「こうして、やっとお前と戦える。そう考えると……滾ってしまう。まったく!どうしてくるんだ?え?メルビン」
「なら、その飢えた狼と言える肉体。この俺が冷ましてやろう」
オラリオの外の平原、そこは既に地獄とかしていた。
真空波とでも言える斬撃と、光の刃である光刃が飛び交い、近くを通ろう者なら簡単に死んでいく。
方や、人間がたどり着いた限界を超えた領域。
方や、人類が人類を超える為に生み出した人間兵器。
そして、その人間兵器たる存在も既にその枠からはみ出でいる。
「うぉぉぉぉ!!!!」
「ハァァァァ!!!!」
本当ならオラリオに対しても被害が出てもおかしくない。
だが、神たちが全身全霊でオラリオを今守護している。
限られた力を出し合い、オラリオを死守するのだ。
ソレはひとえに、たった一人の人間に対する恐怖。
神をも恐れず、殺しに来る人間の英雄。
誰しも死にたくない、幾ら帰るだけとは言え死の恐怖を味わいたくないのだ。
「どうしたマキシム!その程度で俺の光を破れはしないぞ!!」
「そうでなくちゃ面白くねぇ……いくぜ、メルビン!!!!!」
マキシムの筋肉がより肥大化した様に感じられる。
より柔軟になりながら、より重い一撃を繰り出せるようになっていく。
「ぐぅくぅぅ………ハァァァァ!!!!」
「ちっ!……つぁぁぁぁッ!!」
まきの剣とメルビンの剣、その鍔迫り合いだけでエネルギーが当たりに撒き散らされる。飛び散るのは光だけ、その筈だ。その筈だった。
「……コレが………俺の新たな力だぁぁぁぁ!!!」
ソレは風、鎌鼬となりメルビンの光とぶつかり合いあたりを斬り裂き抉る。だが、風ではない。もっと恐ろしく、メルビンが渇望してやまないその力。その姿。
「まさか………ハハハッ!素晴らしいぞ!宿敵よ!まさか…まさかお前がソレを扱えるとはな!」
創生せよ、天に描いた星辰を───我らは煌めく流れ星
巨神が担う覇者の王冠。太古の秩序が暴虐ならば、その圧制を我らは認めず是正しよう。勝利の光で天地を照らせ。清浄たる王位と共に、新たな希望が訪れる
百の腕持つ番人よ、汝の鎖を解き放とう。鍛冶司る独眼ひとつめよ、我が手に炎を宿すがいい
大地を、宇宙を、混沌を───偉大な雷火で焼き尽くさん
聖戦は此処に在り。さあ人々よ、この足跡そくせきへと続くのだ。約束された繁栄を、新世界にて齎もたらそう
超新星ーー天霆の轟く地平に、闇はなく
Metalnova Gamma-ray Keraunos
「まだだ!まだ…終わっていない!」
創生せよ天に描いた星辰を――我らは煌めく流れ星
例え堕ちようとその光を喪わず、絶えず輝き続けよう。
闇夜を照らし、全てを拾い、掬う英雄の姿を今、刮目せよ。
汝、光を夢見る者なら渇望せよ。
汝、闇を生きる者達ならば救いを求めよ。
汝、悪に生きるものなら断罪を受け入れよ。
群衆よ、神をも降し、悪魔も屠ろう。今、英雄は此処にある。
我は今、正義也!
超新星 ーー輝ける正義の天秤は今、傾いた
Metalnova shine Libras leaning
絶滅光とそれに匹敵する極光がぶつかる。
神々の結界すら無とかした、光という概念と無尽蔵な核反応が世界を汚染し、浄化する。
敵対者を滅する焔か、敵対者を消失させる極光か。
マキシムはその力の本質を理解していないだろう、諸刃の剣であることを。しかし、ソレがどうした。
痛みがする、そんなの我慢すればいい。
目の前に倒すべき敵にして、親友である存在がいる。
相手は全身全霊をかけて自分の相手をしている。
それを、マキシムは笑って喜ぶ。対するメルビンも笑っている。
自分自身が戦闘狂という人種でない事は理解している。
だが、それでも目の前のマキシムという存在が自分が憧れる英雄に重なっているのだ。羨ましい、妬ましい。
その様な感情は湧かない、自分の宿敵は最高の宿敵であり親友なのだ。だからこそ、絶滅光を受け続け肉体がオーバーフローしかけていても不敵に笑う。限界値?ソレがどうした。
限界なら、耐えれば良い。少なくとも、目の前の男と自分の英雄はそうしている。
「まだだ」「もっとだ」
核エネルギーと光エネルギーのぶつかり合い。
共に熱を、別の力を生み出して周囲を地獄に変えていく。
燃えていく大地、核反応で生まれた熱と照らされ続けた事で生まれた熱の2つが周囲の温度を上げ、全てを発火させていく。
もう既に人間の範疇に収まっていない2人の攻撃、その余波だけでオラリオの外壁は溶け、街は燃えようとしている。
神々ですら許容限界を超え、絶望していく者達。
だからこそ、人を守りし聖女は二人を許さない。
「目醒めよ、深きに眠る灼熱よー我等は偉大な女神の下僕。
如何なる敵に対しても、如何なる困難に対しても、我等は臆せず立ち向かおう。幾万の勇士達の標となりて、茨の道を歩みゆかん。さあ人々よ、この足跡へと続くのだ。約束された繁栄を、新時代にて齎もたらそう」
超新星 ーー神々の女王の栄光よ、けして潰えること無かれ
Metalnova Never Collapse Hercules
「「!!!!」」
凄まじき雷撃が2人の英雄を抑え込んだ。
白亜の鎧を身に纏い、レイピアを携えた
武器を仕舞うと静かにオラリオを指差した。
「貴方達はオラリオをどうするつもりなの?」
「……いや、アレは神共が失敗したからであって」
「なら、この風景は?」
次に聖女は周囲を指差した。
今度は
「元からこうだぞ?」
「負巫山戯るなよ、英雄共」
聖女の声が低くなり、ドスが効いた様になる。
周囲は前回よりも酷く、抉れ土壌が溶け煮だっている。
ゴポゴポと音を立てて、万物を飲み込む溶岩が周囲に誕生し、
草木は青々としているにも関わらず燃えている。
「お前等……大の大人が………!」
英雄達も最強も自分よりも弱いはずの聖女に対して言葉が出ない。
正しさを理解しているからだ、メルビンは元より市民の生活を脅かす行動をするような存在ではない。
軍人であり、国家を、国民を守護する立場の存在だ。
マキシムは元より善人と言われる人である。
いくら、最高の宿敵が居ても、昂ぶりが収まり理性が見え隠れしている今、その言葉は深く刺さるものかある。
「光よ」
メルビンが草木に対して『光の癒し』を行う。
溶岩となっていた大地はガラス化し、まだ生きている草木は再生する。
「……駄目だな、あたりが高温過ぎて」
「俺が使える星辰光はあくまでも光だ。再生能力等を付与するという離れ業が出来るがあくまでも光。熱を生み出す事は可能だが冷却はできない」
「俺もだ、感覚で判る。俺の……」
「星辰光だ、お前の星辰光に関しては俺の方が詳しい。何故か?貴様の星辰光はヴァルゼライド閣下と同じもの。能力は核分裂・放射能光発生。閣下の宿敵が有する核融合能力とは逆の核分裂能力であり、どこまでもどこまでも突き抜けていくヴァルゼライド閣下のように、集束性へ激しく偏った星辰光である。膨大な光熱を刀身に纏わせた斬撃と、その光熱の放出により敵を討つ。亜光速にまで達する爆光を受ければ、無事で済むなど絶対に不可能。進行方向にあるものは何一つとして残らない。基準値と発動値に多大な差があるため、ヴァルゼライド閣下の身体は凄まじい激痛に襲われるのだが、ヴァルゼライド閣下はそれを気合で耐えている。ヴァルゼライド閣下の星は放射能分裂光ガンマレイと非常に酷似した性質を備えており、文字通りの必殺であるため、直撃を受けてしまえばその時点で終わってしまう。掠めただけの残滓であっても、激痛の光は体内で泡のように弾け細胞の一つ一つを破壊する。一片の闇をも許さぬ“光”。絶望と悪を、己の敵を、余さずすべて焼き払う絶対の焔。邪悪を滅ぼす死の光。万象すべてを滅亡させる天神の雷霆ケラウノス。彼が振るうのは生命を根絶する死の閃光である。私が生きていられるのは閣下のもつ特性の一つ、光があくまでも私の星辰光で中和できているからだ。あぁ、閣下……そう、マキシム・ブリンガーッ!お前は今、
メルビンは笑う、心の底から。まるで狂っているかの様に。
「お前を倒せば、俺は
そう、お前を倒せばきっと俺は極光から、真の絶滅光への道が」
メルビンは無意識に武器を構えていた。
心が、心の底から思いが溢れ、叫んでいた。
「落ち着いて!」
「……俺は」
クリスに頬を打たれると、先程までの高揚感が嘘のように消えていく。残るのは何時もの冷静であり、優秀な軍人にして英雄であるメルビン・コールレインだ。
「……おい…メルビン」
「済まない、熱くなりすぎたようだ」
恥ずかしい、その様に感じている。
だが、皆が目にした。メルビンの恐るべき狂気を。
メルビンの何が何でも殺すという目を。
そこには理性はない、感情だけのおぞましい瞳だった。