光の奴隷のダンジョン攻略


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作:影後
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光の奴隷と戦友と


閑話休題
ーメルビン・コールレインの女性遍歴
品行方正、悪即斬、誰もが羨み、絶望すらする絶対的な正義。
そして、世間一般が認める正義の英雄(ヒーロー)
ソレがメルビン・コールレインという男だ。
事件以降も神だろうが、悪であれば抹殺し、断罪し、
神の行いを白日のもとに晒した人間の英雄。
血にまみれようと、その在り方は常に正義。

「…それでメルビン。私は残念だ。非情に残念でならない」

被告人はメルビン・コールレイン。
裁判官は神々の女王たるヘラ。

「お前は一人の女性を愛すると言っておきながら、
まさか3人も恋人がいた」

「……」

「メルビン、話せ」

「嫌だ」

「何故だ、嘘は見破れるぞ」

「……自分の意志で話したくはない」

「安心しろ、一時的に昏睡状態になる薬だ」

ヘラにそれを飲まされる。
つまり、自分の意志ではないのだからという事だ。
メルビンは一気飲みすると意識は眠りにつく。

「レベッカとは誰だ」

「恋…人」

「別れたのか」

「殺された」

「?!」

始まりから嫌な予感しかしなかった。
考えても見れば絶対的な正義を掲げる英雄だ。
その敵対者からしてみればメルビンを殺すよりも……

「何故……何故だ。彼女は……レベッカはただの……
ただの街娘だ………なのに…………」

「レベッカに…何があった」

女帝が聞く。

「俺が帰ると……家中が荒らされていた。
レベッカは………強姦され……嬲られ………」

メルビンの言葉に怒りが滲み出ている。
怒りが光りとなり、肉体に現れる。

「……メルビンはどうしたの?」

クリスが苦しそうに聞く。

「……レベッカを殺した犯人を殺した。
調べ上げ、強力者も全て殺した。レベッカを殺した悪を!
俺は殺した」

メルビンはこうして絶対的な正義に目覚めた。
英雄、クリストファー・ヴァルゼライドとの出会いが決定的だが、下地はこうして出来ていた。

意識が混濁しているはずのメルビンに涙が浮かぶ。
これ以上の質問は酷だろう。

「では、ニーナは」

「ヘラ、流石に」

「敵国のスパイだった……いや………彼女も被害者だった。
家族を人質に取られ、俺に近づいた。でも…両思いだった。
俺は……殺したく無かった。救えたのに………」

『……メルビン、私を殺して。
貴方は英雄よ。英雄として、私を殺して。
でも、約束して。私のような、家族は作らないでね』

「あっ……あぁ…………!」

こうして、メルビンは全てを掬い上げる英雄として目覚めた。
ヴァルゼライドが誰かの為の英雄ならば、
メルビンは全てを掬い上げ、導く英雄だ。

「……ヘラ、私はもう聞きたくない。こんなの……」

「……グレイスは?」

アルフィアの言葉に頷きかけるも、メルビンに質問を続けた。

「……振られた」

「は?」

「戦争が激化し、家に帰れなくなる事が多くなった。
久し振りに休暇を得られ、
家に戻るとグレイスの置き手紙があった」

貴方がこの手紙を読む頃には私は居ないでしょう。
私は貴方を愛しています。貴方との愛の結晶もできました。
でも、私はこれ以上耐えられません。
貴方は私達をまるで鳥籠の鳥の様に扱います。
私は、この子にものびのびと、そして世界を知ってもらいたい。
そして、何時貴方の戦士報告が来るかと待っているのが辛いのです。わかっています。傷付いた貴方に近づき、妻になりました。
何もこれも全て私の勝手です。
ですから、私の事は忘れてください。
貴方に子供が居たことも忘れてください。
さようなら

「……俺が悪かったのか。護りたかった。
ただ、それだけだ。愛していた、望む者全ては与えられなかった。だが……それでも不自由のない暮らしが」

「……人間は、鳥籠の中に居られる存在じゃないんだよ」

「……何故だ…………グレイス」

そのま涙とともに眠りにつく。

「聞くんじゃ無かった」

「……子供も居た。でも話を聞く限り」

「見たことはないだろう、なんとも………」

この日から、メルビンに対する扱いが少なからず良いものと
なったのだが、理由を知りたいとは思えなかった。


「黒竜?何だソレは」

 

メルビンが執務室で業務を行っていると、

宿敵たるマキシムが訪ねてきた。

菓子折りを持ち、普段とは違い神妙な顔で。

 

「黒龍、隻眼の黒龍。オラリオに居る冒険者全員の悲願。

いや……違うな、警備隊所属以外の冒険者の悲願だ。

此奴を討伐できれば、ソイツは名実共に『最後の英雄』」

 

「…くだらんな。悲願という言い方は好かん。

そもそも、英雄とは生き方である。

折れず、折れても何度でも立ち上がり、

仲間に、戦友に、市民に……その場に居るものに光を見せる!

ソレが英雄なのだ!マキシム、貴様…英雄をただの勲章や

呼び名程度にしか思っていないのではあるまいな?」

 

(これだから……)

「思ってねぇさ、英雄ってのはお前の事だろ」

 

英雄、その重みをマキシムは理解できない。

だからこそ、メルビンに話す。メルビンは『英雄』(破綻者)だ。万人に光を魅せ、全てを掬おうとする光の奴隷。

 

「兎に角だ、お前、一応ヘラ・ファミリア所属だろ?」

 

「あぁ、まてよ……俺に参加しろと?」

 

「ヘラから直々に頼まれたメッセンジャー。

それが今の俺だ、なぁ、宿敵よ。お前ならどうする?」

 

メルビンは目を閉じながら不敵に笑う。

 

「愚問だな、俺が民の為に参加しないと思うのか?」

 

「あぁ、それでこそ……英雄だ」

 

「ところで、ヘラは」

 

「………一緒に来てくれないか」

 

メルビンはげっそりとした顔になったマキシムと、

共にヘラ・ファミリアのホームに赴く。

そこは既に戦場と化しており、既にボロボロだ。

 

「……俺の恩人に……仲間に……一体誰が」

 

「……はっきり取り敢えず家にも来てくれや」

 

その後、ゼウス・ファミリアのホームに向かう。

まだ、ボロボロだったヘラ・ファミリアのホームと違い、

瓦礫一つ残っていない。

ゼウス・ファミリアの構成員も何人かが負傷者として、

手当てを受けている。

 

「あ〜〜〜、そのメーテリアって知ってるか?」

 

「姫の事か?」

 

「姫?」

 

「いや、アルフィアはおろかファミリアの皆がメーテリアに関しては過保護でな。個人的に隠れて姫と呼んでいた」

 

「…間違っちゃねえ気がする。

兎に角だ、そのメーテリアが妊娠した」

 

「は?」

 

メルビンの頭にはメーテリアの実の姉たるアルフィアが浮かぶ。

アルフィアはメーテリアを溺愛しているし、

女帝やクリスもメーテリアを家族として大切にしている。

メルビン自身も何処か妹の様に感じているため、

外出時には何度か護衛兼荷物持ちとして付き合ったものだ。

 

「……俺は最初、お前を疑ったんだがな。

その、ヘラ・ファミリアのメンバーが哀しい顔で

『絶対にない』と言ってきたのさ」

 

「……あの時のせいか」

 

「なんかありそうだな。それはそれで気になるが、

今はメーテリアの事だ。

レグナントの姐さんとアルフィアに付き合わされてな、

そのオラリオ中の身辺調査をしたんだが………」

 

「読めたぞ、お前のファミリアが原因か!」

 

「クラネルっつぅポーターがな……その、

攻略中に時折ヘラ・ファミリアに忍び込んでるのを、

その……見られててな」

 

曰く、それを知ったアルフィアはメーテリアに確認を取るため一時的にホームに帰還。マキシムは完全にとばっちりを受け、

被害者としてヘラからメルビンに伝言を伝えるメッセンジャーになる変わりに、ゼウス・ファミリアとの抗争に参加しないという契約を掴んだ。

 

「仲間には笑いがな、俺頼りになるのはマズイ」

 

「それなら我等警備隊は違うな。

皆、レベル4.この前5になったと報告してきたものもいる。

最低でも3だ」

 

「警備隊は隊長様が居なくても回るようにしてると?」

 

「…俺は、一度自分の世界。そして、あの国に帰らねばならない。軍を除隊した訳でもない。願いとしては、あの世界とこのオラリオを結ぶワームホール等が」

 

「世界?ワームホール?意味が分からねぇが、そう言えばお前遭難者なんだっけか」

 

「あぁ、それよりもだ。宿敵よ。

……オラリオの外から爆音が響いていないか?」

 

「……行きたくねぇ」

 

「止めねばな」

 

メルビンとマキシムはオラリオの外に出る。

そこは2人の戦闘時よりも酷く荒廃し、死屍累々と人間が転がっている。ヘラはゼウスの顔面を殴り飛ばし、女帝はゼウス・ファミリアの副団長を締め上げ、クリスは団員を吹き飛ばしている。

 

「死ね……メーテリアに手を出したクズめ!」

 

「ちょっ…お義姉さん!そんな言い方!」

 

「殺す!」

 

アルフィアが件のポーターを殺害しようとした瞬間、

一本の光がポーターの周りに針のように落ちてくる、

一本、また一本と連結し、円を描くように落ちてくる。

 

「……こんな事を出来るのはお前だけだな。

邪魔をするな!メルビン!!」

 

「……アルフィア、落ち着け」

 

「妹に手を出されたのだ!その気持ちがお前に」

 

「あぁ、判るものか。強姦され、殺された訳では無いだろう。

見るに、メーテリア嬢とその男は合意の上らしいが?」

 

メルビンは少しだけだが怒っていた。

トラウマを刺激された怒り、守れなかった怒り、

自分自身に対する怒りが湧き出ているのだ。

 

「おい……お前、」

 

「いいだろう、俺の最初の恋人はな。

俺の居ない間に強姦され、殺された!

2人目の恋人は敵国のスパイとして俺が殺さねばならなかっ

た!いや…俺が殺した!

…3人目の恋人いや、妻だった女性は俺が守ろうとしたがそれを疎ましく思い俺を捨てて出ていった」

 

「……いや………その」

 

「あの時、お前も居た。ヘラの薬で、俺が話したのだろ?

なのに、俺が……だと?」

 

「…だが、ソイツは覗き魔ゼウスと同じ、覗き魔だ!

そんな奴と妹が」

 

「……おい、それは本当のことか?」

 

メルビンはヘラ・ファミリアにそれを問う。

皆が首を縦に振る。

ゼウス・ファミリアの立っているものに視線を向ける。

皆が顔を逸らした。

 

「……性犯罪者の遺伝子を残す訳には行かないか」

 

「団長、なんか俺嫌な予感が」

 

 

創生せよ、天に描いた星辰を───我らは煌めく流れ星

巨神が担う覇者の王冠。太古の秩序が暴虐ならば、その圧制を我らは認めず是正しよう。勝利の光で天地を照らせ。清浄たる王位と共に、新たな希望が訪れる。

百の腕持つ番人よ、汝の鎖を解き放とう。鍛冶司る独眼ひとつめよ、我が手に炎を宿すがいい。

大地を、宇宙を、混沌を───偉大な雷火で焼き尽くさん

聖戦は此処に在り。さあ人々よ、この足跡そくせきへと続くのだ。約束された繁栄を、新世界にて齎もたらそう

 

 

 

     超新星ーー天霆の轟く地平に、闇はなく

     Metalnova  Gamma-ray Keraunos

 

 

 

 

 

 

創生せよ天に描いた星辰を――我らは煌めく流れ星

例え堕ちようとその光を喪わず、絶えず輝き続けよう。

闇夜を照らし、全てを拾い、掬う英雄の姿を今、刮目せよ。

汝、光を夢見る者なら渇望せよ。

汝、闇を生きる者達ならば救いを求めよ。

汝、悪に生きるものなら断罪を受け入れよ。

群衆よ、神をも降し、悪魔も屠ろう。今、英雄は此処にある。

我は今、正義也!

 

 

 

      超新星 ーー輝ける正義の天秤は今、傾いた

     Metalnova  shine Libras leaning

 

 

 

 

「邪魔をするな!宿敵よ!!!!」

 

「悪いが、やはり仲間を殺させる訳には行かないんでな!」

 

絶滅光と極光がぶつかり合う。

オラリオすら砕かんとする光のぶつかり合い。

人間ではない、底にいるのは2人の超兵器。

 

「性犯罪者だぞ、軽犯罪?いや、

被害者を鑑みれば死すら生ぬるい」

 

「だからってフルパワーはねぇだろ!」

 

「黙れ!俺は正義だ!俺が正義だ!

宿敵よ、俺の行いを邪魔をするなら貴様は悪だ!」

 

「正義と悪でしか二分できない馬鹿野郎!

確かにテメェの考え方は正義だろうさ!でもな、仲間を守る為なら、リーダーってのは何処までも強くなれるんだよ!」

 

「まだだ!」「まだだ!」「まだだ!!」「まだだ!!」

 

「「まだだ!俺はまだ、限界を迎えちゃ居ない!!!」」

 

メルビンは今この時、無意識にだが、

吸収した光を200%にして撃ち返している。

マキシムは強力になるメルビンの光を飲み込もうと、無意識に、

自らの炉心をより強力、より強大な力を生み出す為に使っている。

 

「……おい、アルフィア。彼奴」

 

「……忘れていた。おい!クラネル、後で殴らせろ」

 

「はい!!!」

 

女帝もアルフィアも、自分よりもヤバイ奴を見れば自然と冷静さを取り戻す。

 

「………どうやら2人は冷静さを取り戻した様だな」

 

「あぁ、俺等の演技のたわものだ」

 

「阿呆め。賜物だ。さて………こっちの決着もつけようか」

 

「あぁ、あの時は邪魔されたが……今度こそ」

 

「「俺が勝つ!!」」

 

「嘘じゃろ……あの馬鹿ども、まさか……今回の事を利用し」

 

「黙れなさい!」ーひぶっ?!

 

「クリス、止められる?!」

 

「ヘラ様、その………」

 

メルビンの星辰光とマキシムの星辰光が混ざり合い、

全てを飲み込み始める。

 

「終わりだ……マキシム・ブリンガー!!」

 

「俺の台詞だぁぁぁぁぁ!メルビン…コールレインッッ!!」

 

そして、オラリオは光に呑まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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