光の奴隷のダンジョン攻略


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作:影後
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光の奴隷と古の美の女神の配下達


閑話休題 メルビンの手料理

これは物語の合間にあったかもしれない一幕。

「そういえば、メルビンの手料理ってなんというか男の料理って感じがしないよね」

「どういう意味だ」

メルビンはヘラ・ファミリアの食堂で暇つぶしに自身の料理を振る舞っていた。一級の料理ではないが、普通に美味しい家庭料理。しかし、ファミリアのメンバーからの視線は変わったものだった。

「不味いならそう言え、逆に完食される方が作り手は苦しい」

「いや……現場指揮官件兵士たるお前がこんな家庭料理を作れる環境が……」

アルフィアはそう言いながら言葉を詰まらせた。
自分も孤児だが、メルビンのソレとは違う。
狂ってしまった姉と関係を持ってしまった。
しかも、双子の弟を姉に差し出して、更に自分まで。

「……あの話を覚えていたか」

「忘れられる訳が無いでしょう、貴方はきっとそれで英雄を」

「……何がわかる」

ヘラの母性を感じる言葉にもメルビンは否定を告げる。
場は一瞬にして凍てつくが、メルビンは変わらず自分の作った食事を食べている。

「まぁ、料理の一つも作れない奴に言われる筋合いはないが」

「「「あ?」」」

メルビンの意趣返しに別の意味で場が凍りついた。

「なんだ、俺が厨房を使う以外に使っているやつは少なくとも2,3人程度だろう。荷物の移動や」

「うるさい!うるさい!!別に私は作れないわけではないのだ!作らないだけで」

「……なら女帝、作るのか?別に良いが」

メルビンは嫌がらせの様に女帝の前に出していた料理を片付ける。ソレを女帝は止めようとし料理をひったくった。

「勿体無いだろ!」

「別に俺が余分に食べれば良いだけだ。その分、ダンジョンを潜り、殺し、稼げば良い」

「む……」

メルビンは冷めた目でじっと女帝を見つめる。
何処か大人げないが、再び食べ始める女帝を見たメルビンがニヤリと笑ったのを皆が見ていた。ソレに気付いた本人は一言、

「片付けは任せろ」

そう言って調理場の奥へと隠れてしまった。
ヘラはそんなファミリアのメンバーを微笑みながら見ている。

「可愛い事ね…まったく」

男児ながらファミリアに馴染んでいるメルビン。
いくら〘英雄〙でも、日常は変わらない青年だとわかる。
だからこそ、母親として救いたいとも感じているのだ。

ー英雄ー

その、枷から


 

※とあるキャラが変化しています

 

神殺しと神への断罪。

そして、オラリオ崩壊の危機を乗り越えた迷宮都市オラリオ。

そこで、メルビンは協力してくれたファミリアに対して、多額の報酬を支払うために奔走していた。

ゼウスやヘラのみが到達していたレベルの階層にメルビン以下、警備隊が侵入し素材の確保等を行い一時相場が崩れたがソレを困る人材は上位冒険者やファミリアにはいない。

そして、遂にイシュタル・ファミリアとメルビンの合同演習が行われる日となる。メルビン以下19名が歓楽街に入った。

 

「メルビン・コールレインだ。フリュネ・ジャミール団長。

噂に違わぬ、醜い容姿だ。それで良くイシュタル神のファミリアの団長を務められるな。他の団員より酷いぞ」

 

「ま?!」

 

「そういうアンタは噂に違わぬ物言いだね。面と向かってブスと言われたのははじめてさ」

 

普段のフリュネを知っている団員なら一触即発だと理解している。だが、どうもおかしい。メルビンを見るその目は普段の脂ぎったソレではない。

 

「擬態はよせ、俺とやり合うのだろう」

 

「へぇ……」

 

その時だ、フリュネの肉体から煙が上がると醜悪な顔ではなく。

筋肉と鎧を身に纏う壮年の女性の姿が現れる。ヒキガエルではない。アマゾネスよりも強く、カーリーの者よりも強い戦士。

 

「久し振りだねぇ……メルビン隊長」

 

「メルビン隊長…つまり、俺の部下だった者か。ならば、答えろ。我等が使えるべきは誰だ」

 

「軍事帝国アドラー第37代総統クリストファー・ヴァルゼライド」

 

「貴官は何処で死んだのだ」

 

「帝都にて、侵入者との戦闘中屋根の崩落で」

 

「…部下の名前は一人一人覚えているがお前のような奴は知らん」

 

「随分な言い草だねぇ……一晩明かした仲じゃないか」

 

フリュネにそう言われ、メルビンは頭痛を覚えた。

確かに関係を持った女性士官は居たが、誰も破局している。

私生活よりも仕事を優先した結果である為、その手の女性との付き合いは最低限のみ。だからこそ、記憶にあるが見覚えはない。

 

「……まて、本当に待てレベッカか?ニーナか?グレイスか?」

 

「そりょあ、アンタが破局した女達だろうに。しかも、気付いたらサヨナラされてた女だ」

 

部下達の視線が悲しい物になっているが、メルビンは気にしている余裕はない。女性関係などかつての汚点なのだ。ソレを知っている存在など、心当たりは………

 

「……まさか、貴様はブリュッセルか?!」

 

「そうだねぇ…コールレイン隊長?」

 

「巫山戯るな!貴様、一晩明かしただと?貴様が作戦行動中に単独行動した為、俺が営倉に入れただけだろう!軍規を乱した貴様が良くもぬけぬけと!」

 

ブリュッセル・ライユース。少尉。享年23歳。

 

男勝りな姉御肌でありながら、メルビンの指揮下にいた女傑である。メルビンの様に英雄に憧れたが、英雄(破綻者)になることはなく、ただ純粋な憧れを抱いていた女性士官であった。

指揮官たるメルビンの胃痛の種であり、メルビンという戦略兵器を出すまでもない任務のさい重宝される士官だ。いや、士官であった。

 

「軍規なんてどうでも良いね、アンタらはアンタらのらしくやれば良い。私は私のできることをしてくだけさ」

 

「良く言う、貴様はフリュネとして悪逆非道な行いをしてきた。貴様、それで断罪者たる俺の前によく出れたものだな」

 

「アンタは女性の立場をわかってないね、いや…アンタの周りには優秀な女しかいなかったツケか。教えてやるよ、女ってのはね。馬鹿な男どものせいで面倒な生き方をしなきゃいけない。アタシは悪逆非道と言われようが、女が好きに生きられる場所を作りたかった。うちの女神様もそうさ。まぁ、その目標もいつしか忘れてヒキガエルなんて呼ばれたがね」

 

「ほぉ、ならそのヒキガエルよ。お前は何故そうまでして身体を蘇らせた?何のようだ」

 

「……証明するのさ。コイツラの大将たるアタシの力を。メルビン、アンタを見て思い出したのさ。自分の信念って奴をね。腐っちまった私だが、昔憧れた英雄様の様な姿を見れば……嫌でも理解しちまう。今の自分がどれ程腐ってるか。ゴミ以下かね」

 

フリュネは腕を組みながら自分の行いを思い出している。

痩せていた頃は違った、だがこのオラリオで権力を手にしてから自分は腐っていき、いつしかヒキガエルとなった。

イシュタルもそうだ、自分と共に理想をみた女神はもういない。

なら、自分がもう一度戻れば良い。

 

「お前達、此処に居るのは正真正銘『英雄』だよ!そして、その『英雄』に率いられる戦士だ!アタシを信用しろなんて今更言わないよ。でもね、こんな混成部隊にイシュタル・ファミリアが負けたとあれば……うちの女神様の対する名折れだ!今だけで良いさね、手を貸しな。アマゾネス共。オラリオにおいて、ポッと出よりもアマゾネス有りと知らしめるのさね!」 

 

「「「ウォォォォォッ!!!!」」」

 

「…警備隊、よく聞け。目の前の女はかつて俺の部隊で英傑として名を馳せた存在だ。だが!今は所詮、ヒキガエルが若返っただけの有象無象にすぎない。お前達はどうだ、友を守り、街を守り、共に悪虐たるを打ち破った同志だ!俺が!ゲールマンが鍛え上げた警備隊というオラリオの先鋭だ!何れはヘラ、ゼウスと並び立つ存在。ソレが警備隊だ!目の前のアマゾネスなど、簡単に倒せる!」

 

「アドラー万歳!キャプテン・コールレイン万歳ッ!」

 

「「アドラー万歳!キャプテン・コールレイン万歳ッ!」」

 

ゲールマンの言葉に続き、警備隊員の声が歓楽街に響く。

今、歓楽街に人はいない。娼婦達は警備隊とイシュタル・ファミリアの模擬戦を家屋の中から覗き見ている。

 

「わかってると思うが、アタシ達は守備だ。ソレを突破して、うちのイシュタル・ファミリアのホームまで来な。ソレがうちらの敗北条件さ!他のルールは都市の破壊や星辰光、魔法の禁止。屋根を走るのも無しだ、己の肉体だけで戦う」

 

「我々の敗北は全軍の壊滅だ!魔法は無し、己の肉体のみで決める!模擬戦だ!1人も殺すな!」

 

「10分で来な」

 

「ほぉ良いだろう、見せてもらうぞ!イシュタル・ファミリア!!」

 

10分後、歓楽街の上空に魔法による花火が上がった。

戦闘開始の合図だ。皆が模擬戦用の武装を装備し立ち上がる。

 

「3マンセルを忘れるな。隊長は」

 

「俺を抑えるためにフリュネが来るだろう。ソレは相手も理解している筈だ。良いな、俺は囮だ。イシュタルのホームまで誰か一人でも辿り着けば勝利だ」

 

メルビン達は静かに歓楽街へと侵入した。

中でもメルビンはその任務を達成するため1人、悠々と歓楽街を進んでいる。邪魔等はない。それすなわち、

 

「来たね、メルビン」

 

「ブリュッセルいや…フリュネだな。」

 

「そうさ、今の私はイシュタル・ファミリア団長フリュネ。メルビン、アンタを倒させてもらうよ」

 

「来い、女傑。その力を俺に見せてみろ」

 

「終わりだよ!」

 

ソレは斧であった。旧世代で使われていた手斧ではない。

大きく、分厚く、斬るよりも叩く事を優先したような重量武器。

戦斧、つまりバトルアクス。

しかしソレはフリュネの身長よりも大きく、相手を叩き斬ることができる存在。言うなれば、大戦斧、ビッグバトルアクス。

 

「コイツは相棒さ、いくつ物敵を屠ってきた。

頑丈で、重くて、鋭いだけが取り柄の相棒さ」

 

メルビンの直剣は警備隊所属の鍛冶師が打った逸品だ。

宿敵との戦いも相棒として戦ってくれた。だが、それでも鉄で打たれただけの逸品。フリュネの持つ鉄塊擬きと対峙するには心持たないはずだった。振るわれた大戦斧は音速を超えた。

 

「凄いね、魔法も…星辰光も使ってない。なのに…その剣は折れない」

 

大戦斧の刃をメルビンは剣一本で受け溜める。両手で支えてはいるが、大きさ、硬さ、全てにおいてフリュネの大戦斧に負けているのは明白だ。

 

「仲間が…部下が持てる力を最大限に駆使して作ってくれた刃だ。俺は、何と素晴らしい仲間を手にしたのだろうな」

 

フリュネも両手持ちに変え、より力を込める。だが、それでもメルビンは下がらない。細身の男からは思いも寄らない強靱だ。

まるで、大戦斧でも斬ることのかなわない、世界の始まりから成長し続けるユグドラシルの様である。

 

「はぁ!」

 

激しい鍔迫り合い、何度も何度も打ち合い火花が飛び散るほどに激しくなっていく。

 

「……へっ、まだまだ。アタシは本気じゃないんだよ!」

 

フリュネが天に左手を伸ばすと何処からともなく大戦斧がもう一本飛んてくる。ソレを容易くキャッチし、対となった大戦斧をメルビンに向けてくる。

 

「少し、本気でやるさね」

 

「…あぁ、来い!」

 

2人の戦いは、より激しさを増していく。

 

 

 

 

 

 

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