表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける
892/892

868 クマさん、髪の色を決める

 わたしはノアとミサに説明する。

 リバーシの大会参加者を増やすために、体験コーナー及び対戦コーナーを作ったことを。

 興味を持った人が参加してくれるのではないのかと。


「そうなんですね」


 ノアは興味津々に見ている。

 カリンさんの準備が終わると、さっそくリバーシの席に座る親子がいる。

 隣の席には兄弟が座る。

 あっちは友達かな?

 中には奥様同士で始めるところもある。


「カリンさん、順調みたいだね」


 準備を終えたカリンさんに声をかける。


「はい。今では待っている人もいるんですよ」

「そうみたいだね」


 席を用意した瞬間、座り出し始めた。


「つまり、わたしたちもあの席に座れば、対戦ができるってことですね」


 カリンさんは声を出したノアを見て、驚いた表情をする。


「もしかして、ノアールちゃんとミサーナちゃん?」

「そうです。気付きませんでしたか? わたしの変装は完璧みたいですね」

「どうして、そんな格好しているの?」


 わたしたちはノアたちがリバーシ大会に参加することを説明し、貴族だと知られると、相手が困るので貴族と分からないようにするために普通の服を着ていることを説明する。


「ああ、確かにそうですね。相手が貴族だと知ったら、相手は困りますね」

「変装はどうでしたか?」

「遠くからだとノアールちゃんとミサーナちゃんだとは分からなかったです。ユナさんが、新しい女の子を連れているって、思ったぐらいです。だから、声をかけなかったんだけど」


 カリンさんは、わたしたちが店内に入ったときに気付いて会釈はしたけど、近づいてこなかったのは、それが理由だったみたいだ。

 でも、新しい女の子ってなに?

 まるで、わたしがいろいろな女の子を連れてきているみたいに言わないでほしい。

 まあともかく、遠くから気付かれないってことは、ノアたちの変装はうまくいったみたいだ。

 でも、逆にいえば近くなら、バレるってことだ。

 対戦は向かい合ってする。気付かれる可能性がある。


「ノアって顔は知られているの?」


 初めから知らなければ、気付かれることはない。

 街を出歩いているみたいだけど、わたしは領主の娘ですって感じで出歩いているのを見たことがない。

 護衛もお付きの人もいない。(隠れているかもしれないけど)

 どこかの令嬢ぐらいに思われているだけかもしれない。


「これでも一応、この街の領主の娘なので、知っている人はいると思いますよ。でも、領主の令嬢として表だって顔は出したりはしてませんので、知らない人がほとんどかと。買い物するときだって、領主の娘ですって、わざわざ言いませんし」

「わたしは、この店を作るときにノアールちゃんのことを知りましたから、参考にならないかと」


 カリンさんを見ると、そう言われる。

 つまり、紹介されなかったら、知らなかったってことになる。


「でも、たまにノアールちゃんが店に来たときに、小さい声で『領主の娘さん?』『ノアール様かしら?』って声は聞きますね」

「やっぱり、知っている人は知っている感じなんだね」

「年齢や容姿は知っている感じですね。だから、知っている人には気付かれる可能性はあるかも」

「うぅ、服装だけじゃ、ダメですか?」


 カリンさんの言葉にノアは自分の服装を見る。


「う~ん。それなら、髪を染めるといいかも? アールちゃんの綺麗な金色の髪は知られていると思うんですよね」


 わたしもそれは思っていた。

 服が普通でも髪が綺麗だから、どこかの令嬢に見える。

 ミサも綺麗な銀髪と雰囲気から、令嬢に見える。


「だから、髪を染めれば、この街の領主の娘のノアールちゃんだとは、気づかれないと思うんです」


 年齢と雰囲気は変えることはできないけど、髪の色だったら変えることはできる。


「いいアイディアだと思うけど、貴族の娘が髪の色を変えても大丈夫?」

「勝手に髪を染めたらお父様に叱れると思いますので、お父様の許可が必要ですね」


 対戦リバーシに参加したそうでにしていたけど、ノアはクリフから髪の染める許可をもらために家に帰る。

 どうしてか、わたしも一緒だ。


 そんなわけで、わたしたちはクリフがいる部屋に向かう。


「そこまでする必要があるのか?」


 話を聞いたクリフが呆れたような表情をする。


「お父様が、貴族として分からないようにするなら参加してもいいって言ったんじゃないですか」

「確かに言ったが」

「わたしも、領主の娘だと知られて、わざと負けられても嫌です」

「参加しないって話にはならないんだな」

「なりません」

「それで、ミサもか?」


 一緒にいたグランさんがミサに尋ねる。


「はい。ノアお姉様とお揃いの色にしたいです」

「分かった。許可は出すが、大会が終わったら、すぐに戻せ。それが約束だ」

「はい」


 クリフとグランさんの許可をもらったノアたちは自室に戻り、ララさんに髪染めを伝える。


「本当に染めるのですか? わたしたちがお嬢様の髪をどれだけ丁寧に手入れをしていると思っているのですか? それはミサーナお嬢様も同様です」


 ララさんはクリフ以上に難色を示した。


「大会までです。ララ、お願いします」


 ノアは上目遣いでララさんに頼む。


「はぁ、約束ですよ。大会が終わったら、すぐに戻すって」


 クリフと同じ条件なので、ノアは了承する。


「ララ、ありがとうございます」

「それで、何色に染めるのですか?」

「ユナさん、何色が似合うと思いますか?」


 ノアは自分の金色の髪を見ながら尋ねる。

 ノアに一番似合うのは、やっぱり金色の髪だと思う。

 でも、ノアが聞いているのは、染めた色のことだよね。


「う〜ん、ミサみたいに銀髪も似合うと思うよ」

「そうしたら、本当の姉妹みたいになりますね」


 ミサは嬉しそうだ。


「目立たないようにするなら、フィナみたいな髪の色がいいかも」


 フィナの黒茶の髪は一般的だ。


「今回は目立たないのが目的です。フィナと同じ髪の色にしましょう」


 髪の色も決まり、ララさんが髪染めの手配することになった。さすがに今日、すぐにはいかなかった。

 翌日、わたしはフィナと一緒にノアの家にやってきた。


「わたしの髪を参考にするって」


 ノアがフィナと同じ髪の色がいいと言い出したので、フィナ本人を連れてくることになった。

 ノアの家に到着すると、部屋に通される。


「ユナさん、フィナ、いらっしゃい」

「フィナちゃん、お久しぶりです」

「ミサ様」


 フィナは2人のところに移動すると、少し嬉しそうにする


「それではさっそく、髪を見せてください」


 ノアはフィナに近づき髪に触れる。


「ノア様!?」

「近くで見ると綺麗ですね」

「サラサラです」


 反対側からミサがフィナの髪を触る。


「えっ、ちょっと待ってください」


 フィナは顔を赤くして、離れようとする。


「フィナ、動かないでください」

「本当に、わたしと同じ髪の色にするんですか?」

「金色の髪だと、領主の娘であるノアールだと気付かれる恐れがありますので」

「ミサ様は、色を変える必要はありませんよね」

「わたしも、フィナちゃんと同じ髪の色にしたいです」


 ミサにそう言われると、フィナも諦めたようで、素直に髪を見せることにした。


 ララさんはフィナの髪の色を確認して、髪染めを用意する。


「ララさん、それが髪染め?」


 テーブルの上にはいろいろな色が液体が入った瓶がある。


「はい。この液体を髪に塗るようにすると髪の色が染まります」


 ララさんはフィナの黒茶の髪の色をした液体が入った小瓶をもってくる。


「ノアール様、座ってください」


 ノアは椅子に座る。

 ララさんは瓶の中にクシを入れる。クシに液体が吸い込まれていき、液体が少し減る。


「クシが液体を吸い込んだ?」

「クシが液体を吸い込んで、髪を梳かすと色が変わります」


 ララさんがそう言うと、そのクシでノアの金色の髪を梳かす。

 おお、梳かしたノアの髪が黒茶色に変わる。

 不思議な現象だ。

 クシには小さい魔石が埋め込まれている。

 普通のクシとは違うっぽいから、魔道具なのかもしれない。


「この髪染めって、一般的なの?」

「これですか」

「そんなに簡単に色が染まって、不思議だったから」

「申し訳ありません、わたしも特別な髪染めとぐらいしか分かりません。この液体で染めると、色が落ちにくいのですが、こちらの液体を使えば、簡単に色が落ちます」


 ララさんは透明の液体を見せてくれる。

 色落としもちゃんとあるんだね。これらも薬草とかで作るのかな。

 ララさんがノアの髪を梳かすと、どんどん黒茶色に変わっていく。

 しばらくすると、ノアの髪はフィナと同じ髪の色になった。

 最後は髪を乾かして完成する。


「ふふ、不思議です。まるで、自分ではないみたいです」

「金色の髪もいいけど、新鮮だね」


 ノアは鏡に映った自分を見て、不思議そうに髪に触る。


「ノアお姉様、似合っています」

「ノア様が、わたしと同じ髪の色に……」


 髪形や髪の色が違うだけで、別人に見えるから不思議だ。


「これだったら、ノアのことを知っていても、すぐにはノアって分からないね」


 普通の服を着れば、知り合いでないかぎり、ノアって分からないと思う。


「それでは、次はミサの番ですね」


 ミサは椅子に座る。


「よろしくお願いします」


 ララさんは、ノアにしたようにクシを液体が入った瓶に入れ、クシに液体を吸い込ませると、ミサの髪を梳かしていく。

 ミサの銀色の髪がフィナと同じ黒茶色に変わっていく。


 そして、しばらくするとミサの銀色の髪もフィナと同じ髪の色に変わる。


「これで、3人とも同じ髪の色です」


 ノアとミサはフィナの左右に立つ。


「3姉妹だね」

「それでは、わたしが長女ですね」

「フィナちゃんが次女で、わたしが末っ子ですね」


 髪の色は同じでも、顔が似ていないので、姉妹と言われると、違うと言うしかない。

 でも、3人が楽しそうだから、余計なことは言わない。

 あと、簡単に髪染めや色を落とせるなら、金髪や銀髪にやってみたい気持ちになる。


投稿が遅れて、申し訳ありません。

髪の色を変える案の流れをどうするか、何度も書き直していたら、間に合いませんでした。

対戦コーナで対戦中に気付かれてとか、カリンさんに気付かれるとか、何度も書き直していました。

対戦中だと、騒ぎが大きくなるかな?と思ったり、それぐらいなら問題はないかなと思ったり、二転三転していました。

話を書くのは、未だに難しいですね。



※PRISMA WING様よりユナのフィギュアの予約が始まりました。

初の子熊化したくまゆるとくまきゅうも付属。

詳しいことは活動報告にてお願いします。


※祝PASH!ブックス10周年

くまクマ熊ベアー発売元であるPASH!ブックスが10周年を迎えました。

それにともない、いろいろなキャンペーンがあるみたいです。

詳しいことは「PASH!ブックス&文庫 編集部」の(旧Twitter)でお願いします。


※投稿日は4日ごとにさせていただきます。(できなかったらすみません)

※休みをいただく場合はあとがきに、急遽、投稿ができない場合はX(旧Twitter)で連絡させていただきます。(できなかったらすみません)

※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」コミカライズ133話公開中(ニコニコ漫画、ピッコマでも掲載中)

※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」外伝23話公開中(ニコニコ漫画、ピッコマでも掲載中)

お時間がありましたら、コミカライズもよろしくお願いします。


【くまクマ熊ベアー発売予定】

書籍21巻 2025年2月7日発売中。(次巻、22巻、作業中)

コミカライズ12巻 2024年8月3日に発売しました。(次巻、13巻6月6日発売予定)

コミカライズ外伝 3巻 2024年12月20日発売しました。(次巻、4巻発売日未定)

文庫版11巻 2024年10月4日発売しました。(表紙のユナとシュリのBIGアクリルスタンドプレゼントキャンペーン応募締め切り2025年1月20日、抽選で20名様にプレゼント)(次巻、12巻6月6日発売予定)


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。