光の奴隷のダンジョン攻略


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作:影後
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光の奴隷とオラリオの戦争


閑話休題 〘家族〙
これは本編の合間にあった主人公と友人達との会話である。
ヘラの唯一の男の眷属と言っても良いメルビンはへラ・ファミリアのホームにて雑談をしていた。
改めてどのような場所で生まれ、軍人として何をしていたかを話していた。

「そう言えば、メルビンさんは家族の話題は少ないですよね」

メーテリアがその言葉を発した。ファミリアの皆が頑なに話そうとしないメルビンに対して色々あると思っていた所に、メーテリアは勢いよく斬り掛かった。

「家族か……前に話したろ。俺はスラム生まれだと」

「あ……」

「俺は芥溜めの中で生きる子供だった。周りにも同じく捨てられたかした子供がいた。ソイツらも…ある意味家族だが、血の繋がりのある家族は二人いる」

メルビンは懐かしみながら手元のコーヒーを飲み込む。

「姉のマイナと弟のゼファーと生きていた。俺達家族は仲が良くてな。何時も姉に甘えてた。あぁ……甘えてた」

「姉は俺達、スラムの子供のリーダーの様な存在だった。
「明日はきっと良くなる」その言葉通り、姉さんのお陰でスラムの子供はなんとか生きていられた」

メルビンの言葉が段々と重くなる。だからこそ、理解できる。

「姉は、ソレがただの理想だと知っていた。現実を知っていた」

メルビンは思い出したのか、自分でも無意識で握り拳を作っている。ポツリ、ポツリと手袋から赤い液体がテーブルに滴り落ち、ソレをメーテリアが見てしまう。

『もう……そんな顔しないの、ゼファー、メルビン。お姉ちゃんに任せなさい。私を心配しようだなんて、それこそ十年早いんだからね』

『大好き。大丈夫、大丈夫だよ、平気平気平気。
だって、私はみんなの母親代わりで。ゼファーのお姉ちゃんなんだから』

だが、マイナがメルビン達孤児を養っているのは年長者として守りたいという意思だけではなく、自分をいいように利用する大人への反発でもあり、何より彼女も子供たちに必要とされたいという共依存からでもあった。そう、だからこそ少しずつ、少しずつ、マイナは病んでいき遂に……決壊した。

『無理しているのよ、本当は辛いの。
家族ならそれぐらい見抜いてちょうだい、こんなに愛しているんだから。どうして、どうして……ねえねえどうして。 どうして―――』

『……わたしは、一人だけ馬鹿みたいに、笑い続けていなきゃ駄目?私も甘えたい、愛されたい、誰かに寄りかかっていい?』


……その願いを抱え込み続けた結果、マイナはついに折れた・・・。マイナの胸の中で抑圧され続けたその感情が歪な形で爆発する。母親の仮面を脱ぎ去り、温もりを求めたその相手は……誰よりも甘えたくて、甘えてはいけなかった一番大切な

「逃げようとしないで、お願い。一人にしないで、大好きなのよ」

暴れる体を押さえつけ、強くきつく抱きしめてはなさない。
メルビンはゼファーから助けを求められる視線を受けたが、ソレを拒絶した。メルビンは家族が大切だ、大切だから……

「ほら、辛いことや苦しいことを忘れさせてあげるから。あなた楽なことが好きでしょう?じっとしててよ、受け入れてよ。でないとわたし、苦しいの。滑稽なやせ我慢を続けるために熱い痛みを、私の心に刻んでちょうだい」

全てが終わるのを涙を流しながら見ている。そんなメルビンにマイナは聖母のように、普段と変わらない言葉をかける。

「――――あは。あはっ、あはははは、ははははははははは……!…おいで、メルビン」

幸せ。幸せ。幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ――― ああ……わたし、ほんと、最低。


「……俺は姉の様に折れたりしない」

「ごめん……なさい」

メーテリアはおろか、話を聞いていたヘラさえ言葉は出せない。
それ程までに苦しく、辛い過去。

「まって……じゃあ、貴方は自分の姉を殺した男に」

「ヴァルゼライド閣下の英雄譚は姉の話していた『希望の明日』を体現してみせた。姉もきっと、英雄譚の一節になれたことを誇りに思うはずだ」

ヘラは理解したメルビンが壊れた時期を。
メルビンが光にこだわり、ヴァルゼライドに拘る理由を。

「……神々には決して救えない」

「救いなど求めていない、俺は俺と同じ存在を作り出す事を良しとしない」

だからこそ動くのだ。だからこそ、メルビン・コールレインは英雄足り得るのだ。




「さて、このまま待たされるのか、それとも…」

 

メルビンは警備隊の制服を着ながらギルドの待合室にいた。

現在、オラリオと潜在的には戦争関係にあるが今回は招待に応じた立場、客人なのだ。今のところ、最低限のもてなしはされ、不満という不満はない。

 

「……ふぅ」

 

出された飲み物も毒物はない、受付嬢が持ってきた物であり毒見も無理矢理させた。

 

「さて、警戒しすぎだな」

 

「コールレイン様、こちらへ」

 

受付嬢に案内されるとそこにはロキ、アストレア、ガネーシャ、ヘラ、ゼウス、ヘルメス、フレイヤ、ウラノスがいる。

オラリオの大手ファミリアだ、恐らくはその主神達との会話でメルビンのこれからが決まる。

 

「娘の仇でも取りに来たのか?ゼウス」

 

「……今回、ワシが何を言っても始まらん。この争いを引き起こしたのはワシの娘。立場を明確にするために来た」

 

「そうか、では。今回の件、本人の口から聞かせてもらおう」

 

メルビンに対してウラノスが促す。

神の気配を濃密に当てられるが、メルビンにはその程度シャワーでしかない。

 

「三美神、カリスト。俺は宣戦布告としてまずオラリオの冒険者から襲撃を受けた。ヘラと会話しようとホームにいた時だ」

 

「何故、へラ・ファミリアのホームに?」

 

「ソレを話す必要を感じない、ソレは俺メルビン・コールレインと主神ヘラとの会話であるからだ」

 

「しかし」

 

「くどい」

 

「うむ、ガネーシャも同じくくどいと感じる。メルビン、襲撃者は?」

 

ガネーシャ神はメルビンと既に協力関係にある。だからこそ、ウラノスの話を切って捨てた。

 

「冒険者だ、所属は知らない。気絶させるに留めていたが今度はオラリオの市民までも魅了し、襲撃者に仕立て上げた」

 

メルビンの怒気が増す、ガネーシャはソレを微笑みながら見るが周りの神々の反応は違う。メルビン・コールレインは既に神に等しい力を手にしているのだろうかと、その力の奥底があまりにも知れないのだ。

 

「民間人を操り、襲撃するなど言語道断。それどころか、俺だけでなくアルフィアの妹。メーテリアも危険にさらされた」

 

「冒険者、市民、メーテリア嬢、俺の命が危険にさらされたのだ」

 

「しかし、裁くのは神の」

 

「…ふん、貴様らは所詮裁くと言いつつ隠すのみ」

 

「ガネーシャ、驚嘆。メルビン、お前は」

 

「そうだ、見せしめだ。ゼウスよ、お前は娘の最期を見たな」

 

「……お前の光に貫かれる、助けてと、お父さんと……」

 

「そうだ、俺は神など恐れていない。時代を、世界を築くのは人間だ。人間の力なのだ。お前達に、神々に利用される存在ではない。ガネーシャ神、ヘラ神、アストレアは違う、寄り添う神だ。

ヘルメスはその祝福が、存在が今の商人達の心の支えとなる。

そうだ、お前達はただ寄り添うか、心の支えで良かった。ゼウス、お前は間違えた。ヘラはファミリアを家族と言っていた。

アストレアも同じだ、ガネーシャもそうだな。ヘルメスは知らんな、参加している警備隊員から話を聞けば……なんというかお茶目な職場の上司らしい」

 

「何が言いたい……メルビン!」

 

「お前は、この件に関わらなければ良かった。俺とカリストの戦争に。お前がソレに関わった、関わってしまった為に、足を斬られ、傷付き、その無様な姿を晒すのだ」

 

「貴様!!!!」

 

ゼウスが立ち上がり、メルビンに拳を向けたがメルビンはソレを指一本で受け止める。

 

「俺は正義だ。正義とは絶対値である」

 

「……アストレアの名において。今回の件、私はソレを容認します」

 

「アストレア?!」

 

ウラノスが驚いた顔をする。だが、アストレアは言葉を紡ぐのをやめない。

 

「メルビン・コールレイン。彼は確かな目的のある正義です。

その行いは苛烈を極めた、でも……私はスラムいえ、新区画の孤児院で教師をしながら思い出すの。彼が居なければ、孤児院はまともに機能していなかった。子供は飢え、死骸が転がることになる。今はどう、私達は下界の…人間の事には干渉しない。それでも自己満足に足掻いた結果……私はスラムを救えなかった。でも、メルビン・コールレインはやり遂げた。彼が『苛烈なる正義』なら私の掲げるのは『優しい正義』。でも、できなかった。私の正義が間違いとは思わないわ。でも、少なくともオラリオには今、彼が必要なの」

 

「アストレア……いえ、女神アストレア様。貴女に感謝を。そして、俺はここで宣言しよう。俺の力は人々の為にある。俺の正義は悪という悪を絶滅させる為にある。俺の正義を否定するのは良い、正義は絶対値だ、人それぞれだが正義という値はけして動かん。それこそ、アストレア様の様に優しい正義もあるだろう。俺は俺の正義を信じて戦う。その障害となるなら、俺は倒そう。しかし、民を操り、犠牲を強いるようならば俺は神殺しも行おう。俺の絶対的な正義の前で、極光の中に消えてもらおう」

 

「ふざけてるのか!お前は…お前はオラリ」

 

「先に宣戦を布告してきたのは貴様らだ、対話をせず武力の行使を行ったのは貴様らだ。ソレを棚に上げて……」

 

「駄目、待って!」

 

その時だ、扉が開き血だらけの警備隊員が入ってきた。

1ヶ月ほど前に入隊したばかりの新人隊員だが、足が速いためゲールマン付きの伝令という役割を持つ青年だ。

 

「コールレイン隊長……新区画が」

 

「言うな、済まない」

 

「……え」

 

メルビンは空間にある光を青年に向けて照らす。

細胞組織が復活していき、傷口が瞬間的に治っていく。

 

「これは…」

 

「ガネーシャ、アストレア、貴殿らは知っていたか?」

 

「……ガネーシャは知らない。我々は警備隊と」

 

「あ…現在、アストレア・ファミリアとガネーシャ・ファミリアの方々に、へラ・ファミリアとオラリオ最強が援軍に。しかし、何分数が多く」

 

「……ゼウス、貴様の事は我が宿敵に免じて今は忘れる。そして!此度の攻撃、これはオラリオから我々に向けての宣戦布告だと認識した。全面戦争だ、覚悟しておけ」

 

メルビンは壁を破壊し、青年と共にギルドの外へ出る。

 

「お前達、私の部下を傷付け更に市民を傷付けたその罪。

断裁者(JUDGMENTER)の審判を告げる」

 

創生せよ天に描いた星辰を――我らは煌めく流れ星

例え堕ちようとその光を喪わず、絶えず輝き続けよう。

闇夜を照らし、全てを拾い、掬う英雄の姿を今、刮目せよ。

汝、光を夢見る者なら渇望せよ。

汝、闇を生きる者達ならば救いを求めよ。

汝、悪に生きるものなら断罪を受け入れよ。

群衆よ、神をも降し、悪魔も屠ろう。今、英雄は此処にある。

我は今、正義也!

 

超新星 ーー輝ける正義の天秤は今、傾いた

Metalnova  shine Libras leaning

 

光が襲撃者達を飲み込み、極光柱がオラリオを包む。

遺体も、遺品も何かを残すことなく襲撃者は無に帰った。

 

「名は…アダムだったな」

 

「はっ!コールレイン隊長!」

 

「ついてこれるか?」

 

「自分はゲールマン副長付きの伝令です。足なら自身があります!」

 

「良い返事だ、行くぞ!」

 

メルビンとアダムは襲撃者達を一刀によって斬り裂きながら自身達の家がある新区画へと進んでいく。剣戟や爆発音が多くなり、血の匂いが充満していく。

 

「ガネーシャ・ファミリアの」

 

「クソ野郎共」

 

ガネーシャ・ファミリアの団員だ。腕の中には幼い赤ん坊が眠っている。メルビンとアダムは直ぐに理解できた。

 

「…メルビン・コールレインだな」

 

「死ぬな、まだ助かる」

 

「……市民の避難が……完了していない……アストレアファミリアの連中や…仲間が」

 

「わかった、話すな!」

 

「頼んだ…ぞ…仲間を…この…子…を…英雄」

 

ガネーシャ・ファミリアの団員の名をメルビンは知らない。

だが、見ず知らずだった自分達の為にこの団員は命を擲ってくれたのだ。

 

「アダム、遺体から遺品と…その赤子を」

 

「…はい、コールレイン隊長」

 

アダムは遺体からナイフを回収し、赤ん坊を抱きかかえる。

 

「……俺が、俺が必ずお前の望みを、だから!だから…行け。天国があるのなら、そこで安らかに」

 

「居たぞ!警備隊のコールレインだ!」

 

「貴様等…今、俺は虫の居所が悪いのでな。惨殺させて貰う!」

 

メルビンはアダムに赤ん坊を任せると、剣で襲撃者の足や腕を斬り落とす。そして、瞬く間に襲撃者達は光の矢に穿かれる。

血溜まりが即座に出来上がり、数多の無価値なオブジェクトが光の矢の消失と共に崩れ去る。

 

「行くぞ、アダム」

 

「はっ……コールレイン隊長」

 

アダムは涙するメルビンを確かに見た。

普段から感情一つ動かさない合理的な英雄という印象は消え、命を重んじる一人の男の姿を見たのだ。

 

(…やっぱり、隊長は英雄です。俺達にとっての)

 

命の重さを、命の大切さを重んじる姿を見たアダムの中に確かな『光』が生まれた。

 

 

 

「お前達なんて……メルビン様が倒してくれる!」

 

「黙れ、ガキ共。殺されてぇか」

 

「あぁ!」

 

孤児院の年長児が冒険者に吹き飛ばされ、頭から血を流して動かなくなる。

 

「ちっ…ミスったな」

 

「あぁ…お前は俺を……怒らせた」

 

「メルビン…様?」

 

年長児を優しい光が包み込む。傷は癒え、光が当たりを包む。

 

「なっ…いつ」

 

言葉を発し終わる間もなく、メルビンの光の刃により消滅する。

 

「済まない、俺がもっと早ければ」

 

「メルビン様は必ず来るもん!」

 

「…メルビン様」

 

「孤児院の…マザー・ガルシア。どうか安心して欲しい。俺が居る」

 

その一言は孤児院の人間にとても大きな希望になる。

 

「コールレイン隊長、待って」

 

「アダム、孤児院から警備隊本部への経路。理解しているな?」

 

「…はい、いけます!」

 

スラムはその性質上、まるで迷宮の様に入り組んでいる。

ソレをメルビンは利用し、何かあれば孤児院や病院施設等に警備隊員が即応できる様に最短ルートを全員に叩き込ませたのだ。

 

「…ご無事で」

 

アダムは敬礼し、孤児院の人間を連れて離れていく。

メルビンは未だ鳴り止まぬ剣戟を抑え込むため、怒りに満ちた表情でその一歩を踏み出した。




アダム  
本名アダムスカ・テーザー 年齢16歳 レベル1
役職:警備隊副隊長付き伝令

レベル1ながら数多の襲撃者からの致命傷を交わし、傷つきながらもギルドへ到着。さらに、メルビンに状況を伝えた立役者。
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