷河期世代はキャリアの積み重ねが難しい人が多かった世代なので、余計なかなか賃金が上がらないという状況につながっていると推測できる。今後は、氷河期世代の人自身がスキルアップしていくことが重要で、そのためのリカレント教育やリスキリングの機会を増やしていくことが大変重要だと思う」

Q. 将来の年金について不安だと訴える人も…

A.「氷河期世代の人は、若い時期には厚生年金の適用拡大が進んでいなかった。また、自分のキャリアを何とかしなくてはいけないということで、結婚どころではなく単身世帯の人も多いし、今後そういう方をどう支えていくかは日本の大きな課題になってくると推測する。就職氷河期世代が高齢期になるまでにいろいろな準備をしていくことが重要で、今のうちから社会保障のあり方を改めて考えたほうがいいと思う」

Q. 国は氷河期世代の正社員が増えたとしている。さらにどのような支援が

A.「就職した人の定着支援をあわせて行っていくことがとても重要になる。働き始めて1か月や3か月、半年などで、どんな方も悩みが出てくると思うが、そうしたときに支援機関に相談したり、同じような立場の人たちと気持ちを共有できる場があると、継続しやすくなるのではないかと考えている」

【情報はニュースポストまで】

NHKは「就職氷河期」について取材を続けます。
疑問や課題に感じたことなど、ぜひニュースポストまで情報を寄せてください。

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